刑事事件を起こして書類送検されても、まだ罪は確定していません。
前科や刑罰を回避するためには、不起訴処分を獲得することが重要です。
なるべく速やかに刑事事件の加害者弁護を得意とする弁護士にサポートしてもらうことで、不起訴獲得の可能性は高まります。
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書類送検(しょるいそうけん)とは、警察が被疑者の身柄を拘束せずに事件記録や捜査資料を検察に送る手続きのことを指します。
逮捕との違いは身柄拘束があるかどうかで、書類送検された時点では前科は付きません。意味を簡単にいえば「逮捕されないまま、事件が警察から検察へ引き継がれた状態」です。
テレビや新聞で「○○さんが書類送検された」などと報道されることもありますが、書類送検はいわゆる報道用語・マスコミ用語で、法律用語ではありません。
書類送検は逮捕と混同されることもあるほか、刑事事件を起こしてしまった方の中には「書類送検されると前科が付くのか」などと不安な方もいるでしょう。
本記事では、書類送検の定義や逮捕との違い、書類送検された場合の前科や刑罰、書類送検後の流れや対処法などを解説します。
刑事事件を起こして書類送検されても、まだ罪は確定していません。
前科や刑罰を回避するためには、不起訴処分を獲得することが重要です。
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ここでは、書類送検の意味や書類送検となるケース、実際に書類送検された人の割合などを解説します。
書類送検は報道用語・マスコミ用語で、一般的には「警察が被疑者の身柄を拘束せずに事件記録や捜査資料を検察に送る手続き」のことを指します。
刑事事件が発生すると、警察が捜査をおこなったのち、警察から検察へ事件記録や捜査資料などが送られて事件が引き継がれます(刑事訴訟法246条)。
警察から検察へ事件が引き継がれることを「送検(検察官送致)」と呼び、送検のうち被疑者の身柄を拘束した状態でおこなう場合は「身柄送検」、身柄拘束せずにおこなう場合は「書類送検」と呼ばれています。
書類送検の場合、基本的に被疑者の身柄拘束はおこなわれないため日常生活を送ることができるものの、在宅事件として捜査自体は進行しています。
したがって、捜査機関から取り調べのために何度か呼び出しを受けたり、捜査後に起訴されて前科が付いたりする可能性があります。
警察は、捜査した事件を原則としてすべて検察官に送致しなければなりません(刑事訴訟法246条)。これを全件送致主義といいます。
一方、逮捕は「捜査のために身柄を拘束する手段」であり、事件を送致するための条件ではありません。逮捕できるのは、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなど逮捕の必要性が認められる場合に限られます(刑事訴訟法199条)。
つまり、「事件は送致しなければならないが、身柄を拘束する必要はない」と警察が判断した場合に、書類だけを送る書類送検になります。書類送検は罪が軽いから見逃されたわけではなく、手続きが在宅で進んでいるだけです。
刑事事件で書類送検されるケースとしては、主に以下があります。
上記のようなケースでは、捜査機関側が「被疑者の身柄を拘束する必要がない」と判断し、書類送検となる可能性があります。
書類送検に至るまでの流れとしては「逮捕されないまま捜査が進行して書類送検される」というケースが多いものの、なかには「一度逮捕されたものの、釈放されて書類送検される」というケースもあります。
反対に、送検されずに終わるのは主に微罪処分となった場合です。微罪処分とは、被害が軽微で被害者が処罰を望んでいないなど一定の条件を満たす事件について、警察が検察に送致せず捜査を終える処分をいいます(刑事訴訟法246条但し書き・犯罪捜査規範198条)。
被害届の取り下げや示談の成立があっても、いったん捜査が始まった事件は原則として送致されます。示談は「送検を止める手段」ではなく、送検後に検察官が不起訴を判断するための有利な事情として働くものと考えておきましょう。
法務省が公表している「令和7年版 犯罪白書」によると、2024年に検察庁が処理した刑事事件について、書類送検の割合は約65.4%となっています。
| 項目 | 人員・割合 |
|---|---|
| 検察庁が処理した事件総数 | 29万1,555人 |
| 書類送検された件数 | 19万820人 |
| 書類送検の割合 | 約65.4%(小数点第2位以下切り捨て) |
なお、上記の統計には過失運転致死傷罪や道路交通法違反などの一部の刑事事件は含まれておらず、実際のところはさらに書類送検の割合が高い可能性もあります。
「書類送検はやばいのか」と不安な方もいるでしょうが、書類送検そのものは処罰ではなく、やばいかどうかは今後起訴されるかどうかで決まります。
不起訴処分となれば前科は付かず、刑罰・解雇・資格制限などの影響がないまま事件は終了します。2024年に送検された刑事事件では、約3件に2件が不起訴となっています(令和7年版 犯罪白書)。
一方で、起訴されてしまうと高い確率で有罪判決となり、前科が付きます。
つまり書類送検の段階は、まだ挽回できるかどうかの分かれ道にいる状態です。「書類送検されたら人生終わり」と感じている方も、不起訴になれば前科は付かず、仕事や資格を失うこともありません。
検察官が処分を決める前に示談の成立や有利な事情の提出を進めることで、不起訴の可能性を高められます。弁護士に相談して、起訴を避けるための準備を始めましょう。
書類送検された時点では、前科は付きません。前科が付くのは、送検後に検察官が起訴し、裁判で有罪判決が確定したときです。不起訴になれば前科は付かず、捜査を受けた記録である「前歴」だけが残ります。
刑事事件を起こしてしまった方の中には、書類送検後の前科や刑罰などが気になっている方もいるでしょう。
ここでは、刑事事件での書類送検後の扱いについて解説します。
単に書類送検は「身柄拘束のない状態で警察から検察へ事件を引き継ぐ」という手続きであるため、書類送検された時点では刑罰も確定しておらず、当然前科も付いていません。
刑事事件で前科が付くのは「送検後に検察官が被疑者を起訴し、裁判が開かれて有罪判決が確定した場合」です。
起訴とは「被疑者を刑事裁判にかけて処罰を求めること」であり、検察官は捜査をおこなったのち被疑者を起訴するか不起訴とするかを決定します。
刑事事件を起こして書類送検されても、不起訴処分となれば刑事裁判は開かれずに捜査終了となり、前科が付かずに済みます。
検察官が不起訴処分を決定した場合、前科は付かずに済みますが、前歴は残ります。
前歴とは「犯罪の容疑をかけられて捜査対象にされた経歴」のことです。
刑罰を受けて前科が付くと解雇や退学などの悪影響が生じるおそれがありますが、前歴だけであれば基本的に日常生活への大きな影響はありません。
ただし、警察や検察には前歴の記録が残るため、今後刑事事件を起こしてしまった際には不利な事情として働き、身柄拘束が長引いたり重い刑罰が科されたりするおそれがあります。
前科の場合、刑の執行が終わってから罰金以下は5年、拘禁刑以上は10年が経過すると刑の言い渡しの効力が消滅し、資格制限などが解除されます(刑法34条の2)。
一方、前歴には法律上の保存期間や抹消の規定がありません。
そのため、警察や検察の内部記録としての前歴は、期間の経過によって消えることはなく、事実上残り続けることになります。
ただし、前歴の記録はあくまでも捜査機関の内部資料であり、会社・学校・興信所などの第三者が照会することはできません。
前歴が残っていても、就職や資格取得などの日常生活で不利益を受けることは基本的にないので、過度に心配する必要はありません。
法務省が公表している「令和7年版 犯罪白書」によると、2024年に送検された刑事事件について、起訴率は約33%、不起訴率は約67%となっています。
ただし、以下の統計には書類送検だけでなく身柄送検されたケースも含まれており、書類送検のみの正確な起訴率は不明です。
| 送検後の決定状況 | 人員 | 割合 |
|---|---|---|
| 起訴 | 23万9,070人 | 約33%(小数点以下を四捨五入) |
| 不起訴 | 49万4,018人 | 約67%(小数点以下を四捨五入) |
なお「日本の刑事裁判の有罪率は約99.9%」と言われており、書類送検後に起訴されてしまうと高い確率で有罪判決が下されることになります。
書類送検は、逮捕・送検・微罪処分などの用語と混同されることもあります。
ここでは、書類送検と似た言葉の違いについて解説します。
逮捕とは、刑事事件の被疑者の身柄を拘束する法的手続きのことです(刑事訴訟法第199条1項など)。
書類送検は「刑事事件の被疑者の身柄を拘束せず、事件記録や捜査資料を検察に送る」という手続きですので、身体拘束の有無や手続き内容が異なります。
書類送検の場合、基本的には逮捕されないまま捜査が進行して書類送検となります。
ただし、なかには一度逮捕されたのち釈放されて書類送検となったり、書類送検後に逮捕されたりするケースもあります。
逮捕された場合(身柄事件)と書類送検された場合(在宅事件)では、その後の生活や手続きの進み方が次のように異なります。
| 比較項目 | 逮捕(身柄事件) | 書類送検(在宅事件) |
|---|---|---|
| 身柄拘束 | あり。警察署の留置施設などで生活する | なし。自宅で普段どおり生活できる |
| 時間の制限 | 逮捕から48時間以内に送致、検察官は24時間以内に勾留請求、勾留は原則10日(最長20日)(刑事訴訟法203条・205条・208条) | 処分までの期限の定めがなく、数ヵ月かかることもある |
| 取り調べ | 留置中に連日おこなわれる | 呼び出しを受けた日に警察署や検察庁へ出頭する |
| 仕事・学校 | 出勤・通学できず、発覚しやすい | 通常どおり通える。会社に知られないことが多い |
| 報道 | 実名で報道されやすい | 著名人・公務員などを除き、報道されにくい |
| 国選弁護人 | 勾留されると請求できる(刑事訴訟法37条の2) | 起訴されるまでは請求できず、私選弁護士に依頼する |
書類送検は、逮捕に比べて日常生活への影響が小さい手続きです。その一方で、期限がないぶん処分が決まるまで時間がかかり、その間に不安を抱えたまま過ごすことになります。
送検とは「警察から検察へ事件の引き継ぎをおこなうこと」を指します。
書類送検は送検の一種で、送検のうち「被疑者の身柄拘束を伴わないもの」が書類送検、一方で「被疑者の身柄拘束を伴うもの」は身柄送検に分類されます。
なお、送検も書類送検と同様に報道用語で、法律用語では検察官送致・送致と言います。
ニュースや法律の解説で使われる送検まわりの用語を、次の表で整理します。
| 用語 | 意味 | 法律用語か |
|---|---|---|
| 送検 | 警察から検察官へ事件を引き継ぐこと全般 | 報道用語 |
| 送致(検察官送致) | 送検を指す法律上の言葉(刑事訴訟法246条) | 法律用語 |
| 身柄送検(身柄付き送致) | 逮捕した被疑者の身柄とともに事件を送致すること(刑事訴訟法203条) | 報道用語 |
| 書類送検(不拘束送致・在宅送致) | 被疑者の身柄を拘束せず、書類と証拠物だけを送致すること | 報道用語 |
| 送付 | 告訴・告発・自首を受けた事件について、警察が書類と証拠物を検察官に送ること(刑事訴訟法242条・245条)。被疑者を特定した事件を送る「送致」と区別して使われる | 法律用語 |
| 追送検(追送致) | すでに送致した被疑者について、別の事件(余罪)を追加で送致すること(犯罪捜査規範197条) | 報道用語 |
報道で「不拘束のまま送致」「在宅のまま送検」とある場合は、いずれも書類送検と同じ意味です。
微罪処分とは「警察による捜査後、検察には送らずに事件終了とすること」を指します(刑事訴訟法246条但し書き、犯罪捜査規範第198条)。
警察が捜査したのち「検察官送致は不要」と判断した場合は微罪処分となり、一方で「検察官送致が必要」と判断した場合は書類送検または身柄送検となります。
書類送検とは手続きの内容が異なり、担当警察官が微罪処分を決定した場合、被疑者は送検されずに捜査終了となって刑罰も前科も付かずに済みます。

基本的な刑事手続きの流れは上図のとおりです。
ここでは、書類送検後の各手続きについて解説します。
書類送検後は、検察から電話や手紙などで呼び出しを受けて、検察庁にて取り調べがおこなわれます。
取り調べでは、事件の事実関係・事件前後の行動・被害者との関係性・これまでの生い立ちなど、事件状況や事件に関連する周辺事情について詳しく聞かれます。
取り調べ回数はケースによって異なり、罪を認めている自白事件の場合は1回で終了することもあれば、罪を認めていない否認事件の場合は複数回おこなわれることもあります。
なお、検察による呼び出しは任意ではあるものの、無視してしまうと「逃亡・証拠隠滅のおそれがある」と判断されて逮捕に発展するおそれがあるため、素直に応じましょう。
十分に取り調べがおこなわれたあとは、検察官によって起訴・不起訴が判断されます。
起訴された場合は裁判が開かれて有罪無罪や量刑が言い渡され、不起訴となった場合は刑事裁判は開かれずに捜査終了となり、刑罰も前科も付かずに済みます。
検察官の判断は、大きく次の3パターンに分かれます。
| 処分 | 内容 | 前科 | その後 |
|---|---|---|---|
| 不起訴 | 裁判を開かずに事件を終了させる | 付かない(前歴は残る) | 事件終了。本人が請求すれば不起訴になったことを告知してもらえる(刑事訴訟法259条) |
| 略式起訴(略式命令) | 100万円以下の罰金・科料が相当な事件で、被疑者の同意を得て書面だけで審理する(刑事訴訟法461条・461条の2) | 付く | 罰金を納付して終了。不服があれば告知から14日以内に正式裁判を請求できる(刑事訴訟法465条) |
| 正式起訴(公判請求) | 公開の法廷で裁判を開く | 有罪判決が確定すれば付く | 判決(拘禁刑・執行猶予・罰金など)まで数ヵ月かかる |
2024年に送検された事件の約67%は不起訴で終わっています(令和7年版 犯罪白書)。不起訴処分となる理由は、次の3つに分類されます。
| 不起訴の理由 | 意味 | 典型的なケース |
|---|---|---|
| 嫌疑なし | 犯人でないことが明らか、または犯罪を証明する証拠がないと判断された | 人違い・冤罪だったことが判明した場合 |
| 嫌疑不十分 | 犯罪を犯した疑いは残るものの、起訴して有罪を立証できるだけの証拠が揃っていないと判断された | 被害者の供述しか証拠がなく、客観的な裏付けがない場合 |
| 起訴猶予 | 犯罪の証明は可能だが、犯行の軽さ・示談の成立・反省の態度などを考慮して検察官の裁量で起訴しないと判断された(刑事訴訟法248条) | 初犯で被害が軽く、被害者との示談が成立している場合 |
不起訴の大半は起訴猶予です。つまり、示談の成立や反省の態度など「起訴猶予にふさわしい事情」を検察官が判断する前に揃えておくことが、書類送検後にできる最も効果的な対策になります。
検察官が起訴を決定した場合、被疑者は被告人という立場になって裁判が開かれます。
起訴処分には「正式起訴」と「略式起訴」の2種類があり、それぞれ手続きの進み方が異なります。
正式起訴は一般的な起訴方法であり、被告人は指定された期日に裁判所に出廷し、弁護側と検察側とで主張立証などを尽くしたのち、裁判官によって判決が下されます。
一方、100万円以下の罰金または科料に相当する軽微な事件の場合は「略式起訴」が選択されることもあります。
略式起訴の場合、被告人の出廷は不要で、検察官が提出した証拠資料などに基づいて書面のみで審理がおこなわれ、量刑が決められます(刑事訴訟法第461条)。
いずれの場合も、高い確率で有罪判決が下されて前科が付くことになります。
ニュースで「厳重処分を求める意見を付けて書類送検した」と報じられることがあります。この「意見」は、警察が事件を送致するときに送致書へ記載する、検察官に対する処分の希望のことです(犯罪捜査規範195条)。
処分意見は法律で種類が決まっているものではありませんが、実務では主に次の4つの表現が使われています。
| 処分意見 | 警察が伝えている内容 | 被疑者にとっての意味 |
|---|---|---|
| 厳重処分 | 起訴して厳しく処罰することが相当 | 最も重い意見。起訴を見込んだ弁護活動が必要 |
| 相当処分 | 検察官が相当と考える処分を求める | 中立的な意見。事件の内容に応じて判断が分かれる |
| しかるべき処分 | 検察官の判断に委ねる | 中立的な意見。相当処分とほぼ同じ意味で使われる |
| 寛大処分 | 起訴猶予など寛大な処分が望ましい | 最も軽い意見。不起訴の可能性が高い |
ただし、処分意見はあくまでも警察の意見であり、検察官を法的に拘束するものではありません。起訴・不起訴を決める権限は検察官だけにあり(刑事訴訟法247条・248条)、厳重処分の意見が付いていても不起訴になることはあります。
被疑者本人に処分意見が知らされることはなく、弁護士が検察官とやり取りするなかで把握できるケースがほとんどです。
処分意見は警察段階の捜査態度に左右されます。送致される前の警察の取り調べ段階から、示談や反省の姿勢を示しておくことが、寛大な意見につながり、その後の検察官の判断にも有利に働きます。
書類送検から処分が決まるまでの期間は、早くて1〜2ヵ月、長ければ半年以上かかります。各段階の目安は次のとおりです。
| 段階 | 期間の目安 |
|---|---|
| 事件発生〜書類送検 | 数週間〜数ヵ月(捜査の進み具合による) |
| 書類送検〜検察官からの最初の呼び出し | 数週間〜数ヵ月。半年以上連絡がないこともある |
| 呼び出し〜起訴・不起訴の決定 | 取り調べ1回で決まることもあれば、示談交渉の進み方によって数ヵ月かかることもある |
| 略式起訴〜罰金の納付 | 起訴から数日〜数週間 |
| 正式起訴〜判決 | 数ヵ月 |
いずれも目安であり、法律で決められた期限ではありません。書類送検された在宅事件には、逮捕・勾留を伴う身柄事件と異なり、処理期限の定めがありません。
そのため、書類送検から最初の呼び出しまでは数週間から数ヵ月程度かかることが多く、検察庁の混雑状況によっては半年以上連絡がないケースもあります。
起訴・不起訴が決まる時期も、取り調べの回数や示談交渉の進み具合によって変わります。
起訴された場合、略式起訴なら書面のみの審理で手続きは短期間で終わり、罰金を納付すれば終了します。正式起訴なら、起訴から判決までさらに数ヵ月かかるのが一般的です。
このように処分までの期間は読めないため、連絡を待つだけで過ごすのではなく、その間に示談交渉などの不起訴に向けた活動を進めておきましょう。
不起訴になっても、検察官から被疑者本人へ自動的に通知が届くわけではありません。通知の義務があるのは告訴人・告発人に対してだけで(刑事訴訟法260条)、被疑者本人は自分で請求しなければ結果を知らされないのが原則です(刑事訴訟法259条)。
そのため「呼び出しがあったあと、何ヵ月も連絡がない」という状態は、不起訴で終わっている場合と、まだ検察官が処分を決めていない場合の両方があり得ます。処分の結果は、次の方法で確認できます。
連絡がない期間も事件は検察庁に残っており、公訴時効が成立するまでは起訴される可能性があります。連絡がないことを不起訴と思い込まず、示談交渉などの弁護活動を進めておくことで、最終的な処分を有利にできます。
逮捕されないまま書類送検となった場合、会社に知られずに済むのが一般的です。
捜査機関には被疑者などの名誉を害さないよう注意する義務があり(刑事訴訟法196条)、捜査上の必要がないのに勤務先へ連絡することは基本的にないためです。
会社や家族に知られるとすれば、主に以下の4つの経路です。
社会的関心の高い事件などでは、警察発表をもとに実名報道され、会社に知られることがあります。
もっとも、逮捕を伴わない書類送検の段階では、著名人や公務員などのケースを除いて報道されないことがほとんどです。
事件を報道機関に発表するかどうかは各警察の判断であり、在宅事件は発表自体がおこなわれないことが多くあります。書類送検で報道されやすいのは、主に次のようなケースです。
報道で使われる「容疑者」は、逮捕されたかどうかに関係なく被疑者を指す呼び方です。ただし、書類送検の報道で実名を出すかどうかは各報道機関の基準によって異なり、一般の方の在宅事件では匿名や「○歳の男性」といった表記にとどまるケースが多いのが実情です。
社内で起こした事件や、被害者・目撃者が同僚であるような場合は、当事者から会社に伝わる可能性があります。
被害者との示談を成立させて誠意を示すことは、会社への発覚リスクを抑えるうえでも有効です。
事件の裏付けとして勤務状況などの確認が必要な場合は、例外的に捜査機関から勤務先へ照会がおこなわれることがあります。
書類送検されたことを、警察や検察から家族へ知らせることはありません。家族に知られるのは、主に次のような場面です。
家族に知られたくない場合は、捜査機関に携帯電話への連絡を希望しておき、弁護士に依頼して連絡窓口を一本化しておくと、自宅への連絡を減らせます。
たとえ会社に知られても、書類送検の時点では罪が確定していません。客観的に合理的な理由を欠く解雇は無効とされるため(労働契約法16条)、書類送検だけを理由にただちに解雇されることは基本的にありません。
懲戒処分についても、行為の性質や態様に照らして相当でなければ無効です(労働契約法15条)。勤務時間外の私生活上の事件は、会社の業務や信用に直接影響しない限り、懲戒の理由にはなりにくいとされています。
会社への報告義務は、就業規則に届出の規定がある場合を除いて基本的にありません。規定がなければ、自分から報告する必要はありません。
就職・転職への影響は、次のとおりです。
起訴されて有罪になると懲戒処分や資格制限の可能性が高まるので、会社への影響を最小限にするためにも、不起訴の獲得を目指して早めに動きましょう。
書類送検後は自由に生活できるからこそ、うかつな行動で状況を悪化させてしまうことがあります。次の4つは避けましょう。
呼び出しに応じない、引っ越しや転職をしたのに捜査機関へ連絡先を伝えないといった行動は、「逃亡のおそれがある」と判断されて逮捕される原因になります(刑事訴訟法199条)。
都合が悪い日は事前に連絡すれば日時を変更してもらえます。応じられない理由があるときは、無視ではなく連絡で対応しましょう。
謝罪や示談のつもりで被害者に直接連絡すると、被害者の恐怖心をあおったり、「口封じ・証拠隠滅を図った」と疑われたりして、かえって処分が重くなるおそれがあります。
被害者への連絡と示談交渉は、弁護士を通しておこなうのが原則です。捜査機関も、被害者の連絡先は加害者本人には教えず、弁護士限りで開示することが多くあります。
取り調べのたびに供述を変えると、供述全体の信用性が疑われ、反省していないと判断されやすくなります。話す内容は最初から一貫させ、記憶が曖昧な点は「覚えていない」と正直に伝えましょう。
自分の事件の証拠を処分しても証拠隠滅罪(刑法104条)には当たりませんが、「証拠隠滅のおそれがある」として逮捕の理由になり、処分の判断でも不利に扱われます。スマートフォンのデータ削除なども同じです。
SNSへの投稿や知人への相談が拡散し、被害者や勤務先に伝わることがあります。被害者の目に入れば示談交渉が難しくなり、実名や勤務先が特定される原因にもなります。
事件について話す相手は、弁護士と必要最小限の家族にとどめましょう。
ここでは、刑事事件を起こして書類送検された場合の対処法について解説します。
書類送検されてしまった場合は、速やかに弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談・依頼した場合、具体的には以下のような対応をしてもらえます。
刑事事件で不起訴処分や減刑を獲得するためには、検察官が処分を決める前にこれらの弁護活動を終えておくこと、つまりスピーディに動くことが大切です。
法律事務所によっては当日相談可能なところもあるので、まずはご相談ください。
暴行や窃盗などの被害者のいる刑事事件の場合は、被害者との示談交渉も有効です。
被害者との示談が成立していれば「当事者間では問題が解決している」と判断され、検察官が起訴・不起訴を決定する際に有利な事情として働く可能性があります。
起訴されて裁判になったとしても、示談成立などの事情が考慮されて執行猶予付き判決となったり、刑期が短縮されたりすることもあります。
刑事事件の示談金相場は、犯罪の種類によって以下のように異なります。
ただし、実際の被害状況や犯罪内容などによっても大きく変動するため、あくまでも参考程度に留めておきましょう。
| 犯罪種別 | 示談金相場 |
|---|---|
| 暴行罪 | 10万円~30万円程度 |
| 傷害罪 | 10万円~100万円程度 |
| 窃盗罪 | 被害額+~20万円程度 |
| 詐欺罪 | 被害額+~20万円程度 |
| 横領罪 | 被害額+~20万円程度 |
| 恐喝罪 | 被害額+~20万円程度 |
| 強盗罪 | 被害額+~50万円程度 |
| 不同意性交等罪(旧強姦罪) | 100万円~200万円程度 |
| 痴漢 | 30万円~50万円程度 |
| 盗撮 | 10万円~30万円程度 |
書類送検後に検察から呼び出された際は、素直に応じることも大切です。
検察からの呼び出しは任意ではあるものの、応じないと逮捕に発展するおそれがあります。
「身に覚えのない罪で書類送検された」というような場合でも、呼び出しを受けたら無視せずに素直に応じ、無実であることを主張しましょう。
なお、やむを得ない事情があって呼び出しに応じることができない場合は、電話などで事前に連絡すれば日時変更してもらえることもあります。
書類送検されやすい代表的な事件について、法定刑とその後の処分の傾向を解説します。処分は事件の内容や示談の有無によって大きく変わるため、ここで示すのは典型的な傾向です。
人身事故を起こすと過失運転致死傷罪に当たり、法定刑は7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条)。
人身事故は逃亡や証拠隠滅のおそれが低いことが多く、飲酒運転やひき逃げなどの悪質な事情がなければ、逮捕されずに書類送検されるのが一般的です。
被害者のけがが軽く、保険による賠償や示談が済んでいる場合は不起訴(起訴猶予)となることが多く、けがが重い場合や過失が大きい場合は略式起訴による罰金となる傾向があります。死亡事故や飲酒・無免許などが絡む場合は、正式起訴されて拘禁刑が求刑されることもあります。
2023年7月に施行された性的姿態撮影等処罰法により、盗撮は撮影罪として3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科されます(性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条)。
現行犯で警察署に連行されたあと、身元が確かで逃亡のおそれがないと判断されれば、その日のうちに釈放されて書類送検となるケースが多くあります。
初犯で被害者との示談が成立していれば不起訴となる可能性が十分にあります。一方、スマートフォンやパソコンから多数の余罪が見つかった場合や常習性が認められる場合は、起訴されて罰金や執行猶予付きの拘禁刑となる傾向があります。
痴漢は、衣服の上から触る程度であれば各都道府県の迷惑防止条例違反、下着の中に手を入れるなど悪質な場合は不同意わいせつ罪(6ヵ月以上10年以下の拘禁刑・刑法176条)に当たります。
迷惑防止条例違反の場合は、逮捕されても勾留されずに釈放され、書類送検となるケースが多くあります。初犯で示談が成立していれば不起訴、示談が成立しなければ略式起訴による罰金となるのが典型的な流れです。
不同意わいせつ罪は罰金刑がなく、起訴されれば正式裁判になります。示談が成立していれば不起訴の可能性がありますが、起訴された場合は執行猶予が付くかどうかが争点になります。
いずれの事件でも、被害者との示談が処分を分ける最大の要素です。示談交渉は弁護士を通す必要があるため、書類送検された時点で早めに相談しましょう。
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書類送検後に不起訴処分や減刑獲得を目指す際は、弁護士のサポートが必要不可欠です。
自力で取り調べや被害者との示談交渉などをおこなうのも可能ではありますが、刑事事件に関する最低限の知識やノウハウがないと思うように進まないおそれがあります。
特に示談交渉では、加害者が直接交渉を試みても拒否されるケースも多くあります。
弁護士なら、取り調べでの受け答えの仕方をアドバイスしてくれるほか、加害者の代理人として示談交渉を依頼することも可能です。
第三者である弁護士であれば被害者も交渉に応じてくれる可能性があり、法律知識や交渉ノウハウを活かして対応してもらうことで、スムーズな示談成立が期待できます。
起訴されて裁判になったとしても、弁護士なら被告人に有利な事情を裁判官に主張してくれて、執行猶予の獲得や刑期の短縮につながる可能性が高まります。
ここでは、書類送検に関するよくある質問について解説します。
書類送検後でも逮捕されることはあります。
多くの場合、在宅事件として身柄拘束を受けずに捜査が進行するものの、なかには捜査機関が「逮捕の必要性がある」と判断するケースもあります。
たとえば「検察からの呼び出しを何度も無視・拒否している」「被疑者に新たな余罪が発覚した」などの場合は逮捕の可能性があります。
書類送検されたからといって、必ずしも起訴されて有罪になるわけではありません。
2024年に送検された刑事事件の起訴率は約33%で、約3件に2件の割合で不起訴処分となっています(令和7年版 犯罪白書)。
一方、起訴後の有罪率は非常に高いため、裁判で無罪を獲得するのは困難です。
書類送検されたかどうかを本人が照会できる公的な制度はありません。
送致書類は捜査資料であるため、捜査中に本人へ開示されることはなく、実際には検察庁からの呼び出し連絡によって送検を知るケースがほとんどです。
どうしても事前に状況を知りたい場合は、弁護士に依頼すれば、捜査機関への問い合わせを通じて事件の進行状況を確認してもらえます。
なお、不起訴処分になったかどうかは、被疑者本人が請求すれば検察官から告知してもらえます(刑事訴訟法259条)。
逮捕・勾留されている身柄事件には厳格な時間制限がありますが、書類送検された在宅事件には処分を決めるまでの期限の定めがありません。
検察官は身柄事件を優先して処理するため、在宅事件では呼び出しまで数ヵ月かかることも珍しくありません。
連絡がない間も事件は検察庁に係属しており、忘れた頃に呼び出しを受けるケースもあるため、連絡がこない期間を利用して示談交渉などの弁護活動を進めておきましょう。
書類送検された段階では、パスポートの取得や海外渡航は法律上制限されません。
パスポートの発給が制限されるのは、長期2年以上の刑にあたる罪で起訴された場合や、逮捕状などの令状が出ている場合です(旅券法13条)。
ただし、捜査中に無断で長期間出国すると「逃亡のおそれがある」と判断されて逮捕に発展するリスクがあります。
海外渡航の予定がある場合は、事前に担当の検察官や弁護士に連絡・相談したうえで渡航しましょう。
書類送検されても人生終わりではありません。
2024年に送検された刑事事件の約67%は不起訴処分となっており(令和7年版 犯罪白書)、不起訴になれば前科は付かず、仕事や資格への影響も基本的にありません。
不起訴処分の獲得可能性は、被害者との示談成立や取り調べへの誠実な対応によって高められます。
処分が決まる前の今の段階で弁護士に相談し、不起訴に向けた活動を始めましょう。
会社(法人)が書類送検されることもあります。
労働基準監督官は司法警察官の職務をおこなう権限があり(労働基準法102条)、残業代の未払いや違法な長時間労働などについて、是正勧告に従わない場合などに書類送検されるケースがあります。
この場合、違反行為をした担当者だけでなく、事業主である法人にも罰金刑が科される可能性があります(労働基準法121条)。
また、送検された事案のうち重大・悪質なものは、厚生労働省によって企業名が公表される制度もあります。
警察には捜査した事件を検察官に送致する義務があり(刑事訴訟法246条)、被疑者が死亡していても捜査が終われば事件は送致されます。
ただし、死亡した人を起訴することはできないため、検察官は「被疑者死亡」を理由に不起訴処分とします。刑事責任が遺族に及ぶことはありませんが、被害者への損害賠償責任は相続の対象になります。
書類送検を被疑者が拒否することはできません。送致は警察の義務としておこなわれる手続きであり、被疑者の同意は必要ないためです。
被害届の取り下げや示談が成立していても、捜査が始まっていれば原則として送致されます。ただし、親告罪で告訴が取り消された場合は起訴できなくなるため、不起訴で終わります。
20歳未満の少年事件では、処分を決めるのは検察官ではなく家庭裁判所です。罰金以下の刑にあたる事件は警察から直接、それ以外の事件は検察官を経由して家庭裁判所へ送致されます(少年法41条・42条)。
家庭裁判所では、不処分・保護観察・少年院送致などの保護処分が決められ、成人の刑罰とは異なるため前科は付きません。なお、14歳未満は刑事責任を問われず、児童相談所での対応となります。
追送検とは、すでに送致した被疑者について、別の事件(余罪)を追加で検察官に送致することです(犯罪捜査規範197条)。
盗撮や窃盗などで余罪が多数見つかった場合に「○件を追送検」と報道されるのがこれに当たります。余罪が増えると起訴や重い処分につながりやすくなるため、余罪がある場合は早めに弁護士へ伝えて対応を相談しましょう。
刑事事件の中でも「事件が比較的軽微な場合」や「被害者との示談が成立している場合」などは、身柄拘束されずに書類送検となることもあります。
ただし、書類送検となっても捜査自体は進行しているため、のちのち起訴されて有罪判決となり、前科が付いたりする可能性はあります。処分の約3分の2は不起訴ですが、その大半は示談や反省の態度を評価した起訴猶予であり、何もせずに待っていて得られる結果ではありません。
書類送検された場合は速やかに弁護士に相談し、今後の動きをアドバイスしてもらいましょう。
迅速に弁護士のサポートを受けることで、不起訴処分や減刑獲得できる可能性が高まります。
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