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殺人未遂罪の懲役7年以下が相場|量刑を決定する加重減軽の基準とは

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
殺人未遂罪の懲役7年以下が相場|量刑を決定する加重減軽の基準とは

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殺人未遂罪における量刑では7年以下の懲役がほとんどであり、平成20年4月から平成23年8月までの殺人未遂に関する判決では、執行猶予を含む懲役7年以下の判決が全体の80%以上を占めています。

判決

裁判官裁判

裁判員裁判

全体比率

3年以下(執行猶予)

104

77

31.75%

3年以下(実刑)

24

14

6.67%

5年以下

87

45

23.16%

7年以下

64

51

20.18%

9年以下

24

21

7.89%

11年以下

20

9

5.09%

13年以下

8

6

2.46%

15年以下

7

4

1.93%

17年以下

3

1

0.70%

19年以下

0

0

0.00%

21年以下

1

0

0.18%

23年以下

0

0

0.00%

25年以下

0

0

0.00%

27年以下

0

0

0.00%

29年以下

0

0

0.00%

30年以下

0

0

0.00%

無期懲役

0

0

0.00%

死刑

0

0

0.00%

合計件数

342件

228件

100.00%

 

参考:「裁判所 特別資料1(量刑分布) 平成20年4月~平成23年8月判決宣告分

量刑とは裁判官が刑法などの刑罰規定を基準に、被告人(加害者)に科すべき刑罰を決めることです。簡単にいえば罪の重さになりますが、上記の通り殺人未遂罪においては比較的軽い罪になり、20年以上の懲役や死刑になることはまず無いと言ってよいでしょう。

しかし、加害者側に悪意や殺意がなく偶然的な犯行であったとしても、状況によっては重罪と決めつけられる可能性もあります。したがって、加害者は殺人未遂罪における量刑の基準を把握し、減軽を目的とした正しい主張の仕方を覚えておくべきです。

今回は殺人未遂に関する量刑の相場と加重減軽のポイントを解説しますので、一つ一つ確認していきましょう。

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殺人未遂における量刑の相場は3年~15年

上記で紹介した統計が示しているように、殺人未遂関連の量刑の相場は3年~15年が一般的だとされていますが、犯行状況などによって裁判官が決める罪の重さが変わります。

量刑とは裁判所が判断する刑罰の重さ

裁判において量刑という言葉が使われますが、基本的には犯行の様態や動機などの事件内容と法律上の規定を参考に裁判所(裁判官)が決める刑罰の重さという意味になります。刑罰については死刑と懲役刑と罰金刑の3種類に分かれますが、殺人未遂罪では懲役刑が科されることがほとんどです。

刑法上では懲役5年以上であるが減軽の余地はある

殺人未遂罪については刑法上、下記の通り規定されています。殺人未遂は殺人の場合と同様に罰せられることが刑法第203条に書かれていますが、未遂罪においては刑の減軽が刑法第43条で決められているため、懲役5年未満の軽い量刑にされる可能性があることになります。

第二十六章 殺人の罪

(殺人)

第百九十九条  人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

引用元:「刑法 第199条」

(未遂罪)

第二百三条  第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。

引用元:「刑法 第203条」

第八章 未遂罪

(未遂減免)

第四十三条  犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

引用元:「刑法 第43条

殺人未遂では執行猶予付きの軽罪になる割合が多い

平成20年4月から平成23年8月までの殺人未遂に関する判決をみると、懲役3年以下の執行猶予付きの判決が下された事件は全体の31.75%もあります。これは刑法第43条の未遂減免が大きく適用されたケースであり、殺人未遂罪であっても執行猶予が付いて実刑判決を免れる可能性が考えられます。

殺人未遂における量刑の重さは殺意の有無で決まる

殺人未遂罪に関わる量刑の加重減軽を決める基準について次項以降で取り上げますが、そもそも殺人未遂罪に問われるか、また、殺人未遂罪の量刑を決める基準で最も大事になるのが殺意の有無です。

加害者の犯行方法や計画性、加害者自身の供述を基に殺意が認められれば殺人未遂罪が成立され、殺意がないと見なされれば殺人未遂が認められず傷害罪などで判決が下されることになります。

また、殺人未遂罪に関連する自殺の幇助(ほうじょ)なども懲役刑で罰せられる可能性もあり、直接手を下さなくても殺人未遂罪と同様に殺意が認められることもあり得ます。

殺人未遂の量刑が重い事例と特徴

実際に起きた殺人未遂事件の犯行内容と判決を参考に、量刑が重くなるポイントを見ていきましょう。

量刑の重い判決事例

危険性が高く悪質な犯行であると認められた事例として、同居していた祖父をハンマーで殴った20代の男性が求刑懲役15年のところ懲役9年の判決が下されました。
参考:「祖父19回殴り強盗 男に懲役9年 前橋地裁判決

逃走先でコンビニ強盗を犯した罪も加味されていますが、就寝中のところを襲い被害者の頭を少なくとも19回は殴ったとされ、強い殺意を持っていた点から比較的重い量刑になった殺人未遂事件だといえるでしょう。

極めて残虐な暴行・傷害であること

上記の事件のように、加害者が明らかに被害者を殺そうとした行為が見られる場合に量刑が重くなります。ナイフを刺し続けて被害者に長い苦痛を負わせたり、素手でなく殺傷性のある凶器を使用してケガをさせたりするなどが殺意の根拠になります。

犯行に計画性があること

また、前もって凶器を用意していたり犯行現場に被害者をおびき寄せたりするなど、前々から被害者を殺すための計画を立てて実行した場合でも量刑が重くなる一つの基準となり得ます。

突発的な殺人事件より計画的な殺人未遂事件の方が重罪になるケースも考えられて、仮に加害者本人より殺意はなかったと主張しても計画性があれば説得力がなくなると思われます。

殺人未遂の量刑が軽い事例と特徴

対照的に、殺人未遂事件における軽罪の事例に関しても取り上げていきます。被害者に負わせたケガが軽いことで懲役刑が短くなるのも減軽の一つですが、衝動的(突発的)な犯行であったり加害者自身で犯行を止めたりした場合は殺人未遂罪でなく傷害罪が成立するケースもあります。

量刑の軽い判決事例では傷害罪で成立する

量刑が減軽された事例として、大学生の弟をハンマーで殴った20代の男性において、殺人未遂罪の適用は認められず傷害罪として求刑懲役6年のところ懲役3年(執行猶予5年)の判決が下されました。
参考:「ゲーム注意で口論、弟をハンマー殴打 殺人未遂罪は認めず傷害罪で有罪判決

加害者側の殺意が認められず、比較的軽い量刑になった理由は主に以下の2点です。

  • 深夜にゲームをしていた被害者(弟)への注意で口論になり、加害者(兄)が被害者の頭をハンマーで2回殴ったが、被害者側が死ぬ危険を認識していたかどうか疑問が残る。
  • 加害者が急所を狙って攻撃をしたとは認められず、殺人未遂とは断定できない。

被害者が負ったケガが軽いこと

減軽要素の一つとして、被害者が負ったケガの程度の軽さがあります。死亡するまで至らない軽傷である場合、懲役刑が短くなる可能性があります。

ただし、加害者側に強い殺意があったと認められる場合はたとえ被害者が軽傷であっても、殺される見込みがあったとされればある程度罪が重くなることもあります。量刑の加重減軽は様々な要素が絡んでいて、総合的な見識で殺意の有無が判断されます。

突発的な犯行であること

上記の事件において被害者は脳挫傷(外部からの衝撃で脳本体に損傷がおきること)などのケガを負い、死亡する可能性はゼロではありませんでしたが、衝動的な犯行であったことにより殺意が無いと裁判所が判断しました。日常的な口論から及んだ犯行では、本気で被害者を殺そうとしていたとは断定しにくいでしょう。

犯行以外において量刑を左右する加害者側の4つの基準

これまでは犯行内容を基準に量刑の加重減軽を解説しましたが、犯行以外にも罪が重くなったり軽くなったりする基準がありますので、下記4項目にてまとめました。基本的には加害者の素性や態度に関することになります。

性格・前科の有無

加害者の性格や粗暴性などは定められる刑罰に影響します。それと加害者の職業や年齢も考慮され、基本的には年齢が若いほど更生できる余地が残っていることから減軽される可能性があります。

また、同種の前科や補導歴がある場合は再犯の可能性が見込まれるため、懲役刑が加重される傾向にあります。仮に前科の多い加害者が「二度と犯罪をしません」と主張しても簡単には信用できないように、素行不良である場合においては加害者にとって不利な判決が下されることが多いとされます。

余罪の有無

余罪については原則、起訴されていない犯罪事実を余罪として処罰させる目的で量刑の参考資料にすることは認められませんが、単純に加害者(被告人)の犯行動機や性格を推測する上では余罪を考慮しても構わないとされています。

余罪については具体的な裁判手続きを通していない未確定の事実になるため、余罪自体の処罰は禁じられているようです。

反省・誠意

加害者本人の言葉で、被害者に対しての申し訳ない思いを伝えることが重要になるでしょう。犯行内容について正直に自白して、今後の人生において罪を償う気持ちを供述することで量刑が軽くなる可能性があるといえます。

社会に対する影響

また、事件における社会的な反応も量刑に影響を与えます。『処罰感情』と呼ばれる要素がポイントになりますが、処罰感情とは加害者に対して個人の人間や社会がどの程度の刑罰を与えたいのかを示す感情を意味します。

被害者の家族が抱く処罰感情はもちろんのこと、ニュース番組や新聞での取り扱われ方やインタビューで集められた一般人の声なども加重減軽の対象になります。最終的に判決を下すのは裁判官の役目になりますが、決して独断などではなく加害者の素性や周囲の処罰感情を考慮して量刑を判断することになるでしょう。

殺人未遂で加害者が逮捕された場合に心掛けるべきこと

最後に、殺人未遂の疑いで逮捕された場合に加害者が心掛けるべきことを紹介します。量刑を左右する基準を意識した上で、加害者は適切な供述をする必要があるでしょう。

情状を主張して殺意がないことを表明

量刑を判断する上で重要になる加害者側の素行や犯行状況などを『情状』といいますが、裁判において加害者は明確に情状を主張して、殺意がないことの理由や再犯に至らない事情になる反省状況を表明するべきです。

弁護士に依頼して供述態度のアドバイスをもらう

加害者自身では的確な対応方法が分からない場合でも、弁護士からのアドバイスをもらうことでどのような供述態度を取れば有利になるかを確認できます。加害者に殺意がなかったとしても言い方ひとつで誤解が生まれる恐れもありますので、警察からの取り調べなどで不安に思ったら早めに弁護士へ依頼した方が良いでしょう。

まとめ

殺人未遂における量刑の相場と基準について説明しましたが、お分かりいただけましたでしょうか。殺人未遂罪は殺人罪と違って、刑罰が減軽される可能性が高くなります。加害者側に悪意はなく、本当に殺すつもりが無かったのであればそれを明確に主張し、心から被害者に謝るべきでしょう。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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