死刑に執行猶予は付くのか?重大犯罪をした人が弁護士に依頼する意義などを解説


刑事罰には「執行猶予」という猶予期間が設けられるケースがありますが、刑事罰の最高刑である死刑においても執行猶予が付くことはあるのでしょうか?
本記事では、死刑に執行猶予が付くのかどうかという点や、死刑が言い渡される可能性がある刑罰について詳しく解説します。
また、重大な犯罪を犯した人が弁護士に相談・依頼する異議や、弁護人が担う役割についても説明します。
なお、もしも重大な犯罪行為をおこなってしまい悩んでいる方がいたら、今すぐにでも弁護士へ相談してください。
弁護士であれば、今後の対処についてもアドバイスが可能です。
日本では死刑判決に執行猶予が付くことはない
結論からお伝えすると、日本における死刑判決で執行猶予が付くことはありません。
執行猶予については刑法25条に定められていますが、執行猶猶予が付くのは「3年以下の禁固または懲役、50万円以下の罰金刑」が科される場合のみです。
以下のとおり、ほかにもいくつかの条件がありますが、死刑に関する執行猶予については言及されていません。
(刑の全部の執行猶予)
第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
引用元:刑法 | e-Gov 法令検索
死刑の場合、懲役や禁固、罰金刑に該当しないため「執行猶予の対象になるのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、死刑には執行猶予がないということを覚えておきましょう。
中国の場合は死刑判決であっても執行猶予が付くことがある
日本をはじめとする多くの国では、死刑に対する執行猶予は認められていません。
しかし、中国では死刑に対する執行猶予が認められています。
中国における死刑制度には、即時執行の死刑と2年間の猶予付きの死刑が存在し、猶予付きの死刑の場合は猶予期間中に模範的な態度で生活することで、減刑が見込めるのです。
もちろん、2年の猶予期間を経ても死刑を免れられないケースもありますが、猶予期間に反省する機会を与えられる点で日本とは異なるといえます。
死刑を言い渡される可能性がある主な犯罪
ここからは、日本において死刑を言い渡される可能性がある犯罪について見ていきましょう。
万が一、心当たりがある場合は早期に弁護士へ相談して、対応を検討してください。
1.殺人罪|人を殺した場合に成立する犯罪
殺人罪は、人を殺した場合に成立する犯罪で、最高刑は死刑です。
日本においては、死刑判決が下るかどうかの一般的な量刑相場として「被害者数が2人以上」が基準とも言われますが、実際はこの基準だけではありません。
実際、過去には殺人で1人が犠牲になった事件おいて、犯人に死刑が言い渡されたこともあります。
反対に、4人を殺害していても、無期懲役となったケースもあるのです。
2.強盗致死罪|強盗に伴い人を殺した場合に成立する犯罪
強盗致死罪とは、強盗の際に人を負傷させたり、死亡させたりしたときに適用される犯罪で、こちらも最高刑として死刑が設けられています。
なお、強盗致死罪についてはそもそも法定刑が無期懲役と死刑しか存在しません。
また、強盗と似たものに「窃盗」がありますが、窃盗が強盗に該当する可能性についても理解しておくことが大切です。
物を盗んだだけでは「窃盗」として扱われますが、窃盗の際に「相手が盗まれたものを取り返そうとしたのに対し、暴行を加えた」などの事実があると、強盗に該当し強盗致死罪に問われる可能性があります。
日本において、窃盗は犯罪認知件数が非常に多い犯罪ですが、軽い気持ちで物を盗むと強盗として非常に重い罪に問われるリスクがあることを覚えておきましょう。
3.現住建造物等放火罪|人がいる建物などに放火した場合に成立する犯罪
現住建造物等放火罪は、人がいる建物や乗り物などに放火をした際に適用される犯罪で、最高刑として死刑が設けられています。
実際に、2019年に起きたアニメーションスタジオへの放火事件では、2024年に犯人に対して死刑の判決が下っています。
放火に関しては、周囲に燃え移ったり、一酸化炭素中毒などの有害ガスが発生したりすることで、被害が拡大する可能性があり、非常に重い法定刑が用意されているのです。
重大な犯罪をした際に弁護士に相談・依頼する3つの意義
重大な犯罪を犯してしまい、逮捕されると刑事裁判にかけられることになります。
しかし、自分一人だけで裁判を乗り切るのは非常に困難といえるでしょう。
なぜなら、裁判では法律の専門家である検察官が相手になるからです。
そこで、重大な犯罪によって逮捕されたとしても被告は弁護士に相談することができます。
ここでは、重大な犯罪を犯した人が、弁護士に相談・依頼する異議について解説します。
1.被疑者などの人権を守ってくれる
刑事事件における弁護人の役割はいくつかありますが、主たる目的のひとつが被疑者などの人権を守ることです。
刑事裁判は、被告人が実際に犯罪行為をおこなったか、おこなっていたならばどんな刑罰を科すべきか等を判断する場であり、有罪判決を受けるまで被告人等は無罪が推定されます。
これを推定無罪の原則といいます。
つまり、犯罪行為をしたと捜査機関から疑われたとしても、有罪が確定するまでは無実の人であり、人権が尊重される必要があるのです
世間一般においては「犯罪者なんだから弁護なんかするな」という意見も見られますが、裁判においては被告人であっても人権は守られるべきであり、その重要な手助けを担うのが弁護人なのです。
2.公平な刑事裁判を実現してくれる
弁護人は、公平な刑事裁判を実現する役割も担います。
被疑者や被告人については、推定無罪の原則が適用されるものの、実際は逮捕・勾留など手続きがおこなわれます。
その間は、一人きりで検察官からの取り調べを受ける必要があり、検察官が法律の専門家であることを考慮すると、決して公平とは言えません。
そこで、弁護人は公平な裁判を実現するために、取り調べに関する受け答えのアドバイスをしたり、被疑者が有する権利についてつたえたりすることが可能です。
また、後半の段階でも被告人の味方となって主張を展開し、公平な裁判の進行を実現します。
3.適切な判決が下されるよう努めてくれる
弁護士は、冤罪の場合はもちろんのこと、犯罪行為を実際におこなっていた場合であっても、犯罪に至る経緯や酌量の余地などを主張して、適切な刑罰が下されるように尽力してくれます。
仮に、検察官の言われるままに裁判をおこなえば、適切な判決が下されない可能性もあり、被告人にとって不利益な結果になりえるでしょう。
たとえば、ナイフで人を刺して殺害してしまったという場合において、殺害した結果自体は争いのない事実だとします。
しかし、犯行に至る事情として、殺害された人物がナイフを持って襲いかかってきたためにやむを得ずナイフで応戦したという事情があれば、正当防衛の成立が考えられるでしょう。
そのほか、正当防衛などの事情がなく犯罪が成立する場合でも、検察官が主張する量刑が重すぎる場合もあります。
このような場合にも、弁護人は適切な量刑を勝ち取るべく、法的知識に基づいて被告人の味方となってくれるのです。
さいごに|重大な罪を犯したときは弁護士のサポートが必要不可欠
本記事では、日本の死刑制度における執行猶予の有無と、死刑が下される可能性がある犯罪について解説しました。
日本おいては、死刑には執行猶予が付くことはありません。
死刑を言い渡される可能性がある犯罪行為は少ないものの、窃盗が強盗として扱われる可能性もあり、比較的軽い罪で合っても「自分は関係ない」とは言い切れないのが現実です。
もしも、万が一重大な犯罪行為をしてしまい悩んでいる場合は、今すぐに弁護士へ相談してください。
弁護士はたとえ犯罪を犯してしまった人であっても、人権を守り、適切な刑罰が科されるように尽力してくれます。
なお、弁護士を選ぶ際は「ベンナビ刑事事件」を活用して、刑事事件の弁護を得意とする弁護士を選びましょう。



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