殺人未遂罪による懲役刑は法律上5年以上の懲役が定められていますが、殺人罪とは違い減軽の可能性もあるため、執行猶予付きの懲役刑に減軽されるケースもあります。
しかし、殺害をしようとした加害者の手口が凶悪であったり、行為態様から強い殺意が認められたりした場合は懲役刑が重くなるため、殺人未遂罪といっても決して軽い罪ではありません。
ただ、加害者も本気で被害者を殺すつもりではなかったのに殺人未遂罪に問われるケースも考えられます。
正当防衛を理由にやむを得ない犯行であった場合には減軽の対象になる可能性があるので、加害者は殺人未遂罪の基準を理解した上で適切に主張をする方法を取るべきでしょう。
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殺人未遂罪による懲役刑と殺人罪との比較
殺人未遂罪については殺人罪と同様に刑法で規定されていて、基本的な罰則は両方とも同じになりますが、通常は犯行内容を加味して懲役刑が加重減軽されます。
刑罰の規定で考えると殺人と殺人未遂は同じ扱いになる
殺人に関する罪については下記の通り定められています。刑法第199条が通常の殺人罪に対する規定で、第203条が殺人未遂に関する条文になっています。意味としては殺人未遂であっても第199条の殺人罪と同等の罰則が適用されるということになりますが、基本的には殺人未遂で死刑や無期懲役になる可能性はほとんどなく、実際の裁判事例を参考にしても重くて懲役15年程度までだとされています。
第201条は殺人予備罪を示し、殺人未遂罪より前の段階として扱われます。殺人の準備行為に対する刑罰になり、具体的には無差別殺人を目的に、毒物を入れたジュースを自動販売機の中(取出口)に入れておくなどの行為が該当します。
また、第202条は自殺幇助(ほうじょ)と自殺教唆(きょうさ)に関連する条文です。詳細については次項で説明しますが、『幇助』は自殺(または自殺未遂)に協力したことを示し、『教唆』は他者の自殺を助長させたことを意味します。
第二十六章 殺人の罪
(殺人)
第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
第二百条 削除
(予備)
第二百一条 第百九十九条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。
(自殺関与及び同意殺人)
第二百二条 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。
(未遂罪)
第二百三条 第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。
引用元:「刑法 第199条~第203条」
基本的には殺人より殺人未遂の方が軽い罪になる
上記の条文だけでは殺人罪と殺人未遂罪は同等の懲役刑が科されることなります。ただし、下記の通り未遂罪に関する刑の減軽(減免)が定められているため、殺人未遂罪において懲役5年以下の判決が下される場合もあります。
第八章 未遂罪
(未遂減免)
第四十三条 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
引用元:「刑法 第43条」
執行猶予は懲役3年以下を条件に適用される
また、参考までに執行猶予に関する規定も取り上げますが、仮に殺人未遂罪における罪が懲役3年以下である場合、加害者が禁固刑以上の前科をもたない条件を満たせば『執行猶予』が付きます。
第四章 刑の執行猶予
(刑の全部の執行猶予)
第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
引用元:「刑法 第25条」
執行猶予とは判決時に定められた執行猶予期間中に他の犯罪を起こさなければ、懲役刑(または罰金刑)の言渡しが失効することですが、「執行猶予の仕組み」で詳しく解説していますので合わせてご確認いただければと思います。
殺人未遂罪などに問われる基準
刑法を基準に殺人未遂罪の規定を上記で説明しましたが、加害者側は殺人未遂罪に問われる基準についても知っておくべきでしょう。また、直接的な犯行でなくても殺人未遂に関連する行為をした場合、刑罰の対象になるため注意が必要です。
被害者を殺す目的(殺意)が明確にあったこと
殺人未遂を成立させる上で最も重要なのが殺意になります。被害者を本気で殺そうとした動機や計画的な犯行、死亡に至る可能性の高いケガを負わせたことなどが、加害者の殺意を判断する要素になるでしょう。被害者が無傷であっても、刃物など殺傷能力の高い凶器を使用しようとした場合において殺人未遂が成立する可能性もあります。
共犯者である場合も正犯者と同等の刑罰を受けることがある
また、共犯者として殺害を手伝った場合は殺人幇助や殺人教唆などに問われます。共犯の関する規定は以下の通りですが、他者(正犯者)に指示して殺人をさせた場合においては正犯と同等の刑罰を受けることが定められています。
第十一章 共犯
(共同正犯)
第六十条 二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
(教唆)
第六十一条 人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
2 教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。
(幇助)
第六十二条 正犯を幇助した者は、従犯とする。
2 従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。
(従犯減軽)
第六十三条 従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。
引用元:「刑法 第60条~第63条」
自殺の手助けをした場合は自殺幇助(ほうじょ)の罪に問われる
殺人でなく自殺の手助けをした場合でも、刑法第202条の自殺幇助に該当するため罰せられます。実際に発生した事例として、自殺をしたいと言われた父と一緒に軽乗用車ごと入水して、父の自殺の手助けをした娘が平成28年6月に逮捕されました。
参考:「親子3人が入水した絶望の川」
自殺を唆す自殺教唆(きょうさ)罪が殺人未遂罪になるケースもある
同じく刑法第202条にある自殺教唆については、他者を精神的に追い詰めたり命令したりして自殺をさせる行為に該当しますが、被害者側における自殺の自己同意が欠けている場合は殺人未遂として認められる可能性があります。
例として、 保険金の取得を目的に被害者に命令して、岸壁上から自動車ごと海中に転落させた行為において自殺教唆罪でなく殺人未遂罪として判決が下された事例があります。被害者の精神状態によって、自殺と殺人が区別されるようです。
裁判要旨
自動車の転落事故を装い被害者を自殺させて保険金を取得する目的で,極度に畏怖して服従していた被害者に対し,暴行,脅迫を交えつつ,岸壁上から車ごと海中に転落して自殺することを執ように要求し,被害者をして,命令に応じて車ごと海中に飛び込む以外の行為を選択することができない精神状態に陥らせていたなど判示の事実関係の下においては,被害者に命令して岸壁上から車ごと海中に転落させた行為は,被害者において,命令に応じて自殺する気持ちがなく,水没前に車内から脱出して死亡を免れた場合でも,殺人未遂罪に当たる。
引用元:「最高裁判所平成16年1月20日第三小法廷決定 殺人未遂被告事件」
殺人よりも殺人未遂の方が重い懲役刑になる3つの理由

『殺人未遂罪による懲役刑と殺人罪との比較』でも説明したように、殺人未遂事件に対する量刑(刑罰の重さを決定すること)は通常、殺人事件よりも軽くなりますが、犯行動機や犯行内容の悪質さによって重罪になるケースも考えられます。
犯行の動機に同情の余地が無い場合
犯行動機において、例えば被害者より精神的苦痛を受けていることによる恨みなどはまだ同情の余地はありますが、不特定の人間に対する犯行や社会への不満など漠然としている動機については重い懲役刑になる傾向があります。
悪質な犯行方法で重い傷害を被害者に負わせた場合
被害者に負わせたケガが重症であれば罪はより重くなるでしょう。また、何度も首を絞めたり複数箇所をナイフで刺したりして大きな苦痛を被害者に負わせた場合も同様です。
平成28年5月に発生した殺人未遂事件を例として取り上げますが、20代の女性を刃物で30箇所以上刺して、顔に残る傷を負わせた残虐な犯行に対し、求刑17年のところ被告に懲役14年6ヵ月の判決が第一審で言い渡されました。
参考:「【アイドル殺人未遂】 軽い一審判決 消せない恐怖」
求刑よりも軽くなりましたが、それでも殺人未遂事件の中では極めて重い懲役刑であるといます。ただし、被害者女性が負う心の傷を考えると、懲役14年6ヵ月でも決して十分な量刑ではないかもしれません。
深い殺意があったこと
上記の犯行方法と関連しますが、加害者側に殺意があることが重要になります。仮に加害者自身の言葉で殺すつもりがなかったことを主張しても、悪質な犯行内容であれば深い殺意があったと判断されるでしょう。
加害者側の懲役刑が減軽される3つのポイント
殺人未遂における加害者側の懲役刑が減軽されるポイントを3つにまとめました。全ての殺人未遂事件において加害者側に100%の責任がある訳でもなく、被害者に襲われたことでの正当防衛や殺意の無い偶然的な犯行などの事情も考えられます。
正当防衛の主張
被害者側より先に暴力を振るわれたことで手を出し、相手に傷害を負わせたケースもあり得ます。その場合は自分の身を守るために『やむを得ずにした行為』であることを主張すれば、防衛の範囲を超えないことを条件に無罪になる可能性もあります。
殺意が無いことを証明して傷害罪などで成立させる
『殺人未遂罪などに問われる基準』で説明したように、殺人未遂罪を判断する上では殺意が最も重要なポイントになります。犯行当時に被害者を殺す意志が無かったことを証明するためには上記の正当防衛に加え、一時的な感情の変化や被害者が自分の意思で犯行を中止した状況など、事件の経緯を客観的に示すことが大事になります。
参考事例として、駅のホームで女性に体当たりをして快速電車と接触させた50代の男性が平成28年12月に逮捕された事件を紹介します。事件当時は殺人未遂罪として逮捕されましたが、衝動的で計画性はないと見なされて傷害罪として懲役2年の求刑となりました。
参考:「駅ホーム体当たりに懲役2年求刑 女性が新快速と接触 神戸・JR三ノ宮」
被害者側が死亡する可能性があった犯行でも、実際に負ったケガが軽く計画性が薄い場合には、殺意までは認定されず、比較的軽い懲役刑である傷害罪として成立することもあります。
早めに弁護士へ依頼して警察側の捜査を牽制する
また、加害者側が警察へ主張する際には弁護士の介入があった方が良いでしょう。警察から不適当な取調べを受けたり、犯罪者であると決めてかかって事実無根の捜査結果を言い渡されたりする可能性もあります。理不尽な疑いをかけられてしまった場合には早めに弁護士へ依頼するようにしましょう。
まとめ
殺人未遂による懲役刑の基準と減軽のポイントについて解説しましたが、殺意のない不本意な犯行を加害者がしてしまった場合は事件の経緯を主張するだけでなく、被害者側への誠意をしっかりと見せることが大事です。
また、刑事事件に詳しい弁護士であれば主張方法について正しくアドバイスしてくれますので、加害者自身で不安を抱え込まず弁護士に一度相談してみてはいかがでしょうか。