阿曽山大噴火の「裁判妙ちきりん」第1回 ~盗撮が『趣味』の元小学校教員~

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阿曽山大噴火の「裁判妙ちきりん」第1回 ~盗撮が『趣味』の元小学校教員~

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裁判傍聴芸人として名高い阿曽山大噴火による連載『裁判妙ちきりん』第1話!

法廷でしか味わう事のできない裁判のリアルをお届けします!

 

もしこの裁判がフィクションだったとして。私は被告人の言葉に対して——

 

【罪名】公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反

【被告人】48歳無職の男性

 

事件は今年の5月14日。東京都内の書店のエスカレーターで、被告人が女性の後方からスカート内にデジカメを差し入れ、下着を撮影したというもの。

 

検察官の冒頭陳述によると、被告人は大学を卒業後、小学校の教員に。しかし、去年、児童買春・児童ポルノ禁止法違反で懲役1年執行猶予3年の判決を言い渡され、失職。

 

前刑判決後は長崎の実家で生活していたが、5月上旬上京。犯行当日は、現場の書店でめぼしい女性を探し、被害女性に目をつけると、追跡して、スカートの中を盗撮。

しかし、犯行を目撃した保安官がバックヤードに連行。被告人は、盗撮してないと言い張った上に、デジカメからSDカードを取り出して、2つに折ったという。

 

取調べに対し、被告人は、

 

5月12日に長崎を発ち、静岡でサッカーを観戦し、会場で児童の容姿を撮影した。翌日は横浜みなとみらいに行ったが、盗撮に失敗して、次の日に東京に移動した。前刑は胸を出した児童の体を撮影した件で、その判決後50回位スカート内を撮影した

 

と供述しているという。

 

衝動的に撮ってしまったというパターンじゃなく、人の多いところまで出かけて、繰り返しやってるというのは、趣味みたいになってた可能性がありますね。

 

そして、弁護人が被告人の父親を呼んでいるということで証人尋問です。

裁判官

では、証人尋問ですね。証人の方は証言台へ来てください

の一言で、なぜか被告人が証言台へ歩き出すというプチハプニング。

 

裁判官

あなたじゃなく、お父さんです

と言われ、父親が立ち上がると、

 

裁判官

手荷物は持って証言台の方へ

と注意。しかし、荷物を置きっぱなしの父親。あまり人の話を聞かない親子なのかも。書記官の手伝いもあって、手荷物を証言台の横に置いて証人尋問スタート。

 

弁護人

前回の裁判でも法廷に立ちましたよね。そのとき、どんな約束をしました?

 

証人

3つありまして、同居する。一人で旅行させない。3つ目が……なんだっけな……

と、3つの約束を忘れている父親。

 

弁護人

定期的に部屋をチェックするって調書には書いてありますけど?

 

証人

あーー、そうです、そうです

 

弁護人

被告人がデジカメ持ってるのは知ってましたか?

 

証人

はい

 

弁護人

持たせないための部屋のチェックでしょ?

 

証人

そうですね……

 

弁護人

一人で旅行させてますよね?

 

証人

前の事件がビーチでの撮影だったので、まさかこの時期に盗撮しないだろうと

悪いことしたのは被告人なのは言うまでもないけど、証人の監督不行き届きも原因のひとつって印象を受けますね。

続いて検察官からの質問です。

 

検察官

旅行に行く申し出は?

 

証人

ありました

 

検察官

約束は頭をよぎらなかったのですか?

 

証人

僕がボヤッとしていて甘かったです

なので、検察官としては証人では今後の監督は期待できないですよねと暗に言っているわけです。

裁判官からの質問はなく、「傍聴席に戻ってください」と言われると、証言台の横に手荷物を置いたまま傍聴席に戻ってくる証人。

今後の監督が不安になってしまいますね。なんとも心配。

そして、被告人質問。まずは、弁護人から。

 

弁護人

なぜ、東京での犯行だったんですか

 

被告人

私の住んでるところは田舎でして、盗撮すると考えた時、人の多い東京の方がと。

ギター1本で天下獲ってやるぜ!という上京物語は聞いたことがあるけど、デジカメ1つでパンツ撮ってやるぜ!という志を持った上京物語もあるようです。

 

弁護人

去年の10月に盗撮の件で有罪判決を受けて、それ以降何回くらい盗撮しました?

 

被告人

100回くらいやっていると思います

 

弁護人

それは、スカート内を100回?

 

被告人

いいえ。私は女性の容姿を撮ることがほとんどなので、スカート内はそんなにありません、30回くらい……

結構あるじゃないか!

スカート内の盗撮回数ゼロ回の自分を基準に言わせてもらうと、「そんなにありません」と言うより、「そんなにあるのか」である。

30回が少なく思えるほどに盗撮が常習化して、感覚が鈍っていたのでしょう。

 

弁護人

執行猶予中ですけど、そういうのは頭になかったんですか?

 

被告人

頭ではわかっていたんですけど、好みの女性を見ると、盗撮したいという欲求が抑えられなくて

 

弁護人

前刑後、カウンセリング受けようとは思わなかった?

 

被告人

事件が新聞で報道されたので、どうしても外に行けず、人とかかわることができなかったからです

このサイトのルールで被告人の名前は出さないことになっているので明かせないのだけど、被告人の名前で検索すると、確かに実名報道されたニュースがヒットしますね。

現役の小学校の先生がそんなことをしていたら実名で報じられるのも当然でしょう。

 

弁護人

今は保釈されて通院していると?

 

被告人

はい、4回行ってます

 

弁護人

自助グループのミーティングにも参加してるんですよね

と、今回保釈されてやっと治療に向けて動き出したとのこと。前回の判決後すぐに病院に行っていれば、被害はなかったかもしれないのに。この後再犯しないことを誓って質問終了。

次は検察官から。

 

検察官

実名報道されたから、人とかかわり合いを持ちたくなかったと。だから、病院には行けなかったんだと。旅行には行けるの?

 

確かに。人里離れた静かな山奥への一人旅ならまだしも、人がよりたくさんいるところを狙った旅ですからね。矛盾していますね。

これに対し、

 

被告人

名前を知られることはないので

それも確かにと言えるのかな。

実名報道があったとしても、教え子の保護者とかじゃないと名前と顔は一致しないもんなぁ。

 

検察官

前回の裁判で病院行くって約束してますよね。カメラも持ってるし、一人で旅行もしてる。法廷での誓いは犯行の歯止めにはならないんですか

 

被告人

……

と、返答に困る質問で追い込んで被告人質問終了。

この後、検察官が懲役10ヶ月を求刑して閉廷でした。

 

 

もしこの裁判がフィクションだったとして。私は被告人の言葉に対して——

……またやったのかよと呆れるかな。

 

ま、実際にあった裁判なのだが。

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編集部

本記事は刑事事件弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※刑事事件弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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