ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)  刑事事件コラム  刑事処分の種類と内容  幇助と教唆の違いとは?成立要件、刑罰の違い、具体例などをわかりやすく解説
キーワードからコラムを探す
更新日:

幇助と教唆の違いとは?成立要件、刑罰の違い、具体例などをわかりやすく解説

藤垣 圭介
監修記事
幇助と教唆の違いとは?成立要件、刑罰の違い、具体例などをわかりやすく解説

刑法では、正犯者だけでなく共犯者も処罰の対象としています。

この共犯者は刑法上、共同正犯、教唆犯、幇助犯という3つが規定されています。

本記事では、このうち教唆と幇助について、以下の内容を中心にわかりやすく説明します。

  • 教唆と幇助の定義や意味が異なること
  • 教唆犯と幇助犯の成立要件が異なること
  • 教唆犯と幇助犯で適用される刑罰が異なること
  • 闇バイトで教唆犯や幇助犯が成立する可能性があること など

本記事を参考に、教唆と幇助がそれぞれどのように違うのかについてしっかりと理解しましょう。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビ刑事事件で
刑事事件に強い弁護士を探す

教唆と幇助の違い1.それぞれの定義が異なる

教唆と幇助の定義は、それぞれ以下のようになっています。

  • 教唆とは、人をそそのかして犯罪を決意させること
  • 幇助とは、正犯者が犯罪を実行するのを容易にさせること

ここでは、教唆と幇助それぞれの定義について説明します。

教唆とは人をそそのかして犯罪を決意させること

教唆とは、他人をそそのかして「犯罪をしよう」という意思を生じさせる行為を指します。

(教唆)
第六十一条 人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
2 教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。

引用元:刑法 | e-Gov 法令検索

たとえば、以下のような行為をした場合には、教唆が成立する可能性があります。

  • 「○○を盗んでこい」などと命令した場合
  • 詐欺は簡単だと信じ込ませて実行させた場合
  • 金銭を支払って犯罪しようと決意させた場合 など

このようにまだ犯罪する意思がない人をそそのかして、犯罪を決意させた場合は「教唆」に当てはまります。

幇助とは正犯者が犯罪を実行するのを容易にさせること

幇助とは、正犯者(実行者)の犯罪を手助けすることを指します。

(幇助)
第六十二条 正犯を幇助した者は、従犯とする。
2 従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。
(従犯減軽)
第六十三条 従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。

引用元:刑法 | e-Gov 法令検索

幇助には、以下のように直接的なもの(物理的幇助)だけでなく、間接的なもの(精神的幇助)も含まれます。

  • 犯行に使う拳銃などを用意する
  • 犯罪をしやすい家や人を教える
  • 正犯者を犯行現場まで車で運ぶ
  • 店員の注意を引き付ける役割を果たす
  • 犯罪グループと知りながら他人を紹介する など

このような方法で実行者が犯罪をしやすいように手助けをした場合は「幇助」が成立することになるでしょう。

なお、教唆と異なり幇助の場合は、実行者は「すでに犯罪を実行することを決意している」という特徴があります。

教唆と幇助の違い2.それぞれの成立要件が異なる

教唆犯と幇助犯の成立要件は、それぞれ以下のとおりです。

教唆犯の成立要件

・教唆行為がおこなわれていること
・教唆に基づく正犯の実行行為があること
・教唆をするにあたり故意が認められること

幇助犯の成立要件

・幇助行為がおこなわれていること
・正犯の実行行為が存在していること
・実際に正犯の実行行為が容易になったこと
・幇助をするにあたり故意が認められること

ここでは、教唆犯と幇助犯の成立要件の違いについて説明します。

教唆犯は、そそのかされた正犯者が犯罪をした場合に成立する

教唆犯は、以下の3つの要件を全て満たした場合に成立します。

  • 教唆行為がおこなわれていること
  • 教唆に基づく正犯の実行行為があること
  • 教唆をするにあたり故意が認められること

たとえば「あの家は金持ちだから強盗しろ」と提案し、その通りに正犯者が実行したら教唆犯が成立します。

しかし、冗談交じりに提案をしていた場合や、異なる理由で犯行に及んだ場合には、教唆犯は成立しない可能性があります。

教唆犯の場合はそそのかす行為があるか、正犯者が教唆に基づいているかなどが重要な要件となってくるでしょう。

幇助犯は、手助けによって正犯者の犯罪が容易になった場合に成立する

幇助犯は、以下の4つの要件を全て満たした場合に成立します。

  • 幇助行為がおこなわれていること
  • 正犯の実行行為が存在していること
  • 実際に正犯の実行行為が容易になったこと
  • 幇助をするにあたり故意が認められること

たとえば、幇助犯が調達した拳銃を使って強盗をした場合には、幇助犯は成立しているといえます。

しかし、実際は拳銃を使わずバットを使ったという場合には、幇助犯は成立しない可能性があります。

幇助犯の場合は幇助がおこなわれているか、その幇助により犯行が容易になっているかが重要な要件となります。

教唆と幇助の違い3.適用される刑罰が異なる

教唆犯と幇助犯では、適用される刑罰にも違いがあります。

  • 教唆犯の場合:正犯の刑罰と同じものが適用される
  • 幇助犯の場合:正犯の刑罰を減軽したものが適用される

ここでは、教唆犯と幇助犯それぞれの適用される刑罰について説明します。

教唆犯の場合は「正犯の刑罰と同じもの」が適用される

教唆犯は、正犯と同じ法定刑が適用されます。

たとえば、殺人罪の教唆をしたときは、死刑または無期もしくは5年以上の懲役が科されます(刑法第199条)。

もっとも実務上は、教唆犯に対しては正犯の刑罰よりも軽減された罰則が適用されることが多いといいます。

なお、拘留または科料のみが定められている犯罪の教唆犯の場合は原則として処罰されません(刑法第64条)

幇助犯の場合は「正犯の刑罰を減軽したもの」が適用される

幇助犯には、正犯の法定刑を減軽したものが適用されます。

条文には「正犯の刑を減軽する」という規定があり、通常は以下のように減軽されます(刑法第68条)。

正犯の刑罰の種類

幇助犯の刑罰の内容

死刑の場合

無期の懲役もしくは禁錮または10年以上の懲役もしくは禁錮

無期の懲役または禁錮の場合

7年以上の有期の懲役または禁錮

有期の懲役または禁錮の場合

その長期および短期を2分の1に減らしたもの

罰金の場合

その多額および寡額を2分の1に減らしたもの

拘留の場合

その長期を2分の1に減らしたもの

科料の場合

その多額を2分の1に減らしたもの

たとえば、殺人罪の幇助をした場合は、死刑・無期懲役・有期懲役を決めたうえで減軽されます(刑法第69条)。

なお、教唆犯と同じで幇助犯の場合も、正犯が拘留または科料のみの犯罪であれば処罰されません。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビ刑事事件で
刑事事件に強い弁護士を探す

教唆と幇助の違い4.具体例でどちらに該当するか確認しよう

教唆犯と幇助犯の違いは、正犯者が実行する意思を持っているかどうかという点です。

  • 教唆犯:正犯者はまだ実行する意思を持っていない
  • 幇助犯:正犯者はすでに実行する意思を持っている

ここでは、殺害事件を具体例として教唆犯と幇助犯のどちらになるのかの違いを説明します。

教唆犯として扱われる可能性が高いケース

AがBを恨んでいる旨の相談を受けたとします。

この段階では恨んでいるだけで、Aは「Bを殺してやろう」などと思っているわけではありません。

そのときに「そこまで恨んでいるなら殺してしまったらどうだろうか。Bは独身だし、死体は海に捨ててしまえば見つからないだろう」などと助言したとします。

その結果、Aが犯行を決意して殺害行為に及んだ場合には、教唆犯が成立する可能性が高いでしょう。

幇助犯として扱われる可能性が高いケース

CからDの殺人計画に関する相談を受けたとします。

この段階でCはすでに「Dを殺してやる」という明確な意思を持っています。

そのときに「ナイフで殺したりすると証拠を隠滅するのが大変だ。Dが普段から飲んでいる薬を大量に飲ませてしまえば、Dが自殺をしたと偽装できるのではないか」などと助言したとします。

その結果、CがそのアドバイスにしたがってDを殺害した場合には、幇助犯が成立すると考えられます。

闇バイトは絶対に禁止!幇助犯で有罪判決になった事例もある

本件は、2024年10月に北海道でおこなわれた空き巣事件で幇助をしたという事例です。

被告人はタクシー運転手であり、空き巣の実行役を現場へと送り届ける「闇バイト」に応募しました。

本件では空き巣を容易にしたことから窃盗幇助が成立し、懲役1年2ヵ月の判決が言い渡されています。

闇バイトは実行犯を手助けするだけでも犯罪になりますので、絶対に応募をしないようにしてください。

さいごに|教唆はそそのかす行為で、幇助は手助けする行為を意味する

教唆と幇助の大きな違いは「正犯者に対して何をしたか」と「正犯者の犯行の意思がどうか」という点です。

教唆の場合は正犯者をそそのかして、「犯行をする」という決意を持たせた場合に成立する犯罪となっています。

一方、幇助は「犯行をする」意思を持った正犯者を手助けし、実行を容易にした場合に成立する犯罪といえます。

いずれも共犯にはなりますが、それぞれ定義や成立要件、法定刑などが違うため、正しく理解しておきましょう。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビ刑事事件で
刑事事件に強い弁護士を探す
この記事の監修者を見る
10秒で検索!離婚・男女問題が得意な弁護士を検索
お住まいの都道府県を選ぶ
お悩みの問題を選ぶ
弁護士を検索する
東京
神奈川
千葉
福岡
大阪
兵庫
弁護士法人浅野総合法律事務所

即日対応!弁護士直通!】【初回相談0円逮捕されたり警察の呼び出しを受けたりしたらすぐ相談ください!◆性犯罪(不同意わいせつ・盗撮・痴漢など)/暴行・傷害/児童ポルノなど、解決実績の豊富な弁護士がスピード対応します!《当日すぐに面談できます!》

事務所詳細を見る
【創業60年の豊富な経験】弁護士法人松尾綜合法律事務所

【元検事の弁護士在籍】的確な弁護活動が強み◆暴行傷害痴漢盗撮窃盗万引きなど、刑事事件の加害者になってしまった方/家族の身柄が拘束された方は直ちにご相談ください◆あなたに代わって示談交渉します      

事務所詳細を見る
【元検事在籍/早期釈放実績多数】弁護士法人葛飾総合法律事務所

初回面談30分無料】【元検事の弁護士が在籍刑事事件の対応実績豊富な弁護士が、依頼者様に寄り添います。早期釈放を通じた社会復帰のことも考えた対応を大切に、最後までサポート。ぜひお早めにご相談ください。

事務所詳細を見る
東京都の弁護士一覧はこちら
あなたの弁護士必要性を診断
あなたは刑事事件の…
この記事の監修者
藤垣 圭介 (埼玉弁護士会)
これまで500件以上の刑事事件に携わり、特に痴漢/盗撮/暴行/傷害に関する事件の解決を得意とする。レスポンスの早さにこだわりをもって対応し、豊富な経験をもとに即日接見を用いて、早期釈放を目指している。
この記事をシェアする
編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

刑事処分の種類と内容に関する新着コラム

刑事処分の種類と内容に関する人気コラム

刑事処分の種類と内容の関連コラム


刑事処分の種類と内容コラム一覧へ戻る
相談員

相談内容を選択してください

金アイコン
もらえる慰謝料を増額したい方
弁護士の方はこちら