阿曽山大噴火の裁判妙ちきりん 第34回 ~路上でついカッとなってしまった男〜

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2019.3.29

阿曽山大噴火の裁判妙ちきりん 第34回 ~路上でついカッとなってしまった男〜

Asozan_34

裁判傍聴芸人として名高い阿曽山大噴火による連載『裁判妙ちきりん』第34回!

法廷でしか味わう事のできない裁判のリアルをお届けします!

 

 

罪名 暴行、威力業務妨害

被告人 38歳無職の男性

 

この事件は大きく報じられ、初公判自体も注目されていたようで、開廷時刻のちょっと前に法廷に入ると、傍聴席は満席。仕方なく法廷の外で誰かが出てきたら入れ替わりで入ろうとキャンセル待ち。裁判がスタートして7~8分経った位で一人の傍聴人が出てきたのでその辺りからの傍聴となります。

 

なので、正確な起訴状の内容ではないので、関係者の方、事件を知りたかった方はあしからず。(ただ、原稿書いてる3月23日時点で未だ初公判は報じられず……)

 

起訴されたのは、去年7月。目黒区の路上で、停車中のバスの運転手の目に向けて被告人がレーザーポインターの光を照射した件。

 

その後、被害者であるバスの運転手が眼科に行ったので、運転手のシフトに影響が出て、被告人がバス会社の通常業務を妨害した件。

 

正確にではなくザックリになるけど、こんな感じの起訴状だと思われます。

 

法廷に入ったときは、検察官が甲号証を読み上げてる途中だったので、被告人の経歴や職歴・前科前歴の有無もわからず。

 

被害者は調べに対し、「午前8時40分、乗客の乗り降りが終わると、ミニバンが横付けしてきた。そして、運転席から緑の光を当ててきて、目に痛みを感じる程だった。車が走り去った後は目の前に白いモヤがかかっている感じだったので、バス会社の営業所に報告してから眼科に行った」と供述しているそうです。

 

レーザーポインターの光って、長時間目に当てると失明するなんて聞きますよね。

 

罪名が傷害じゃなくて暴行なので、そこまで大変なことにはならなかったと思われます。

 

そして、法廷内のモニターには、バスのドライブレコーダーの映像が上映されました。アングルは3つ。

 

バスの前方を撮影しているカメラ、後方を撮影しているカメラの2つのカメラの映像によって、被告人運転のミニバンの動きを特定です。

 

事件が去年の7月で、逮捕が今年の1月だからなかなか難しい捜査だったんでしょう。

 

3つ目のドライブレコーダーは、手前にバス運転手が映っていて、奥の方にたくさんの乗客が映っているというバス車内の映像。

 

この映像では、バスの運転手が窓の外に向かって中指を立て、クラクションを10回弱連続して鳴らし、顔の前で大きく手を動かして何かを折っているような仕草をしていました。

 

レーザーは映ってなかったけど、照射されて運転手が激怒しているのがわかる映像です。

 

バスの運転手が隣の車に中指を立てる場面ってなかなか見ることがないけど、大勢の命を預かっている立場として、レーザーポインターで目を狙ってくる危険行為が許せなかったんでしょう。

もはや格好よさを感じる程。

 

一方、被告人は取調べで、「私に優先権があるのに、バスがウィンカーなしに割り込んできて、幅寄せされたと思い、腹がたった」と動機について述べ、「私はここにいるぞと存在を示したいと思って、持っていたレーザーポインターを当てた」と供述しているそうな。

 

優先権って言われても、相手は路線バスですからねぇ。立腹した経緯はわかったけど、偶然、レーザーポインターが手元にあるというのも不自然な点ですよね。もしかしたら、繰り返し同じことをやってたんじゃないかという疑いを持ってしまいますね。その真相は後にわかるんだけど。

 

そして、被告人質問。まずは弁護人から。

 

弁護人

「なぜ、こんなことしたんですか?」

 

被告人

「幅寄せされたと思ってしまいまして、そのまま挑発にのって、感情のまま抗議してしまいました」

 

弁護人

「幅寄せされたんですか?」

 

被告人

「そのときはそう思い込んでたんですが、ウィンカーを見落としてました」

 

弁護人

「挑発にのって……ってのは?」

 

被告人

「私の車が行きどまって、バスの運転席を見たら中指を突き出してたので」

 

ドライブレコーダーの映像はレーザーが映ってないので、事実はわからないけど、被告人が言うには、レーザーを当てる前に、運転手が中指立てて挑発してきたとのこと。

 

弁護人

「仮にですけど、幅寄せされたとして。挑発されたとして。やっていいんですか?」

 

被告人

「その場の感情でやってしまい、とても迷惑かけたと反省しています」

 

弁護人

「レーザーを目に当てたら、視力が低下するって認識なかったんですか?」

 

被告人

「一時的に低下するとは思っていましたが、ここまでおおごとになるとは」

 

弁護人

「今まで同じことやった経験は?」

 

被告人

「ありません」

 

弁護人

「なぜ、レーザーポインターなんか車の中に所持してたんですか?」

 

この事件で最も気になる点ですよね。ニュースで報じられたときから、バレていないだけで、何度もやってたんじゃないだろうかと疑ってたんだけど、その答えは、

 

被告人

「犯行当時、デリヘルの送迎をしておりまして、車内から女の子に指示するために」

 

被告人はデリヘル嬢を派遣先まで車で送る仕事をしていて、マンションやアパートの前に停車して「305号室。あのドアです」とレーザーポインターで示すことで部屋を間違えないようにしていたらしい。

 

だから、仕事で使う車の中にレーザーポインターが置いてあったわけです。

 

弁護人

「同業者はみんな使ってるの?」

 

 

被告人

「使っている人は多いですね、車内から外に出ずに伝えられるので」

 

デリヘル業界にうといので、共感できないけど、デリヘルあるあるなのかもしれませんね。

 

建物の前でレーザーポインター当ててる人がいたら、呼んだ人がいるなとかね。

 

弁護人

「保釈されてからネットとか報道内容確認しました?」

 

被告人

「はい。レーザーポインター男とか、よくないことが書かれていました」

 

弁護人

「今日も傍聴席満席だし、注目されてますけど、どう思いますか?」

 

被告人

「被害者や被害会社、社会に対しても申し訳ないことをしたと反省してます」

 

事件として前代未聞ですからね、路線バスの運転手の目にレーザーポインターを当てるなんて。ほんと、事故が発生しなかったのが幸いですよ。

 

弁護人

「法廷に親が来てないのはなぜですか?」

 

被告人

「出廷を予定してたんですが、自分の責任でやっていくという覚悟で断りました」

 

もし、情状証人の予定があったら、傍聴席がひとつ潰れてたわけか。ほんと、ギリギリの傍聴です。

 

次は、検察官から。

 

検察官

「バスの運転手に中指突き立てられたのって、レーザー当てた後じゃないですか?」

 

被告人

「当てる前だと思います」

 

前述の通り、ドライブレコーダーの映像はレーザーの線が映っていないので被告人の言う通りなのか否かはわからないけど、問題なのはその後でしょ。

 

検察官

「運転手がクラクション鳴らしたり、手で払ったりしたあとも、止めなかったのはなぜですか?」

 

被告人

「自分はここにいると抗議するためです」

 

検察官

「中にはたくさんの乗客、周りには多くの車。どんな危険があったと思います?」

 

被告人

「大惨事につながったかもしれません」

 

検察官

「なぜこんなに大きく報道されたと思いますか?」

 

被告人

「それだけ重大なことをしたんだと今は認識しています」

 

と、反省、謝罪の姿勢を見せると、

 

検察官

「バス会社、被害者に謝罪は?」

 

被告人

「まだです」

 

検察官

「なぜです?」

 

被告人

「どう謝罪していいのか……」

 

と、逮捕から2ヶ月近く経っても謝罪文すら書いていないことをつつかれていました。被告人が反省してるのは本心なんだろうけど、行動に出ていなのはマイナスの印象ですね。

 

最後は裁判官から。

 

裁判官

「現在無職であると。いつまで働いてたんですか?」

 

被告人

「逮捕の直前、1月末です」

 

ニュースだと無職って報じられてたけど、直前までデリヘルの送迎の仕事を継続してやっていたようです。

 

裁判官

「保釈されて2週間経ってますけど、職探しのほうは?」

 

被告人

「ハローワーク行ったりとか、いろいろやっています」

 

裁判官

「具体的にどんな感じですか?」

 

被告人

「住宅の設備関係の仕事を10年やっていましたので、すぐに見つかるかなと」

 

すぐのわりに2週間見つかっていないのでは。

 

裁判官

「親に情状証人出てもらうのを断ったと。自分の責任でやっていくと言ってましたけど、どういう意味なんですか?」

 

被告人

「自分のやったことで、裁判所まで足を運んでもらうのも申し訳ないので、自分の責任ですべて受け入れようと思いました」

 

裁判官

「ん? うん……」

 

反省してるのと、今後の生活を監督してくれる人がいるってのは、別の話のような気が。

 

裁判官

「レーザーポインターって今は?」

 

被告人

「車に置いといたらなくなってしまって。あのときから2~3ヶ月あったんですけどね」

 

大切な仕事道具じゃないのかよ。

 

反省していると言いながら、謝罪文書いてなかったり、仕事見つかってないのにすぐ見つかると楽観的だったり、何か不安にさせるキャラクターですね。

 

この後、検察官が懲役1年6ヶ月を求刑し、弁護人は寛大な判決を求める弁論をして閉廷。

 

 

──もし、この裁判がフィクションだったとして。

私は被告人の言葉に対して───

 

ほかのバスの運転手も、運転するのを不安に思うだろうなぁ。

ま、3月18日に実際に行われた裁判なのだが

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編集部

本記事は刑事事件弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※刑事事件弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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