危険ドラッグで逮捕された場合の流れや定義・罰則について解説
- 危険ドラッグ
- 危険ドラッグとは、体内に摂取することで幻覚・興奮作用を及ぼす薬物を指します。合法ドラッグや脱法ドラッグなどという名称で、あたかも人体に無害かのような形で販売されることもありますが、使用すると身体がけいれんしたり幻覚が見えたり、最悪のケースでは死に至ることもあります。
この記事では、危険ドラッグで逮捕された場合の流れや、定義・罰則などについて解説します。
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危険ドラッグの基本概要
まずは、危険ドラッグとは何かについて解説します。
危険ドラッグの定義
危険ドラッグとは、麻薬や覚せい剤などのように精神に影響を与える作用を持つ薬物で、かつては脱法ドラッグと呼ばれていました(より正確に危険性の高さを認識させるため、2014年に危険ドラッグへ名称を変更)。危険ドラッグを法的に定義するものはありませんが、大阪府警察や東京都福祉保健局では、次のように解説されています。
覚醒剤や大麻等の規制薬物と類似した化学物質を混入させた植物片等で、体内摂取により、これら規制薬物と同様の有害性が疑われる物をいいます。
「危険ドラッグ」には乾燥植物片状、粉末状、液体状、固体状(錠剤)といった様々な形態があり、「合法ハーブ」「アロマ」「リキッド」「お香」等と称して販売されています。
「合法」と謳っていても、実際に違法な成分が含まれていた例もあります。
たとえ違法な成分が含まれていなくても、本物の大麻の数倍から数百倍という強い作用を持つ成分が配合されているものもあります。
近年、これら危険ドラッグを使用した人が「嘔吐が止まらない」「瞳孔が開き、突然暴れ出す」「意識が朦朧(もうろう)とした状態となる」「突然服を脱ぎだし、訳の分からないことを叫ぶ」等という症状により、病院に救急搬送される例が急増しています。引用元:危険ドラッグとは|大阪府警察
「合法ドラッグ」「脱法ハーブ」などと称して販売されるため、あたかも身体影響がなく、安全であるかのように誤解されていますが、大麻や麻薬、覚醒剤などと同じ成分が含まれており、大変危険で違法なドラッグです。
危険ドラッグによる症状
危険ドラッグを使用すると、次のような症状が生じるとされています。
- 実際には存在しないものが見える(聞こえる)
- 集中力や判断力が低下する
- 激しい倦怠感に襲われる
- 極度に興奮する
- 身体がけいれんする など
一度使用するだけで強い禁断症状に襲われたり、中には命を落としたりすることもあります。安易な気持ちで手を出すと、一生が台無しになってしまう可能性もあります。
他の犯罪を誘発する危険性もある
危険ドラッグを使用することによって、以下の事件のような、さらなる犯罪が発生するケースもあります。
<判例> 東京・池袋の繁華街で2014年6月、危険ドラッグを吸って車を運転し、7人が死傷する事故を起こしたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われた男(38)に東京地裁(安東章裁判長)は15日、懲役8年(求刑懲役10年)の判決を言い渡した。 |
2014年には、危険ドラッグ使用者による交通事故が多く発生していることを受け、警視庁が『たとえ事故を起こしていない場合でも、危険ドラッグの使用が疑われる場合は現行犯で逮捕可能』へと、道路交通法に関する方針を変更しました。
参考:危険ドラッグ、事故前でも道交法違反で逮捕 警視庁|日本経済新聞
なお、もし違反した場合は、道路交通法第66条過労運転等の禁止にあたり、次のような罰則が科せられます。
(過労運転等の禁止)
第六十六条 何人も、前条第一項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。
引用元:道路交通法 第66条
第百十七条の二の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
七 第六十六条(過労運転等の禁止)の規定に違反した者(前条第三号の規定に該当する者を除く。)
危険ドラッグの罰則
法律で規制されている指定薬物(※)を含む危険ドラッグについては、覚せい剤や大麻などと同様に罰則の対象となります。
- 指定薬物
- 指定薬物とは、人間の神経系に働きかけて興奮作用や幻覚作用などを及ぼす薬物のうち、『人体に悪影響を与える危険性がある』と厚生労働省が判断・指定している薬物のことを指します。
覚せい剤の所持・使用
覚せい剤は、輸出入・製造・使用・所持・譲渡・譲受などが禁止されており、違反した場合は次のような罰則が科せられます。
(刑罰)
第四十一条 覚せい剤を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者(第四十一条の五第一項第二号に該当する者を除く。)は、一年以上の有期懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、無期若しくは三年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは三年以上の懲役及び一千万円以下の罰金に処する
引用元:覚せい剤取締法 第41条
第四十一条の二 覚せい剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第四十二条第五号に該当する者を除く。)は、十年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、一年以上の有期懲役に処し、又は情状により一年以上の有期懲役及び五百万円以下の罰金に処する。
引用元:覚せい剤取締法 第41条の2
第四十一条の三 次の各号の一に該当する者は、十年以下の懲役に処する。
一 第十九条(使用の禁止)の規定に違反した者
引用元:覚せい剤取締法 第41条の3
大麻の所持など
大麻は、輸出入・栽培・所持・譲渡・譲受などが禁止されており、違反した場合は次のような罰則が科せられます。
第二十四条 大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。
引用元:大麻取締法 第24条
第二十四条の二 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。
引用元:大麻取締法 第24条の2
医薬品医療機器等法
危険ドラッグは、輸入・製造・所持・販売・授与・譲受・購入などが禁止されており、特に営利目的での販売については厳しい罰則が科せられます。
(製造等の禁止)
第七十六条の四 指定薬物は、疾病の診断、治療又は予防の用途及び人の身体に対する危害の発生を伴うおそれがない用途として厚生労働省令で定めるもの(以下この条及び次条において「医療等の用途」という。)以外の用途に供するために製造し、輸入し、販売し、授与し、所持し、購入し、若しくは譲り受け、又は医療等の用途以外の用途に使用してはならない。
第八十四条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
二十六 第七十六条の四の規定に違反した者(前条に該当する者を除く。)
第八十三条の九 第七十六条の四の規定に違反して、業として、指定薬物を製造し、輸入し、販売し、若しくは授与した者又は指定薬物を所持した者(販売又は授与の目的で貯蔵し、又は陳列した者に限る。)は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
関税法
危険ドラッグの輸入については、関税法でも禁止されています。もし違反した場合は、次のような罰則が科せられます。
(輸入してはならない貨物)
第六十九条の十一 次に掲げる貨物は、輸入してはならない。
一の二 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第十五項(定義)に規定する指定薬物(同法第七十六条の四(製造等の禁止)に規定する医療等の用途に供するために輸入するものを除く。)
引用元:関税法 第69条の11
第百九条 第六十九条の十一第一項第一号から第六号まで(輸入してはならない貨物)に掲げる貨物を輸入した者は、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
引用元:関税法 第109条
薬物乱用防止に関する東京都の条例
指定薬物に該当しないものでも、東京都で『知事指定薬物(健康に悪影響を及ぼすおそれがある)』と判断された場合は、罰則の対象となります。具体的には、製造・栽培・販売・授与・広告・購入・使用・所持などが禁止されています(東京都薬物の濫用防止に関する条例第14条1号~4号)。
製造・栽培・販売・授与などについては、『1年以下の懲役または50万円以下の罰金』(東京都薬物の濫用防止に関する条例第22条)、広告・購入・使用・所持などについては、『6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金』が科せられます(東京都薬物の濫用防止に関する条例第14条1号~4号)。
危険ドラッグの事例
この項目では、危険ドラッグに関する事件発生状況や、事例などをご紹介します。
危険ドラッグに関する事件発生状況
引用元:令和2年度犯罪白書
2014(平成26)年以降は検挙人員が増加していますが、2019年には182人にまで減少しています。しかし、インターネットの普及によって、今後さらに輸入・販売などの手口が巧妙化することも考えられます。
そのため、薬物犯罪に関する1人ひとりの規範意識を、より高めていく必要があると言えるでしょう。
2017年12月金沢地裁の判決
2017年2月に、被告人が海外から指定薬物を含む危険ドラッグを密輸しようと企て、さらに石川県の自宅でも所持していたとして、医薬品医療機器等法違反、関税法違反などの容疑で逮捕された事件です。裁判所は「身勝手な動機で、酌量の余地はない」として、被告人に対し、懲役2年6ヶ月と執行猶予4年の判決を下しました。
参考:金沢地裁 平成29年12月21日(Westlaw Japan 文献番号 2017WLJPCA12216005) |
2017年12月千葉地裁の判決
2014年12月に長野県にて、被告人が指定薬物を含む危険ドラッグを所持し、さらに覚せい剤の原料の製造や密輸などを行ったとして、医薬品医療機器等法違反、関税法違反、覚せい剤取締法違反などの容疑で逮捕された事件です。裁判所は「薬物犯罪への規範意識が鈍麻しており、組織的犯罪グループの一員として行われた悪質な犯行である」として、被告人に対し、懲役20年と罰金1,000万円の判決を下しました。
参考:千葉地裁 平成29年12月11日(Westlaw Japan 文献番号 2017WLJPCA12116006) |
2018年7月甲府地裁の判決
2017年5月、山梨県にて普通乗用自動車を運転中、前を走行していた車に追突し、1名が死亡、1名が全治2週間の怪我を負ったという事件です。交通事故の原因は被告人が運転前に使用した危険ドラッグでした。
裁判所は被告人に対し、懲役4年6ヶ月の判決を下しました。
参考:甲府地裁 平成30年7月23日(Westlaw Japan 文献番号 2018WLJPCA07236002) |
危険ドラッグで逮捕された場合
最後に、危険ドラッグで逮捕された場合のその後の流れについて解説します。
刑事事件として扱われる
刑事事件では、逮捕されたのち、次のような流れを踏んで量刑が確定します。量刑の重さは、犯行の規模や計画性、危険ドラッグの使用歴などから判断されます。
危険ドラッグとは縁を切る
危険ドラッグに関する事件については、被告人が危険ドラッグと縁を切って更生できるかという点がポイントの1つと言えるでしょう。入手ルートを話したり、更生施設へ入所したり、反省文を作成したりするなどして、反省の念や更生の意思をしっかり示すことで早期釈放・減刑が見込めることもあります。
弁護士と相談する
本人や家族・知人だけで早期釈放・減刑を獲得することはなかなか難しいでしょう。経験のある弁護士に相談することで、『今後どう動けばよいか』適切なアドバイスをもらうことができます。
ひと口に弁護士と言っても、選択できる時期や費用などは弁護士の種類によって異なるため、もし実際に弁護士を呼ぶ場合は、以下の表を参考にするとよいでしょう。
関連記事:【夜間対応】刑事事件が得意な弁護士の無料相談はこちら!電話相談OK
まとめ
危険ドラッグは依存性・危険性ともに高く、一度使用するだけで命を落とすこともあります。もし、危険ドラッグに関する事件で逮捕された場合は、危険ドラッグとは縁を切って、反省の念や更生の意思をしっかりと示すことが大切です。
その際は、弁護士に相談して適切なサポートを受けることをおすすめします。
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