見知らぬ子供に車を傷つけられた!賠償請求はできる?

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公開日:2018.7.20
その他 弁護士監修記事

見知らぬ子供に車を傷つけられた!賠償請求はできる?

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愛車に傷をつけられた場合、犯人が分かれば、その人に損害賠償請求をすることができるでしょう。

 

しかし、その相手が見知らぬ小さな子供だった場合、その子供に損害賠償を請求することはできるのでしょうか?

 

判断能力の乏しい子供とはいえ、しっかりと賠償責任は果たしてもらいたいですよね。

 

このような場合、損害賠償金を請求するにはどのようにしたらよいのかについて、解説していきます。

 

その子供の親に請求できる?

まず、基本的な考え方として、もしも子供が成人している場合は、その子供が犯した罪に対して親が法的責任を負う必要は一切ありません

 

親と子供という関係であっても、当然に親子が連帯して法的責任を負うような法律はなく、そのような考え方もありません。

 

しかし、これは子供が成人しているケースであり、子供が未成年の場合には、親がその責任を負わなければいけない場面もあります

 

未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。

引用元:民法712条

 

そのため、車に傷をつけたその子供に責任能力がないと判断される場合、その子供を監督する責任者(親や兄弟)が原則として賠償責任を負うことになります。

 

前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

引用元:民法714条

 

つまり、子供の年齢が低く、責任能力がないと判断される場合には、監督責任を有する親に、損害賠償を請求することができるということです。

 

また、『責任能力がない』の判断基準は、明確に『何歳以上』というラインはありませんが、おおむね12歳以下であるというのが裁判所の見解のようです。

 

なお、子に責任能力が認められる場合、子が未成年(16歳など)であっても親に監督責任は生じません。しかし、親の子に対する監督義務違反と損害との間に因果関係が認められるような場合には、親には固有の不法行為責任が生じる余地があります。

 

親が賠償責任を負わなくてよいケースもある

上記のとおり、子に責任能力がない場合、子供の起こした不法行為については、親が賠償責任を負うのが原則です。

 

しかし、例外的に、民法714条但書に記載されているように、親が子に対する監督義務を怠らなかったといえる場合には、親は責任を免れます

 

例えば、子供が車に傷をつけたケースでは、他人の車には不用意に近づかないことや、勝手に触らないことなどを普段から十分注意しており、親の監督行為に問題がなかったことが証明されれば、この親は監督義務を果たしたものと評価されて損害賠償責任は負わないという可能性もあります。

 

しかし、この適用範囲は非常に限定的で、立証のハードルは極めて高いと言われていますので、親が監督責任を免責されるケースはごくまれであるのが現状のようです。

 

まとめ

上記のとおり、子供に責任能力がない場合、子供の不法行為で第三者に与えた損害は、原則として親が責任を負います。親がこの責任を免れることは非常に難しいです。このことに注意して、普段から子供に対して十分な指導・監督をしたいですね。

この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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