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私人逮捕とは?一般人でも逮捕できる要件と4つの事例を解説

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事

犯罪はいつ起きるのかわかりません。

そのようなときに事件解決を果たすために活躍するものが私人逮捕です。

犯罪から一般市民を守るために警察機関がありますが、警察がいつでもどこでもいるとは限りません。

そのため、緊急を要する場合は一般の方でも{{{逮捕}}}をすることが可能です。

ただ、私人逮捕に関しての条件があり、その条件に沿わず逮捕をしてしまうと、逮捕した本人が逮捕罪や暴行罪に問われるケースもあります。

これは私人逮捕の条件を理解しておらず、「一般人でも現行犯で逮捕できる」という情報しかなかったことが原因です。

そのような事態を避けるため、本記事では私人逮捕の条件や私人逮捕によるトラブルの対処法を解説します。

ご家族が現行犯逮捕されてしまった方へ

私人逮捕とは、一般人による現行犯逮捕です。逮捕された場合、次のようなリスクがあります。

  1. 仕事や学校に影響が出る可能性
  2. 重い処分が下される可能性
  3. 前科がつく可能性がある

私人逮捕が行われるような痴漢や万引きには、冤罪の可能性もあります。

まずは弁護士に面会してもらい、取調べについての適切なアドバイスをしてもらってください。

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私人逮捕の条件

私人逮捕には条件があり、それに沿った内容でないと逮捕することはできません。

条件は、おおまかに二つあり一つずつ説明をしていきます。

犯人が現行犯人、準現行犯人であること

私人逮捕の条件の一つに現行犯であることがあります。

現行犯での逮捕は、警察でも逮捕状がいらないなどと、緊急性が高いため、私人の逮捕も認められるのです。

現行犯、準現行犯に当てはまらない限りは私人逮捕をすることはできません。

なので、明らかな犯罪で犯人が特定している場合であっても、現行犯でない限り私人が犯人を逮捕することはできないのです。

軽度の犯罪の場合、犯人の住所、氏名が明らかでなく、犯人が逃走するおそれがあること

私人逮捕のもう一つの条件が、30万円以下の罰金、拘留、科料の罪に当たる場合(過失傷害罪、侮辱罪)は、犯人の住所、氏名が明らかでなく、犯人が逃走するおそれがある場合です。

軽い犯罪の場合、たとえ現行犯であっても、知人や名前や住所が判明している場合、私人逮捕はできなくなります。

たとえば、故意なく怪我を負わされてしまいそれが現行犯であっても、犯人の名前がわかっている場合は、私人の逮捕はできません。

私人逮捕後の対応は?対応を間違えると罪を問われる場合もある

現行犯で、犯人を捕まえました。

しかし、その後の対応を間違い、行き過ぎた対応をしてしまうと捕まえた本人が罪に問われる可能性もあります。

私人逮捕をおこなった場合は、直ちに地方検察庁・区検察庁の{{{検察官}}}、又は司法警察職員に引き渡さなければならなりません。

正当な理由なくして司法警察員への引き渡しが遅れてしまうと逮捕監禁罪に問われる可能性があります。

また、私人逮捕で多いトラブルが、行き過ぎた取り押さえによる逮捕をおこなった私人の暴行罪です。

現行犯で犯人を捕まえた場合、抵抗してくる犯人もいるかと思います。とっさの判断で止むを得ない部分もあります。

しかし、職務として逮捕する義務がある司法警察職員と私人とでは「社会通念上」の差異が生じてもおかしくないでしょう。

問題はどこまでが「社会通念上相当だ」と評価されるかについてです。

こういう場合はどうなる?私人逮捕の事例

私人逮捕できるのか否かよくある事例を幾つか載せてみます。

もしも、この顔にピンときたら私人逮捕できるのか?

指名手配のポスターを交番などで見かけますが、指名手配犯を発見した際は私人逮捕できるのでしょうか?

指名手配犯は、犯行を行なってから時間が経っているので、現行犯には当たりません。

現行犯というためには、現に罪を行なっていること、現に罪を行ない終わったこと、または罪を行ない終わってから間がないと明らかに認められることが必要だからです。

したがって、一般人が指名手配犯を{{{現行犯逮捕}}}することはできません。

また、現行犯逮捕以外の逮捕は、捜査機関しかすることができず、一般人ではすることができません。

このように、一般人が指名手配犯を逮捕することはできないのです。指名手配犯を見つけたときは、最寄りの警察官に通報しましょう。

交通違反をした人を一般人が逮捕することはできるのか?

ここでは、飲酒運転や、ひき逃げ、当て逃げなどを私人が目撃した場合を想定します。

これらの場合には、現に罪をおこなった場合、または現に罪をおこない終わった場合に当たります。

そのため、私人でも{{{現行犯逮捕}}}をすることができます。

これに対して、道路交通法違反の罪の中でも30万円以下の罰金または科料にしかならいものの現行犯については、私人逮捕の条件の犯人の氏名や住居が不明な場合、または犯人が逃亡するおそれがある場合に限ってのみ、一般人でも逮捕することができます。

信号無視をした人を私人逮捕できるのか?

身近でよくある犯罪の一つが信号無視。

信号無視をした歩行者を一般人が現行犯逮捕できるは、犯人の氏名や住居が不明な場合、または犯人が逃亡するおそれがある場合に限られます。

歩行者による信号無視は2万円以下の罰金刑が最高刑であるため、上記のお通り住居不定・逃亡の恐れという条件を満たさない限り逮捕できません。

しかし、そもそも信号無視をした歩行者について刑事事件として立件される可能性はほとんどありませんし、常識的に考えて逮捕行為そのものが必要ない場合が多いと思われます。

信号無視をした歩行者がいたとしても、私人逮捕をおこなおうと思うのは止めてください(注意程度で済ませましょう)。

現行犯逮捕をする際、手錠をかけることはできるのか?

本来、私人が他人に手錠をかけることは、逮捕罪として違法です。

ただし、現行犯逮捕をする場合、実力を行使することは認められています。

これは私人による現行犯逮捕の場合でも変わりません。

そして、現行犯逮捕の際の実力行使は、公務員によるものであれ、私人によるものであれ、その状況からみて社会通念上逮捕に必要かつ相当と認められる限度内であれば、正当行為として許されています。

この枠組みによると、私人が現行犯逮捕のために手錠を用いることができるかどうかは、それが状況からみて社会通念上逮捕に必要かつ相当な限度内であるかどうかにかかっています。

必要かどうかについては、逃走防止のために手錠をかける必要性が認められることが多いのですが、状況によってケースバイケースとなるでしょう。

私人逮捕が誤認だった!逮捕した本人にも責任が生じるのか?

裁判により、逮捕された人が犯人と認められずに無罪判決を受けることがあります。

この場合、逮捕は誤認であったことになります。

誤認逮捕された人は、身に覚えのない罪により身柄拘束その他不利益を受け、場合によっては仕事をやめなければならない等社会的制裁を受けることになります。

当然、誤認逮捕された者の精神的苦痛は甚大といえます。

では、このようなケースで慰謝料を請求されてしまった場合、応じないといけないのでしょうか?

私人逮捕の場合でも、適法な要件(現行犯であることが状況から明らかであって、かつ逃亡のおそれが高いと認められること)があると信じる相当な理由があれば、刑事上・民事上の責任を追求される可能性は低いと思われます。

しかし、そのような理由が弱い場合には、過失による誤認逮捕であるとして、何らかの責任を問われる可能性はあります。

私人逮捕で犯人を捕まえた場合、報酬をもらえるのか?

もし、私人逮捕で犯人を捕まえた場合、警察機関から事件解決に役だったとして報酬をもらうことはあるのでしょうか?

残念ながら、報酬に関しては、期待しないほうがよいでしょう。

警察機関において、懸賞金の発表している犯人以外で、謝礼金のような金銭の授与はあり得ません。

あったとして、感謝状をもらえる程度です。

私人逮捕はあくまで、目の前で起きた犯罪を食い止め、犯人を逃さないための処置です。

事件に深く介入せず、警察に任せられる部分は警察に任せることが賢明です。

さいごに

犯罪はいつどこで起きるかわかりません。

また、被害者になるか、加害者になるか、はたまた目撃者になるのかはわかりません。

そのような、いつ起きるか分からない犯罪を食い止めるために刑事訴訟法第213条に「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。」とあります。

それが私人逮捕です。

痴漢や万引き等、目撃者が少なく犯人の特定が難しい犯罪においては、私人による現行犯逮捕が事件解決のために果たす役割は大きいものになります。

しかし一方で、私人にとっては、犯人が現行犯なのかどうかや、許される実力行使の限界等、判断が難しい場面が多いのも事実です。

その判断が難しい場合でも、犯人に犯行をやめさせ、その場で110番通報をしたり、目撃証言をすることは可能です。

犯罪の被害に遭い泣き寝入りする被害者を他人事とせず,一般市民が治安の良いまちづくりに貢献する方法はたくさんあるでしょう。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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