阿曽山大噴火の裁判妙ちきりん 第21回 ~アパレル業界が震えた初裁判の行方〜

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2018.12.21

阿曽山大噴火の裁判妙ちきりん 第21回 ~アパレル業界が震えた初裁判の行方〜

Asozan_21

裁判傍聴芸人として名高い阿曽山大噴火による連載『裁判妙ちきりん』第21回!

法廷でしか味わう事のできない裁判のリアルをお届けします!

 

 

罪名 商標法違反

被告人 40歳会社役員の女性

 

起訴されたのは今年5月23日。

渋谷区内にある被告人経営の衣料品店で、有名ブランドのロゴを使ったTシャツなど276点を販売のために所持し、商標権を侵害したという内容。

 

被告人は、罪状認否で罪を認めていました。

このお店に置いてあったのは、高級ブランドのコピー品じゃなく、ブート品。ブート品の摘発は全国初。ということは、ブート品裁判も歴史上初ですよ!

 

一応知らない人のために、簡単に説明しておくと、本物ソックリに作られた商品はコピー品

 

ロゴを勝手に使って、本家では作られていない否商品を作るのがブート品

正式名はブートレグ。

 

個人的に安物のスカートを買いに原宿や高円寺の古着屋に行くので、「最近ブート品扱ってる店増えてきたなぁ」なんて思ってたんですよね。

 

「シャネルがそんなトレーナー作ってるわけないでしょ」的なかんじがウケてたんでしょうかね。

 

パロディ商品というか、ダサくてカッコいいって感じか。

 

で、ブートレグがややこしいのは、元々30年くらい前に、アメリカで大量に作られたのが発祥で、そういうムーブメントがあったわけです。

 

それが、古いブート品として高値で取引されてたりするんですよね。本当にニセモノとして価値があると。

 

そしたら、本家がブートレグ風の商品を出してきたりとか、なんだかよくわからないことになってるんです。

 

これがザックリの解説。なので、被告人の店以外にもたくさん存在しているのが現状です。

 

購入する人もコピー品と違って偽物だとわかってるはず。

 

業界的には「ついに来たか」といったところでしょう。

 

新聞記事やニュースだと、被告人だけじゃなく、鑑定士としてテレビ出演していた男性も一緒に逮捕されたと報じられていたけど、法廷には女性の被告人ひとりだったので、その人のことは“男性”とさせていただきます。

 

検察官の冒頭陳述によると、被告人は高校を卒業しデパートで働いた後、男性の衣料品店で働いていたという。

 

そして、2017年12月に本件現場の衣料品店を経営するようになったとのこと。

 

開業の際、ブートレグを店の売りにしようと考えた被告人は男性とともにアメリカへ行き、有名ブランドのブートレグを仕入れて自分の店で販売していたらしい。

 

開店の2017年12月から逮捕される2018年5月まで、ブート品だけで120万円の利益を得ていたという。

 

法廷には、被告人の母親が情状証人として出廷。

 

娘が逮捕されるまで、「ブート品」という言葉自体知らなかったけど、再犯させないよう監督すると約束です。

 

そして、被告人質問。

まずは、弁護人から。

 

弁護人

「店に置いていたブート品は、すべてロスで仕入れた物で、他では仕入れていないですね」

 

被告人

「はい、ないです」

 

弁護人

「買った人は本物と思ってたんですか?」

 

被告人

「いえいえ、ブートレグとして」

 

弁護人

「偽物とわかって買ってたと?」

 

被告人

「そうです」

 

弁護人

「古着屋でブート品を扱うことは?」

 

被告人

「よくあります」

 

弁護人

「だから、認識が甘くなっていたと?」

 

被告人

「そうです」

 

悪いけど他店でもやっているし、逮捕されたりしないだろうと軽く考えていたようですね。

 

弁護人

「今年4月にインスタライブの動画が消されたことがあったと」

 

被告人

「ブート品を店に並べていたので、消されたのはそれかなと」

 

弁護人

「男性のヤフーIDが削除されたことがありましたね?」

 

被告人

「ブート品2点をヤフオクに出したのですが、ブート商品を出品したということで」

 

弁護人

「じゃあ、違法とわかっていたのでは?」

 

被告人

「はい」

 

やっぱり軽く、大したことないと思ってたんでしょうね。

 

弁護人

「ちなみに男性の処分は?」

 

被告人

「略式起訴と聞いています」

 

正式起訴は被告人だけのようです。

 

弁護人

「逮捕後、店でブート品売ってないね?」

 

被告人

「はい」

 

弁護人

「再犯しないためにどうしますか?」

 

被告人

「向こうでも偽ブランド品を買い付けてこないように注意します」

 

と、再犯しないと約束して質問終了。

 

次は、検察官から。

 

検察官

「男性の店でもブート品売ってました?」

 

被告人

「いや、売ってないです」

 

ヤフオクに出品したのは男性なんだけど、店には置いてなかったということなんですかね。

 

冒頭でも被告人と男性の関係についてハッキリ言わなかったので謎だけど、同業の先輩後輩ってかんじなのかな。

 

検察官

「自分の店の開業とともにはじめて売り出そうと思ったんですか?」

 

被告人

「そうです」

 

検察官

「なぜですか?」

 

被告人

「ちょっと前から若者の間で流行ってたので、原宿に店を出すのになにかいいのがないかなと」

 

やっぱ、ここ2年くらいブームなんですよね。ブートブーム。

 

検察官

「違法だとわかったのはいつですか?」

 

被告人

「5月23日、ガサが入ったときですね」

 

検察官

「男性のヤフオクのときは?」

 

被告人

「あ、それは思いました」

 

検察官

「IDが削除された後も売り続けてたのはなぜですか?」

 

被告人

「在庫を抱えていたのと、売れるので続けてました」

 

検察官

「儲かるから続けた、と」

 

被告人

「そこまで売り上げあったわけじゃ……。置いとくとお客が増えるかなと」

 

客寄せ効果があるなら、非売品として飾っとけばよかったのに。

 

検察官

「本物と間違って買う人、いたんじゃないですか?」

 

被告人

「ブートレグと説明してました。本物ですか?と訊かれたら、ニセモノですと。正直、質がよくないのでお客様もわかってらっしゃると」

 

検察官

「客が何も訊かずに手に取ったら?」

 

被告人

「タグもグッチではないので、グッチだとは思わないかなと」

 

コピー品の裁判ならこれでいけるけど、ブート品の場合は責め方として間違っているような気も。検察官も初ですしね。

 

検察官

「1点8,000~9,000円で売っていたと。古着ですよね?」

 

被告人

「はい」

 

検察官

「古着でこの値段高くない?」

 

被告人

「土地柄、1万8000円の商品とかもありますし」

 

検察官

「グッチとかシャネルのロゴが入ってるからそれだけ高く売れるんですよね?」

 

被告人

「入ってるから高いわけでは」

 

どうしても検察官としては、違法の商品でボロ儲けしてた女にしたいみたいなんだけど、うまくいかず質問終了です。

 

最後は、裁判官から。

 

裁判官

「今は犯罪とわかっていると。なんで、やっちゃいけないと思います?」

 

被告人

「グッチやシャネルのブランドに対しての商標を侵害する行為なので……」

 

裁判官

「んー? それは質問の内容を繰り返してるだけでしょ。なぜ悪いと思います?」

 

被告人

「ブート品を着ることによって、ニセモノの服を着るという……」

 

裁判官

「だって、ニセモノと思って買ってるんでしょ。別にいいじゃない」

 

被告人

「いや……グッチの売り上げが落ちてしまいます」

 

裁判官

「グッチ買う人じゃないでしょ、8,000円のトレーナー買う人なんか」

 

さっき検察官がなんとか高値だと印象づけた8,000円の価格設定が……。

 

被告人

「でも、ニセブランド品を売ってしまってるので……」

 

裁判官

「そこを考えてないから、やっちゃってたんですよー。なんで、いけないと思う?」

 

被告人

「え……」

 

裁判官

「ニセモノをニセモノとして売ってたんでしょ。ま、それもよくないんだけど、お客をダマしてもいないし、グッチから客を奪ってもいないし、何が悪いんだと思います?」

 

被告人

「……」

 

裁判官

「グッチが高級品だと思うのは何故です?」

 

被告人

「イタリアのデザイナーが作っているので」

 

裁判官

「ちゃんとした品質があって、歴史があって。高いお金を出してでも、買いたい人がいるんでしょ。ブランド自体に価値がある」

 

被告人

「そうですねー」

 

裁判官

「それにタダ乗りするのも、ニセモノ売るのもダメ。じゃあ、売る側も買う側もニセモノとわかってて、何故ダメか? こういう商品が出回ることで、グッチって大したことない物を売ってるのねと思われてしまう。ロゴの権限がない人が、どれにいくら値段つけるか、決めるわけにいかないんですよ。ま、これ見てね、グッチの商品だと思う人はいないけど、衣料品を扱う立場であれば、それはわきまえてもらいたい。取調べでパロディーって言ってるようですけど、これはパロディーでもなんでもない。パロディーは別の分野」

 

と、一気に語って質問はすべて終了。

 

この後、検察官は懲役1年6ヶ月と罰金150万円を求刑。

 

弁護人は、被告人が反省してることや前科がないことを理由に執行猶予を求めていました。

 

最終陳述で、

 

被告人

「このような事件で世間を騒がせてしまいました。二度とないように、偽ブランド品ということを認識して、取り扱わないようにしたいと思います」

 

と述べて、閉廷でした。

 

そして、8日後。判決です。

 

結果は、懲役1年6月執行猶予3年、罰金150万円でした。

 

古着のブート品での初の有罪判決。

この先も摘発が続くかもしれませんね。

 

 

──もし、この裁判がフィクションだったとして。私は被告人の言葉に対して───

 

 

ブートレグ扱っている店なら、早く処分しなきゃと思うだろうなぁ。

ま、12月5日と13日に実際に行われた裁判なのだが

 

 

 

 

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編集部

本記事は刑事事件弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※刑事事件弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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