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人身売買の特徴と手口|人身売買を防止する法律・条約の解説

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
人身売買の特徴と手口|人身売買を防止する法律・条約の解説

人身売買とは、人の身柄を拘束し、第三者と売買する行為です。主に売春をイメージすると思いますが、人身売買は売春以外にも重労働や臓器移植を目的に行われるとも言われています。

 

また、管理売春(身売り)と混同しやすいと思いますが、『当人が契約内容を了承しているか』『当人への金銭の支払いがあるか』『社会の法的保護があるか』の3点において人身売買と管理売春は異なります。

 

人身売買

管理売春

契約内容の了承

×

金銭の支払い

×

社会的保護

×

本記事では、人身売買の特徴や手口、人身売買を取り締まる条約や法律、実際に起こった人身売買の事例をご紹介します。

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人身売買とは|目的と主な特徴

まずは、人身売買の目的と主な特徴をご紹介します。

人身売買の目的

人身売買において、売り手の目的はお金を稼ぐことです。対して買い手は、主に労働力や戦力の確保、臓器移植を目的に人身売買を行うとされています。

購買目的

購買者の利点

肉体労働(単純労働の需要がある発展途上国に多い)

安い賃金で労働力が確保できるため

物乞い

チャリティ目的の募金活動はお金が集まるため

強盗や窃盗

購買主が直接、強盗・窃盗をやらずに済み、現行犯で逮捕されるリスクが軽減されるため

売春、児童ポルノの撮影に参加させる(繁華街などで犯罪組織が売買するケースが多い)

性産業は単価が高く、利益を出しやすいため

軍事力(テロや内戦のある国が多い)

危険地帯へ特攻させることができるため

臓器移植

臓器移植を必要とする人は、臓器移植しなければ命を落とす可能性が高いが、臓器移植できるドナーは限られているため

発展途上国やスラム街での犯行が多い

一般的に人身売買は、貧困層や少数民族、災害の被害者など行政から保護されにくい社会的弱者が対象になります。内戦や自然災害により社会情勢が不安定な国で犯行(人さらい)が行われやすく、実際に2004年のスマトラ島沖地震でも人身売買目的の誘拐が多発したそうです。

参考:子どもや若者、搾取や人身売買の被害に|公益財団法人日本ユニセフ協会

人身売買のよくある手口

続いて、人身売買の手口とされているものを紹介します。ただし、こういうことが絶対にあると断言できるものではありません。

 

あくまで参考程度にお読みくださいね。

簡単に稼げるなどの勧誘による誘拐

人身売買でよくある手口は誘拐です。「簡単に稼げるよ」「すぐ終わるから」など甘い言葉で誘惑します。

 

その後、車に連れ込んだ子供や女性の身柄を拘束し、売買します。

借金の肩代わりに売春を強要

借金の肩代わりに売春させるケースも少なくありません。被害者の多くは借用書すら持っておらず、残りの借金の残高がわからないため、半永久的に売春婦として働かされます。

親から業者への売買

貧困地域では養育費を支払う余裕のある世帯は多くありません。養育費を支払えない親が、金銭目的で子供を業者に売るケースもあるようです。

身売りからの転売

自らの意思で身売りしていた売春婦が、管理者から別の業者へ本人の許可なく不当に売られることもあります。

養子縁組を利用した売買契約

家事や重労働をさせる、または性奴隷にする目的で、養子縁組制度を介して、施設にいる子供を引き取るケースも少なくないようです。

人身売買によって科せられる罰則

人身売買の手口は多種多様ですが、日本には人身売買を刑法で取り締まる法律があります。刑法第226条2項によると、人身売買を行った者には、以下の罰則が与えられます。

  • 人身を購入した者は、3年~5年以下の懲役が科される
  • 未成年者を購入した者は3年~7年以下の懲役が科される
  • 営利目的、または性奴隷、結婚、身体に危害を与える目的で、人身を購入(または売却)した者は、1年~10年以下の懲役が科される
  • 国外へ人を売買した者は、2年以上の有期懲役に科される

(人身売買)

第二百二十六条の二 人を買い受けた者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

2 未成年者を買い受けた者は、三月以上七年以下の懲役に処する。

3 営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を買い受けた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。

4 人を売り渡した者も、前項と同様とする。

5 所在国外に移送する目的で、人を売買した者は、二年以上の懲役に処する。

引用元:刑法 第226条の2

人身売買に対する世界の動き

人身売買は、欧州をはじめ国際的に問題視する声が多く、厳しい処罰を与えるための動きが続いています。以下で人身売買に対する世界の対応を、時代別に確認しましょう。

1904年~:女性を売春婦として売ることを防止する条約の締結

1904年、売春目的に女性を売ることを防止するために、『醜業(しゅうぎょう)を行わしむるための婦女売買取締に関する国際協定』が欧州12ヶ国で締結され、その後、1910年に欧州13ヶ国で売春防止に人身売買を行う業者への罰則が加えられた『醜業を行わしむるための婦女売買禁止に関する国際条約』が締結されました。

1951年~:人身売買を禁止する条約の締結

1951年、人身売買自体を禁止するための『人身売買禁止条約』が発行され、2012年までには82ヶ国が加盟しています。日本は1958年に加盟しています。

2000年〜:国際的な組織犯罪を防止する条約の締結

人身売買の胴元は犯罪組織であり、人身売買自体と同時に国際的な組織犯罪そのものを防止する必要があります。このような組織犯罪を防止する目的で、国際組織犯罪防止条約が2000年に国連で採決され、2017年までに189ヶ国が加盟しています。

日本国内で問題視されている人身売買

最後に、日本国内で問題視されている、人身売買に関連するような事例をご紹介します。

身に覚えのない請求を理由に風俗勤務を強要

風俗店で働く女性の中には、根拠のない借金を背負わされて強制労働・性的搾取の被害に遭う女性もいるようです。被害に遭いやすいのは、風俗店が提供する寮住まいの女性。

 

「たくさん稼げる」「楽して稼げる」などの甘い言葉に誘われて踏み込み、寮の清掃や鍵交換で発生する費用などさまざまな請求を受けて、結果的に売春を強制されるということもあるようです。

参考:風俗店の寮「すぐ逃げて!」 人身取引、日本人も被害|毎日新聞

AV(アダルトビデオ)への出演強要

タレントやモデルになれるとスカウトされた女性が、アダルトビデオへ強制的に出演させられるという『出演強要』の問題もあります。被害者の多くは、アダルトビデオの求人とは知らずに契約を結んだが、出演を拒んだら「違約金を請求する」「親に伝達する」などの脅し文句により出演させられるそうです。

参考:日本経済新聞│人身取引でAV出演強要も 被害42人、日本人は最多

まとめ

人身売買は、本来あってはいけないものです。この記事で人身売買への理解を深め、防止に役立てていただけたら幸いです。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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