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公開日:2018.3.22

映画『それでも僕はやってない』のストーリーと見どころ解説

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世に痴漢の冤罪を知らしめた映画『それでも僕はやってない』のストーリー

映画『それでも僕はやってない』は、突然、痴漢の濡れ衣を着せられた主人公が、無実を証明するために戦う法廷系の映画です。 就職活動中の主人公・金子は、企業の面接に向かう途中、電車内で痴漢と間違われてしまいます。 現行犯逮捕された金子は、警察署での取調べで無罪を主張しますが、担当の刑事は信じてくれず自白を迫ります。

 

金子はやってもいない罪を認めて示談で済ませる妥協案を蹴り、必死に濡れ衣を晴らそうとします。勾留され検察庁での取調べでも無実を認めてもらえずに起訴された金子には、荒川というベテランの弁護士がつくことに。荒川と新米弁護士の須藤は、主人公の母親や友人と共に無罪を勝ち取るために奔走します。

 

事件が起こった日、駅員に対して金子は犯人ではないと証言してくれた女性がいたので、必死に探すものの見つからないまま裁判がスタート。弁護士の荒川の鋭い追及によって、警察のずさんな捜査内容が明らかとなり、裁判は主人公側に有利に運ぶかと思われましたが、途中で公平な裁判をすることで有名だった裁判長が交代することになり先が分からなくなります。

 

刑事事件で起訴されてしまった場合、日本では有罪率が非常に高いです。99.9%と言われている有罪率を聞くと、驚く人もいます。雲行きが怪しくなってきたなか、目撃者の女性が見つかって裁判で証言してくれることに。

 

弁護側は、当時の現場状況をわかりやすく再現したビデオを作って提出します。再現ビデオは、主人公が犯行におよぶことは不可能だということを示す内容となっています。

 

荒川はできる限り主人公に有利な証拠を揃えて裁判を進め、とうとう判決が出される日をむかえます。 多数の傍聴人が固唾をのんで見守る中、判決が言い渡されます。

 

証明が難しい冤罪をどう訴えるのか?『それでも僕はやってない』の見どころ

痴漢の冤罪事件を題材にした映画『それでも僕はやってない』は、男女を問わず考えさせられる内容となっています。

 

映画にはさまざまなタイプの映画があります。笑って楽しめるコメディもあれば、シリアスなストーリーの映画もあります。映画『それでも僕はやってない』は、シリアス系のストーリーです。

 

この映画とストーリーと同じようなことは現実でも起きています。 痴漢は、冤罪だった場合でも証明が難しいです。その中で主人公や担当弁護士がどのように戦っていくのかが、この作品の大きな見どころです。

 

周防正行監督は、この映画で日本の刑事裁判の実態を克明に描いており、痴漢の裁判を通じて日本の弁護士や検事、裁判官の問題まで追及した力作となっています。

 

『それでも僕はやってない』は、実際にあった複数の事件をモデルにして作られた映画です。そのうちのひとつが、高田馬場の駅で会社員が痴漢と間違えられて裁判になった事件。この事件では、一審判決では有罪となりますが、控訴審では逆転無罪となります。

 

裁判が続くあいだ、家族に社会からの圧力が容赦なくかかります。刑事訴訟法の大原則は、疑わしきは被告人の利益にというものです。『それでも僕はやってない』を見ると、この大原則がまったく実践されていないことに多くの人は驚きますが、それが現実のようです。

 

起訴されたら、99.9%の確率で有罪になる日本社会において、冤罪に苦しむ人々を救うことは決して容易ではありません。 『それでも僕はやってない』は、これまであまり表に出てこなかった事実を、多くの人の前にあぶり出して見せます。

 

果たして無実を勝ち取ることはできるのか?

『それでも僕はやってない』では、ある日突然、事件に巻き込まれた主人公を、有能な弁護士をはじめ仲間達が励まします。弁護士の荒川は、裁判で勝ち目がないケースが多い痴漢冤罪事件にもかかわらず、主人公に手を差し伸べてくれます。弁護士という法律の専門家が自分を信じてサポートしてくれることは、法律の知識がまったくない人間にとって、とても心強いことです。

 

痴漢の容疑をかけられてしまい自らも苦しんだ経験を持つ男性も、主人公にさまざまな知恵を授けます。昔付き合っていた彼女も、裁判所に提出する電車内の再現映像の作成に協力してくれます。主人公の母親は、自分の息子の無実を信じて戦い続けます。

 

多くの人々が主人公の無罪のために戦い、裁判はどんどん進んでいきます。主人公が逮捕されてから彼の身に起こるさまざまな不条理な出来事を、観客も一緒に体験することになります。

 

映画の終盤にさしかかると、判決の結果が読めない手に汗握る展開となってきます。公平な裁判をする裁判長が交代したところから暗雲が垂れ込めた状態になり、不安の中で結果を見守ることになります。痴漢の冤罪事件は男性であれば誰にでも起こりうることなので、自分の身にふりかかったらどうしようとハラハラしながら見た人も多いでしょう。

 

自分のことのように考えて見ることで日本の警察や裁判所、検察などについてさまざまなことを学べます。 法律について知ることの大切さについても考えることができます。最後に、主人公が無実を勝ち取ることができたかどうかは、作品を見てからのお楽しみです。

 

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編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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