非行を繰り返した自らの幼小期から学生時代までの経験から、類似する境遇の人たちとの対話を求め検事を志し、そして今は、事後的な処罰ではなく、犯罪を犯した者の再犯を未然に防止する「更生支援」に時間を費やしたく、転職しました。…
犯罪を犯してしまった方にとって必要なのは、不起訴になることや、減刑だけでしょうか? その場で反省を示して情状酌量を得ても、再犯を犯してしまったらなんの意味もありません。
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- 暴力団組織に使われ、覚せい剤の密売をしていた事例
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相談前
依頼者は、恋人が暴力団組織に使われ、覚せい剤の密売をし、逮捕されたという方でした。今後、暴力団組織ときっぱり縁を切り、更生してほしいと相談にいらっしゃいました。逮捕された本人も、しっかり更生したいと強い意向を示していました。しかし、話をしてみると、「他に仕事がなかった」「周りも悪い」など終始言い訳をしている状況でした。
相談後
あえて、喧嘩をし、恋人からフォローをいれてもらうなどの、依頼者と役割分担をして更生支援活動に着手。更生に必要なことが書かれた書籍の差し入れ、家族・恋人との面会・文通 を根気強く続けました。
また、私自身が更生をした経験などを話し、同じ目線で話すように心がけ、信頼関係を築くことができました。
前科があっても取得である行政書士試験を目指すべく、恋人とともに勉強を開始。面会では、今後の人生プランや勉強方法についても話しました。
すると徐々に、今回の事件は自分が招いた結果であり、それを反省、自分自身が変わっていくという考えにシフトしました。裁判でそのことを恋人が話し、結果として大幅な減刑が成立いたしました。
- 性犯罪の被害者との示談交渉と、更生支援活動
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相談前
性犯罪を何度にも渡り犯した方の弁護活動。更生を強く願うご家族からの相談でした。アダルト動画に見入ってしまい、通りすがりの女性に性犯罪を繰り返していました。この裁判は、裁判員裁判対象の事件。加害者の更生支援活動に重点を置く弁護活動が必要とされました。
相談後
被害者が多数いたため、一人ひとりとの示談交渉のほか、性犯罪の根本的な原因である依存症の治療・更生に力を入れる必要がありました。
自身の罪の大きさ、自身の行為が被害者にどれだけの影響を与えたかを自覚してもらことが重要なため、まずは依存症の治療が最優先。専門医との治療計画を立て、更生活動に注力ししました。
更生の道筋があると被害者家族にお話しすることもでき、ご理解いただけたご家族とは示談が成立。加えて、医師の視点での原因と再発防止策、本人の更生のための取り組みなど裁判所に示し、結果として求刑の6割まで刑が減刑されました。
- 交通事故における犯罪被害者支援活動
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相談前
弁護士は、加害者側の支援だけでなく、被害者側の支援にも従事しています。
横断歩道上を歩行中に轢き逃げされ、脳がぐちゃぐちゃに変形し、全身至る所を骨折する瀕死の重傷を負い、奇跡的に徐々に回復を遂げていった被害者の支援を検察庁から支援依頼されて受任。
刑事裁判での被害者参加活動の支援と、民事手続での損害賠償請求を合わせてしていくこととなった。
加害者は、轢いた認識を一貫して否認していた。
相談後
被害者は、懸命なリハビリにより、身体的に目立った大きな後遺症は残らなかったものの、すぐに苛立つ、同時並行で作業ができない、話がくどくなり終わらない、疲れやすく突然眠りに陥る、という、明らかに高次脳機能障害と思われる症状が見られた。
そのため、数名の高次脳機能障害の専門医を受診して所要の検査を実施したが、いずれも、その可能性の指摘に留まり、後遺障害等級としては14級程度しか得られないことが予想される診断書の取得しかできなかった。
このような経過の中、刑事裁判では被害者参加が行われ、ご本人が聞きたいこと、知りたい真実について何度もリハーサルを得た上で、ご本人自らの質問を実施し、一定の成果を遂げた。
裁判結果は、否認したまま、有罪の実刑判決が下された。
その後、高次脳機能障害の権威の医師の診察を受け、ようやく、詳細な意見書の入手に至り、14級の障害等級認定が予想された当初から状況が全く異なり、6級の障害等級認定を得ることが出来、保険会社と交渉の結果、当初予想された300万円の賠償金から大幅に増額され、約6500万円超の賠償金を得ることが出来た。
弁護士からのコメント
犯罪被害に遭われた場合、民事手続きと刑事手続とは表裏一体のお互いに影響し合う関係に立ちますので、両方を熟知した弁護士にご相談されることをお勧めします。
高次脳機能障害等の後遺症認定に当たっては、正しい専門医の丁寧な意見書、日常生活に関する丁寧な弁護士の聞き取り、画像等の客観証拠の収集、これらの作業がとても重要になってきます。
見落としの多い分野ですので、是非、正しい知識をもった専門家にご相談ください。
- 援助交際、児童買春による自首事案
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相談前
20歳であるとの掲示板の説明を信じ、その掲示板を通じて合う約束をした女性と一緒にホテルに入り、1万円を支払って、肉体関係を持った。
ただ、その時の女性の言動が、どうも高校生っぽい気がして後で不安になり、ネットでいろいろと調べたところ、後で女性が別の件で警察に補導されて18歳未満の未成年だったことが判明するなどした場合には、携帯電話の履歴を解析され、児童買春あるいは条例違反で突然逮捕されて新聞報道されてしまう可能性があることを知りました。
怖くて眠れなくなり、いつも警察に付けられているような気がして普通の生活を送ることもできず、自首した方が良いのかどうか、相談したいという事案。
相談後
当職から、
①逮捕された場合には原則報道発表がなされる可能性が高く、逮捕されずに在宅事件扱いとなる場合にはその可能性は低いこと、
②自首した場合には、逮捕されない可能性が高いが、自首しない場合には、逮捕の可能性は半々であること、
③18歳未満でなかった場合には、逮捕も処罰もされないが、18歳未満だった場合には、「18歳未満だと分かっていた場合」あるいは「18歳未満かもしれないと思いながらそれでも構わないと思っていた場合」には、児童買春で逮捕・処罰される可能性があること、
「18歳未満だとは全く思っていなかった」等の場合で、年齢に関する説明文の客観証拠からそう信じたとしてもやむを得ない状況が認められる場合には、児童買春で逮捕・処罰される可能性は低いこと、
ただ、理屈上、条例違反で逮捕・処罰される可能性は残るも、実務上、年齢認識のない金銭交付のこのようなケースにおいては、児童買春が成り立たないから条例違反で処罰するという運用はなされていないことが多いようである、
との説明をした結果、とにかく、逮捕による報道のリスクだけは絶対に避けたく、そのことを最優先にしたい、との相談者の判断となり、私も同行して、警察に自首をしました。
結局、確かに女性は18歳未満ではあったものの、20歳であるとの虚偽説明をしている証拠があり、自首をした誠意と、18歳未満だとは全く思わなかったという話にも信憑性があるとの判断から、逮捕もされず、処罰も一切されなかった。
弁護士からのコメント
自首をした方が良いのか、しなくても良いのか、悩ましい場面があります。
そのような悩みは、まっとうな悩みであり、みなさんの誠実さを表すものでもあります。
自首をした結果、あるいは、自首をしないでいる間に逮捕や立件がなされてしまった場合にも、被害女性と誠実に示談交渉して示談することができれば、その事情を一定程度酌んでもらい、罰金刑を軽くしてもらうことができますし、事情によっては、不起訴となる場合もあります。
示談も何もしないと、児童買春の場合には、被害者一人の場合には、概ね罰金100万円が相場になっているようです。
但し、示談をすると、示談金にもよりますが、50~70万円程度に減額されることが多いようです。
示談をしたからといって、直ちに不起訴にするという運用は採られていないようですが、事情によっては、その可能性もありますので、示談以外にも、性依存の専門医を受診しての治療や性犯罪被害者のお気持ちの理解に努める学習をしたり、職場環境や家族環境を整えるなどの情状を整えるなどして、再犯の可能性が無く、反省の態度が大きいと判断される場合には、不起訴になる可能性もゼロではありません(但し、ハードルはかなぎ厳しいのが現実ではあります)。
ネットで様々な情報が反映していますが、正確性を欠く情報も多く、あくまでケースバイケースで異なりますので、詳しくは、直接ご相談いただければと思います。
- 同種前科ある者が大麻取締法・覚せい剤取締法違反により逮捕・起訴されたが、保釈の上、入院して専門医の下で依存症治療を受け、全部執行猶予となった事案
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相談前
国選弁護人が当初就いていましたが、再犯防止を願う家族及び職場雇用主が私を探してくれ、相談を受け、薬物犯罪は、「わかっちゃいるけどやめられない」、依存の極めて根強い犯罪で、確実に繰り返されることを正しく理解した上で、「条件反射制御法」による依存症治療の専門医の治療を受けて、依存症からの脱却を目指すことが何よりも重要であることを説明し、弁護人に就任しました。
相談後
上記の必要性を裁判所に具体的に丁寧に説明をして理解を得て、保釈を認めてもらい、保釈後直ちに札幌の専門病院に通院してもらいながら、道外の依存症治療の専門病院での入院の空きを待ち、空いた段階で入院してもらって入院治療を施し、病院からの外出許可を得て裁判を受けました。
裁判では、その治療内容と効果をご本人から説得的に説明してもらい、裁判官も検察官も、聞きなれないお話が多かったのか、メモをかなり取っていたのが印象的でした。
結果は、反省の態度と治療の効果への期待から、同種前科がある事例としては異例の、全部執行猶予判決の一審判決が下されました。
弁護士からのコメント
薬物犯罪で10年以内に前科がある者が、再び薬物犯罪に手を染めた場合には、原則実刑判決という、厳しい実務運用があります。
薬物犯罪は、治らず、必ず繰り返されるという前提認識があるため、再度の執行猶予は極めて得られにくくなっているのです。
ただ、薬物に対する正しい知識を醸成して過去を振り返り、自身が薬物依存に陥っていることを正しく理解し、実効性の高い依存症専門治療を真摯に受けて、事後的にでも依存性・常習性を減退させることができ、また、今後一生涯続く治療への家族や職場の深い理解と愛情に基づく支援が得られる環境調整ができた場合には、裁判官の理解を得られることもあります。
ただ、勘違いしていただきたくないのは、刑務所に行きたくないから、治療を受けてやったふりをする。
このような態度では、簡単に裁判所に見透かされ、相手にはされないという点です。
私のところでは、本気で薬物依存から立ち直り、更生を実現したいという強烈な真剣な思いと、それを実現する行動力、そして、家族や職場の支援と深い理解が得られるかを重視しており、その場合には、全力で更生のためのサポートをさせていただいております。
罪を免れるため、刑を軽くするためだけの、更生意欲を伴わないご依頼は、本気にはなれませんので、お断りをさせていただいております。
「嘘を決してつかない。」、これが、更生支援の最初の約束事となります。
そうでないと、更生等、絶対にあり得ません。嘘を並べて、次は見つからないように世渡り上手に自己保身をしていけば良いだけのことですので、支援は不要だと思うからです。
他人の人生を否定するつもりも口出しするつもりも全くありませんが、「更生」とは、全く次元の異なる話となってしまうので、そのような方に、時間を削って本気で支援することはできないということになります。
本気で更生を願う場合には、是非、ご相談ください。
- 危険運転致傷罪での裁判員裁判
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相談前
飲酒の上、高速道路を高速度で運転し、ハンドルの制御が効かずに同一方向に進行中の自動車に追突し、乗車中の数名を路外に転倒させ、後遺障害を残す重傷を負わせるなどした、危険運転致傷罪の事案。捜査段階では、一部の事実を否定するなどして反省の態度が不十分で、捜査関係者や当職にも相当な悪態をつき、家族との関係も悪化するなどしたが、当職との接見を重ね、心を通わせていった結果、事件に向き合うようになっていった。
相談後
やんちゃいっぱいな方で、捜査段階で撮影された各写真の態度や容姿にもなかなかのものがありましたが、複雑な人間関係や自身の生い立ちから、孤独と疎外感が見え隠れする方でしたが、綺麗な心を持っていることを、当初から感じていました。
その孤独の正体に迫ったときに、「何で弁護士がここまで人の心にずかずか入ってくるんだよ」と怒鳴り散らしてきました。
私は、「お前と友達になりたいからだよ」と怒鳴り返し、「そんなわけねえだろ、てめえに何が分かるんだよ」と言っていましたが、この本気のやりとりで、それまでの距離感ある会話から、距離感がぐっと近づきました。
これからでした。彼は、どんどん、心を私に開いてくれ、それまでは、自分を良く見せようと本音で語ってくれていなかった部分についても、自分の汚い部分を見せて本心を少しずつ出してくれるようになっていったのです。
そして、徐々に、被害者の想いや立場に思いを致せるようになり、思いやりの言葉が出てくるようにもなりました。
そして、自分自身、それまでは確たる夢や覚悟がなかったように見受けられましたが、将来の夢を共に語るようになり、その結果、「出所したら、ケバブ屋をやりたいです」。こうはっきり言うようになり、そのための勉強を中で始めることになりました。
家族にも、あれこれそのための書籍や情報の入手を依頼するなどして、将来への計画と実行が、収監されたその中で始まったのです。
合わせて、交通被害者の境遇や後遺症の内容を理解するための書籍などもたくさん読み、自分の犯した罪と向き合うようになりました。
裁判では、捜査段階とは全く別人ではないかと思うほど、情に満ちた、人間としての態度と謝罪を行うことができ、検事も、「どうしてこんなに変わったのか」と驚いておりました。
判決は、実刑判決ではありましたが、当初予想された刑よりも、大分減刑されたように感じました(裏話ではありますが、裁判の態度を見た検事が求刑を下げたようでして、ただ逆に、求刑が低かったので、さすがにあまりそれ以上大きく判決での刑が下がることまではなかったです)。
そして、裁判官が、「あなたは、弁護人に会えて、本当に運が良かったです。ここまでやってくれる人は、まずいません。しっかり、更生の道を歩んで下さい。」という趣旨のことを、かなり異例だとは思いますが、言ってくれました。
弁護士からのコメント
出所後、彼からは連絡があり、お酒を共に交わしました。
絶対に再犯はやりたくないと口にし、やりたい仕事の相談を現在も諸々と受け、できる範囲での支援をさせていただいております。
弁護士冥利に尽きます。本気で向き合ってくれる友達や家族がいなかった環境、不運から、更生への舵切りのタイミングが遅かったという、典型事例だと思います。
悪いことを、利害打算なくやってしまう人は、実は、利害打算で自己保身で生きている犯罪歴のない人間よりも、よっぽど人間らしく、優しく、人との信頼関係・友情を大切にするということは、よく聞く話です。
だから、私は、問題がある、どこかが欠けている、と言われてしまう、いわゆる悪い奴、が好きです。
人間らしい、素直で嘘のない、心が綺麗な人だと思うからです。
嫌いだと、本気で弁護はできないんですね。というよりも、自分自身が、どうしようもない人間だったので、自分自身が最低の人間だとしか思っていないことから、誰かを卑下して見るという発想がなく、卑下して見られる目線に怯える感覚を誰よりも理解しているので、ただ普通に接しているだけです。
普通でない扱いをされること自体が、誤りであって、あとは、きっかけを与えるだけです。
自分が何か偉い、あるいは正しいと勘違いしての、上から目線の更生の押しつけは、私たちのような者への心には、何も響きません。
偉いって何?普通・正しいって何?という発想しか持ち合わせておらず、そこの勘違いを敏感に感じ取ります。
更生へのきっかけをつかめないでいる場合には、是非、ご相談ください。人は必ず変われるとの信念の下、一緒にそれを模索していきます。
- 盗撮による不起訴事例
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相談前
女性のスカート内をスマホで盗撮したところを私服警察官に現認され、その場で現行犯逮捕された。その後、釈放されて在宅捜査に切り替わったが、スマホを押収され、その中には100人を超える女性のスカートの中の写真があり、余罪多数で罪が重くならないかを心配してのご相談。
相談後
盗撮の場合は、前科前歴がなく、被害者との示談ができなければ、30万円前後の罰金刑に処せられるが通常です。
被害者との示談ができれば、罰金額を減額、あるいは不起訴処分の可能性がありますので、示談だけではなく、職の確保、依存症治療、家族と本人の盗撮の根深さへの理解と再発防止への取り組み体制の構築、被害者心理の理解等の情状弁護を尽くしておく必要があります。
被害者が増えて立件される数が増えるほど、罪は重くなりますが、盗撮の場合には、写真に被害者の顔が収められていないことが多く、その場合には、被害者の特定が難しいので、余罪立件されないことも多いです。
弁護士からのコメント
盗撮は、他の性犯罪に比べても、依存性・常習性がより顕著な犯罪類型であると言えます。
言葉は悪いですが、やろうと思えば、見つからずに手軽にできてしまうという想いから、多数回繰り返されてしまっているのが通常で、抑止力のハードルが低いからです。
ですので、決して軽視することなく、既に依存に陥っていて、またほとぼりが冷めて時間が経過してしまったら繰り返される可能性が高いという危機意識を持ち、依存症になっていないかどうかを適切に見極め、必要があれば、専門医の治療を受けながら、再発予防のための措置を徹底して講じておくことがとても大切です。
- クレプトマニア(盗癖)で窃盗を繰り返し、前科約20犯にもなる高齢者の弁護
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相談前
薬局で日用品を万引きしたが、万引きを過去に繰り返し、窃盗や常習累犯窃盗ばかりで前科約20犯を有しており、刑務所への入所と出所を繰り返している。
何故盗んだのか? との問いに対しては、「盗んじゃいけない、いけない、と思いつつ、気付いたら手に取ってしまっていた」というので、「盗むとき、ドキドキしたか?」、「成功したら、どこかすかっとしたところはあったか?」との問いに対しては、いずれも否定をしなかった。
相談後
大してほしいわけでもないのに、悪いことだと分かっているのに、やってしまう。
ドキドキ感、スリル感、そして達成感をどこかで感じてしまっているこのやりとりは、依存症の典型例の一つでもあります。
わかっちゃいるけどやめられない依存症に陥っている可能性を指摘したところ、涙を流しながら、今まで誰からもこの話を聞いたことがなかったとのことで、「もう辞めたい」「私、治るんですか?」と仰るので、「治る可能性はありますので、一緒に治療に取り組みましょう」と伝え、依存症治療の医療機関を紹介した。
弁護士からのコメント
窃盗をした場合には、当然ながら、被害弁償をして、できれば示談をする。
被害回復が、情状として重要なことは、言うまでもありません。
ただ、窃盗、特に軽微な万引きを何度も繰り返し、逮捕されても、刑務所に行っても治らない、という方については、盗癖(クレプトマニア)という依存症に陥っていて、「わかっちゃいるけど辞められない」状態に陥っている可能性をまず疑う必要があります。
摂食障害を伴う方も多いです。この場合には、いくら刑務所に行って刑罰によって威嚇をしたところで、1人で買い物に出てしまえば、確実に繰り返します。
買い物に一人で行かせるのを辞めさせなければなりませんし、専門治療を受けさせて、盗癖、依存症を治療しなければなりません。
たった一度だし・・、などと軽く考えることは決してせず、一度捕まったということは、ご本人がどんなに否定していようが、何十回も繰り返していることは、スピード違反で捕まるケースを思い起こせば明白です。
繰り返してやっていることを否定しているうちは、依存を認めていないので、確実に繰り返します。是非ご相談ください。
- 2000万円を超える高額の業務上横領事件で執行猶予判決を得られた事例
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相談前
福祉施設の事務長をされていた方が、数年間の間に2000万円を超える金額を着服横領し、警察に刑事告訴されたとの相談を受け、弁護人に就任した。
相談後
被害会社に丁寧に謝罪をし、一括で返済できるお金がなかったことから、親族らからの借入金を集め、換金できるものは全て換金して500万円を集めたほか、仕事をした稼ぎを毎月返済用に積み立てていたが、途中で逮捕され、起訴された。
弁護士からのコメント
被害会社との間で示談を成立させて示談書を交わしたほか、その示談に強制力を持たせるため、刑事裁判所で和解調書を作ってくれる、「刑事和解」の制度を利用し、また、新たな職場の確保と家庭環境の調整を図り、自分のやったことを見つめ直すことができる種々の教育を施して、罪の重大さを認識して再犯防止に努めていく説得的な話を用意した上で、このような多額の被害では異例の、執行猶予判決を受けることがてきました。
やったことは元には戻りませんが、会社が、刑務所に行かれるよりも、少しでも働いて返済をしてもらいたいと言ってくるように、誠実に被害弁償に努め、早期の示談を交わすことがとても重要です。ギャンブルなど、浪費が犯行の背景にあるような場合には、依存症治療も合わせて実施することで、返済の実効性を高める必要があります。
- 特別法違反(暴力行為等処罰に関する法律違反、銃刀法違反)での不起訴事例
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相談前
自動車内に護身用にナイフを所持していたところ、交通トラブルとなった相手にナイフをちらつかせて脅し、現行犯逮捕された。
相談後
被害者と速やかに示談をしたため、勾留はされずに在宅捜査となったが、検察官からは、示談をしたとしても、特別法犯の場合には不起訴処分とはせず、罰金刑に処する運用があるとの話があった。
ただ、会社代表者であり、前科が付くと、取引停止等の多大な損害が予想されるため、100万円の高額贖罪寄付を行い、また、環境調整、本人の反省の念を強める種々の状況を整え、検察官に丁寧に説明して理解を求めた結果、上司を説得してくれて不起訴処分となった。
弁護士からのコメント
密猟や貸金業法違反、不法投棄等々の、刑法以外の特別法違反では、淡々と罰金刑に処せられることが多いですが、諦めずに、あらゆる手段を講じて情状を整え、ここまでやったのならば、例外的に許してあげようとの判断に至った事例の一つです。
ハードルが高くても、諦めず、あらゆる引出を使って工夫することが大切であることを痛感する事例でした。
- 現住建造物放火の裁判員裁判事件での弁護活動
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相談前
交際相手の男性が寝ていた自宅に侵入して放火をしたとして逮捕勾留された事案。
国選弁護人が就き、放火をしたという記憶がないとのご本人の話のため、他に犯人はいるはずとの主張を貫いたが、起訴された。
ご本人曰く、国選弁護士から、否認していれば起訴はされないから頑張れと言われ続けたので否定していたが、起訴されてしまい、不安になったので家族を通じて相談があった。
相談後
ご本人はアルコール依存症であり、ブラックアウトという、脳に記憶が定着しない症状故に覚えていないという可能性もあることから、まずは、被害者に弁護士で面会をして被害者が嘘を付く動機があるかどうかを可能な限り調べて、今後の方針を再検討することになった。
その結果、被害者の話の信憑性は高く、ご本人が懸念していた被害者が嘘をつく動機も見当たらなかったことから、自白に転じた。
その上で、医療機関への通院によるアルコール治療と、その状況を踏まえて成立させた示談などの情状立証に努め、当初の想定よりも求刑と判決での刑も下がった。
中村 浩士弁護士からのコメント
否認をした場合、その否認通りの判決を獲得できなければ、反省の態度がない、あるいは、示談の機会も逃して、結局は本人の不利益になってしまうことが、往々にしてあります。
否認事件は、リスク管理の最たる場面です。
上記の案件も、後の裁判所の裏話としては、あのまま否認していても無罪にはならないとの心証であったとのことで、早期に切り替え、情状立証ができたことは、本人の利益に繋がったと言えます。
被害者や、近隣住人への賠償と示談は、刑を下げる上でとても重要です。
証拠関係を適切に見極め、正しい知識をもって、戦略を立てることがとても重要です。
- 北海道青少年健全育成条例違反での示談交渉を行った事例
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相談前
SNSで知り合った高校生の女性と関係を持ってしまい、警察から呼び出しを受けた事案。
お金の支払いはなく、前科・前歴もない。
ただ、過去にも同様のことをしたことがある。 マスコミに知られたくないとの強い希望あり。
相談後
弁護人として就任し、警察を通じて被害者の連絡先を聞き出し、被害者の両親とお会いして交渉の末、金20万円で示談が成立。
マスコミに知られることなく、在宅捜査で終了し、不起訴処分となった。
依存症治療の医療機関にも繋ぎ、再犯防止に努めた。
中村 浩士弁護士からのコメント
初犯の場合、金銭の支払いのない条例違反は罰金3~50万円程度、金銭の支払いのある児童買春事案は7~100万円程度となります。
条例違反の場合は、示談が成立すれば不起訴、児童買春の場合には示談が成立しても罰金の減額がなされるだけで、不起訴とはならないのが通例です。
逮捕されてしまうと、マスコミ報道のリスクが高まりますが、在宅捜査の場合には、一定の職業の方を除き、通常はマスコミ報道まではされないことがほとんどです。
刑罰のことも大切ですが、何よりも、このような犯罪は、ご本人の覚悟があっても、繰り返される、「分かっちゃいるけど辞められない」依存に陥っていることが多いです。
専門医の治療をきちんと受けて依存症を根底から直すことが重要です。
- 酒に酔って喧嘩して怪我を負わせた傷害・暴行事案
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相談前
酒に酔っぱらって、すすきのの路上で通行人に絡み、殴って加療約2週間の怪我を負わせてしまい、現行犯逮捕された。
勾留されずに2日で釈放されたが、これからどうしたら良いかとのご相談。
相談後
在宅のまま警察・検察庁から呼び出しを受け、捜査が続きました。 弁護人として就任し、警察を通じて被害者の情報を教えていただいて被害者とお会いしました。
謝罪と賠償額の提示、再犯防止策をお伝えすることで、今回に限りとのお許しをいただき、金30万円での示談成立となり、不起訴処分となりました。
中村 浩士弁護士からのコメント
示談が成立しなかった場合には、通常は30万円程度の罰金刑に処せられ、罰金前科として前科が残ることになります。
速やかな示談交渉が必要です。
あとは、この方の場合には、そこまで重度ではありませんでしたが、酒への依存、酔って暴力的になる行動を辞められない方については、依存症の存在を疑い、仮にそうだとすれば、適切な医療機関でカウンセリングや治療を受けることを検討すべきことになります。
- 住居侵入罪で逮捕された方のご家族からのご相談
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相談前
住居侵入で夫が逮捕された奥さまからのご相談です。
警察から詳しいことは教えてもらえず、夫が何をしたのかを知り、被害者がいるのであればきちんと謝罪をしたい。
きちんと罪と向き合ってもらって、家族のために立ち直ってほしいとのご相談でした。
相談後
弁護人として就任して即日警察に接見に行きました。
職場の同僚の女性方への侵入で、下着や生活用品を見て、どんな生活をしているのかを知りかったとの動機でした。
警察を通じて被害女性と連絡を取り、丁寧に謝罪をして今後二度と接触しないことなどを確約の上、示談金を支払って示談を成立させました。
その結果、不起訴となりました。
中村 浩士弁護士からのコメント
住居侵入罪の場合、初犯であれば、通常は罰金刑となることが多いです。
ただ、侵入の目的や態様によって、例えば強制性交目的で侵入したが被害女性がいなかったので実行できなかったなどという場合には、強制性交自体は遂行していなくても、起訴される可能性があります。
目的についてどう供述するかが重要ですので、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。
示談交渉にも、繊細な工夫が必要となります。
- 強盗殺人事件の被害者遺族からのご相談
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相談前
路上で買い物帰りの母親が刺殺されて財布を奪われた事案のご家族からのご相談。
最初は、家族が犯人として疑われ、連日の取調べで疲弊し、ネットでも中傷を受け、マスコミにも追い掛け回されている。
その後、真犯人が逮捕されたが、警察からは、その後の捜査情報も教えてもらえないが、今後どうしたらよいのかと路頭に迷われてのご相談でした。
相談後
警察がまず身内を疑うのはやむを得ないことなのですが、被害者ご遺族であるのに、本当にお気の毒な状況でした。
被害者遺族の支援弁護士として就任し、マスコミに対し、被害者感情に留意して取材を自粛するようお願いをしました。
現場確認をして喧嘩し、死後の各手続や、刑事手続の流れ、損害賠償請求の方法などについて説明の上、逐一検察庁と連絡を取りながら、情報を被害者ご遺族に伝達。
裁判員裁判に被害者ご遺族と共に出廷し、被害者参加して、被害者ご遺族自ら被告人に質問するお手伝いもさせていただきました。
その後、損害賠償命令も得て、犯罪被害者給付金の支給も受けました。
中村 浩士弁護士からのコメント
ある日突然、犯罪被害は目の前に訪れます。
その犯罪被害者やご遺族を、トータル支援できる仕組みがまだまだ不十分です。
お困りの際には、犯罪被害者支援に精通している弁護士に是非ご相談ください。
上記被害者ご遺族とは、毎日のように数百件ののぼるメールのやりとりを重ね、ご不安の解消に努めました。
事案の終了後しばらくしてから、ご結婚のご報告をいただき、くしゃくしゃになった紙のしわが一つ一つほどけていく(絶対に元に戻ることのない傷跡を被害者ご遺族に永久に残すことになります)過程を少しでも見守ることができ、安堵した瞬間でした。
- ストーカー被害者からの相談事案
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相談前
元交際相手から執拗に復縁を迫られており、仮装の結婚式DVDを投函されたり、帰り際を捕まえられて「殺す」と脅迫されたという女性の雇用主からのご相談。
相談後
「殺す」という言葉は、法の障壁、ハードルを既に乗り越えてしまっており、抑えが効かなくなっている証拠でもありますので、早急に、警察との連携による対応が必要です。
まずは、自宅に帰らずに近隣のマンスリーマンションなどに避難してもらい、警察に相談して被害届を受理してもらい、逮捕・勾留となりました。
その間、自宅及び職場に監視カメラを設置し、勾留先の被疑者に手紙を書いて、依存症の専門治療機関に通ってほしいとの働き掛けをしました。
被疑者に就いた刑事弁護人と協力して、釈放後は専門機関に通うこと、医療照会にも同意することを条件に示談を成立させました。
釈放後、自宅や職場に被疑者が来ていないことをしばらくの間確認し、徐々に警戒を緩めて日常生活に戻っていただき、半年間は監視体制を続けました。
中村 浩士弁護士からのコメント
北海道警では、ストーカー犯罪などで依存症が認められ、再犯の危険が高い人を、ほっとステーションという依存症の専門治療機関へ繋ぐことで再犯防止、再被害防止に努めています。
当事務所では、日ごろから同医療機関と密に連携させていただき、多大なるご尽力をいただいております。
ストーカー犯罪は、刑事弁護人としても、被害者支援弁護士としても、依存症治療の専門医療機関との連携が必要不可欠です。
治療無くして再犯防止、再被害の防止はあり得ないからです。
- 器物損壊罪における刑事弁護活動
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相談前
酒に酔って居酒屋の立て看板を蹴飛ばし壊してしまった事案。
相談後
被害届提出前に速やかに示談交渉をして示談を成立させ、刑事事件としての立件を阻止。
中村 浩士弁護士からのコメント
警察に被害届を出されて立件されてからだと、こちらは罰金刑という前科を負うリスクを抱える中での交渉となります。
その場合、最悪、被害者の言い値をそのまま支払わないと示談にならず、罰金刑となる可能性が高いので、立件される前にいち早く、示談を成立させることがとても重要です。
- SNSでの名誉棄損事案における弁護活動
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相談前
SNSに相手方を誹謗中傷するコメントを入れてしまい、相手方に就いた弁護士から損害賠償請求を受けており、支払いがなされなければ刑事告訴すると言われているとのことで相談があった。
相談後
弁護士費用を含む解決金を支払って和解を成立させ、刑事告訴はなされないことになった。
中村 浩士弁護士からのコメント
弁護士は、SNSの投稿者を特定するための仮処分手続を採ることができ、そのようにして情報を特定され、損害賠償請求を受けた方からのご相談でした。
このような手続で発信者を特定された以上は、その投稿内容が名誉棄損に当たる場合には、刑事告訴されてしまったら、初犯でも罰金刑を受ける可能性があります。
但し、速やかに和解を成立させることができれば、刑事事件化を阻止できますし(警察は、この種の案件はなかなかやりたがらない傾向が強いです)、事件化された後も不起訴処分となる可能性が高いので、和解・示談交渉は必須の犯罪類型です。
- 公然わいせつ・北海道迷惑行為防止条例違反における弁護活動
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相談前
スーパーの駐車場内に駐車中の車の中で性器を出した行為について公然わいせつ罪、地下鉄車内で女性の臀部を触った行為について北海道迷惑行為防止条例違反で被害届を提出されたという相談。
相談後
既に被害届が提出されてしまっており、弁護人に就任して、性器を見せられた被害者、臀部を触られた被害者の連絡先を聞いて示談交渉した。
また、性欲に基づく衝動行為を押さえられなくなっており、依存症治療をしていかないと再犯のおそれが高いとの判断から、医療機関へと繋いで通院してもらうことになった。
これらの情状弁護活動を踏まえ、今回に限り、不起訴処分となった。
中村 浩士弁護士からのコメント
通常は、初犯でも罰金刑に処せられることになる可能性が高い事案です。
示談の成立と、真摯な再犯防止活動が、不起訴処分を得るためには必須の活動となります。
見せかけだけの通院ではダメですので(そのような場合にはお繋ぎしません)、絶対に再犯を防止したいとの強い意欲が必要です。
- 【少年事件の付添人活動】~元少年係検事として~
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相談前
未成年の息子が、特殊詐欺で逮捕されてしまった。
これから、どのような対応を取ったら良いかとのお母さんからのご相談でした。
相談後
逮捕・勾留された後には、原則、検察庁から家裁送致され、鑑別所での鑑別結果をまとめた報告書及び調査官調査で本人及び親からの聴取がなされた上での調査報告書を踏まえ、家庭裁判所で少年審判が開かれ、結論が出るとの全体像をまず説明しました。
また、各被害者との示談交渉をして示談を成立させました。
そして、後述のとおり、ご本人及び家族ともども、犯罪の原因を徹底的に分析して再犯防止計画を検討して、犯罪に真剣に向き合いました。
その結果、保護観察処分となり、少年院送致を避けて、社会内で自力更生できることとなりました。
中村 浩士弁護士からのコメント
少年事件で何よりも大切なのは、少年に、犯罪に至った原因をきちんと考えさせて分析し、再犯防止の方策を立て、将来の設計図を今の段階から明確にして、同様に犯罪に陥ることがないよう、人生をその設計図の通りにコントロールしていくことを教え、理解させ、実行させることになります。
私は、検事時代に、自ら希望して少年係検事を経験し、たくさんの非行少年に接してきました。
自分が元々、非行を重ねた非行少年だったため、同じ目線で力になり、再出発のきっかけを作りたかったからです。
そういった目線で、共に再犯防止計画を立てて将来の夢を見付けて歩み出させることで、更生計画をスタートし、その過程を裁判所調査官に見てもらうことから、私の更生支援は始まります。
犯罪を抑止できなかったご家族にも、同様に、原因と対策を考えてもらいます。
少年事件での更生支援活動は、私の弁護士としての原点であり、真骨頂であると思っています。
裁判所は、本当に真剣に更生を考えているのかどうかを、よく見ています。
まやかしでやっていても、その演技はすぐに見破りますが、本気の姿勢には、裁判所も向き合ってくれると、私は経験から実感しています。
少年を構成させたいと思うご家族、少年ご本人からのご相談をお待ちしています。何らかのきかっけが作れれば、と思います。
弁護士・職員全員マスク着用、相談弁護士はフェイスシールドも着用、手洗い・うがいの徹底のほか、アルコール消毒による室内除菌、高性能空気清浄機によるウィルス除去の徹底に努めています。