副業のコンビニで買い取りノルマ…。これ違法?

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公開日:2018.7.5
その他 弁護士監修記事

副業のコンビニで買い取りノルマ…。これ違法?

「明日までに全員で30個売りましょう!」

 

チームを鼓舞するような店長の言葉は、時に人を追い込むプレッシャーの言葉へと変貌します。

 

目標が達成できなかった場合、気持ちの優しい人は特に、『自分で買い取ろう』と思ってしまうものです。また、店長に「買い取れ」と言われたら、それに歯向かうことができず、素直に従ってしまう人もいるでしょう。

 

しかし、そもそもそんなノルマをアルバイトに課してもよいのでしょうか? 減給や休みカットなど、待遇に影響するような責任を要求されたとしても、泣き寝入りするしかないのでしょうか?

 

この記事では、アルバイトがノルマを課せられることの違法性について、解説していきます。

 

一般的にはびこるノルマ制度

Q.休みの日にコンビニでバイトをはじめましたが、パートさんいわく、その店はお中元やクリスマスケーキの買い取りがあるそうです。必達のノルマというわけではなく、「当然買うよね?」という断りにくい誘導で勧められるそうなのですが、これってアリなんですか?(41歳 会社員)

 

よくありそうなこのケース。

 

『買わなければいけない空気』を察して買ってしまうのは、いかにも日本人らしいですよね。

 

例えばインターネット上では以下のような投稿が散見されます。真偽は不明ですが、もし本当であれば迷惑な話ですね。

 

 

売れ残りの負担を従業員皆で負担しようという気構えはすばらしいのかもしれません。

 

が、しかし…。

 

それが『自主的』ではなく『強制的』だった場合は、果たして適法なのでしょうか。

 

こんなケースは違法になる?

先ほどの質問のケースでは、『買わなければいけない空気』という言葉の解釈が争点になってくると思われます。

 

『買え』と強制されたのか、それとも『あくまで自己判断』と言われているのか。そこが違法性を分ける大きなポイントになるでしょう。つまり、従業員が何の指示や命令も受けないで任意で商品を購入することは適法ですが、会社がこれを命じて購入を強いる行為は適法とはいえません。したがって、このような命令に従う義務はなく、命令違反を理由にペナルティを受けても、そのようなペナルティは無効です。

 

また、会社側が従業員に購入を命じ、購入費用を一方的に給料から天引きするなどした場合は、労働基準法24条の定める賃金全額払の原則に抵触しますので、差額を支払うよう会社に求めることが可能です。

 

したがって、仮に会社側から『商品を購入するように』と指示・命令されたような場合は、会社に対して『買うつもりはない』と明確な意思を伝えてください。もし1人でこれをするのが不安であれば、他の従業員と協力して意思表明をするのもありだと思います。

 

そこでもし、

 

「ダメだ!絶対に買え!」

「買わないとクビだ!」

「これはお前の責任でもあるんだ!」

 

などといったように、買取を強制するような言動があった場合は、違法なパワーハラスメントにあたる可能性も出てきます。

 

この言い方ってアウト?セーフ?

買い取りを命じる言葉はさまざまなものがあるかと思います。では、いったいどこからがアウトでどこまでがセーフなのでしょうか?

ポイントは買い取りを強いられたかどうかです。

 

例①
店長「売れ残りがあったので、一人5個ずつ買ってもらいます」
私「いえ、私はそんな契約はしていないので買取はできません」
店長「いや、お前の責任なんだから買い取りなさい」
私「いや、でも私たちは売る努力はしましたし、その責任をバイトに負わせるのは…」
店長「いや、お前たちがもっと頑張れば売れたんだ!買い取ってもらわなければクビだ!!」
私「そ、そんな…」

 

このような会話がされた場合は、買い取りを強要するものとして違法な命令といえそうです。

違法な命令には従う必要はありません。また、買い取りをしなかった場合に解雇するという脅し文句は、違法なパワーハラスメント行為に当たる可能性があります。

 

例②
店長「みんなで過去最高の売上を達成しよう!」
私「いいですね!どうやって売上を伸ばしましょうか?」
店長「みんなで話し合おう」
私「POPを作ってもいいですか?」
店長「もちろんだ!」
私「買ってもらうために接客にも気をつけましょう」
店長「よっしゃー!みんな頑張ろう!」
アルバイトたち「頑張りましょう!」

 

上記では物品の買い取りなどを強いていませんので、特に違法な点はありません。

 

そもそも論として、アルバイトのモチベーションが上がるような雰囲気を作ることが大切でしょう。そのためには、常日頃からコミュニケーションを取ることが重要かもしれません。

 

ペナルティを課せられた場合の対策

店舗が定める売上目標が未達だった場合にペナルティを課すことは、場合によっては違法となります。例えば、目標未達だから罰金を支払わせることや、毎月の給与を減額するということは違法です。このような場合は以下のような対応が考えられます。

 

労働基準監督署に相談する

労働基準法に反した行為をした場合には、労働基準監督署に相談することで、会社へ指導をしてもらうことができます。

 

この際、売れ残りを買い取ることを命じられたことや、減給されたことなど、証拠を持っていくことが大切です。証拠がなければ労働基準監督署は動いてくれませんので、いつどのようなことをされたのか、またはどんなことを言われたのか、なるべく多くの証拠を持っていくようにしましょう。

 

仲間とともに声をあげる

『当然買うよね?』という空気が現場に流れているときに自分だけ買わないのは、とても勇気のいることだと思います。

 

しかし、もしかしたらあなただけではなく、職場の仲間たちも『買いたくない』という同じ気持ちを抱えているかもしれません。

 

1人で『買いたくない』と発言するのは難しいと感じても、同じ気持ちをもった仲間と一緒であれば、声をあげることも可能でしょう。

 

買い取りを要求され、それに応じたくないのであれば、仲間とともに買取拒否の声をあげてみてはいかがでしょうか。

 

辞める

辞めることは決して後ろめたいことではありません。ストレスを持ちながら働き続けても残るものは多くなく、むしろ失うものの方が大きいです。健康を壊すこと、お金を失うことなど、我慢して働き続けることのリスクはとても大きいでしょう。

 

買い取りなどのペナルティがあまりにも大きい場合、辞めるという勇気ある決断を下すことも大切です。

 

まとめ

売れ残り商品の買い取りを命じられても、従う必要はありません。違法な命令を我慢して受け入れることなく、勇気をもって行動に移していきましょう。

この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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