殺人未遂事件で執行猶予になる割合は一定以上あり、平成20年4月~平成23年8月判決宣告分の統計では全体の30%以上が執行猶予の判決が下されました。
刑法上では5年以上の懲役刑が基準になっていますが、殺人未遂事件では減軽の対象になる可能性が高いとされます。

判決
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裁判官裁判
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裁判員裁判
|
全体比率
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3年以下(執行猶予)
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104
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77
|
31.75%
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3年以下(実刑)
|
24
|
14
|
6.67%
|
5年以下
|
87
|
45
|
23.16%
|
5年より上
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127
|
92
|
38.42%
|
参考:「裁判所 特別資料1(量刑分布) 平成20年4月~平成23年8月判決宣告分」
殺人未遂の疑いで逮捕されてしまった場合、供述内容や警察の調査によって執行猶予のつかない重い懲役刑が科される可能性もあります。
執行猶予の有無で大きく違うため、加害者は減軽をさせるポイントをおさえて執行猶予を獲得した方が良いでしょう。
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実刑と執行猶予の違いは大きい
同じ懲役刑でも『実刑』と『執行猶予』で被告人(加害者)に科せられる罰の内容が大きく異なります。実刑の場合は判決後にすぐ刑務所へ入れられてしまうことに対し、執行猶予の場合は一定期間において犯罪を起こさない限りは懲役刑(または禁錮刑)を免れられることを意味します。
参考:「執行猶予との違いと実刑を免れる弁護方法」
なお、懲役刑と禁錮刑はいずれも人の身体の自由を奪うことを目的としている自由刑ですが、刑務作業の義務によって違いが生じます。刑務作業が義務付けられている懲役刑に対し、受刑者の希望で刑務作業をすることが決められるのが禁錮刑になります。
執行猶予付きの懲役刑は刑務所に入ることを免れられる
執行猶予付きの判決を受けた加害者は身柄を釈放され、一般的な生活へ戻ることができます。仕事に関しての制限はありませんが、国家公務員に関しては法律上で懲役刑や禁錮刑が科された場合は失職することが定められています。
(欠格条項)
第三十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、人事院規則の定める場合を除くほか、官職に就く能力を有しない。
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
引用元:「国家公務員法 第38条の2」
執行猶予期間中に再度逮捕された場合は懲役刑を受ける可能性がある
執行猶予期間を満了すれば懲役刑や禁錮刑の言渡しの効力が消滅します。しかし、執行猶予期間中に犯罪を行って再度有罪判決の言渡しを受けた場合は、新たに言渡された量刑の程度にもよりますが執行猶予が取消されて今度は実刑を受ける可能性が高くなるでしょう。
執行猶予付きの懲役刑では通常、懲役刑の1.5倍~2倍の期間が執行猶予期間になります。例えば懲役3年の懲役刑では4年~5年の執行猶予期間が一つの基準といえます。
※執行猶予期間は1年以上5年以下であることが刑法第25条で定められています。
殺人未遂罪で執行猶予の判決が下された実例
実際に発生した殺人未遂事件を参考に判決内容を見ていきます。介護疲れを理由に妻の首を包丁で刺してケガを負わせた60代の男性に対し、求刑懲役4年のところ懲役3年執行猶予4年の判決が言い渡されました。
参考:「介護絡み殺人未遂に執行猶予判決」
被害者(妻)を刺した理由に同情の余地があることと、弁護側が「被害者側は被告(加害者)が刑務所へ行くことを望んでいない」と訴えたことなどから、執行猶予付きの懲役刑が妥当だと判断されました。
殺人未遂罪で執行猶予になるために知っておくべき4つのポイント
殺人未遂事件を起こした加害者が実刑でなく執行猶予になるためのポイントを一つずつ確認していきますが、執行猶予の基準については下記の通り刑法第25条で規定されています。
第四章 刑の執行猶予
(刑の全部の執行猶予)
第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
引用元:「刑法 第25条」
懲役3年以下の軽い量刑が最低条件
執行猶予に該当する量刑は、3年以下の懲役(禁錮)または50万円以下の罰金が条件になります。殺人未遂罪では懲役刑しかありませんが、懲役3年以下は比較的軽い罪であるといえます。
参考:「殺人未遂における量刑の相場」
また、加害者に前科がなかったり、前科があったとしても罰金刑で済んだことも執行猶予の条件になります。ただし、以前に禁錮刑以上の刑罰を受け、その執行が終わった日又は執行猶予期間の満了日から5年以内に禁錮以上の刑罰を受けた場合は執行猶予とはなりません。
正直に自白をして反省の思いを表す
加害者が自分の非を認めて素直に謝罪する行為は単純なことですが、非常に重要だといえるでしょう。下手に言い訳をしたり自分に不利なことは一切喋らなかったりすると、反省の色がないために減軽が難しくなります。
早めに弁護士へ依頼する
また、詳しくは次項でも説明しますが自分が逮捕された場合、早めに弁護士へ相談した方が良いでしょう。逮捕されてから48時間以内であれば1度しか呼べませんが、無料で対応してくれる『当番弁護士』が介入してくれることで、適切な方法で警察や検察の取調べに応じることができます。
当番弁護士の詳細については「無料で簡単に呼べる当番弁護士」で解説していますので合わせてご確認いただければと思います。
殺人未遂事件における弁護活動のメリット

殺人未遂事件における弁護活動は執行猶予を獲得するために有効な手段になります。弁護士への依頼で加害者側が有利になるポイントを見つけて主張してくれることが期待できます。
加害者が本当に反省していることなどを的確に代弁してもらい、実刑ではなく執行猶予の判決で済むようにさせる以外にも、下記のようなメリットが考えられます。
逮捕されたことによる動揺や不安を解消する
自分が犯罪者である意識をもたないまま突然逮捕されてしまえば、被疑者はパニックに陥るでしょう。正常な判断が難しい精神状態である可能性もあるため、信頼できる専門家の力を頼って対応してもらうのが適切な判断だとされます。
警察の違法捜査をやめさせるように抗議できる
また、警察の捜査方法が妥当なのかを弁護士に判断してもらうこともできます。警察の取調べや捜査は必ずしも公平なものであるとは限りません。加害者側が不利になるような取り調べや理不尽な捜査結果を通達された場合、弁護士を介して抗議をすることが可能になるでしょう。
正しい供述態度に関するアドバイスをもらえる
刑事事件に携わっている弁護士であれば、加害者がどのような報告をすれば減軽の可能性が高くなるのかを把握しているでしょう。警察での取り調べや法廷(公判)での供述態度において弁護士からアドバイスをもらうことで、加害者自身が不利になるような失言を避けられます。
執行猶予期間で気を付けるべきこと
これまでは執行猶予の判決が下されるための条件やポイントを解説しましたが、最後に執行猶予期間中の注意点に関しても下記で説明していきます。
保護観察付きの執行猶予は行動が制限される
執行猶予にも2種類あり、通常の執行猶予と『保護観察付き』の執行猶予に分かれます。通常の生活とは違って保護観察の場合は以下のような遵守事項が課されます。たとえば保護観察所の保護観察官より監視をされたり、面談や更生プログラムを受けて厳しい指導を受けたりします。
一般遵守事項
(対象者全員に付けられるルール)
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特別遵守事項
(事件の内容や事件に至った経緯等を踏まえ,個人の問題性に合わせて付けられるルール)
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(例)
・ 再び犯罪をすることがないよう,健全な生活態度を保持すること
・ 保護観察官や保護司の面接を受けること
・ 生活状況を申告し,必要に応じて生活実態に関する資料を提出すること
・ 転居や旅行をする場合には,事前に保護観察所長の許可をうけること
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(例)
・ 遅刻,早退することなく,学校に通うこと
・ 就職活動や仕事をすること
・ 共犯者との交際を絶ち,接触しないこと
・ 被害者等に一切接触しないこと
・ 深夜に無断外出しないこと
・ 性犯罪者処遇プログラムを受けること
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引用元:「法務省 保護観察所」
保護観察が必要だと判断した場合に保護観察付きの執行猶予が科されますが、頻繁に適用される制度ではありません。平成27年度の統計では、執行猶予者の保護観察率は10%だとされています。
参考:「法務省 犯罪白書 平成28年度版」
禁錮刑以上の犯罪を起こすと執行猶予が確実に取消される
『実刑と執行猶予の違いは大きい』でも取り上げたように、執行猶予期間中に犯罪を起こすと実刑(懲役刑)になってしまうため、十分に注意する必要があります。刑罰の程度でも執行猶予の取消基準が変わりますが、少なくとも禁錮刑以上の実刑判決を受けた場合は確実に執行猶予が取消されます。
まとめ
殺人未遂事件で執行猶予判決になるためのポイントについて、お分かりいただけましたでしょうか。
加害者は実刑を避けるために、弁護士と相談しながら適切な供述をするようにしましょう。犯罪者になってしまったことを悔やむ気持ちは大きいかもしれませんが、執行猶予になればまだ社会への復帰がしやすくなります。
ただし、量刑を減軽できたとしても再度罪を犯してしまっては意味がありません。被害者に対しての謝罪と反省を忘れずに、執行猶予期間が満了した以降も犯罪への関与は絶対にやめるべきでしょう。