先生が生徒の私物を没収するのって法律的に大丈夫なの!?

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公開日:2018.7.15
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先生が生徒の私物を没収するのって法律的に大丈夫なの!?

学校ではよく、先生が生徒の携帯電話を没収することもありますよね。『教育上よくない』という理由から没収をするのだと思いますが、生徒の私物を没収することは、法律的に許されるのでしょうか?

 

私物の没収を強制することは、いくら先生だとはいえ許される行為なのでしょうか?

 

この記事で解説していきます。

 

学校教育法の定める懲戒

学校教育法11条は、学校の生徒に対する懲戒について以下のように定めています。

 

校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。

引用元:学校教育法第11条

 

これを受けて、学校教育法施行規則26条は以下のように規定しています。

 

第二十六条 校長及び教員が児童等に懲戒を加えるに当つては、児童等の心身の発達に応ずる等教育上必要な配慮をしなければならない。

引用元:学校教育法施行規則第26条

 

こちらの条文からもわかるように、学校による懲戒は『教育上必要があると認められるとき』に限り許容され、かつその場合も『教育上必要な配慮』が要求されます。

 

したがって、学生の私物が学校のルールに違反する場合、これを没収する行為は、『教育上必要』と認められる範囲に限り『懲戒』として許容される余地はあります。しかし、これを超えて行うことは違法な『懲戒』として許されないということになります。

 

例えば、学生が学校に持ってきた携帯電話や携帯ゲーム機について、これを持ってくることが校則等で禁止されていたとします。かつ、それを授業中に使用するなど、教育の支障となるような場合は『懲戒』として、携帯電話やゲーム機を授業時間中は教師が預かるということは、許されるでしょう。

 

しかし、これを超えて学生の携帯電話やゲーム機を没収したり、廃棄する行為や通信契約を強制的に解約させたりする行為は、明らかに『教育上必要』な範囲を超えているでしょう。このよう場合は『懲戒』としても許されないということになりそうです。

 

一方、たばこやお酒などの禁制品やスタンガン、催涙スプレーなどの凶器は、学生が持っていること自体が教育上の害悪となります。したがって、学校側が没収したり、廃棄したりすることは許されると思われます。

 

しかし、その場合でも、学生側の所有権を侵害することになりますので、学生に所有権放棄の確認を取ってから当該措置を講ずる必要はあるでしょう。仮に学生が所有権を放棄しない場合は、両親に連絡して所有権放棄の処理を行うことになります。

 

なお、学生が麻薬を所持していたり、ナイフを所持していたりするような場合は、刑法犯であるため、学校側としては警察に相談することになろうかと思われます。

 

まとめ

携帯電話や携帯ゲーム機について、学内に持ち込むことを禁止している学校は多いです。授業の妨げになることや、教育上不適切であるという理由から、このような規則が設けられているのでしょう。ルールとされている以上、それを守らなければならないことは当然です。

 

しかし、東日本大震災をきっかけに、身の安全に対する意識が高まったことから、子供にも携帯電話を常備させておきたいという家庭も増えてきています。いつ何が起こっても不思議ではない時代ですし、その際に子供と連絡が取れないのは、親御さんにとってすごく心配なことでしょう。

 

学生の多くが携帯電話を所有する時代ですから、時代の変化とともに、教育と携帯電話の関係性を今一度考えてみるべきなのかもしれませんね。

この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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