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尿検査で覚醒剤が出なくなるまでの時間は?陽性となった場合の刑事手続きなどを解説

ゆら総合法律事務所
阿部 由羅
監修記事
尿検査で覚醒剤が出なくなるまでの時間は?陽性となった場合の刑事手続きなどを解説

覚醒剤に関する犯罪の捜査では、被疑者に対して尿検査をおこなうことがよくあります。

覚醒剤を服用してから尿検査の反応が出なくなるまでの期間は、数日から2週間程度です。

服用後、比較的長期間にわたって尿検査が覚醒剤陽性となるので、特に常習者は尿検査による摘発のリスクが高いといえます。

尿検査で覚醒剤陽性の反応が出てしまうと、逮捕・起訴されて刑事罰を受ける可能性が高いでしょう。

重い処罰を避けるためには、刑事弁護を得意とする弁護士へ早めに相談することが大切です。

本記事では、尿検査で覚醒剤が出なくなるまでの時間や、覚醒剤陽性となった場合の不利益・刑事手続きなどを解説します。

覚醒剤に手を出してしまった方や、警察に尿検査を求められた方などは、本記事を参考にしてください。

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尿検査で覚醒剤の反応が出なくなるまでの目安期間

覚醒剤を服用すると、その後一定期間は、尿検査によって覚醒剤成分が検出されるようになります。

そのため、覚醒剤の使用などが疑われる被疑者に対しては、警察による尿検査が広くおこなわれています。

覚醒剤の服用後、尿検査で覚醒剤の陽性反応が出なくなるまでの期間は、短ければ3~4日程度、長ければ2週間程度です。

1回限りの服用であれば、覚醒剤の服用が発覚しないまま体外に排出され、摘発を免れるケースもあるかもしれません。

しかし、覚醒剤には常習性があるため、実際には何度も繰り返し服用してしまう人が多い状況です。

常習的に覚醒剤を服用している人については、尿検査がおこなわれれば常時覚醒剤が検出されますので、摘発のリスクはかなり高くなります。

覚醒剤の反応が出なくなるまで尿検査を回避するのが難しい理由

覚醒剤を使用する人にとって、覚醒剤の陽性反応が出なくなるまで尿検査を回避し続けることは、実際のところかなり難しいと考えられます。

その主な理由は以下のとおりです。

  1. 覚醒剤には常習性があるから
  2. 職務質問をされて任意の尿検査をされる可能性があるから
  3. 任意の尿検査を拒み続けると強制採尿令状を請求されるから

覚醒剤には常習性があるから

覚醒剤は、常習性の強い薬物として知られています。1度だけと考えて興味本位で服用したところ、その快楽にとりつかれ、覚醒剤を常用するようになってしまう方が後を絶ちません。

覚醒剤の常習者は、服用した覚醒剤が体外へ排出される前に次の覚醒剤を服用するため、尿検査がおこなわれれば常時陽性反応が出る状態となります。

このような状態では、尿検査によって覚醒剤使用などの摘発を受けるリスクはきわめて高いといえるでしょう。

職務質問をされて任意の尿検査をされる可能性があるから

覚醒剤を使用している人には、行動の自制が利かなくなる、瞳孔が散大するなどの特徴的な反応が見られます。

こうした覚醒剤に特有の反応が出ると、麻薬捜査の経験を豊富に有する警察官に見咎められ、職務質問を受ける可能性が高いです。

職務質問において覚醒剤使用などの疑いが生じた場合、警察官は対象者に対して任意の尿検査を依頼することがあります。

この段階では尿検査を断ることもできますが、警察官は尿検査を断った対象者に対して、覚醒剤使用などの疑いをさらに強めることになるでしょう。

任意の尿検査を拒み続けると強制採尿令状を請求されるから

覚醒剤使用などの疑いがある被疑者が任意の尿検査を拒否した場合、最終的に警察官は、裁判官に対して強制採尿令状の発行を請求します。

強制採尿令状が発行された場合、被疑者は採尿を拒否することができません

強制採尿は、医師がカテーテルを被疑者の尿道に挿入して尿を採取する方法でおこなわれます。

採取した尿は、警察による鑑定に回付され、覚醒剤反応の有無が確認されます。

なお、強制採尿は人体に対する侵襲を伴う強制処分であり、人権侵害に当たらないかどうかが問題となります。

この点、最高裁は以下のように判示し、厳しい条件をクリアすることを前提に強制採尿を認めています

「……強制採尿が捜査手続上の強制処分として絶対に許されないとすべき理由はなく、被疑事件の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らし、犯罪の捜査上真にやむをえないと認められる場合には、最終的手段として、適切な法律上の手続を経てこれを行うことも許されてしかるべきであり、ただ、その実施にあたっては、被疑者の身体の安全とその人格の保護のため十分な配慮が施されるべきものと解するのが相当である。

……体内に存在する尿を犯罪の証拠物として強制的に採取する行為は捜索・差押の性質を有するものとみるべきであるから、捜査機関がこれを実施するには捜索差押令状を必要とすると解すべきである。ただし、右行為は人権の侵害にわたるおそれがある点では、一般の捜索・差押と異なり、検証の方法としての身体検査と共通の性質を有しているので、身体検査令状に関する刑訴法二一八条五項が右捜索差押令状に準用されるべきであって、令状の記載要件として強制採尿は医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠であると解さなければならない。」

引用元:最高裁昭和55年10月23日判決

尿検査で覚醒剤の陽性反応が出たらどうなるのか?

尿検査で覚醒剤の陽性反応が出た場合、対象者は刑事訴追されて有罪判決を受けるおそれがあります。

陽性の検査結果は覚醒剤使用の有力な証拠となる

覚醒剤成分は、体内において自然に生成されるものではありません。

したがって、尿検査で覚醒剤の陽性反応が出た場合には、数日から数週間以内に覚醒剤を服用したことがほぼ確実といえます。

尿検査の検体が取り違えられていたなどの例外的な場合を除き、尿検査における覚醒剤の陽性結果は、対象者が覚醒剤を使用したことの有力な証拠となります。

捜査機関に身柄拘束(逮捕・勾留)をされる

尿検査によって覚醒剤使用の嫌疑が確実なものとなった場合、捜査機関は対象者を被疑者として逮捕する可能性が高いです。

逮捕の期間は最長72時間ですが、罪証隠滅や逃亡のおそれがある場合には、検察官の請求に基づき裁判官が勾留状を発します。

勾留状が発せられると、さらに最長20日間(逮捕と併せて最長23日間)身柄が拘束されます。

また、被疑者が起訴された場合は起訴後勾留へ移行し、被告人として公判手続きに至るまで身柄拘束が続くことになります(ただし、起訴後勾留への移行後は保釈請求が認められています)。

長期間にわたる身柄拘束は、被疑者・被告人の心身にとって大きな負担となるでしょう。

有罪判決が確定すると、懲役刑を科される

検察官によって起訴された被告人は、公判手続きにおいて有罪・無罪および量刑の審理を受けることになります。

覚醒剤の使用等は、覚醒剤取締法によって処罰の対象とされています。

第四十一条の二 覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第四十二条第五号に該当する者を除く。)は、十年以下の懲役に処する。

2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、一年以上の有期懲役に処し、又は情状により一年以上の有期懲役及び五百万円以下の罰金に処する。

3 前二項の未遂罪は、罰する。

第四十一条の三 次の各号の一に該当する者は、十年以下の懲役に処する。

一 第十九条(使用の禁止)の規定に違反した者

二~四 略

2 営利の目的で前項の違反行為をした者は、一年以上の有期懲役に処し、又は情状により一年以上の有期懲役及び五百万円以下の罰金に処する。

3 前二項の未遂罪は、罰する。

(使用の禁止)

第十九条 次に掲げる場合のほかは、何人も、覚醒剤を使用してはならない。

一 覚醒剤製造業者が製造のため使用する場合

二 覚醒剤施用機関において診療に従事する医師又は覚醒剤研究者が施用する場合

三 覚醒剤研究者が研究のため使用する場合

四 覚醒剤施用機関において診療に従事する医師又は覚醒剤研究者から施用のため交付を受けた者が施用する場合

五 法令に基づいてする行為につき使用する場合

引用元:覚醒剤取締法 | e-Gov法令検索

覚醒剤のみだりな所持・譲渡・譲受、または特に認められた場合を除く覚醒剤の使用をした者は「10年以下の懲役」に処されます(覚醒剤取締法41条の2第1項、41条の3第1項)。

また、営利の目的でこれらの違反行為をした者は「1年以上の有期懲役」に処され、または情状によって「1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金」に処されます(覚醒剤取締法41条の2第2項、41条の3第2項)。

覚醒剤の所持・使用等に関する公判手続きでは、非営利目的かつ初犯であれば、懲役1年6か月・執行猶予3年程度の判決が言い渡されるケースが多いです。

これに対して、営利目的である場合や再犯の場合などには、実刑判決を含めた重い懲役刑が科される可能性が高いと考えられます。

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尿検査で覚醒剤陽性であっても処罰されないケース

尿検査で覚醒剤の陽性反応が出た場合でも、以下のような場合には処罰を回避できる可能性があります。

  1. 無理やり覚醒剤を服用させられた場合
  2. 覚醒剤であるとは知らずに服用した場合
  3. 違法な手続きにより尿検査がおこなわれた場合

無理やり覚醒剤を服用させられた場合

他人に押さえつけられながら投与されたなど、自らの意思に反して覚醒剤を無理やり服用させられた場合には、覚醒剤の使用に関する罪は成立しません。

同罪の成立には犯罪の故意が要件であるところ、上記のようなケースにおいては、覚醒剤使用の故意がないためです。

ただし服用する意思はなかったとしても、覚醒剤を自らの意思によってみだりに所持していた場合には、覚醒剤所持の罪が成立し得るのでご注意ください。

覚醒剤であるとは知らずに服用した場合

実際に自ら覚醒剤を服用したものの、それが覚醒剤であるとは知らず、合法的な治療薬などであると勘違いしていた場合には、覚醒剤使用に関する罪は成立しません。

この場合も、覚醒剤使用の故意が認められないからです。

なお覚醒剤の所持・使用に比べて、その他の麻薬・向精神薬については多くの場合、所持・使用に関する刑罰が軽く設定されています(麻薬及び向精神薬取締法大麻取締法など)。

覚醒剤をこれらの麻薬・向精神薬であると勘違いして所持・使用した場合には、両罪の構成要件が実質的に重なり合う限度で、麻薬・向精神薬の所持・使用に関する罪が成立すると解されています。(最高裁昭和61年6月9日判決参照)

違法な手続きにより尿検査がおこなわれた場合

被疑者・被告人が任意に尿検査へ応じた場合には、その結果は原則として、刑事裁判における証拠として有効と考えられます。

これに対して、強制採尿による尿検査については、最高裁判例によってその適法性が厳格に解されています。具体的には、以下の要件を満たさなければなりません。

①以下の事情に照らし、犯罪の捜査上真にやむをえないと認められること

  • 被疑事件の重大性
  • 嫌疑の存在
  • 当該証拠の重要性とその取得の必要性
  • 適当な代替手段の不存在 など

②適切な法律上の手続を経ること

医師をして医学的に相当と認められる方法により実施させなければならない旨の条件を記載した、強制採尿令状に基づいておこなうこと

③被疑者の身体の安全とその人格の保護のため十分な配慮を施すこと

医師をして医学的に相当と認められる方法により実施すること

上記の要件を満たさない形で強制採尿が実施された場合、その検査結果は違法収集証拠に当たり、刑事裁判における証拠能力が否定される可能性があります。

そうなれば、被告人を有罪とすべき根拠となる有力な証拠が消えるため、被告人は処罰を免れる可能性が高くなります

覚醒剤使用による重い処罰を回避するための3つのポイント

覚醒剤使用による重い処罰を回避するためには、以下のポイントに留意して対応しましょう。

  1. 刑事事件が得意な弁護士に相談する
  2. 覚醒剤所持・使用の故意を否認する
  3. 誠実に薬物治療へ取り組む

刑事事件が得意な弁護士に相談する

適切な刑事弁護がおこなわれれば、覚醒剤使用による重い処罰の回避に繋がります。もし警察に逮捕されても、すぐに相談できる弁護士がいれば安心です。

覚醒剤の尿検査を求められた場合には、速やかに刑事事件の経験を豊富に有する弁護士へ相談しましょう。

「ベンナビ刑事事件」を利用すれば、刑事弁護を得意とする弁護士をスムーズに検索できます。

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覚醒剤所持・使用の故意を否認する

被疑者・被告人としては、覚醒剤の所持・使用に関する犯罪の故意を否認して罪責を争うこともできます。

犯罪の故意が否定されれば、覚醒剤の所持・使用の罪で処罰されることはありません。

具体的には、以下のような主張をおこなうことが考えられます。

  • 覚醒剤であるとは知らなかった(合法的な薬だと聞いていた)
  • 知らないうちにカバンに入れられていた
  • 他人に無理やり服用させられた など

逮捕前の行動などから、犯罪の故意がなかったと解すべきことを説得的に示せれば、無罪となる可能性が高まります。

弁護人と相談しながら、取調べや公判手続きにおいて主張する内容を慎重に検討しましょう。

誠実に薬物治療へ取り組む

覚醒剤の所持・使用をしたことが事実であれば、公判手続きにおいて有罪判決を受けることは避けられないでしょう。

この場合、被告人としては誠実に薬物治療へ取り組み、更生への強い意思を見せることが大切です。

真摯に反省して薬物治療へ取り組んでいる姿勢が伝われば、重い処罰は必要ない旨を裁判所に理解してもらうことができるでしょう。

ただし、覚醒剤は依存性が高い薬物であるため、治療に当たっては周囲のサポートが不可欠です。

家族や弁護士のサポートを受けながら、覚醒剤依存症からの脱却を目指しましょう。

さいごに

尿検査で覚醒剤の陽性反応が出た場合には、覚醒剤の使用等に関する罪で処罰される可能性が高いです。

尿検査における覚醒剤の陽性反応が出なくなるまでには、服用後短くても3日から4日程度、長ければ2週間程度待つ必要があります。

特に常習的に覚醒剤を使用している方は、常時覚醒剤の陽性反応が出る状態となるので、いずれは警察に逮捕されてしまう可能性が高いでしょう。

警察に覚醒剤の所持・使用などの疑いをかけられたら、速やかに刑事弁護を得意とする弁護士へ相談することが大切です。

適切に刑事弁護をおこなってもらえば、重い処罰の回避に繋がります。

「ベンナビ刑事事件」には、刑事弁護を得意とする弁護士が多数登録されています。

相談内容や地域に応じてスムーズに弁護士を検索できるので、たいへん便利です。

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この記事の監修者
ゆら総合法律事務所
阿部 由羅 (埼玉弁護士会)
ゆら総合法律事務所の代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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