阿曽山大噴火の裁判妙ちきりん最終回~覚えてないです〜

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公開日:2019.5.31

阿曽山大噴火の裁判妙ちきりん最終回~覚えてないです〜

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裁判傍聴芸人として名高い阿曽山大噴火による連載『裁判妙ちきりん』最終回!

法廷でしか味わう事のできない裁判のリアルをお届けします!

 

 

罪名 傷害・銃刀法違反

被告人 26歳住所不定無職の男性

 

事件があった日の夜のニュース番組は、トップニュースや速報として伝えるところも多く、東京の路上で男女の切りつけというのは衝撃的なんだなと。

 

当初の報道では、殺人未遂での逮捕って話でしたが、起訴は最初に書いた通り、傷害と銃刀法違反。検察側としては、殺意はなかったという判断なんでしょう。

 

裁判官が黙秘権の告知を終えると、

 

裁判官

「検察官が読み上げた起訴状に、何か間違いはありますか?」

 

被告人

「……やったことについては、間違いありません」

 

“やったことについては”とは、なかなか含みのある言い方です。そこを察したのか、

 

裁判官

「ん~、言いたいことがあれば言ってもらって構いません」

 

 

被告人

「私は……すみません、あの、覚えてないです」

 

罪は認めた上で、犯行自体記憶がないようです。

 

裁判官

「弁護人のご意見は?」

 

弁護人

「被告人と同旨で、実行行為は間違いありません。犯行当時、被告人は心神耗弱の状態であったと主張します」

 

心神喪失じゃなく、耗弱なので判決を軽くしてくれということでしょうか。

 

検察官の冒頭陳述によると、被告人は大学を卒業後、Bが役員を務める会社に入社。しかし、半年で退職というのが経歴。

前科はありません。

 

2016年4月にBが役員を務めるPCソフトウェア開発などをしている会社に入社。

 

3ヶ月間は新入社員の研修期間で、Aが指導を担当していたという。

 

その研修期間中、被告人はAから「何かを言っても相槌がない、反応がない」などの指導を受けたという。

 

「円滑なコミュニケーションが取れないようでは現場に出すことができない」ということで、被告人は自宅待機を命じられ、レポートを提出するよう言われていたという。

 

しかし、被告人はレポート提出に応じず、労働局に会社の対応を報告してたとのこと。

 

そして、2018年8月にはAとBを殺害する計画を立て、ペディナイフを購入。

 

10月からは、会社の近くで2人の出入りを見張りするようになっていたらしい。そんななか、被告人は殺すのではなく、鼻を削いでやろうと思うようになっていたらしい。

 

2019年2月14日。犯行当日。被告人は会社の近くで見張りをしていたところ、Bが出てきたので追跡。

 

すると、Bが飲食店に入ったので店の外で待っていると、Aも同じ飲食店に入店したという。

 

待ち合わせしてたのかと思った被告人は2人が出てくるまで数時間待機。

 

2人が出てくると後をつけ、駅に近づいたところでAの背後をナイフで刺したという。

 

起訴状に関わる直接的な部分は明かされなかったけど、事件に至るまでの経緯はこんな感じ。

 

検察官からは事件の関係者の供述調書が読み上げられました。

 

被告人を捕まえた警察官は、

 

「20時4分、人が刺されたという通報があり、現場へ向かった。人ごみのなか、“この人が犯人です”と聞こえ、ナイフが見えたので、男に“お前のナイフだろ、なぜ、刺した?”と訊くと、“刺しても死なないと思って”と答え、犯行を認めたので、男を逮捕した」

 

と述べているようです。

 

通報をした目撃者は、

 

「彼女と待ち合わせをしていたら、前のほうを歩いていた女性に男が覆いかぶさるような動きをして、よろけて倒れるのが見えた。男は女のお腹の上に馬乗りになっていて、女が“通報して”と言っていた。すぐに110番したが、突然のことと恐怖でチラチラ見るのが精一杯であまり覚えていない。切りつけるしぐさが見えた」

 

と供述しているそうです。

 

2人の話を合わせると、なんとなく状況が見えてきますかね。周りに人がいるなかでの犯行。他人から見られる、バレてしまうとかはまったく考えていない、復讐だけが目的の行動に思えますね。

 

被害女性Aは調べに対し、

 

「2016年2月の面接で被告人と初めて会った。入社してからは私が研修の責任者で、被告人に『相槌も頷きもしないようでは、コミュニケーションが取れないから仕事できない』と指導したが、まったく変わらなかった。

 

それで、自宅待機を命じ、今までの振り返りのレポートを出すように言ってあった。しかし、自宅待機中の10月10日に被告人は自主退社した」

 

と3年前のことについて供述しているようです。

 

事件については、「脇腹に経験したことのない激痛が走り、通り魔に襲われたと思った。顔やお腹などを切られ、傷を見る度に事件を思い出すと思う」

 

と。去年の10月から待ち伏せていたって話だから、被告人の動きに警戒してたのかと思ったら、刺された瞬間に“通り魔”と思ってたんだから、ノーマークだったのかもしれませんね。

 

もう一人の被害者である被害男性Bは調べに対し、

 

「Aは曲がったことが嫌いな性格。3年前、研修のなかに1人協調性がなくて現場には出せない社員がいると聞いていた」

 

と、Aを通じて被告人のことを知っていた感じっぽいですね。

 

事件については

 

「Aさんが急にキャーーと悲鳴を上げ、男が覆いかぶさっていた。すぐに引き離すと、手にキラキラするものを持っていて、私を刺してきた。被告人は大学の成績もよく、期待の新入社員だったのに、こんなことになって残念」

 

と述べているようです。

 

誰に刺されてもショックだろうけど、期待してた新入社員とわかればなおさらでしょう。

 

気になる被告人の供述調書は、弁護人の意見留保で読み上げられず。次回の公判で採用されるのかもしれませんね。

 

ほかにも、弁護人が留保してる甲号証も多々あって、検察側の立証は一旦ここまで。

 

次は、弁護側の立証。

被告人が3年前に「Aから退職を迫られた」「話かけても無視された」など書かれたメモ帳、労働局が会社に指摘した文章、被告人の当時の同僚による「被告人はAの圧力で会社を辞めさせられた」と証言している調書などが採用・提出されました。

 

犯行自体は被告人も認めているし、許されないのは言うまでもないんだけど、会社側の対応は不条理だったのか正当なものだったのか?

 

被告人を心神耗弱に追い込むほどのものだったのか?

 

そして、被告人質問で何を語るのか?

 

すべてはこの次の公判でということになります。

 

実際、裁判所で傍聴しないと知り得ないことってたくさんありますからね。

 

日本中に支部も含めると地裁だけで、200以上あって、毎日のように裁判が行われているわけです。

 

今年、何回裁判傍聴に行きましたか?

 

かなりの数、地元の事件を見逃してるって気づくと思います。

 

もしかしたら、世の中で起きてることがフィクションかどうかなんて気にしてない人が多いのかもしれませんね。

 

このコーナーが傍聴のきっかけになれば。

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編集部

本記事は刑事事件弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※刑事事件弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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