阿曽山大噴火の裁判妙ちきりん 第24回 ~電車を止めてまで下着が見たかった男〜

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2019.1.18

阿曽山大噴火の裁判妙ちきりん 第24回 ~電車を止めてまで下着が見たかった男〜

Asozan_24

裁判傍聴芸人として名高い阿曽山大噴火による連載『裁判妙ちきりん』第24回!

法廷でしか味わう事のできない裁判のリアルをお届けします!

 

罪名 迷惑防止法条例違反、威力業務妨害

被告人 48歳アルバイトの男性

 

起訴されたのは2つ。

 

1つ目は、2018年10月9日午前9時38分。被告人がJR池袋駅のホーム上で、キュロットスカートをはいた被害女性の後方から、41秒に渡ってお尻のあたりを撮影し、そのまま埼京線に乗って、JR新宿駅に到着するまで、動画撮影した件。

 

2つ目は、同日午前9時51分頃。被害女性が被告人とともに、駅員室へ向かう途中、被告人が線路に飛び降りて逃走し、安全確認のために埼京線を14分停車させて通常業務を妨害した件。

 

当日と翌日のニュースでは大々的に取り上げられ、逃走中の防犯カメラ映像が何度も繰り返し放送された事件。

 

新宿駅で電車を停めるってのは、それくらい多くの人に迷惑をかけるニュースに値するってことなんでしょう。

 

個人的には、スカート内の盗撮じゃなく、後ろから臀部を撮影してて起訴されてるのは初傍聴。

 

検察官の冒頭陳述によると、被告人は大学を卒業後、職を転々としていたという。前科は10犯で、2年前と5年前には同種の前科。被告人は2018年7月から、好みの女性を見つけると、スマホで臀部を動画撮影していたらしい。

 

犯行当日。被告人がいつものように女性の後方から撮影していると、満員の埼京線電車内で被害女性の太もも付近に被告人のスマートフォンがぶつかり、盗撮した、してない、と口論になったという。

 

近くにいた女性が“次の駅で降りたほうがいい”と言い、近くにいた男性は被告人のスマホを奪って被害女性に手渡したと。

 

新宿駅に到着すると、被害女性はすぐに駅員に事情を説明。駅事務所に向かう途中で被告人が1番千線の埼京線の線路に降り、16番線まですべての線路を渡って逃走したため、30人の駅員が被告人の捜索作業に対応することになったという。

 

その後、被告人が付近を歩いているところを警察が発見、逮捕されたというのが事件の流れです。

 

調べに対し、被告人は

 

「刑務所では性犯罪処遇プログラムを受けたので、以前のように女性を触りたいという気持ちはなくなった。その状態をメンテナンス状態と言いますが、2018年7月頃から触りたいという気持ちが出てきてしまいました。メンテナンス状態じゃなくなったのは、私の好きな阪神の成績が悪かったからです」と供述しているそうな。

 

何万人にも迷惑をかけたキッカケが阪神の不調だとは。

 

もうひとつ、この事件で気になったのは、逃走したのに、なぜ新宿にいたのか?

 

タクシーとか地下鉄に乗って逃げそうなもんなのに、新宿の路上で逮捕ですよ。その点について被告人は

 

「とにかく逃げることに必死だった。急におなかが痛くなり、デパートのトイレに入った。トイレを出て歩いていると、警察官から職務質問を受けた。スマホは女性に取られているので逃げ切れないと思い、罪を認めた」

 

とのこと。

 

おなかを壊してトイレに行ってたから、新宿にいたとはね。

 

法廷には被告人の父親が情状証人として出廷です。

 

まずは、弁護人から。

 

弁護人

「今まで息子さんは痴漢を繰り返してきてますよね」

 

証人

「しないように、何度も言ってきたんですが」

 

弁護人

「今回、証人として出廷したのは?」

 

証人

「年も年で、これが最後の援護と思って」

 

前科10犯だから何回も裁判があったわけで、父親としては久しぶり、もしくは初めての情状証人だったのかもしれませんね。

 

続いて検察官からの質問。

 

検察官

「初めて痴漢で捕まったのって、いつでした?」

 

証人

「えっとーーーー、浦和のほうでの事件で、20年くらい前でしたかね」

 

検察官

「そのときから、もうやるなって注意してるのに、繰り返してるわけでしょ?」

 

証人

「そうです」

 

検察官

「病院行かせようとは思わなかった?」

 

証人

「行かせたけど、知らぬ間にやめてたんです」

 

周りが努力しても、最終的には本人の意志ですもんね、通院は。

 

検察官

「今後ですけども、JRの方から民事で請求あったらどうします?」

 

証人

「支払えるものだったら、払います」

 

と、できる限り対応するとのこと。

ってか、事件から2ヶ月経っても請求は来ないもんなんですね。電車を停めたら何百万円とか言われるものは、すぐ請求されるのかと思ってた。

 

そして、被告人質問。まずは弁護人から。

 

弁護人

「今、事件を振り返ってどう思います?」

 

被告人

「身勝手な行動で多くの人に迷惑をかけてしまい、反省しています」

 

弁護人

「女性に対しては?」

 

被告人

「不快感、恐怖感を与えてしまって、今後の人生に大きな影響を及ぼすことをしてしまい申し訳ないです」

 

と、反省の言葉を述べてから、事件についてです。

 

弁護人

「なぜ、撮影してたんですか?」

 

被告人

「自分の欲求を抑えることができませんでした」

 

弁護人

「逃げたのはなぜですか?」

 

被告人

「刑務所に行くのが、イヤだったからです」

 

弁護人

「今後、またやる可能性ないですか?」

 

被告人

「電車に乗らなくていい仕事につきたいと思います」

 

と、駅に近づかない生活をすると約束です。

 

確かに、そうすれば線路をまたいで渡ることはないでしょうからね。

 

でも、電車に乗らないことで盗撮をしなくなるかは別の話のような気もするけど。

 

弁護人

「もう2度と、やりませんね」

 

被告人

「はい」

 

弁護人

「やらないと言い切れる理由は?」

 

被告人

「事件のことを友人に知られたのですが、今後のことを心配してくれて。その人に報いたいからです」

 

実名報道されたことで目が覚めるというか、意志が強くなることもあるのでしょうしね。

 

よく法廷で、会社や妻に事件はバレてなくて、とか言ってる被告人を見ると、「また再犯あるのでは」と心配しちゃいますからね。

 

そういう意味では、実名報道されてるほうが幸せかもしれませんね、断つタイミングとして。

 

弁護人

「今までも、もうやらないって言ってきてるだろうけど、守れます?」

 

被告人

「はい」

 

弁護人

「お父さんの言うこと聞ける?」

 

被告人

「はい。ホントにやめたいと思ってるんで」

 

弁護人

「病院行かなきゃ絶対治らないって思ってますか?」

 

被告人

「思っております」

 

と、治療することを誓って、質問終了。

 

次は、検察官から。

 

検察官

「今までの前科は痴漢ですよね。盗撮に変わったのはなぜですか?」

 

 

被告人

「今年1月に出所して、7月までは何もなかったんです。7日くらいから触りたいという気持ちになって、それを抑えて盗撮なら大丈夫かなって」

 

検察官

「大丈夫ってバレないって意味?」

 

被告人

「はい」

 

痴漢も盗撮も両方ダメでしょ。盗撮もバレて裁判になってる事件、毎日のように裁判行われてるし。

 

で、時計を見ると3時15分。この裁判の内容を伝えるため、ラジオの生放送があるので、一旦退廷。1番線から走って逃げる被告人のように全速力で東京地裁の外へ出て、ケータイでラジオ出演。

 

走って戻ると、裁判終わってました。

 

特に初公判を報じるメディアもないので、どうなったのやら。時間的に質問が短かったのは推測できるけど。

 

そして、年明けの1月8日。

判決が言い渡されました。結果は、懲役2年未決拘留日数20日算入でした。

 

裁判長は、「社会復帰したら、約束通り通院して、「自分と向き合って2度とないようにしてください」とアドバイスして閉廷でした。

 

 

 

──もし、この裁判がフィクションだったとして。

私は被告人の言葉に対して───

 

電車が停まったことで、商談を逃していたら、JRと一緒に請求したくなるよなぁ。

ま、12月20日と、1月8日に実際に行われた裁判なのだが

 

 

 

 

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編集部

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