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海外では刑事事件をどう扱う?|ドイツ法曹学会所属の専門家に聞く海外の司法

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公開日:2020.10.9  更新日:2020.10.9
その他 弁護士監修記事

海外では刑事事件をどう扱う?|ドイツ法曹学会所属の専門家に聞く海外の司法

Usa court

日本で刑事事件を起こすと、逮捕から起訴・不起訴の判断まで、最長で23日間の拘束を受ける可能性があることは有名です。

また否認や黙秘をしている限りは釈放されない、いわゆる人質司法が批判されていることでも知られているでしょう。

では海外で刑事事件を起こすと、どのような流れになるのでしょうか。また海外の刑事政策や司法制度は、日本とどのように異なるのでしょう。

そうした疑問について、近畿大学法学部教授で、ドイツ法曹学会にも所属する辻本典央教授に話を伺いました。

 

辻本教授のこれまでの経歴についておしえてください

平成10年に司法試験合格、その後平成12年に立命館大学を卒業し、京都大学大学院に進学しました。

また1年間京都大学大学院の法学研究科で助手を務め、平成17年から近畿大学に入職し、平成26年から現在のように教授になりました。

教授になるまでの間、2011年にはアウクスブルク大学法学部の客員教授を務め、2012年からはドイツ法曹学会に所属しています。

 

海外司法に触れたきっかけなどはありますか?

元々、大学院で法学研究者を目指しており、京都大学大学院の鈴木茂嗣教授から「刑法や刑事訴訟法はアメリカ法もしくはヨーロッパ法、特にドイツ法をベースにしたほうが良い」とアドバイスを受けたことがきっかけです。

そもそも日本の法学研究者は、海外法制を学ぶことが基本ですから。当時はアメリカ法を専攻する方が多かったのですが、ドイツ法の方が面白いんじゃないかと思いました。

また割と日本の刑法はドイツの刑法とつながりが多く、そうしたリンクを考えると刑事訴訟法もドイツ法を専攻したほうが良いんじゃないかと思ったこともきっかけです。

 

ドイツの司法制度は日本の司法制度とどの程度違いますか?

いろいろな要素はありますが、ドイツ司法制度の特徴としては州制度が挙げられます。

警察が州単位で組織されているので、州ごとの特徴が出てくる点が大きな違いですね。

それから刑事裁判に限っていえば、職権主義が徹底されている点が異なります。基本は、裁判所が刑事司法の中核を担っている点ですね。

職権主義とは

訴訟手続において、検察官といった当事者よりも裁判所に権限を集中させること。逆に日本は当事者主義で呼ばれ、訴訟の主導権を当事者に委ねて、裁判所は中立的な立場で裁断する。

 

ドイツの刑事事件の被害から裁判までの全体の流れをおしえてください

基本的なところで、警察が捜査をして検察官が公訴提起をして、裁判所で公判手続を行うという点は変わりません。

また身柄拘束も割と多く、殺人や強盗などの重大な犯罪に限らず、窃盗や傷害などの事件でも、日本と同様に身柄拘束されます。

しかし逮捕の段階はアメリカの制度と似ており、逮捕段階では令状なく逮捕が可能です。

「仮逮捕」と訳されることが多い制度で、現行犯でなくても逮捕ができます。イメージとしては、日本の緊急逮捕が近いかもしれません。

緊急逮捕とは

犯人であると断定できる十分な証拠はあるものの、急速を要し令状の発付を待てないような状態で、例外的に現行犯でなくとも令状なしに逮捕できる制度。

またドイツは必ずしも勾留の前に逮捕をしておく必要がなく、いきなり勾留からスタートできます。

そのため日本のように、逮捕状の請求と勾留審査といった2度の審査が要らず、勾留審査に一本化されています。

 

検察官は日本とどの程度ちがいますか?

検察についても日本とは異なり、組織としては別物であるものの、検察と裁判所がかなり密接な関係にあります。

特徴的なことでいえば、ドイツのアウクスブルクにいたころの話ですが、そこでは刑事裁判所の建物内に検察庁がありました。

日本も裁判所と検察庁が近くにあることはありますが、建物まで同じということは、今はないでしょう。

また裁判官と食事をする機会をもらったとき、検察官も同席するくらいには密接な関係にあり、面白いなと思いました。

 

裁判の流れは日本とどのように違うのでしょうか

ドイツの刑事裁判の流れについて、冒頭手続きがあって証拠調べがあって、最終弁論があるという流れは同じです。ただし証拠調べのときに、まさに職権主義が全面的に出てきます。

日本のように検察と被告人が提出した証拠を取り調べることはありますが、公訴提起の時点ですでに一件記録(捜査段階で収集されたすべての証拠や記録)が提出されることになっていますので、裁判が始まってから新たな証拠が出てくることはあまりないのです。

また、証人尋問なんかは裁判長がリードします。極端な話ではありますが、冒頭手続きと論告以外、検察官は特にやることがないといった感じです。

 

海外ドラマのように捜査に弁護人が立ち会うようなことはありますか?

全部が全部立ち会うわけではないですが、検察調べでは弁護人の立ち会い権があります。警察の取調べに際しても、最近の法改正により、弁護人の立ち会いが認められるようになってきています。

また最近では取調べのビデオ録画もはじまっていますが、ドイツならではの特徴的な背景・考え方があります。

日本は建前上、取調べ状況の透明化・適合性の担保のために取調べの録画を推進していますが、ドイツでは取調べでの発言を証拠として採用するためです。

そもそもドイツでは、取調べでの調書が証拠にならず、自白は公判で行うものという建前があります。

しかしそれらの原理を徹底させると、予算面や業務量などに歪みが生じるため、取調べ段階の映像を証拠として採用するねらいがあるようです。

少し話が戻りますが、こうした取調べ段階の発言を証拠とするために、弁護人の立ち会いといった法整備が進められたわけです。

 

日本にも取り入れるべきドイツの司法制度などはありますか?

ドイツ流の司法取引ですね。ただしこれについても、ドイツの憲法裁判所などで議論され、一定の限定がなされています。

日本にも日本流の司法取引がありますが、それは他人の事件への捜査協力をするものです。そのため日本では自分の事件について、自白や状況提供をしたからといって、減刑する制度はありません。

ドイツも法律がない段階から、他人の事件に関する司法取引をしていましたが、多くの場合は麻薬取引といった組織犯罪に関係する内部取引のものです。

それよりも自分の事件に関する早期自白や、公判での自白の約束をすることによって、事実上、割り引いた量刑を出す約束をする制度は、簡易迅速に処理するための有効な手段だと思います。

もちろん殺人や強制性交といった、重大犯罪で使用すべきかは議論があります。

日本は迅速な処理をする意識が薄く、どのような事件も警察がしっかりと取調べ・聴取をするので、捜査段階で司法取引ができれば、長期間拘束や起訴までの手続きの簡略化になるんじゃないかと思います。

 

ドイツと比べて現在の日本の司法制度で優れていると思うものはありますか?

事案によるしマイナス面が出ることはあると思いますが、検察官の権限が強い起訴便宜主義であるため、事案の適切な処理ができていると思います。また非刑罰的処理をする、ダイバージョンにも積極的です。

起訴便宜主義とは

起訴できる状態にあったとしても、さまざまな事情を鑑みて、検察官の判断・裁量によって起訴・不起訴を判断できること。

ドイツでも同様のことはできるのですが、裁判所が責任を持って行うことになっています。

日本はその一歩手前の、検察官の段階でそうした処理が行われています。

また証拠不十分であったり、冤罪の可能性があったりするような事案は、検察官の段階でかなり選別されていると思います。

このように検察官の権限が強いという特徴は、上手に機能する限りは積極的に評価できます。

 

いわゆる「人質司法」が問題になっていますが先進国で同じような問題はありますか?

構造的に、人質司法みたいな問題は起き得ないことが多いです。

日本の刑事訴訟法では、取調べの段階でほとんど裁判の決着が見えるような構造になっています。

具体的に言えば、警察の取調べで自白すると、それが調書にまとめられ、ほぼ無条件で裁判での証拠となります。そのため、警察の捜査も自白獲得に向けたものとなりがちなのです。

おのずと身体拘束の状態を利用した長期間の取調べが行われるようになり、「人質司法」につながるわけです。

きちんと真相を解明するという点では、全部が駄目というわけではありませんが、人質司法になってしまう理由はそうした構造にあると思います。

また諸外国では刑事訴訟法198条で定められた、取調受忍義務のような規定をあまり見ません。

この規定が俗にいう、「人質司法」を生み出す理由なのかなとも思います。

検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。

刑事訴訟法第百九十八条

また刑事訴訟法322条の自白調書の取り扱いが、日本流の制度になってしまっていると思いますね。

被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる。

刑事訴訟法第三百二十二条

逆に考えると、この刑事訴訟法198条か322条のどちらかがなくなれば、いわゆる人質司法がなくなるのではないかとも思います。

あとは諸外国では、そもそも捜査段階の供述を信用していないので、無意識に人質司法になり得ないということもあるでしょう。

いずれにしても取調受忍義務がよく批判されますが、調書の部分にも目を向けて議論されないと、進展がないと思います。

 

おもしろいと思った諸外国の司法制度などはありますか?

日本に取り入れるかは別ですが、ドイツでは捜査段階での供述を証拠にするという発想が、さほどありません。それよりも、物的証拠を固めていこうという方針です。

ドイツにいたころ議論されていたのですが、コンピュータ犯罪に対する取り組みとして、反社会的組織の構成員と疑われるような人にコンピューター・ウイルスを送り、デジタル通信に変換される前のアナログ会話の時点でこれを傍受する、といった捜査手法が法制化されています。

日本でも取調べに依存しないために通信傍受の範囲拡大や、テロ等準備罪の整備などを進めていますが、ドイツが取り組んでいるような捜査手段は有効なのではないかと思います。

ただし市民のプライバシーが犠牲になる側面があり、これを取り入れずに済むのは取調べでまかなえている日本の司法制度のひとつの功罪かもしれません。

諸外国は日本の人質司法を批判することはあるが、より強い人権に対する介入があるっていうことは知っておいてほしいです(笑)

 

まとめ

原則として、ドイツと日本の司法制度は、さほど大きく変わるものではないようです。

しかし裁判所中心となる職権主義や、取調べと証拠に対するスタンスなど、考え方や背景が異なるため実際の運用には違いがあります。

日本の人質司法が批判されることは少なくありませんが、それにもいくつか理由があるということもわかりました。

一概に日本の制度には課題があり、海外の制度のほう良いというわけではないようです。

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この記事の監修者
当社在籍弁護士
弁護士登録後、地方で一般民事・家事、刑事事件を中心に様々な案件を手掛ける。次第に司法アクセスの改善に課題を感じ、2020年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。
編集部

本記事は刑事事件弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※刑事事件弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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