落書きの犯罪名は?逮捕の可能性や罰則・捕まった場合の対処法を紹介
落書きで逮捕されるケースはあり得ます。「落書きくらい…」と軽く思われるかもしれませんが、落書きは深刻な問題です。
落書きの程度や、落書きした範囲などによっては、問われる罪が異なり、中には懲役刑が定められた罰則もあります。決して軽視はできません。
この記事では、落書きで逮捕される経緯や、逮捕事例、逮捕された場合のリスク、逮捕された場合の対処法などを解説します。
落書きは逮捕される可能性がある?
落書き行為は、さまざまな罪に問われる可能性がありますが、そのなかには逮捕されるケースとされないケースがあります。
ここでは、落書きは現行犯逮捕されるのか、そして逮捕されるケース、逮捕されないケース、逮捕事例などについて解説します。
落書きは現行犯逮捕される?
報道などを見ると、落書きで逮捕されるケースとしてあり得るのはこちらです。
- 通行人が目撃して110番、駆けつけた警官に現行犯逮捕される
- 同一地域などで似た手口で落書きをしており、被害届から捜査が行われ逮捕される
- 職務質問で、所持品やカメラのデータから犯行が発覚して逮捕される
逮捕されない場合もある
逮捕には逃亡や、証拠隠滅の恐れがあるなど、逮捕要件が必要となります。落書きの場合は、逮捕されずに在宅事件となるケースもあります。
拘束されない在宅事件
在宅事件とは、加害者が身柄拘束を受けず、日常生活を送ったまま、刑事手続きだけが進行することです。
被疑者の身柄ではなく、事件の書類だけ検察に送致(送検)されます。法律上では使用されない報道用語ですが、『書類送検』といえば、わかる人もいるでしょう。
しかし、在宅事件だからといって、起訴されないというわけではありません。軽視することのないようにしてください。
【関連記事】
家にいながら起訴される在宅起訴と状況による事件の解決方法
落書きで逮捕・起訴された事例
シャッターに落書きした大学生を逮捕
渋谷のセンター街にある飲食店のシャッターに落書きをしたとして、米国・韓国籍の大学生が逮捕されました。
少年は目撃した通行人の通報で、駆けつけた警察官に現行犯逮捕されています。
近年は、観光に来た外国人による落書きも増加しており、深刻な問題です。
また、余罪があればそちらの罪でも逮捕されることも考えられ、相当期間身柄が拘束されることも理論上はあり得ます。
【参考】
産経ニュース|「日本に来た証を…」 東京・渋谷センター街で落書き、米国の大学生を再逮捕
【関連記事】
再逮捕の仕組みを解説|再逮捕までの流れと対策
八甲田の樹氷に落書きした男性に罰金20万円
青森市の八甲田山系の樹氷に落書きをして、威力業務妨害罪で逮捕されていたミャンマー国籍の男性に、罰金20万円の略式命令が出されました。
このように、落書き行為であっても起訴されれば刑罰を受け、結果、前科がつく可能性があります。
落書きで問われる可能性のある罪と罰則
器物損壊罪・建造物損壊罪
落書きで問われる可能性のある罪名はこちらです。
器物損壊罪(親告罪) |
他人の物を損壊し、または傷害した者は3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料に処する(刑法 第261条) 他人の所有物を故意に損壊した場合に該当 |
建造物損壊罪(非親告罪) |
他人の建造物または艦船を損壊した者は5年以下の懲役に処する(刑法 第260条) 人が出入り可能な建物が該当 |
損壊された対象物が、建造物から取り外し可能か、建造物の中で重要な役割があるかどうかや、落書や損壊の程度によって該当する罪が異なります。
落書きであっても、
「程度が酷く、外観ないし美観を著しく汚損し、原状回復に相当の困難を生じさせた」
として建造物損壊罪が適用された事例もあります。
裁判年月日 平成18年 1月17日 裁判所名 最高裁第三小法廷 裁判区分 決定 事件番号 平16(あ)2154号 事件名 建造物損壊被告事件 裁判結果 上告棄却 |
参考:文献番号 2006WLJPCA01170002
建造物損壊罪には懲役刑しかなく、非常に重い罰則です。器物損壊罪は、被害者の告訴がないと起訴できない親告罪ですが、建造物損壊罪は、違います。
被害者の訴えがなくても捜査機関が捜査・告訴することができる非親告罪なのです。
【関連記事】
建造物損壊罪の定義と器物損壊罪の違い|逮捕後の流れ
迷惑防止条例違反
落書きは、各自治体が定める迷惑防止条例でも罰則が設けられています。罰則も各自治体により異なりますが、5万円以下の罰金が科される可能性があります。
例えば、相模原市では、落書きに対して5万円以下の罰金と定められています。
(落書きの禁止)
第3条 何人も、落書き行為を行ってはならない。
(罰則)
第7条 第3条の規定に違反して落書き行為を行った者は、5万円以下の罰金に処する。
軽犯罪法違反
落書きの程度が酷くなく、清掃で比較的簡単に消すことができるものであれば、軽犯罪法違反として扱われる場合があります。
第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
三十三 みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし、若しくは他人の看板、禁札その他の標示物を取り除き、又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者
引用元:軽犯罪法 第1条、第33条
軽犯罪法違反の罰則は拘留または科料が科されます。つまり、1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置、または、1,000円以上9,999円以下の罰金です。
文化財保護法違反
歴史的建造物や天然記念物など、国の文化財に指定されているものを落書きで汚損した場合は、文化財保護法違反に問われる可能性があります。
名勝(文化財の一種)の現状を変更、保存に影響を及ぼす行為、滅失・毀損・衰亡させた場合、5年以下の懲役もしくは禁錮または30万円以下の罰金が科されます。
第百九十六条 史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をして、これを滅失し、き損し、又は衰亡するに至らしめた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮こ又は三十万円以下の罰金に処する。
引用元:文化財保護法 第196条
2017年に起きた西本願寺の「総門」に落書きされていた事件、2018年には天然記念物である「雄橋」に落書きが発見された事件など、記憶にある人もいるかもしれません。
【参考】
▶産経WEST|西本願寺の重文「総門」に落書き 4箇所に線や円など、引っかかれた跡
威力業務妨害罪
落書きが企業の業務に悪影響を及ぼせば、威力業務妨害罪に問われるケースもあります。威力業務妨害罪の法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(威力業務妨害)
第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
引用元:刑法 第234条
2018年には、青森市八甲田山系の樹氷に落書きをして、ロープウエー会社の業務を妨げた男性に罰金が科されています。
落書きで逮捕された場合のリスク
逮捕され、勾留されたような場合、逮捕から起算して最長23日間身柄が拘束される可能性があります。
もちろん勾留期間中は、学校に通学したり、会社に出勤したりすることはできません。長期の勾留は必然的に、私生活に大きな影響を及ぼすことになります。
起訴されるまでの期間は、13~23日しかありません。起訴されて刑事裁判で有罪となれば、刑罰が科されて前科がつきます。
もちろん、落書きの程度が軽微である場合や、被害者がそこまで強い処罰を求めていない場合は逮捕されなかったり、起訴されなかったりということはあります。
しかし、犯罪行為ですので軽々と落書き行為に及ぶべきでないことは当然です。
【逮捕後の流れはこちら】
刑事事件の流れ|重要な48時間・72時間・23日以内の対応
【勾留とは?】
勾留とは|勾留される要件と早期に身柄を釈放してもらうための対処法
落書きで逮捕された場合の対処法
弁護士を呼ぶ
落書きで逮捕されてしまった場合は、弁護士を呼ぶことで以下のようなメリットがあります。
- 在宅事件に切り替えてもらえる可能性が高まる
- 被害者と示談や弁済を行ってくれる
- 弁護活動の結果、早期に身柄が解放されることが期待できる
刑事事件は、以下の3種類の弁護士いずれかが担当します。状況に応じて、あなたが呼んだり、国に選任してもらったりしましょう。
- 当番弁護士
- 私選弁護人
- 国選弁護人
私選弁護人は、費用を負担してあなたが選ぶ弁護士です。国選弁護人は、国が費用を負担してくれる代わりに選ぶことはできません。
逮捕された段階では、1度だけ無料で呼べる『当番弁護士』をおすすめします。
取調べについての法的な助言や、今後の流れ、対策を相談することができますので、まずは呼んでみるとよいでしょう。
当番弁護士は、逮捕された場合に警察官に「弁護士を呼びたい」と希望することで利用できます。詳しくは関連記事をご覧ください。
【関連記事】
▶無料で簡単に呼べる当番弁護士は逮捕で困った被疑者の味方
▶逮捕後に呼べる弁護士の種類と選ぶにあたってのポイント
被害者と示談する
被害者との示談の成立は以下のようなメリットがあります。
- 示談の成立で告訴が取り下げられたり、不起訴処分になったりする可能性が高まる
- 被害者は民事訴訟を経なくても補償を受けることができる
示談の成立が、当事者同士のトラブルの解決と評価されるためです。示談が成立したからといって、必ず不起訴になるわけではありませんが、確率を高めることができます。
もちろん、倫理的にも被害者にしっかり謝罪することは重要です。損壊してしまった物の原状回復が可能となる程度の弁済を行うなどが挙げられます。
場合によっては、被害者の処罰感情が強く、示談に応じてもらえないこともあるでしょう。
そのような場合は、弁護士を介して行うことで、被害者も納得のいくように交渉してもらえます。
落書きで損害賠償請求される?
もし、被害者と示談が成立していない場合は、刑事処分を受けた後で、被害者から損害賠償請求をされるということもあり得ます。
損害賠償の範囲は、毀損させたものの落書きを消すのにかかった費用や、そのものを買い替えた場合の費用です。
これがもし電車の車両であった場合などを考えると、高額になることも考えられるでしょう。
まとめ
落書きと聞くと、一見軽いことのように感じられるかもしれませんが、そんなことはありません。観光で日本を訪れた外国人が落書きするケースなどもあり、深刻な問題にもなっています。
落書きの程度などによっては、逮捕されたり、重い罰則が科されたり、損害賠償請求されたりする可能性もあります。落書きは犯罪なのです。
逮捕後の流れや、弁護士に関しては、関連記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】
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▶逮捕後に呼べる弁護士の種類と選ぶにあたってのポイント
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