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禁錮とはどんな刑?自宅で過ごせる?実際の生活、懲役刑との違いについて解説

禁錮とはどんな刑?自宅で過ごせる?実際の生活、懲役刑との違いについて解説

今回は、刑罰のなかでも禁錮刑について、どのような刑なのかや、自宅での受刑はあるのかなどを解説します。

「禁錮刑と懲役刑の違いは?」「どちらがつらい?」などの疑問を解消するための情報もお伝えするので、ぜひ参考にしてください。

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禁錮とはどんな刑?概要や刑期について

まずは、禁錮とはどのような刑なのかといった基礎知識を解説していきます。

刑事施設に拘束される刑罰

禁錮刑は、刑務所や少年院などの刑事施設に拘束される刑罰です。

身動きがとれないよう拘束されるわけではありませんが、刑事施設内で過ごさなければならないため、行動が制限されます。

また、常に刑務官などの監視下に置かれます。

禁錮刑のように、動き回れる自由を制限する刑罰を自由刑と呼びます。

禁錮は、自由刑の一種です。

自宅で禁錮刑を受けることは有り得ない

禁錮刑を自宅で受けることはありません。

ニュースなどで、禁錮を言い渡された受刑者が、自宅や病院に収容されるところを見たことがあるかもしれませんが、この状況は「理由があって禁錮の執行を停止されている状態」であり、刑罰を受けているわけではないのです。

このとき、刑罰がなくなったわけではないため、停止理由がなくなると、速やかに刑事施設に収容されることになります。

では、どのような場合に禁錮の執行を停止されるのでしょうか。

刑の執行により著しい不利益が生じる場合は執行を停止されることも

刑の執行が停止されるのは、重い病気・妊娠中・高齢などの理由があるときです。

刑事施設に収容することで、著しく不利益が生じると検察官によって判断された場合、執行を停止されることがあります。

これは、刑事訴訟法第482条1号で、例外規定として定められています。

具体的には「刑の執行によって、著しく健康を害するとき、又は生命を保つことのできない虞があるとき」に、刑の執行を停止できると書かれています。

なお、高齢を理由とした執行停止は少ないとされています。

池袋の暴走事故も禁固刑が執行された

2019年4月、東京都の池袋で、当時90歳の旧通産省工業技術院の元院長が事故を起こした事件で、過失運転致死傷罪にあたるとして、被告人に禁錮7年が求刑され、東京地裁判決によって禁錮5年の実刑判決が下されました。

このとき、執行停止はされませんでした。

事件の内容は、被告人がブレーキペダルとアクセルペダルを踏み間違えて暴走し、母子2人が死亡、9人が重軽傷を負ったというものです。

裁判は2020年10月に開始され、被告人は無罪を主張し続けていましたが、11ヵ月後に下された判決に対して控訴せずに罪を認め、有罪となったのです。

この事件は被告人が高齢であったため、医師の意見をふまえ、刑務所の生活に耐えられるかどうかが慎重に判断されると考えられていました。

そのうえで、刑の執行が停止される可能性がありました。

しかし、被告人は高齢であるものの、自分で車を運転できていたことや裁判に車椅子で出廷していたことなどをふまえ、罪を償えると判断され、執行停止はされませんでした。

禁錮刑の重さ|3番目に重い刑罰

禁錮刑は、刑法に規定されている7つの刑罰のうち、3番目に重い刑罰です。

刑罰は、重い順に次のようになっています。

死刑→懲役刑→禁錮刑→罰金刑→拘留→科料→没収

 

禁錮と似ている刑罰の「懲役」は、2番目に重い刑となっています。

死刑から科料までの6つは「主刑」として区分されています。

7つ目の没収のみ「付加刑」に区分され、単体で適用されることはありません。

禁錮刑が適用される可能性がある犯罪の種類

禁錮刑が適用される罪は、限られています。

その多くが、過失犯や政治犯です。

禁錮刑がある罪でも、懲役刑や罰金刑が適用されることは少なくありません。

禁錮刑が適用される罪の例は、過失運転致死傷罪・業務上過失致死傷罪・名誉毀損罪などがあります。

禁錮刑が適用される罪の例
  • 過失運転致死傷罪:年以下の懲役・禁錮・100万円以下の罰金
  • 自殺関与・同意殺人罪:月以上7年以下の懲役・禁錮
  • 業務上過失致死傷罪:年以下の懲役・禁錮・100万円以下の罰金
  • 名誉棄損罪:年以下の懲役・禁錮・50万円以下の罰金
  • 公職選挙法の買収罪:年以下の懲役・禁錮・50万円以下の罰金

禁錮刑の刑期|最長の場合は無期

禁錮刑は最短でも1ヵ月であり、1日以上30日未満の身柄拘束がされる拘留に比べて、基本的に拘束期間は長くなります。

有期の禁錮刑は最長で20年です。

ただし複数の犯罪で起訴され、併合罪として禁錮刑が科されるときは、最長30年になることがあります。

禁錮には、無期禁錮もあります。

無期の場合は、刑法第28条が定める通り、条件を満たせば仮釈放されることがあります。

仮釈放の条件は、刑務所内で更生して再び罪を犯す可能性が低いと判断されることや、刑の執行後10年が経過することなどです。

受刑者の意思のもと、刑務所長が審査し、行政官庁の処分として仮釈放が決まれば、刑務所から出られます。

刑務所から一度釈放されると、次のような条件を満たすことで、残りの刑期を免除されます。

残りの刑期が免除される条件
  • 一定のあいだ、罪を犯さない
  • 保護司に定期的に報告し、指導を受ける

なお、3年以上の禁錮刑が下されるケースは少ない傾向にあります。

禁錮刑でも執行猶予となることがある

禁錮刑に執行猶予がつくこともあります。

執行猶予をつけられるのは禁錮3年が上限で、これは懲役と同様です。

ただし条件を満たしても、執行猶予がつかないこともあります。

執行猶予の有無は、情状によって判断されるからです。

執行猶予には、全部執行猶予と一部執行猶予の2種類があります。

全部執行猶予

全部執行猶予とは、科された刑の全てを猶予することです。

例えば、禁錮1年に対して執行猶予が3年つく場合、懲役の執行がすべて猶予されるため、判決後に刑務所に入ることなく帰宅し、通常の生活を送れます。

執行猶予中に犯罪を起こさなければ刑が免除されるため、問題なく過ごせば禁錮1年を回避できます。

全部執行猶予となるケースは基本的に初犯、もしくは前刑の執行終了日から5年以上が経過している場合です。

また、情状酌量の余地がある場合にも、全部執行猶予となる可能性があります。

一部執行猶予

一部執行猶予とは、科された刑の一部に限り、執行が猶予されることです。

一部執行猶予がされるのは、刑罰が3年以下の禁錮であるときです。

例えば、禁錮3年に対して、その一部の6ヵ月につき執行猶予が1年つく場合があります。

この際、猶予されなかった2年6ヵ月は刑が執行されます。

具体的には、判決後に刑務所へ入り、2年6ヵ月が経ったあと、残りの6ヵ月の刑執行が1年猶予され、刑務所を出られます。

一部執行猶予で出所する際、猶予期間中は保護観察に付されるケースが多いです。

禁錮刑となる割合は約6%

2022年の裁判で、自由を制限され拘束される自由刑が確定した受刑者のうち、懲役刑は約94%、禁錮刑は約6%です。

懲役か禁錮のいずれが科されるかは、犯罪に至った経緯や過失の度合いなどで決められます。

また、以下のように禁錮刑が定められていない犯罪もあります。

禁錮刑のない罪の例
  • 殺人罪:死刑・無期懲役・5年以上の懲役のいずれか
  • 現住建造物等放火罪:死刑・無期懲役・5年以上の懲役のいずれか
  • 不同意性交等罪:5年以上の懲役
  • 不同意わいせつ罪:6ヵ月〜10年の懲役
  • 不動産侵奪罪:10年以下の懲役
  • 恐喝罪:10年以下の懲役
  • 詐欺罪:10年以下の懲役
  • 強盗罪:5年以上の懲役

禁錮刑では不足すると考えられる重大な罪については、懲役のみが設定されています。

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禁錮刑を受けた場合の実際の生活

禁錮刑で刑務所に入ると、どのような生活が待っているのでしょうか。

ここからは禁錮刑の特徴を説明していきます。

労働は義務付けられていないが、ダラダラも過ごせない

禁錮刑には、刑務作業に従事する義務がないものの、刑務所のなかで自由に過ごせるわけではありません。

朝は運動の時間があるなど、動作時限表に従って生活する必要があります。

点検や食事の仕方などが定められており、他の受刑者との共同生活をするためのルールを守らなければならず、基本的に就寝時以外は、刑務官の監視下におかれます。

希望すれば労働もできる

刑務作業の義務が課せられない生活は、楽に思えるかもしれませんが、何週間・何ヵ月・何年と、本を読んだり手紙を書いたりするだけの日々を過ごすことに不満を感じる方は少なくありません。

そこで志願した場合、禁錮刑の受刑者でも、刑務作業への従事が認められています。

働いた分は、少額ではあるものの作業報奨金が支払われます。

実際に、禁錮刑の受刑者の多くは刑務作業への従事を願い出て労働しているといわれています。

インターネットやスマートフォンも使えない

所持していたスマートフォンは、逮捕されて留置場に入るタイミングで警察官に没収され、ほかの私物と共に、留置場内にある管理ボックスで保管されます。

拘束先が刑務所になっても、刑務所で保管されるため、自分の手元に戻ってくるわけではありません。

スマートフォンが証拠として扱われる場合は、証拠品として押収される可能性が高いです。

またノートパソコンやタブレットを借りられないため、刑務所のなかではインターネットは使えません。

そのため、本を読む受刑者は珍しくなく、刑務所の図書室で本を借りる方や、家族から本を差し入れしてもらう方もいるとされています。

禁錮刑と懲役刑との違い

禁錮刑と懲役刑は、身柄を拘束される自由刑であることに違いありませんが、異なる点もあります。

ここからは、禁錮刑と懲役刑との違いを説明します。

懲役刑では刑務作業が義務だが禁錮刑では義務ではない

懲役刑になると、義務として強制労働をしなければなりませんが、禁錮刑は労務作業のない身柄拘束刑です。

刑務所に連れて行かれて身柄を拘禁される点は同じですが、禁錮刑では強制的に作業をさせられることはありません。

懲役刑のほうが適用されるケースは多い

判決が下された数を比較すると、懲役刑と禁錮刑では適用される数が異なり比率は懲役刑が95%程度で、禁錮刑は5%程度です。

重大犯罪や再犯によって自由刑を科すべきと判断された場合、懲役刑になることが多いでしょう。

禁錮刑と懲役刑ではどちらがつらいともいえない

禁錮刑には刑務作業の義務がありませんが、約80%の禁錮刑受刑者が自ら希望して刑務作業をする点から、禁錮刑より懲役刑のほうがつらいとは言い切れません。

長いあいだテレビもインターネットもない狭い部屋のなかで、毎日を過ごすのは苦痛と感じる方が多く、そのために刑務作業を志願すると考えられるからです。

義務のない刑務作業を志願する受刑者が多いことから、刑務作業がないから禁錮刑は懲役刑よりつらくないとはいえないでしょう。

刑期は禁錮刑も懲役刑も同じ

禁錮刑にも、懲役刑にも、期間を定める有期と期間の定めがない無期がありますが、有期の場合の刑期はいずれも同じです。

具体的には、有期懲役または有期禁錮刑の下限は1ヵ月で、上限は加重がなければ20年、加重されると30年です。

執行猶予はどちらもつく可能性がある

執行猶予がつくのは、原則として、3年以下の懲役か禁錮、あるいは50万円以下の罰金刑が下された場合のみです。

そのため、死刑や無期懲役のほか、懲役20年・禁錮5年などの刑が科される際は、執行猶予がつきません。

2025年6月16日までに禁錮刑と懲役刑が統合した拘禁刑が導入される

禁錮刑と懲役刑は、2025年6月16日までに統合され、拘禁刑という名称に変更されます。

2022年6月13日に、拘禁刑について定めた「刑法等の一部を改正する法律案」が国会で可決されました。

そして2022年6月17日に公布され、正式に導入が決まっています。

拘禁刑の施行日は、公布の日から3年を超えない範囲内において政令で定める日とされています。

そのため、2025年6月16日までに導入されることになっています。

可決・成立

2022年6月13日

公布

2022年6月17日

施行

2025年6月16日まで

刑罰の種類が変更されるのは、現在の刑法が定められた明治40年以来、初めてのことです。

拘禁刑が施行されれば、懲役刑と禁錮刑は廃止されますが、施行時に懲役刑または禁錮刑を受刑している場合、そのまま懲役刑または禁錮刑が継続されます。

禁固刑と懲役刑との違いがないことが背景

拘禁刑が導入された背景として、刑務作業を志願する禁錮刑受刑者の多くが懲役刑の受刑者と同様に働き、報奨金をもらっていることが挙げられます。

さらに、禁錮刑受刑者の割合が低いことも拘禁刑導入の背景にあると考えられます。

2022年版検察統計年報によると、懲役の実刑判決の確定人数は1万4,128名、禁錮刑は50名とされているため、禁錮刑と懲役刑を分けなくてもよいのではないかとの考えが広まり、拘禁刑が成立したと考えられます。

拘禁刑では必要に応じて労働させたり必要な指導をおこなったりする

拘禁刑では、受刑者の改善更生を図るために、必要な作業をさせたり、必要な指導をしたりすることができます。

改善更生に重点が置かれ、作業だけでなく指導も可能と規定されたことが、改正以前と比べたときの大きな変化です。

これによって、一律に刑務作業をさせるのではなく、受刑者の状況をふまえた柔軟な対応が可能となります。

例えば、学力不足によって改善更生や社会復帰が困難な受刑者には教科指導ができ、薬物依存者には更生プログラムを実施できます。

また高齢の受刑者には、リハビリや福祉的支援をすることも可能です。

さいごに

本記事では、禁錮刑が懲役刑と似ていることや、懲役刑との違いが少ないために拘禁刑へと統一されることなどを解説しました。

拘禁刑が施行されれば、従来の禁錮刑と懲役刑に比べて、より受刑者の改善更生につなげるための対応が可能となります。

しかし、いずれにしても自由が制限され、つらい刑罰であることには変わりないでしょう。

もし、禁錮刑・懲役刑に該当する犯罪をしたなら、加害者弁護が得意な弁護士を頼りましょう。

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この記事の監修者
秀﨑 康男 (福岡県弁護士会)
刑事事件の相談につき、休日問わず24時間対応し即日接見も可能。『身近な弁護士』と感じていただけるコミュニケーションを心がけ、長年の実績と経験をもとに事件の早期解決に向け尽力している。
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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