違法薬物で罰せられる薬物四法とは|依存症回復は可能?

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公開日:2020.11.11  更新日:2023.6.6
その他 弁護士監修記事

違法薬物で罰せられる薬物四法とは|依存症回復は可能?

2018年の薬物による検挙数は1万4,755件にまで上っています。近年では、違法薬物の利用・所持によって芸能人が逮捕され、世間を騒がせるということも少なくありません。

違法薬物の使用・所持は犯罪になるだけでなく、身体への悪影響も大きなものがありますが、どうして人は薬物を利用してしまうのでしょうか。

この記事では、どういった薬物が取り締まりの対象になっているのか、薬物の依存性の高さ、薬物依存などから回復する方法など、薬物に関する知識を解説していきます

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薬物四法で取り締まりの対象となる薬物の一例

薬物検挙数推移

薬物を規制する法律には「覚醒剤取締法」「大麻取締法」「あへん法」「麻薬及び向精神薬取締法」の4法があり、これらの法律で取り締まる対象となっている薬物の代表例として、次のものが挙げられます。

薬物の名称

内容

覚醒剤

アンフェタミン・メタンフェタミンなどの興奮剤。粉砂糖を砕いたような感じで、無色透明、無臭。水に溶けやすい性質がある。強い依存性があり、大量に摂取すると死に至る可能性もある。

大麻

マリファナとも呼ばれている薬物。大麻草から作られ、強い精神的な依存性がある。気分が快活、陽気になるという作用がある一方、視覚、聴覚、味覚、触覚等の感覚が過敏になり、思考の分裂や感情が不安定になる。

あへん

ケシの実から出る果汁を乾燥させてつくる。茶褐色の粉末状。アルカロイド類を多く含んでいる。鎮痛、陶酔といった作用がある一方、昏睡や呼吸抑制といった症状を引き起こす。

コカイン

コカの葉を原料とした薬物。無色の結晶もしくは粉末。無臭で苦みがある。神経を興奮させる作用があり、気分の高揚や、眠気・疲労感がなくなる。幻覚を見たり皮膚を虫が走っているような感覚になったりといった症状がでる。大量摂取すると呼吸困難から死に至る。

ヘロイン

ケシを原料とした薬物。白色粉末状、棒状、粒上など形状はさまざまで、無臭もしくは酢酸臭がある。神経を抑制する作用があり、強い陶酔感を覚える一方、悪寒、嘔吐、失神などの症状が出る。大量に摂取すると、呼吸困難・昏睡・死にいたることも。

モルヒネ

ケシを原料としたオピオイド系の化合物。強い鎮痛作用がある。眠気、悪心嘔吐、血圧低下、便秘、呼吸抑制などの症状がでる。

MDMA・MDA

合成麻薬の1種。本来は白色粉末だが、さまざまな着色がされている。視覚、聴覚を変化させる一方、不眠や不安感、精神錯乱や記憶障害を引き起こす。大量に摂取すると死に至るケースもある。

LSD

合成麻薬の1種。錠剤、ゼラチン状、カプセルなどさまざまな形状がある。幻覚、幻聴や時間間隔の欠如などの症状がでる。長期の摂取を続けると神経障害を引き起こすこともある。

違法薬物で検挙された人の数と年齢

違法薬物検挙人数推移

引用:厚生労働省

厚生労働省の発表によると、違法薬物で検挙される人数は横ばい状態がつづいており、おおよそ1万4,000~1万5,000人前後で推移しています。2009年は1万5,000人以上が検挙されていましたが、少しずつ減少し、2013年には約1万3,000件にまで減りました。その後少しずつ増加を続けており、2018年には1万4,755人となっています。

種類別にみてみると、2018年では覚醒剤が最も多く1万件以上となっています。以降、大麻・向精神薬、危険ドラッグ、アヘンと続いています。

年齢で見れば、2018年で覚醒剤によって検挙された人数が約1万件であるのに対し、20代以下の検挙数が約1,200件となっており、全体の約13%程度となっています。一方で大麻は全体の検挙数が約3,700件であるのに対し、20代以下の検挙数が約2,000件で全体の50%以上となっています。年齢によって使用する薬物にある程度の傾向があることが分かります。

大麻は29歳以下の若者の検挙が多い

大麻事犯検挙人数推移

引用:厚生労働省

大麻の検挙数は2013年以降年々増加しており、2018年には3,762件にまで上っていますが、そのうち29歳以下の若者の検挙数が約53%となっています。

20代覚醒剤・大麻検挙人数推移

引用:厚生労働省

また、20代について覚醒剤と大麻では、覚醒剤で検挙された人数の方が多かったものの、2017年には逆転し、大麻で検挙された人数の方が多くなるという事態になっています。

明治大学阿部力也教授
Q.若者の大麻使用が増えている要因に他国文化の浸透は考えられますか?

明治大学 情報コミュニケーション学部 阿部力也教授

 かつての「ヒッピー文化におけるドラッグの受容」というような他国・異文化(異なるファッション)の影響を受けた結果としての大麻使用という視点は、現状では、かならずしも有効ではないと考えています。むしろ、単純に海外渡航の機会が増加したこと、さらには、グローバルなネットワークの整備と個人レベルでのネットワーク環境の充実という視点が問題分析に有効ではないでしょうか。

 それらによって、薬物に関する「虚々実々な」情報に接することが容易になったという点が若者・若年層(もちろんそこに限定されませんが)の大麻使用に大きな影響を与えていると考えられます。もっとも、好きな(海外の)アーティストの影響を受けて「模倣する」と動機自体は否定できませんが、一つの「ムーブメント」というほどの現象は存在しないのではないか(もはや存在し得ないか?)と思われます。

 さまざまな情報に接することが容易になった現状では、ある程度までは模倣の対象(音楽・服飾・映画・文学など)も細分化され、ある時代を象徴するムーブメントという評価ができにくいと思われるからです。

 むしろ最近では、友人、仲間、所属するグループの構成員が使用しているので「同調しなければ」という動機から使用するという点も見逃せません。友人、仲間たちから「排斥される」ことへの恐怖感が最初のきっかけとなり、常習化していくという理由もあると思われます。

 もちろん、一つの原因によって説明することは難しいと思います。先行きの見えない社会に対する漠然とした不安からの逃避を理由に使用するという場面もあるでしょう。したがって複合的な要因からと考えていますが、すくなくとも特定の他国文化への憧憬・親しみからの使用という視点は、かつてほどインパクトのある理由付けではないと考えます。

 

阿部力也教授の経歴と関連書籍

ご経歴

明治大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学、明治大学法学部助手、明治大学短期大学専任講師、同情報コミュケーション学部准教授、同大学院法務研究科(法科大学院)教授を経て、現在、同情報コミュニケーション学部教授。

関連書籍

外部専門家の共同正犯性について

情報コミュニケーション学研究(中村義幸先生退職記念号)(2021年3月発行予定)

薬物犯罪は他の犯罪と比べて繰り返してしまう可能性が高い

刑法犯再犯率

覚醒剤再犯率

引用:令和元年版犯罪白書|警察庁

覚醒剤・大麻・コカイン・アヘンなどの薬物は依存性が強く、一度検挙されても止めることができず、再犯をしてしまう可能性が高いという特徴があります。実際、刑法犯による再犯者率が48.8%であるのに対し、覚醒剤による再犯者率は66.6%にまで上っています。いかに薬物の依存性が強いかが分かるといえるでしょう。

たばこやお酒以上の強力な依存性をもつ場合もある

タバコやお酒にも依存性がありますが、薬物にはそれら以上の強力な依存性を持つものがあります。イギリスの神経精神薬理学者で精神科医の、デビッド・ナット氏が医学雑誌「ランセット」に書いた論文、「Development of a rational scale to assess the harm of drugs of potential misuse」によれば、たばこやお酒、薬物などの依存度は次のようになっています。

1位

ヘロイン

2位

コカイン

3位

アルコール

4位

たばこ

5位

覚醒剤(メタンフェタミン)

6位

メサドン(※1)

7位

大麻

8位

アナボリックステロイド(※2)

9位

MDMA

10位

LSD

最も強い依存性を持つものがヘロインとされており、以降はコカイン、アルコール、たばこと続いています。依存性だけでいえば、覚醒剤や大麻、MDMA、LSDはたばこやお酒以下だとされているようです。

ただし、たばこやアルコールは身近な存在ですが、依存性がそれら以下だとしても体への有害性とは別問題です。たばこ・お酒よりも依存性が低いとされていても、身体に有害であることは変わりないということは理解しておいてください。

(※1)がんの痛みを抑制する薬。身体機能が低下し、痛みや不安感を低減させる
(※2)たんぱく同化ステロイドの総称。筋肉増強作用を持つ

藤田医科大学 毛利彰宏教授
身体的な危険があると知っていても繰り返してしまう依存とは?

藤田医科大学 臨床検査学科 毛利彰宏教授

 覚せい剤やアルコールなどの依存性薬物は、脳を興奮もしくは抑制することで、高揚感や不安を和らげるなどの精神機能に影響を与え、一時的に快楽を感じさせます。

依存性薬物の多くは耐性があり、体が慣れてしまい、次第に効果が感じられなくなり、使用量が増えます。依存性薬物の繰り返しの使用により、高揚感や快楽などの精神状態を忘れられなくなり、「どうしてもクスリが欲しい」という強迫的な欲求(渇望)がおきることを精神依存といいます。

この渇望は非常に強く、リスクを起こしても依存性薬物が欲しくなるため、身体に悪いことが分かっても使用し、購入のため多額の金を払ってしまい、そのために犯罪を起こしてしまうことがあります。

 渇望に耐えながら依存性薬物をやめても、小さなきっかけで再び渇望が出てくることがあります(再燃)。ストレスを受けた時、依存性薬物に関連したもの(注射器や居酒屋の看板)を見た時に再燃し、少しだけなら大丈夫だろうと、どんなに少量でも再び摂取すると元の薬物依存状態に戻ってしまいます。

 欲求が満たされたときに活性化し、快の感覚を与える神経系を脳内報酬系といい、腹側被蓋野から側坐核へと投射する中脳辺縁系ドパミン作動性神経系と考えられています。実験動物がレバーを押すと脳内報酬系を刺激されるようにすると、盛んにレバーを押すようになります。依存性薬物の作用点は異なりますが、直接的あるいは間接的に脳内報酬系におけるドパミンの放出を促進することにより、一時的に快感をもたらします。

 依存性薬物の繰り返しの使用により脳内報酬系が増強されることで薬物依存が形成され、強い渇望が出るようになり、使用をやめても再燃してしまいます。また、意思決定・判断などを行う脳部位である前頭前野は脳内報酬系を制御しています。依存性薬物の繰り返しの使用は前頭前野の機能を低下させ、正しい判断ができなくなり、依存性薬物の摂取を抑制できなくなるため、リスクや犯罪を冒すことになります。

 脳を抑制する依存性薬物の認められるものに身体依存があります。身体は依存性薬物がある状態に適応し、依存性薬物をやめると手が震えるなどの不快な症状が現れてしまいます。映画などでお酒を飲んだ方が仕事ができると豪語する職人さんが登場しますが、身体依存によるものと考えられます。

毛利彰宏教授の経歴と関連書籍

岐阜薬科大学卒業後、同大学院博士前期課程に進学し、薬学研究科分子生物学教室で古川昭栄先生・野元裕先生に師事し、神経栄養因子の研究を行う。

名古屋大学大学院博士課程に進学し、医学系研究科医療薬学で鍋島俊隆先生、野田幸裕先生に師事し、薬物依存から精神神経疾患の行動薬理学的研究を行う。

文部科学省 学省学術フロンティア推進事業 博士研究員、厚生労働省 科学研究費補助金医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業 リサーチレジデントとして従事し、MDMAの神経毒性・薬物依存の研究を行う。

名古屋大学大学院医学系研究科 医療薬学・薬剤部 特任助教、名城大学 薬学部病態解析学I 助教、藤田保健衛生大学大学院 先進診断システム探索研究部門 講師、藤田医科大学大学院保健学研究科レギュラトリーサイエンス 准教授として従事し、動物モデルを用いた精神神経疾患の病態解明・治療薬開発から、血液を用いたバイオマーカー探索を行っている。

visual vore pharma 薬物治療学(南山堂-2020)

 

非営利目的で単に使用した場合の薬物4法の量刑

薬物の法定刑

薬物は医療目的などによって合法的に利用されるケースもありますが、原則違法であり、「覚醒剤取締法」「大麻取締法」「あへん法」「麻薬及び向精神薬取締法」の薬物4法で使用や所持に法定刑が設けられています。ここでは各薬物の法定刑がどの程度であるかについて確認しておきましょう。

覚醒剤取締法|10年以下の懲役

覚醒剤は、覚醒剤取り締まり法によって規定されている以下の物質が含まれている薬物のことです。

  • フエニルアミノプロパン
  • フエニルメチルアミノプロパン
  • 上記と同種の覚醒作用を有するものであって政令で指定するもの など

覚醒剤を使用した場合の法定刑は、覚醒剤取締法によって、10年以下の懲役と規定されています。

第四十一条の三 次の各号の一に該当する者は、十年以下の懲役に処する。

一 第十九条(使用の禁止)の規定に違反した者

引用:覚醒剤取締法第41条

加えて、所持にも同じ10年以下の懲役の法定刑が規定されています。このときの所持は持ち歩いているだけでなく、自宅や車など自分の管理下にある場所に保管していた場合も該当します。

さらに、営利目的で覚醒剤を使用・所持した場合には、1年以上の有期懲役という法定刑が定められており、営利目的があった場合にはより重い罪になる可能性があります。

大麻取締法|使用に対する罪の規定はない

大麻取締法では、一般的な非営利目的の使用に対する罰則の規定はありません。これは、大麻の成熟した茎や種子には有害性がなく、これらの部分が文化的に利用されていることが原因であると言われています。

特に大麻の種子は七三唐辛子などに含まれており一般的に食されています。仮に尿検査をした場合、種子を食べた場合も陽性反応がでてしまい、規制対象部分を使用したのか、種子を食したのかの区別が困難なのです。

ただし、所持や栽培に対する規制は設けられており、非営利目的で使用した場合には所持によって取り締まられます。所持・譲渡・譲受は5年以下、非営利目的の栽培や輸出入は7年以下の懲役が法定刑として定められています。

第二十四条 大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。

第二十四条の二 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。

引用:大麻取締法第24条

麻薬及び向精神薬取締法|薬物により量刑が異なる

麻薬及び向精神薬取締法では、麻薬と向精神薬について取り締まりを行っています。

同法律で取り締まりを行っている麻薬としては、ヘロイン、コカイン、モルヒネ、MDMA、LSDなどがあげられますが、ヘロイン・ヘロイン以外の麻薬・麻薬原料(マジックマッシュルーム)によって法定刑が異なっています。

また、使用のほか、譲渡・譲受・所持、輸出入や製造などについても量刑が定められています。それぞれの法定刑は次の通りです。

ヘロインの使用・譲受・譲渡・所持

非営利目的

10年以下の懲役

営利目的

1年以上の有期懲役もしくは500万円以下の罰金を併科

ヘロイン以外の麻薬の使用・譲受・譲渡・所持

非営利目的

1年以上10年以下の懲役

営利目的

1年以上の有期懲役もしくは500万円以下の罰金を併科

麻薬原料(マジックマッシュルーム)の使用・譲受・譲渡・所持

非営利目的

7年以下の懲役

営利目的

1年以上の有期懲役もしくは300万円以下の罰金を併科

ヘロインの輸出入・製造

非営利目的

1年以上の有期懲役

営利目的

無期又は3年以上の懲役刑もしくは1,000万円以下の罰金を併科

ヘロイン以外の麻薬の輸出入・製造

非営利目的

1年以上10年以下の懲役

営利目的

1年以上の有期懲役もしくは500万円以下の罰金を併科

麻薬原料(マジックマッシュルーム)の輸出入・製造

非営利目的

1年以上10年以下の懲役

営利目的

1年以上の有期懲役刑もしくは500万円以下の罰金を併科

同法律では向精神薬についても規制を設けています。向精神薬は中枢神経に働きかける薬物で、医師が処方するものに関しては問題となることはありません。

一方で譲渡目的での所持や輸出入・製造については次のような法定刑が設けられています。

向精神薬の譲渡、譲渡目的の所持

非営利目的

3年以下の懲役

営利目的

5年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金を併科

向精神薬の輸出入、製造

非営利目的

5年以下の懲役

営利目的

7年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金を併科

あへん法|7年以下の懲役

あへん法ではあへんの使用について7年以下の懲役を法定刑として定めています

(吸食の禁止)

第九条 何人も、あへん又はけしがらを吸食してはならない。

第五十二条の二 第九条の規定に違反した者は、七年以下の懲役に処する。

引用:あへん法第9条あへん法第52条

なお、あへんも所持のほか輸出入や製造、譲渡・譲受・所持についても法定刑が定められています。それぞれの法定刑は次の通りです。

あへんの輸出入・製造

非営利目的

1年以上10年以下の懲役

営利目的

1年以上の有期懲役もしくは500万円以下の罰金を併科

あへんの譲渡・譲受・所持

非営利目的

7年以下の懲役

営利目的

1年以上の10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金を併科

依存症回復のための取り組み

薬物は体に害のあるものですから、依存症になったとしても抜け出さなければなりません。そのためにできることにはどういったものがあるのでしょうか。ここで確認しておきましょう。

気持ちだけで1人で依存症回復に取り組むことは難しい

薬物を辞めるのが困難であるのは、薬物が脳の快感中枢に直接的に作用し、その感覚が脳に刷り込まれてしまっているからです。薬物依存症になってしまうと、薬物使用を自分自身でコントロールすることが困難になり、薬物中心の生活になってしまうということもあり得ます。そのため、本人の意思だけでは依存症から回復することが困難なのです。

しっかりと薬物依存に向き合い回復していくためには、更生プログラムを受けたり、周囲の人たちが援助したりするなど、本人の努力のほかに周囲の理解が必要になるといえるでしょう。

認知行動療法

薬物依存から回復する代表的なものとして、認知行動療法が挙げられます。認知行動療法は依存症の治療に効果があると認められている心理療法の1つで、さまざまな治療現場で取り入れられています。

認知行動療法では、認知の歪みを整理し、行動を変化させることで薬物依存からの回復を目指します。たとえば、薬物利用者は薬物を使わなければ精神的な安定が得られないといった間違った認知をしています。その結果薬物を使用するという行動に出てしまうのです。

認知行動療法では、この「薬物を使わなければ精神的に安定できない」といった依存者の認知の歪みをまず取り除きます。「薬物を利用すると体にも心にも害がある」などの正しい認知に書き換えて、「薬物の使用をやめる」という行動をとるように促すのです。

認知行動療法は病院などで受けられます。ただしどの病院でも実施しているわけではありませんので、事前に問い合わせをして確認しておくようにしてください。

ダルクなど自助グループの特徴を持つリハビリテーション施設

薬物依存から抜け出す方法には、自助グループに参加するといった方法もあります。タレントの田代まさしさんが加入していたことから、そのうちの1つである「ダルク」をご存知の方も多いのではないでしょうか。

自助グループの活動内容は施設によってことなりますが、施設で共同生活を行う、グループセラピーなどを行う、医療機関、行政機関と連携を取りながらプログラムを行うなどによって薬物依存からの回復を目指します。

ダルクをはじめとして、薬物関連の自助グループの特徴をもったリハビリテーション施設やグループには、次のようなものがあります。

ダルク

薬物依存者の自助グループ。さまざまなプログラムで薬物依存からの回復を目指す。

ナルコティクス・アノニマス

薬物依存者の自助グループ。家族や関係者も参加できるミーティングも開いている。

ナラノン

薬物依存者の家族や友人の自助グループ。本名を名乗る必要なく利用可能。

薬科連

薬物依存者を抱える家族の集まり。全国各地で開催されている。さまざまな相談に応じる。

埼玉県立大学 相良 先生
Q.薬物犯罪の再犯防止のために周り(家族とそれ以外の人たち)ができることはありますか?

埼玉県立大学 保健医療福祉学部社会福祉子ども学科 相良翔助教

 

 まず、薬物依存に関して相談できる施設および機関の情報を本やインターネットなどを通じて把握しておくことが重要だと思われます。また、逮捕されてしまった当人は薬物依存だけでなく、その他にも仕事や借金などの生活に関する様々な問題を抱えている可能性があります。それゆえに当人およびその家族や周囲の人物だけでは、そのような問題に対応するのは難しいと考えられます。信頼できる相談先を見つけ、現状について確認し、その後の対応について落ち着いて考えることが大事になります。

 精神保健福祉センター、保健所、市町村保健センターなどが公的な相談機関としてあげられます。また、この記事でも紹介されている薬物依存者自身で運営されているリハビリテーション施設であるダルク(DARC: Drug Addiction Rehabilitation Center)、薬物依存をもつ人の家族や友人のための自助組織であるナラノン、民間の心理および福祉に関する相談室なども主な相談先として挙げられます。

 また、薬物依存をもつ家族や恋人・友人に振り回され、自身が疲弊している可能性もあります。その場合、その当人に何かできることを探す前に、自身のケアを図ることが大事になります。そのためにも、住まわれている場の近くにある上記にあげたような相談先に連絡し、当人だけではなく、ご自身のことも含めて相談することも重要と言えます。

 

相良翔助教の経歴と関連書籍

ご経歴

2018年、中央大学大学院文学研究科社会学専攻博士後期課程修了。

更生保護施設での勤務を経て、現在、埼玉県立大学保健医療福祉学部社会福祉子ども学科 助教。

関連書籍

『「季刊Be!」増刊号No.27《保存版》アルコール・薬物・ギャンブル 依存症家族の困りごと解決&支援マニュアル』(2018年出版)

『JUST FOR TODAY(今日一日)――薬物依存症からの回復』(2010年出版)

まとめ

薬物による検挙者は平均して1万4,000件前後で推移しています。薬物には覚醒剤、大麻、コカイン、MDMAなどたくさんの種類がありますが、検挙者の多くは覚醒剤が原因となっているようです。

薬物の依存度はたばこやお酒よりも高いものもあり、身体への害も大きいうえ、使用によって懲役などの法定刑が定められています。依存症になってしまうとご自身の力のみでは回復することが困難なため、まずは手を出さないようにしなければなりません。

依存症から回復するには認知行動療法や自助グループなどへの参加が有効です。またご家族や友人などの周囲の支援も必要になるでしょう。この記事で薬物への理解が深まれば幸いです。

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この記事の監修者
当社在籍弁護士
弁護士登録後、地方で一般民事・家事、刑事事件を中心に様々な案件を手掛ける。次第に司法アクセスの改善に課題を感じ、2020年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。
編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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