身柄拘束が長引くと、会社や学校に知られてしまうなど日常生活に影響が出る場合があります。
早期釈放を目指すなら、逮捕後72時間以内の対応が重要です。
家族が逮捕された方は、刑事事件が得意な弁護士に相談しましょう。
※一部初回面談無料の事務所もあり
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酔っ払って、物を壊してしまった。器物破損は、比較的罪の軽い犯罪です。しかし、軽いからこそ身の回りでもよく発生する犯罪でもあります。平成25年の犯罪白書(※)によると、器物破損は、窃盗、自動車運転過失致死傷に次いで多い犯罪件数になっています。
もしも、あなたや、あなたの身の回りの人が器物破損で逮捕されてしまった場合でも、逮捕後の流れや、刑を軽くする方法を知っているだけで、逮捕後の心理的負担を軽くすることができるでしょう。
※犯罪白書:法務省による、毎年の犯罪情勢と犯罪者処遇の実情を報告する白書。
まずはどのような行為が器物損壊罪に問われるのか、そして刑罰について解説します。
故意に他人の物を「損壊」、「傷害」する行為です。
損壊は動物以外の物の毀棄、傷害は動物に対する毀棄です。
毀棄とは、物の全部又は一部の物を物質的に破壊する一切の行為ほか物の本来の効用を失わせる行為も含まれます。
損壊の例としては、他人の車に傷をつける、壁に落書きする、店の窓ガラスを割る、自動販売機を蹴って凹損させる、他人の財布を見つからないように隠す、食器に放尿する、女性のバックに精液をかける、などの行為があります。
なお、傷害には、動物を傷つける行為のほか殺す行為も含まれます。また、動物を殺傷するなどした場合は器物損壊罪のほか動物愛護法違反にも問われる可能性があります。
前述のとおり、器物損壊罪は故意犯(わざと罪を犯した場合に問われる罪)ですから、過失(不注意)によって物を損壊、傷害した場合には器物損壊罪には問われません。
たとえば、物損事故を起こした場合に、他人の車を壊したことについて罪に問われないのがその典型です。もっとも、物損事故の場合でも民事上の責任(損害賠償責任)は問われます。
逮捕の一番の目的は「逃亡」、「罪証隠滅」の防止にありますから、逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれが疑われる場合には逮捕されます。
住居不定、一人暮らし(適当な監督者がいない)、無職、執行猶予期間中、前科を多数有している、犯行を否認しているなどという場合は逃亡のおそれが高いと判断されやすいです。
また、近隣トラブルによる器物損壊のケース、職場内での器物損壊のケースなど逮捕しなければ被害者・目撃者などと接触する機会が高いと認められるケースでは罪証隠滅のおそれが高いと判断されやすいです。
器物損壊罪の罰則は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」ですが、実際に科される刑罰は懲役か罰金で、科料が科されることはほとんどありません。また、仮に刑罰を科されることになったとしても、懲役の場合には執行猶予が付くことが多く、罰金の場合には事案にもよりますが10万円~20万円が相場でしょう。
令和2年犯罪白書によれば、令和元年中に器物損壊罪等(文書毀棄罪、建造物損壊罪、信書隠匿罪など)で処理された人(8,167人)のうち、警察に逮捕された人は「3,337人」と全体の約4割で、さらに、そこから勾留された人は「2,027人」と全体の約6割でした。
勾留されるとはじめ10日間、その後、さらに最大で10日間、身柄を拘束される可能性があります。また、勾留されたまま起訴されるとさらに2か月間の身柄拘束を受け、その後は、理由がある場合に限り、1か月間ごとに期間が更新されます。
勾留される身柄拘束期間が長期化すればするほど肉体的にも精神的にも辛い日々を送らなければなりません。もっとも、起訴前は勾留に対する不服申立て(準抗告など)、起訴後は保釈請求により早期釈放を実現することは可能です。
正式起訴された場合は、公開の法廷で刑事裁判を受ける必要があります。正式起訴された場合は検察から懲役を求刑されることが多く、有罪と認定されれば、懲役の長さ(懲役〇〇年)と実刑・執行猶予のいずれかが判断されます。
実刑の場合は、判決確定後に、裁判官から言い渡された期間、刑務所に服役する必要があります(もっとも、仮釈放による早期釈放は可能です)。
それでは、器物破損で逮捕されてしまったら、どのような流れで判決まで進んでいくのでしょうか。逮捕から、判決まで詳しく説明していきます。
器物破損で逮捕されると、まず、警察署内の留置所に取調べのため身柄を拘束されます。取調べの結果、身柄拘束の必要性がないとか、被害者の被害届が取り下げられたというような場合には、速やかに釈放されます。そうでない場合は、48時間以内に検察官に送致され、検事の取調べを受けることになります。
大事なのが、この段階で何も手を打っておかないと勾留という長期の身体拘束を受ける可能性があるということです。金銭的に余裕があるのなら、迷わず弁護士に依頼、選任しておいた方が良いでしょう。
身柄が検察庁に送致されると、勾留するか、釈放するかの判断のため、被疑者に対して取調べが行われます。しかし、取り調べはあくまで形だけで、ほとんどが勾留の流れへと進みます。裁判官に対して勾留の請求が行われます。
検察庁への送致から勾留の請求までは、24時間以内に行われることになっています。
検察官の請求により勾留を必要と判断する場合、裁判官は勾留決定を行います。この場合、被疑者は原則として10日間、身柄が拘束されます。警察及び検察は、その間に、取調べや証拠収集など、起訴に必要な捜査を行います。
また、勾留期間の延長が必要になった場合、検察官は裁判官に対して勾留期間の延長を請求し、最大10日間、勾留期間が延長されることがあります。
原則として10日間の勾留期間ですが、実際のところ勾留期間が延長され20日間勾留されることも多く、特に被疑者が犯行を否認している等の場合は高い確率で勾留延長されます。
※勾留と拘留の違い:拘留は既に判決の下った受刑者の身体拘束を意味し、勾留は裁判を待つ被疑者・被告人の身体拘束を意味します。
検察官は勾留期間中に、捜査の内容を元に、起訴する必要があるかどうかを決定します。起訴する必要がないと判断した場合には、被疑者は「不起訴」として釈放されます。器物破損の不起訴率は約60%で、「嫌疑なし」、「嫌疑不十分」、「起訴猶予」の内容に分かれます。
検察官が裁判所に対して起訴状を提出すると、公判手続へと移行していきます。被疑者は起訴されると被告人と呼び名が変わります。日本では、起訴されてしまうと99.9%の割合で有罪になります。起訴までに何か手を打てないと、有罪となり刑が下されてしまう可能性が極めて高いことになります。
判決の結果、被告人に刑が下されるわけですが、器物破損の場合、実刑が約35%、それ以外(執行猶予付判決及び罰金刑)が65%となっています。
続いて器物損壊罪における示談交渉について解説します。
被害者と面識がある、連絡先を知っているという場合でも、直接被害者と交渉しない方が良いでしょう。そもそも被害者が示談交渉に応じてくれない可能性が高いですが、仮に応じてくれたとしても、お互いに示談交渉に不慣れで、感情がぶつかり合って話がまとまらない可能性が高いです。また、被害者側に弁護士が付いた場合は、対等に交渉できず、不利な条件で示談を成立させられてしまう可能性も否定できません。
そのため、被害者との示談交渉は弁護士に依頼することが賢明といえます。弁護士であれば交渉に応じてよいという被害者も多く、被害者側に弁護士が付いたとしても対等に交渉できる結果、適切な形式・内容で示談を成立させることが可能です。
また、被害者と面識がない、連絡先を知らないという場合はなおさら弁護士の力が必要でしょう。被害者の個人情報を把握している捜査機関が、加害者であるあなたに被害者の個人情報を教えることはありませんが、弁護士であれば被害者しだいで個人情報を入手し示談交渉が可能となるからです。
器物損壊の示談金は数万円から数十万円程度で収まるのが通常です。
もっとも、示談金の額は、物の性質、損害額、被害の内容・程度、被害者の処罰感情、被害者の物に対する思い入れ、犯行態様・動機、加害者の年収・職業・社会的地位など様々な要素を考慮して決める必要があります。
ケースによっては数百万円単位となることもあるでしょう。
弁護士費用は、各法律事務所の費用体系、弁護士の活動内容、弁護活動の報酬によって異なりますが、一般的には60万円から130万円辺りが相場だと思われます。器物損壊で逮捕され、弁護活動によって釈放された場合、示談が成立し不起訴を獲得した場合などは、弁護士費用は高くなります。
器物破損の逮捕は、比較的刑が軽い犯罪です。しかし、勾留されたり、前科がついてしまうと、その後の生活にも影響が出てきてしまうこともあるでしょう。
逮捕から、勾留までは72時間しかありません。その後、しばらくは拘束されて出てくることができません。逮捕された段階から、時間との勝負になってきます。
起きてしまったことは取り返せませんが、これからのことも頭に入れ、どうするべきかが最善か考えていきましょう。
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