罰金と科料の違いは金額!実務上のポイントや納付できない場合のペナルティなど

刑法で定められた刑罰には、以下のようなものがあります。
刑の種類 |
刑の概要 |
死刑 |
絞首により生命を奪う刑罰 |
懲役 |
刑務所に収容されて、刑務作業を強いられる刑罰 |
禁錮 |
刑務所に収容されるが、刑務作業は強いられない刑罰 |
罰金 |
原則として1万円以上の金銭の納付が必要になる刑罰 |
拘留 |
1日以上30日未満の期間、刑務所に収容される刑罰 |
科料 |
1,000円以上1万円未満の金銭の納付が必要になる刑罰 |
本記事では、このうち財産刑と呼ばれる罰金と科料について、以下の内容を中心に説明します。
- 罰金と科料の違いや対象となる犯罪
- 罰金や科料に関して実務上のポイント
- 罰金や科料の納付方法や支払えない場合のペナルティ
- 似たような罰則である過料や反則金との大まかな違い など
本記事を参考に、罰金と科料の違いや実務上のポイントをしっかりと理解できるようになりましょう。
罰金と科料の違いは?納付すべき金額や対象となる犯罪などが異なる
罰金と科料は、いずれも刑罰の一種です。
ここでは、それぞれの刑罰について定義や該当する犯罪などを確認しましょう。
罰金とは|原則として1万円以上の金銭の納付を命じる財産刑のこと
罰金とは、刑法第15条に規定されている刑罰のことです。
(罰金)
第十五条 罰金は、一万円以上とする。ただし、これを減軽する場合においては、一万円未満に下げることができる。引用元:刑法 | e-Gov 法令検索
財産刑の一種であり、原則として1万円以上の金銭の納付を命じる刑罰となっています。
なお、例外として減刑が認められた場合には、1万円以下の罰金刑が科される可能性があります。
【罰金が定められている犯罪の例】
犯罪 |
法定刑 |
傷害罪(刑法第204条) |
15年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
暴行罪(刑法第208条) |
2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金 |
窃盗罪(刑法第235条) |
10年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
住居侵入罪(刑法第130条) |
3年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
痴漢行為(東京都迷惑防止条例第5条) |
6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金 |
科料とは|1,000円以上1万円未満の金銭の納付を命じる財産刑のこと
科料とは、刑法第17条に規定されている刑罰のことです。
(科料)
第十七条 科料は、千円以上一万円未満とする。
引用元:刑法 | e-Gov 法令検索
罰金と同じく財産刑の一種ですが、1,000円以上1万円未満の金銭の納付を命じる刑罰となっています。
複数ある刑罰の中では、最も軽い刑罰として規定されています。
【科料が定められている犯罪の例】
犯罪 |
法定刑 |
暴行罪(刑法第208条) |
2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金 |
侮辱罪(刑法第231条) |
1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金 |
公然わいせつ罪(刑法第174条) |
6ヵ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金 |
軽犯罪法違反(軽犯罪法第1条) |
拘留または科料 |
罰金や科料に関して実務上で知っておくとよい3つのポイント
罰金や科料に関して実務上で知っておくべきポイントは、以下のとおりです。
- いずれも前科は付くことになる
- いずれも略式裁判の対象になりえる
- 刑事裁判では科料の判決はほぼない
ここでは、罰金や科料に関して実務上で知っておくとよい3つのポイントについて説明します。
1.いずれも前科は付くことになる
罰金や科料を科されるということは、前科が付くことを意味します。
前科が付くデメリットには、主に以下のようなことが挙げられます。
- 懲戒解雇や退学処分をされる可能性がある
- 就職や転職などの際に申告する必要がある
- 法定離婚事由に該当してしまう可能性がある など
仮に前科が付いた場合には、仕事や学業、家族関係などに支障をきたすリスクがあるでしょう。
2.いずれも略式裁判の対象になりえる
略式裁判とは、正式裁判を経ずに書面で判決を言い渡す簡易な裁判方式のことです。
100万円以下の罰金や科料に相当する事件の場合は、この略式裁判の対象になりえます。
第四百六十一条 簡易裁判所は、検察官の請求により、その管轄に属する事件について、公判前、略式命令で、百万円以下の罰金又は科料を科することができる。この場合には、刑の執行猶予をし、没収を科し、その他付随の処分をすることができる。
略式裁判の場合は、正式裁判と異なり迅速に身柄を解放してもらえるというメリットがあります。
「司法統計(令和5年)」を見ると、道路交通法違反などで略式裁判が多いことがわかります。
3.正式裁判では科料の判決はほぼない
正式裁判とは、法廷の場で裁判官が有罪・無罪を判断したり、量刑を決定したりする裁判のことです。
「司法統計(令和5年)」を見ると、懲役や罰金が大半を占めており、科料はゼロとなっています。
また、同資料によると罰金の金額帯は「30万円以上50万円未満」が最も多くなっていました。
罰金や科料の納付方法|支払えない場合はどのようなペナルティがある?
ここでは、罰金や科料の納付方法と支払えないときのペナルティについて説明します。
1.罰金や科料は銀行振込みまたは検察の窓口で支払う
罰金や科料は、以下のうちいずれかの方法で納付します。
- 検察が指定した金融機関へ振り込む
- 検察庁の徴収担当窓口にて直接支払う
支払方法は原則として現金払いですが、一部地域ではキャッシュレス決済に対応しています。
なお、納付期限は検察から送られてくる「納付告知書」に記載されているため、必ず確認してください。
2.罰金や科料を支払わないと強制執行などがおこなわれる
罰金や科料を納付せずにいると、以下のようなペナルティが課されます。
- 検察などから支払いの督促を受ける
- 強制執行(財産の差押え)がおこなわれる
- 労役場に収容され、強制労働をさせられる
罰金や科料は刑事罰であるため、踏み倒すことは絶対にできないので注意しましょう。
過料や反則金との違い|罰金や科料と違っていずれも行政罰の一種である
罰金や科料と似たペナルティに、過料や反則金などがあります。
ここでは、過料や反則金の概要・違いなどについて説明します。
過料とは|行政手続きに違反した場合に科されるペナルティのこと
過料とは、行政手続きに違反した場合に国や地方自治体から科される罰則のことです。
身近なものでいうと、以下のような違反をした場合に過料が科される可能性があります。
- 検認を経ずに自筆証書遺言を開封してしまった(民法第1005条)
- 正当な理由がないのに戸籍の届出をしなかった(戸籍法第137条)
- 正当な理由がないのに転入届などを提出せずにいた(住民基本台帳法第52条2項)
- 正当な理由がないのに相続発生から3年以内に相続登記をしなかった(不動産登記法第164条)
過料の金額は法律の場合は上限がなく、条例の場合は5万円以下と決められています(地方自治法第14条3項)。
通常、過料は少額ですが、法人役員の登記忘れなどでは100万円以下の過料が科されます(会社法第976条)。
反則金とは|交通ルールに違反した場合に科されるペナルティのこと
反則金とは、交通反則通告制度に基づいて科される罰則のことです。
以下の行為は道路交通法違反になりますが、比較的軽微であるため反則金を納めれば刑事上の責任は問われません。
- 一時停止違反
- 最高速度違反(30km/h未満)
- 通行禁止違反
- 信号無視
- 携帯電話使用等 など
なお、重い道路交通法違反の場合は交通反則通告制度の対象にならず、刑事手続きがおこなわれることになります。
さいごに | 罰金と科料は納付金額や対象犯罪などが異なると覚えておこう
罰金と科料は同じ財産刑ですが、納付すべき金銭の額や対象となる犯罪などが異なります。
刑罰の重さでいうと罰金のほうが重く、場合によっては100万円以上の支払いを命じられることもあります。
一方、科料は1,000円以上1万円未満と少額ですが、実際には科料となるケースはあまり多くはありません。
罰金と科料について理解する場合は、それぞれの類似点と相違点を意識して把握するとよいでしょう。



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