見知らぬ子供に車を傷つけられた!賠償請求はできる?
愛車に傷をつけられた場合、犯人が分かれば、その人に損害賠償請求をすることができるでしょう。
しかし、その相手が見知らぬ小さな子供だった場合、その子供に損害賠償を請求することはできるのでしょうか?
判断能力の乏しい子供とはいえ、しっかりと賠償責任は果たしてもらいたいですよね。
このような場合、損害賠償金を請求するにはどのようにしたらよいのかについて、解説していきます。
その子供の親に請求できる?
まず、基本的な考え方として、もしも子供が成人している場合は、その子供が犯した罪に対して親が法的責任を負う必要は一切ありません。
親と子供という関係であっても、当然に親子が連帯して法的責任を負うような法律はなく、そのような考え方もありません。
しかし、これは子供が成人しているケースであり、子供が未成年の場合には、親がその責任を負わなければいけない場面もあります。
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
引用元:民法712条
そのため、車に傷をつけたその子供に責任能力がないと判断される場合、その子供を監督する責任者(親や兄弟)が原則として賠償責任を負うことになります。
前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
引用元:民法714条
つまり、子供の年齢が低く、責任能力がないと判断される場合には、監督責任を有する親に、損害賠償を請求することができるということです。
また、『責任能力がない』の判断基準は、明確に『何歳以上』というラインはありませんが、おおむね12歳以下であるというのが裁判所の見解のようです。
なお、子に責任能力が認められる場合、子が未成年(16歳など)であっても親に監督責任は生じません。しかし、親の子に対する監督義務違反と損害との間に因果関係が認められるような場合には、親には固有の不法行為責任が生じる余地があります。
親が賠償責任を負わなくてよいケースもある
上記のとおり、子に責任能力がない場合、子供の起こした不法行為については、親が賠償責任を負うのが原則です。
しかし、例外的に、民法714条但書に記載されているように、親が子に対する監督義務を怠らなかったといえる場合には、親は責任を免れます。
例えば、子供が車に傷をつけたケースでは、他人の車には不用意に近づかないことや、勝手に触らないことなどを普段から十分注意しており、親の監督行為に問題がなかったことが証明されれば、この親は監督義務を果たしたものと評価されて損害賠償責任は負わないという可能性もあります。
しかし、この適用範囲は非常に限定的で、立証のハードルは極めて高いと言われていますので、親が監督責任を免責されるケースはごくまれであるのが現状のようです。
まとめ
上記のとおり、子供に責任能力がない場合、子供の不法行為で第三者に与えた損害は、原則として親が責任を負います。親がこの責任を免れることは非常に難しいです。このことに注意して、普段から子供に対して十分な指導・監督をしたいですね。
その他に関する新着マガジン
-
違法薬物の法定刑や検挙人数の推移、依存症回復のための施設について解説します。
-
昨今、日本の刑事司法制度は人質司法などで批判を浴びることがありますが、海外ではどのように刑事事件が進んでいくのでしょうか。ドイツ法曹学会にも所属する辻本典央教授...
-
現在日本では、覚醒剤や大麻などの違法薬物を使用すると、刑事罰として懲役刑が科されることがあります。しかし海外の薬物政策は異なることがあります。それらの事情につい...
-
犯罪を起こした場合、犯人がその責任を負い、懲役刑や罰金などの刑罰を受けます。しかし環境や考え方など、小さな原因の改善により犯罪を防ぐことも可能です。この記事では...
その他に関する人気のマガジン
-
サイコパスは猟奇的な殺人鬼というイメージが強いですが、どのような人のことをいうのでしょうか。本記事ではサイコパスの特徴について紹介します。
-
日本は、先進国の中でも死刑制度を導入している数少ない国の1つです。最近でも、オウム真理教元代表の死刑が執行され、大きな話題となりました。ただ実際のところ、どのよ...
-
誰もが気軽に乗ることのできる自転車。その自転車に、飲酒運転は適用されるのでしょうか?車の運転と同様に、お酒を飲んでから自転車に乗ることは、違法となるのでしょうか...
-
日本に広く分布するスズメは、その姿や動作から人気があり「飼いたい」と思う人も多くいます。スズメをペットとして飼育することは『鳥獣保護法』に違反する行為です。この...
その他マガジン一覧へ戻る