阿曽山大噴火の裁判妙ちきりん 第33回 ~これからの僕を見て〜

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2019.3.22

阿曽山大噴火の裁判妙ちきりん 第33回 ~これからの僕を見て〜

Asozan_33

裁判傍聴芸人として名高い阿曽山大噴火による連載『裁判妙ちきりん』第33回!

法廷でしか味わう事のできない裁判のリアルをお届けします!

 

 

罪名 大麻取締法違反

被告人 37歳の音楽制作プロデューサーの男性

 

事件は去年の11月6日。

 

東京都内の路上に駐車した車の中で、被告人が乾燥大麻を含む植物細片83.774gを所持したという内容。

 

有名な歌手で数多くのミュージシャンに数多くの楽曲の提供もした被告人なので、大きく報じられたのは仕方ない。

 

報道では0.5gの所持って話だったんですけど、ふたを開けて見れば83gという大量所持。

 

検察官の冒頭陳述によると、被告人に前科前歴はなく、今回がはじめての逮捕。

 

専門学校を卒業後に音楽関係の仕事をはじめ、2011年に独立・起業して会社役員として音楽活動をしていたという。

 

調べに対し被告人は、

 

「逮捕の1年前、渋谷の道玄坂の路地裏を歩いていたら、外国人に声をかけられて購入したのがきっかけ。ストレスがたまったときに、月に1度のペースで吸っていた。今回持っていた大麻は、去年10月に道玄坂のあたりを歩いていたら、中東系の男が“アルヨ、5マンエン”と近づいてきて購入した。自宅より見つかりにくいと思い、車の助手席の下に置いていた」

 

と供述しているそうな。

 

渋谷には何度も行ったことあるけど、1回もそんな風に声かけられた経験ないんですけど。

 

そんな自分は珍しいんですかね。こういう供述がリアルに聞こえなくて。

 

法廷には、被告人の20年来の友人が情状証人として出廷。昔、おなじ音楽事務所にいた男性で現在はビジネスマッチングをしているという。

 

弁護人

「一緒に仕事をしてたそうですね?」

 

証人

「3、4年前からです」

 

弁護人

「どんな仕事ですか?」

 

証人

「一般の人に曲を作ろうというウエディングソングの企画です」

 

CDも売れなくなってきたこの時代に、夫婦にオリジナルの曲を作るってことですかね。面白そうな試みです。

 

弁護人

「仕事の影響はどうですか?」

 

証人

「進めていたプロジェクトが終了しました」

 

弁護人

「今後はどうしていきたいですか?」

 

証人

「まじめな性格なので、音楽の才能を気づかせる場所に行ってほしいですけど。それは皆さんが決めることなので」

 

と、チャンスを与えてくれるなら再び一緒に仕事をしたいと約束していました。

そして、被告人質問。まずは弁護人から。

 

弁護人

「はじめて使ったきっかけは?」

 

被告人

「5、6年前アメリカに行ったとき、現地のコーディネーターが吸っていたものを、どうだと渡されまして」

 

弁護人

「その次はいつですか?」

 

被告人

「逮捕されるちょうど1年前です」

 

弁護人

「どこで購入したんですか?」

 

被告人

「道玄坂の裏で外国人から、10gを5万円で買いました」

 

今回の所持が83gだから、このときと比較するとどれだけ多いかってのがわかりますね。

 

弁護人

「今回所持してたのも同じ付近で購入したと。わざわざ買いに行ったんですか?」

 

被告人

「いいえ。飲みに行った帰り、歩いて家に向かっているときにたまたま渋谷を通りまして、そういえば大麻がなくなりそうだなと思ってて、それで外国人に話しかけられました」

 

たまたま1年前のあの場所の近くを通って、たまたま密売人が声をかけてきたようです。

 

弁護人

「83gって大量なんだけど、外国人にはいくら払ったんですか?」

 

被告人

「5万円と思ってたら、“モットチョウダイ”って言われて、財布から適当に」

 

弁護人

「自分で買うものでしょ。普通中身を確認するでしょ」

 

被告人

「いや、洋服とかもそうなんですけど、いいなぁと思ったら、商品、あんまり見ないので」

 

持っているだけで逮捕されるものを量も値段もわからず購入するかなぁ。

 

弁護人

「もう大麻には手を出しませんね」

 

被告人

「いろんな人に迷惑をかけ、仕事もゼロになりまして、謝罪に回っているので」

 

と、仕事の影響の大きさを知り、再犯はしないと約束していました。

 

次は検察官からの質問です。

 

検察官

「芸術関係の人がつかまるニュースは見たことある?」

 

被告人

「ありますね」

 

検察官

「仕事に影響あるって思わなかった?」

 

被告人

「そこは自分の甘さです……」

 

この裁判が行われたのは3月12日の午前中。

この日の午後に麻取が動くのを知っていたのか、単なる偶然か。

 

検察官

「なぜ、1年もやめられなかったの?」

 

被告人

「認識の甘さです」

 

検察官

「音楽関係の人で薬物やってる人の噂、聞いたことない?」

 

被告人

「知り合い以外だと聞いたことあります」

 

ずいぶん俗な週刊誌っぽい質問だなぁと思ったけど、今から思うと情報が漏れていないかの確認だったのかもしれませんね。

 

あと、大麻持ってるミュージシャンの方! 検察官には伝わっているのでご注意を。

 

最後は裁判官からの質問。

 

裁判官

「認識の甘さってどういう意味ですか?」

 

被告人

「アメリカで吸っても大丈夫だったり、医療大麻の話も出てきて、いいだろうと」

 

裁判官

「その割には堂々としてない。路地裏で購入していたと」

 

被告人

「なので、怖かったですし、コソコソと」

 

裁判官

「コソコソしますよね! 買うときに危ない橋渡ってるなぁって思いませんでした?」

 

被告人

「自分の認識の甘さだと思います」

 

裁判官

「コソコソしてまで取引してたのはなぜなんですか?」

 

被告人

「認識の甘さです」

 

裁判官

「ん、話が進んでないんだけどさ」

 

堂々とはしてなかったけど、話が堂々巡り。

 

裁判官

「大麻はどこで吸ってたんですか?」

 

被告人

「自宅です」

 

判官

「車から家に、使うときに持っていくと?」

 

被告人

「はい。ただ、1年前に買ったものがまだ自宅に残っていたので」

 

裁判官

「そうなんですか。じゃあ、去年10月に購入した大麻は何回使ったの?」

 

被告人

「使ってません」

 

裁判官

「ん? なんでこんなに買うの?」

 

10gの大麻を1年かけて使い切っていないのに、83gも購入してるわけですよ。不審がる裁判官。

 

被告人

「何度も買うのが怖いので、一気に袋で」

 

裁判官

「秤ってなんに使うの?」

 

被告人

「袋に入っていたらしいです。押収品としてきいたので、見ていません」

 

裁判官

「買ってから袋も開けてないの?」

 

被告人

「いや、タバコ状になったものを自宅で吸おうと取り出して、ダッシュボードの上に置いたんですけど、いろいろ入ってるとは思いながら袋の中は見てません」

 

なにか疑っている様子で被告人を見る裁判官。

 

裁判官

「これ、どういう経緯で捕まったの?」

 

量も多いし、何か警察に声をかけられた理由もあるはずだと思ったんでしょう。その答えは、

 

被告人

「車内で大音量で曲聞いていたら」

 

きっかけはうるさいから職務質問だったようです。

 

これで質問は終わり、検察官は1年6ヶ月と大麻3本と2袋押収という求刑。

 

弁護人は執行猶予が相当だと弁論して最終陳述。

 

被告人

「今回の件で多くの人に迷惑かけましたし、自分の弱さも知れました。もう1回チャンスが欲しいので、これからの僕を見て欲しいです」

 

と、歌詞のような最終陳述ですね。

 

裁判官は続けて判決を言い渡して、結果は懲役1年6ヶ月執行猶予4年、大麻押収でした。

 

初犯なのに猶予4年って!

 

裁判官は、

 

「信用できない部分もあるんだけど、今後のことはあなた次第ですから」

 

と、最終陳述のアンサーソングみたいな説諭で閉廷でした。

 

 

 

──もしこの裁判がフィクションだったとして。

私は被告人の言葉に対して───

 

 

大麻を持っている音楽関係の人なら、バレてるのかよって思うだろうな。

ま、3月12日に実際に行われた裁判なのだが

 

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編集部

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