判決が確定するまで黙秘を続けるのはアリ?黙秘権が行使できる範囲は?
刑事事件を起こして逮捕されると、取調べや勾留などの刑事手続きが進められます。その際、被疑者・被告人には、陳述を拒むことができる権利である黙秘権の行使が認められています。
黙秘権は、憲法第38条や刑事訴訟法第311条などで認められている権利です。
部分的な質問について陳述を拒む一部黙秘と、すべての質問について陳述を拒む完全黙秘に分類されますが、今回は完全黙秘に焦点を当てて取り上げます。
この記事では、逮捕されてから判決が確定するまで黙秘を続けることはできるのか、また、黙秘権が行使できる範囲はどこまでなのか、などについて解説します。
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判決が確定するまで黙秘を続けることは可能?
黙秘権は憲法で保障されている権利であるため、逮捕されてから判決が確定するまで黙秘を続けることは可能です。しかし実際のところは、取調べでは黙秘で通しても、裁判まで黙秘を続けるようなケースはあまりないようです。
実際に、逮捕されてから判決が下されるまで黙秘を貫き続けたケースとして、以下の事例をご紹介します。
<判例> 2009年に東京都にて、被告人が金品の強奪を目的に被害者宅へ侵入。室内にいた被害者を殺害するなどして、強盗殺人などの容疑で逮捕された事件です。逮捕されてから一貫して完全黙秘を続ける被告人について、弁護側は『黙秘権は憲法で認められた権利』と発言。一審では死刑が求刑されるも、最高裁では「被告人の前科を重視しすぎた」として破棄し、被告人に対して無期懲役の判決を下しました。
参考元:2015年2月最高裁での判決|文献番号2015WLJPCA02039001 |
黙秘権を行使できる範囲はどこまで?
黙秘権について、憲法では、『何人も、自己に不利益な供述を強要されない』と定義しています(憲法第38条)。
黙秘権はあらゆる事項に行使できるのかという点については、判断が難しいところでもあります。過去に最高裁では、『黙秘権は、刑事責任が問われる可能性のある事項にのみ行使でき、氏名などは対象外』との判断が下されています。
(参考元:1957年最高裁の判決|文献番号1957WLJPCA02200009)
しかし、中には氏名すらも黙秘し続けた、というケースもあるようで、結果的にその被告人は氏名不詳のまま留置番号で呼ばれ、そのまま裁判にかけられたとのことです。
黙秘するのは有利?不利?
黙秘することで、不利になるような発言をしなくてすむ、強引な取調べによる自白の強要を回避できる、などが考えられます。また一方で、罪を認めて自白した場合と比べると、量刑で相対的に不利益に扱われる可能性はあります。
被疑者・被告人にとって、黙秘権の行使がどのようにはたらくか、というのはケースによって異なるでしょう。ただし前提として、黙秘権は憲法で保障される権利であるため、黙秘したことで判決が絶対的に重くなるということはありません。
まとめ
黙秘権は被疑者・被告人に認められている権利ですが、むやみに行使してしまうと、プラスにはたらかないことも考えられます。『ただ話したくないから黙秘する』のではなく、しっかり戦略を立てた方がベターといえるでしょう。
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