増え続ける高齢者の運転による自動車事故の実状や対策

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公開日:2020.10.16  更新日:2021.4.27
トレンド 弁護士監修記事

増え続ける高齢者の運転による自動車事故の実状や対策

Car collision

2020年4月の統計によると、日本の全人口1億2593万人のうち、65歳以上の高齢者の人口は3605万人でした。割合にして28.6%で、国民の10人に3人は高齢者となります。

また75歳以上の人口は1863万人であるため、国民の約15%が後期高齢者という状態です。

そんな中、高齢者による自動車の事故がニュースで取り上げられ、社会問題のひとつとなっています。

しかし自動車の存在は、ライフラインやインフラのひとつといっても過言ではなく、手放すわけにはいかないという高齢者も少なくありません。とはいえ、実際に痛ましい事故は起きてしまっています。

そんな社会問題の実状と、対策について見ていきましょう。

【参照】人口統計(令和2年4月確定値)|総務省統計局

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交通事故を起こして問われる罪の一例

Motor vehicle accident scene inspection交通事故は、被害に応じて、人身事故と物損事故に分けられます。

物損事故の場合、基本的には行政処分を受けたり、刑罰を受けたりするようなことはなく、民事責任が発生するのみの場合が多いです。

行政処分とは

運転免許制度における行政処分とは、道路交通法に基づき、都道府県公安委員会が免許停止処分や免許取消処分など、違反点数加算により実施するもの。

ただし物損事故であっても、酒気帯び運転や無免許運転、報告義務違反などがあった場合には、行政処分や違反点数加算を受けたり刑罰を科されたりします。

一方、人身事故の場合には、酒気帯びや無免許でなかったとしても、行政処分や刑罰を受けることになるでしょう。

車の運転で人身事故を起こした場合に、問われ得る罪の一例を紹介します。

 

危険運転致死傷

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律、いわゆる「自動車運転処罰法」の第2条では、危険運転致死傷として以下のように定められています。

(危険運転致死傷)

第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。

一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為

二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為

三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為

四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

五 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為

六 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第四条第一項に規定する道路をいう。)又は自動車専用道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第四十八条の四に規定する自動車専用道路をいう。)において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為

七 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

八 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

飲酒したうえでの危険な運転や、信号を無視した高速度での運転などにより人身事故を発生させた場合に問われる罪です。

負傷の場合は15年以下の懲役

危険運転をして相手を負傷させた場合には、15年以下の懲役が科される場合があります。罰金刑はなく、重大な罪に問われることになるでしょう。

被害者の負傷の程度や情状によって量刑は異なりますが、3年を超える懲役刑になった場合、初犯であったとしても執行猶予はつきません。

死亡の場合は1年以上の有期懲役

1年以上という懲役は、負傷の場合よりも軽く見えるかもしれませんが、有期懲役とは原則として最長20年(刑法第12条第1項)、刑を加重する場合には最長30年(刑法第14条第2項)で運用されています。

言い換えれば、危険運転で相手を死亡させた場合には、1年以上(最長)30年以下の範囲で懲役刑が決められるのです。負傷した場合と比べて、その罪の重さがよくわかります。

 

過失運転致死傷

過失運転致死傷は、以下のように条文が定められています。

(過失運転致死傷)

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

過失とは、「あやまって」とか「間違えて」といった意味として使用されることが多いですが、法律上の定義はもう少し厳密です。

過失とは

注意義務(結果予見可能性に基づく結果回避義務)に違反する行為

事故発生の結果を予見でき、かつ事故を回避可能であったのに、注意を怠った結果、事故を起こしてしまった場合と考えておくと良いでしょう。

7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金

過失運転致死傷には罰金刑の定めがあるうえ、懲役刑も最長で7年と、危険運転致死傷と比べれば軽い刑罰が規定されています。

また被害の程度や情状によっては、刑を免除される可能性がある点も特徴です。

ちなみに懲役では、刑務作業が義務付けられていますが、禁錮にはそうした義務がありません。そのため禁錮とは、懲役から刑務作業がなくなったものと考えて良いでしょう。

 

交通事故と刑務所

prison人を死傷させる交通事故を起こし、刑事裁判の判決で懲役刑を受けた場合には、不服申立てをしない限りは刑務所に収容されることになります。

交通事故での懲役刑の場合には、いわゆる「交通刑務所」と呼ばれる刑務所に収容されることがほとんどです。

しかし高齢者の場合、交通事故に限らず刑務所に収容されない場合があります。刑事訴訟法によって規定されている制度ですが、その詳細などを見ていきましょう。

「交通刑務所」と呼ばれる刑事施設

交通刑務所というのはあくまで俗称であり、実際にそのような名前がついている刑務所はありません。

しかし実務上、交通事故で懲役刑を科された人を多く収容しているため、そのように呼ばれています。

具体的には、東日本と西日本に、それぞれ1箇所ずつ存在します。

市原刑務所

管轄:法務省矯正局東京矯正管区

住所:千葉県市原市磯ケ谷11-1

収容定員:約463人

加古川刑務所

管轄:法務省矯正局大阪矯正管区

住所:兵庫県加古川市加古川町大野1530

収容定員:約1,281人(一般区961人、交通区120人、女区200人)

もちろん交通事犯により懲役刑になった人でも、これ以外の刑務所に収容されることはあります。

高齢者が刑務所に入らないで済むというのは事実か

高齢者の交通事故が報道されると、社会的に大きな注目を浴びることが多いです。

SNSやインターネット掲示板でさまざまな憶測が飛び交う中に、「高齢者だから有罪でも結局は刑務所に入らない」という意見があります。

これは刑事訴訟法第482条で定められた「自由刑の裁量的執行停止」という制度で、検察の判断・指揮により刑の執行を停止することができるものです。

刑の執行が停止されることがある条件は、条文に記載してあります。

懲役、禁錮又は拘留の言渡を受けた者について左の事由があるときは、刑の言渡をした裁判所に対応する検察庁の検察官又は刑の言渡を受けた者の現在地を管轄する地方検察庁の検察官の指揮によつて執行を停止することができる。

一 刑の執行によつて、著しく健康を害するとき、又は生命を保つことのできない虞があるとき。

二 年齢七十年以上であるとき。

三 受胎後百五十日以上であるとき。

四 出産後六十日を経過しないとき。

五 刑の執行によつて回復することのできない不利益を生ずる虞があるとき。

六 祖父母又は父母が年齢七十年以上又は重病若しくは不具で、他にこれを保護する親族がないとき。

七 子又は孫が幼年で、他にこれを保護する親族がないとき。

八 その他重大な事由があるとき。

刑事訴訟法第四百八十二条

条文の二「年齢七十年以上であるとき。」にあるように、70歳以上の高齢者の場合には刑務所に収監されない場合があるのです。

須藤純正教授

Q,刑事訴訟法第482条が採用されて収監されなかった実例はあるのでしょうか?

法政大学 法学部 須藤純正教授

 刑事訴訟法482条2号は懲役などの実刑を言い渡された者が年齢70歳以上であるときは検察官の裁量判断と指揮により刑の執行が停止されて収監を免れることができることを規定しています。

病気を理由に外部の病院で治療するために刑の執行停止が認められる例はたまにありますが、高齢であることを理由として収監を免れることはめったにありません。

その稀有な実例として、ロッキード事件に絡んで贈賄罪などで起訴され、1995年最高裁判所で実刑が確定した丸紅元社長の檜山廣氏(1909年12月生まれ)は、高齢を理由に執行停止となり収監されないまま2000年死去しています。
 刑事裁判実務では、刑が執行される以前の判決の時点で裁判所が刑罰として実刑が相当か執行猶予が相当かという重要な判断を下します。

執行猶予は情状による判断で、高齢も被告人に有利な情状のうちの1つとして考慮されることがあり得ます。一方、裁判所が実刑相当と判断した場合、その判断が収監の時に覆って刑の執行が停止されることは通常あり得ません。

 高齢者が服役する場合でも必要となれば刑務所の中で医療サービスを受けることができますし、手術などもできる医療刑務所が全国に4か所あるので、高齢者でも一般に受刑能力に欠けるとはいえません。

須藤純正教授のご経歴と関連著書

1976年東京大学法学部卒業,78~99年の間検事として札幌、東京、大阪の各地検や法務省勤務

1999年4月弁護士登録

2006年法政大学法学部教授(刑事法)

2015~17年在外研究で渡米(米国法学修士号(LL.M)取得)

法政大学教授・弁護士(第一東京弁護士会所属)として現在に至る。

実務解説株式会社法(1991-商事法務研究会)

民商事と交錯する経済犯罪I(1994-立花書房)

デリバティブと賭博罪の成否(2012-法学志林)

金融商品取引法の新潮流(2016-法政大学出版局)

西田典之先生献呈論文集-担保権侵害の擬律(類型的考察)(2017-有斐閣)

運転に関する高齢者本人の意識

Elderly people driving a car自治体や警察では、高齢者の事故を防止するための施策として、運転免許証を自主返納してもらう取り組みを行っています。

しかし返納はあくまでも任意であり、高齢者の方自身が、ご自分の意思で返納をしなければいけません。

運転免許証を自主返納すれば、地域のタクシー割引が受けられる場合があったり、高齢者による痛ましい事故についての報道があったりするなどで、運転免許証の自主返納に対する関心が高まり、年々返納数は増えています。

運転免許証の返納数は増えている

2019年4月、当時87歳の高齢者が、豊島区の東池袋で11人の死傷させる事故が起きてしまい、社会的に大きな注目を浴びました。

この事故についてはその後も社会の注目を浴び続け、その影響もあってか、2019年の運転免許証の返納数は過去最多のものとなりました。

65歳以上の返納数と前年比【参照】令和元年版運転免許統計|警察庁

しかし、誰もが「危ないから運転はやめておこう」と、免許証を返納できるというわけではありません。

地域による運転免許返納数の格差

運転免許証の返納数について、都道府県ごとに数値を比較すると、返納数や返納率の格差が見えてきます。

返納数でいうと、やはり人口の多い都道府県が上位を占めている実状です。人口が多いため公共交通機関が発展しており、車を運転する必要性が低いことが理由のひとつでしょう。

地域

返納数

割合

高齢者人口(千人)

高齢者あたり返納率

東京都

66,288

11.03%

3,189

2.08%

大阪府

46,619

7.76%

2,420

1.93%

神奈川県

46,159

7.68%

2,305

2.00%

埼玉県

35,564

5.92%

1,934

1.84%

愛知県

34,357

5.72%

1,875

1.83%

兵庫県

29,498

4.91%

1,577

1.87%

千葉県

29,404

4.89%

1,721

1.71%

北海道

21,646

3.60%

1,656

1.31%

福岡県

20,818

3.46%

1,408

1.48%

静岡県

20,800

1.38%

1,081

1.92%

広島県

13,554

2.26%

817

1.66%

京都府

13,520

2.25%

749

1.81%

茨城県

10,779

1.79%

833

1.29%

反対に返納数が少ない地域は、人口が多くない地域や、県全体で十分に鉄道の交通網が広がっていない地域が目立ちます。

地域

返納数

割合

高齢者人口(千人)

高齢者あたり返納率

鳥取県

2,660

0.44%

177

1.50%

高知県

3,115

0.52%

245

1.27%

山梨県

3,160

0.94%

248

1.27%

福井県

3,226

3.46%

234

1.38%

徳島県

3,806

0.63%

243

1.57%

佐賀県

3,818

0.64%

244

1.56%

島根県

3,836

0.64%

231

1.66%

和歌山県

4,458

0.74%

306

1.46%

秋田県

4,684

0.78%

357

1.31%

石川県

4,892

1.59%

334

1.46%

宮崎県

5,097

0.85%

342

1.49%

沖縄県

5,228

0.87%

313

1.67%

青森県

5,278

0.88%

412

1.28%

【参照】令和元年版運転免許統計|警察庁

都心や郊外以外の場所に住んでいる人にとって、自動車は生活のために必要なインフラといっても過言ではありません。

返納数が多いから良いとか、少ないから悪いといった、単純な問題ではないのです。

高齢者は自分の運転に自信がある?

一部では、高齢者自身の運転に対する意識が、交通事故を招いていると考える意見があります。

必ずしもそうとは限りませんが、一部の調査では以下のような結果が出ました。

年代別の運転に対する自信【参照】高齢者運転事故と防止対策|MS&AD基礎研究所株式会社(PDF)

特に若い頃から運転をしている高齢者は、運転の経験も豊富であり、さほどスピードも出さない傾向にあります。そのため、事故を起こす可能性が低いと考えている場合もあるでしょう。

しかし体力的に、咄嗟に瞬時の判断ができない場合があるために、いざというときに事故を回避できない場合があるのです。

もしも高齢のご家族の運転に不安がある場合には、家族から免許の返納を促す必要があるかもしれません。

 

佐藤眞一教授

Q,高齢の家族の免許返納を促すために家族ができることはありますか?

大阪大学 人間科学研究科/人間科学部 佐藤眞一教授

 運転をやめない高齢者は、「自分は歳を取ったかもしれないが、まだまだ運転の能力は落ちていない」という認識が強い傾向があります。運転能力が十分な頃は良かったかもしれませんが、自覚と現実の運転能力の間にズレが生じてくると、ブレーキとアクセルを踏み間違えたり、車をこすってしまう事故の回数などが増えていきます。その結果、周囲が心配なので運転をやめてもらうようにといくら言っても、「免許は手放さない」の繰り返しになり、お互いに不満が生じてきてしまいます。
 また、脳の老化が進むと運転能力が低下します。この要因は脳の情報処理能力が落ち、運転中に必要な注意力や確認を複数同時に行うことが難しくなるためです。さらに視覚能力自体の衰えによって有効な視野が狭くなり、まわりがよく見えなくなるため、事故を起こす危険が高くなります。こういった状態では、本人にも運転中にヒヤッとする経験が増えてきます。

 事故を起こしてしまう前に話し合いをしてやめてもらうのが一番ですが、車がないと不便な生活になってしまう住宅環境にいる人や単に車が好き(運転が趣味)という人もいますので、運転免許証の返送を迫っても必ずしも上手くいくわけではありません。
 高齢者は自分の老いやそれに基づく自分の情けなさや無力感を自覚していますが、一方で、人生を生き抜いてきたというプライドもあります。こうした背反する自己像を持っていて、両者のバランスを何とか保って生きているのが高齢者なのです。ですから一方のプライド、自尊感情や有能感を否定されそうになると、それに反発してしまうのです。
 高齢者講習や認知機能検査が始まり、高齢者は自己の運転技術や認知機能の低下に気づく機会が増えました。高齢者は、確かに自己有能感が高く、そのため他者の意見では運転を止めようとしないことが多いようです。しかし、「このまま運転を続けるのは危ないかもしれない」ということは、高齢者本人もわかっているのです。

 高齢者講習などの機会を利用して、その結果について家族が一緒に考え、さらには運転免許証の返納制度を有利な制度と捉えて話し合うことが、自尊心を傷つけることなく高齢者を運転による事故のリスクから切り離す方法だと思います。

佐藤眞一教授のご経歴と関連書籍

1956年東京都生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科臨床死生学・老年行動学研究分野教授、博士(医学)

早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得満期退学、東京都老人総合研究所研究員、明治学院大学文学部助教授、ドイツ・マックスプランク人口学研究所上級客員研究員、明治学院大学心理学部教授を経て、現職。

前日本老年行動科学会会長、日本老年社会科学会理事、日本応用老年学会理事、日本老年学会幹事、(社福)大阪府社会福祉事業団顧問、日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団理事等を務める。

認知症の人の心の中はどうなっているのか(2018-光文社)

後半生のこころの事典(2015-CCCメディアハウス)

老いのこころ-加齢と成熟の発達心理学(2014-有斐閣)

 

制度や機能で高齢者の事故を防ぐ

Elderly people riding in a car誰しもが運転免許を返納できるわけではなく、高齢者自身の意識が事故につながるのであれば、制度や自動車の機能を活用して、高齢者の事故を防がなければいけません。

現在検討されていたり、実際に活用されていたりする制度、そして自動車の機能を見てみましょう。

サポカー限定の自動車運転免許

2020年6月に成立した改正道路交通法では、サポカーと呼ばれる安全運転サポート車のみ運転可能な、新しい運転免許を創設することが決定しました。

サポカーとは

衝突被害軽減ブレーキや、ペダル踏み間違いによる急発進抑制装置などを搭載した自動車。官民連携事業で、搭載車の購入に最大10万円の補助金が出る場合もある。

違反歴がある高齢者の運転技能検査の義務化

2022年をめどに、一定の違反歴がある75歳以上の高齢者を対象に、運転免許の更新時に運転技能検査を義務化することになりました。免許更新期間中は何回でも受検できるものの、不合格である場合には更新されないようです。

違反項目はまだ決定されていませんが、信号無視やスピード違反が対象になる可能性があります。

また違反歴のない70〜74歳の高齢者に向けても、免許更新時の講習で実車指導を行い、運転技能の評価と安全意識の向上を目指す取り組みもされているようです。

自動車の運転支援機能

前述のサポカーに代表されるように、各自動車メーカーは安全運転を支援するためのさまざまな運転支援機能の開発を進めています。

現状でも、衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違いによる急発進抑制装置、車線逸脱制御システムや後方視界情報提供装置など、さまざまな機能を搭載した車選びが可能です。

レーンキーピングシステムやバックビューモニターなど、機能や呼称は各社によって様々にあります。

以前まで、こうした機能は高価な車にしか搭載されていませんでしたが、最近では安価な大衆車でも充実しているようです。

汐川満則教授

Q,注目されている開発中の自動車運転支援機能をおしえてください

北海道科学大学 短期大学部 自動車工学科 汐川満則教授

 現在、「前方障害物衝突被害軽減ブレーキ」や「ペダル踏み間違い時加速(急発進)抑制装置」に代表される運転支援装置を搭載した自動車の普及は急速に進できています。また、65歳以上の方を対象とした「サポカー補助金制度」よって「サポカー」という言葉と共にそれらの運転支援装置も広く認知されてきたと感じられるようになりました。

 これまでの「運転支援」の先にある「自動運転」も法的整備がなされ、「レベル3」といわれる一定条件化で全ての運転操作を自動化した自動車もすでに登場し、さらに1つ上の「レベル4」の車両の実証実験も実施されるようになってきました。

 交通事故防止という観点では、これらの運転支援装置の普及は望ましいことではありますが、その機能には限界があり、万能ではありません。それらの装置に関する誤解や過度の期待は、逆に事故を誘発する可能性もあり、普及と共に正しい情報や知識の啓蒙も非常に重要なことと思います。

 現状の運転支援装置や自動運転技術では、残念ながら事故を完全になくすことは叶いませんが、先進的な技術や新機能の開発は日進月歩で進化していくと思いますので、今後一層の「自動運転」に期待されるものが大きいと感じます。

 このような中で、近い将来、運転する「人」とそれを支援する「車」との意思疎通(?)ができ、「運転者はどのようなことをしたいかを伝え、自動車(装置)はどうすることが最適かをサポートする。」というような機能を持った自動車が普及することで、未然に事故防止ができたり、万が一に事故が起こった場合も、対処へのアドバイスや救護を要請したりといったサポート機能の充実も叶う「人とつながる自動車」が登場する、そんな自動車社会の到来に大きな期待を持っています。

 

汐川満則教授のご経歴と関連著書

1984年 北海道工業大学(現 北海道科学大学)工学部機械工学科卒業

1984年 北海道自動車短期大学(現 北海道科学大学短期大学部)助手着任

1994年  同短期大学 講師

2003年  同短期大学 助教授(准教授)

2009年 北海道科学大学短期大学部自動車工学科 教授

自動車の走行性能と試験法(2008-東京電機大学出版局)

 

 

まとめ

高齢者の運転による自動車事故は、一般的な交通事故よりも社会的注目を浴びやすい傾向にあります。

少子高齢化社会にあり、人口の多くが高齢者と区分されている現状のため、社会問題のひとつになっているのです。

運転免許の返納について、自治体で返納後の生活を支援したり、警察でも啓蒙活動をしたりしていますが、まだまだ課題が尽きない現状にあります。

政府も新免許の創設や、免許更新の制度の見直しなどを進めており、社会全体としてこの問題に取り組む必要があるでしょう。

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この記事の監修者
当社在籍弁護士
弁護士登録後、地方で一般民事・家事、刑事事件を中心に様々な案件を手掛ける。次第に司法アクセスの改善に課題を感じ、2020年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。
編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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