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公開日:2018.7.5
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弁護士が語る!悪意を持って人を殺しても、スポーツルール内での行為なら無罪!

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アメリカンフットボールの試合中、日本大学選手が悪質な反則行為をした問題で記者会見が開かれるなど、反則行為による問題が話題になっていますが、公の場で公式に殴り合うことが容認されているボクシングやプロレスなどは罪に問われないのでしょうか?

 

弁護士法人プラム綜合法律事務所の梅澤弁護士に見解をお聞きました。

 

 

公の場で殴り合うのは決闘罪になる可能性がある

決闘罪(けっとうざい)とは、正式には『決闘罪に関する件』として、決闘や決闘に関与することを禁止した法律です。(参考:決闘罪ニ関スル件)

 

  • 決闘を挑んだ者・応じた者【6ヶ月以上2年以下の懲役】
  • 決闘を申し込んだり、受けたりした場合の罰則【6ヶ月以上2年以下の懲役】
  • 決闘を行なった者【2年以上5年以下の懲役】
  • 決闘立会人・立会いを約束した者【1ヶ月以上1年以下の懲役】
  • 決闘が行われることを知って場所を提供した者【1ヶ月以上1年以下の懲役】

 

2人以上の人物が事前に日時、条件、場所などを約束して戦うことです。ケンカとの違いは、あらかじめ約束がされていること。暴行との違いは、決闘を受ける側・挑む側どちらも戦うことに同意しているということです。

 

言い換えれば、約束もせずにその場でいきなり殴り合いにでもなればケンカとなりますし、相手に知らせずに暴行を加えるなどすれば、暴行・リンチなどが考えられますが、その場合、決闘罪は該当しません。

 

プロレス・K-1などの格闘技は決闘罪にはならない

裁判所の判例によると、決闘とは『当事者間の合意により相互に身体又は生命を害すべき暴行をもつて争闘する行為(参照:裁判所)』という記載があります。これを見る限りですと、プロレスやボクシング、K-1などの格闘技なども決闘罪に該当するのでは?と思う方も多いでしょう。

 

しかし、これら格闘技は刑法35条の『正当行為』によって罰則を受けることはありません。ボクシングやプロレスなどの試合は勧興業務としてみなされる正当業務行為(業務として正当と認められる行為)となります。つまり、ボクシングは『人を殴るスポーツとして社会的に確立している』ため、罰則を問われることはないのです。

 

悪意を持って相手選手に怪我を負わせる・死亡させたら罪になる?

Q:ボクシングの試合中、相手選手が死亡するケースもありますが、悪意を持って一方的な暴力を振るってけがを負わせたり、相手を死亡させたりする悪質な行為でも、傷害の罪や殺人の罪に問われることはないのでしょうか?

 

梅澤康二 弁護士

犯罪は①犯罪構成要件に該当すること、②違法性があること、③刑事責任があることの3つの要件が揃った場合に成立します。ボクシングは相手を殴るスポーツですが、相手を殴る行為は暴行罪・傷害罪の犯罪構成要件には該当します。従ってボクシング選手の行為は恐らく①は満たします。

 

しかし、ボクシングは社会的に正当なスポーツ行為として許容されており、ボクシングのルールに従った行為である限り②の違法性が否定されます

 

つまり、ボクシング選手が犯罪者とならないのは、①はあっても、②がないからです(②がない以上、③は問題となりません)。ボクシング選手が相手を傷つけてやろう殺してやろうと『悪意』を持っていたとしても、ボクシングのルールの中で行為が行われる限り②は否定され、犯罪は成立しないと考えます(少なくとも、ボクシングのルールに則った行為である限り、選手がどのような意図をもっていても②の違法性立証ができませんので、犯罪として立件されるということはないと思われます)。

 

これに対し、ボクシングのルールを逸脱するような行為(例えば相手の顔面を蹴りまくる、ルール上認められないグローブを使用する、ゴングがなり終わったのに執拗に殴りつけるなど)があれば、②の違法性が認められる余地があります

 

この場合に③の責任が否定されない場合は、ボクシング中の行為について犯罪が成立する可能性はあるでしょう。

この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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