鑑別所とは?少年院との違い・収容の流れ・送致を回避する方法を解説
鑑別所(かんべつしょ)とは、正式名称は少年鑑別所と呼ばれ、家庭裁判所の少年審判を開くために犯罪を犯した未成年の少年を収容し、少年審判で処分を決めるための材料を集めたり調べたりする施設のことです。
具体的には、事件を起こしてしまった動機や、少年の性格や更生するために必要なことを、医学・心理学・社会学・教育学・人間科学などの専門知識の観点から観察し調査するところです。
少年院のことは知っている人は多いと思いますが、少年鑑別所のことを知っている人はあまり多くはないのでしょうか。
今回は、少年院と少年鑑別所の違い、少年鑑別所の役割や収容された少年が鑑別所でどんなことをするのか、最終的には少年審判でどういう処分を受けるのかについて書いていきたいと思います。
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鑑別所の役割とは
少年鑑別所は犯罪を犯して逮捕された未成年が収容される施設だとご説明しましたが、実際に、少年鑑別所の役割はどんなものがあるのでしょうか。
少年審判の判断材料を調査
先述いたしましたが、鑑別所には少年の処分を決める少年審判を開く上で必要な資料などを作成する役割があります。専門のスタッフが少年に対し面接や心理テストなどを行い、非行(事件)をしてしまう原因にはどんなことがあるのか、更生するにはどんなことが必要なのかを分析し、どのような処分が適当なのか意見も付けて鑑別結果通知書といった書類を家庭裁判所に提出することになります。
行動観察
観護措置決定がなされた後は鑑別所に収容されることになりますが、鑑別所の規則正しい日課を行なっていく中でどのような生活態度で生活するのかについて行動観察をします。行動観察をした結果も鑑別結果通知書に反映されることになります。
非行(事件)への内省をさせる
鑑別所に収容された少年が全員少年院に送られ矯正教育を受けるわけではありませんから、鑑別所にいる段階でも起こしてしまった事件に対して深く内省し、再犯させないために反省を促す役割も担っています。日々の日課で作文や日記を書くことになっていて、そこで自分のしてきたことや、どうすれば同じ失敗をしないようにするかを考えさせるようにしています。
収容期間
後述しますが、少年鑑別所に収容される際には、家庭裁判所にて観護措置という手続きを取られることになります。観護措置とは、原則として鑑別所送致を指します。観護措置は原則2週間までとされていますが、例外的に1回限り更新することができ、最大4週間の収容期間になります。原則は2週間ですが、実際にはほとんど1回更新され4週間が通常の収容期間になっています。
また、一定の事情がある場合は更に2回の更新することができます(特別更新)。一定の事情とは、以下のとおりです。
- 死刑、懲役や禁錮に当たる罪状の事件であること。
- 非行事実の認定に関し、証人尋問・精神鑑定・検証などを行なうことが決定されていて、又は実施されている場合。
- 少年を収容しなければ少年審判に著しい支障が生じる恐れがあると認められた場合
このようなことに該当すれば特別更新される場合があります。
少年院との違い
未成年の少年が何か事件を起こせば少年院に送られる、俗に言う「年少送り」というイメージの方が強いと思いますが、鑑別所は少年院に送るかどうか家庭裁判所が判断するための材料を集める場所になります。
ちなみに、少年院は鑑別所の収容などを経て少年審判で矯正教育(犯罪や非行のような社会的不適応がある人の性格などを矯正し、社会復帰させる教育)が必要と判断された少年を収容する施設になっています。
逮捕されてから鑑別所に収容されるまでの流れ
逮捕・勾留
逮捕・勾留されるところは成人と同じ手続きになります。逮捕されてから48時間以内に検察庁へ送られます(送致)。勾留の必要があれば勾留請求をし、認められれば最大20日間勾留されることになります。
ここからが成人と違ってきます。成人の場合は検察官によって起訴するかしないか判断することになりますが、少年の場合は全件送致主義といって全ての事件が裁判所に送られることになっています。送致される裁判所も地方裁判所ではなく家庭裁判所になります。
家庭裁判所にて観護措置(鑑別所送致・在宅)
家庭裁判所に事件が送られたら裁判官と面接し観護措置を付するか裁判官が判断します。先述いたしましたが、収容する期間は2週間となり、特に継続の必要がある場合は1回更新できることになっていますが、ほとんどの場合1回更新されるので実質4週間となります。事件によっては特別更新する場合もあり最大8週間の観護措置を取ることができます。
また、鑑別所には収容せず在宅のまま家庭裁判所の調査官の観護を受ける調査官観護になる場合もあります。
少年審判
観護措置又は在宅観護になった後、少年審判の開始決定が出たら少年審判をすることになります。これは成人で言うところの裁判であり、少年の処分を決めるものです。裁判は原則公開の場で行われますが、少年審判は原則非公開で行われます。処分の種類は、保護観察や少年院送致等の保護処分、検察官に事件を送り返し成人と同じ裁判にかける検察官送致(逆送)、何も処分する必要が無い時は不処分決定がされます。
また、これらの処分を直ちに決めるのが困難な場合は中間的な処分として試験観察というものがあります。一定期間帰宅させ少年の生活の様子を見て最終処分が決められることになります。
少年審判で受ける処分の種類
保護処分
保護処分は少年に刑罰を与えるのではなく、矯正教育によって環境を調整し健全な育成を図るための処分になります。
保護処分の種類は以下のものになります。
保護観察
保護観察官や保護司の指導・監督を受けながら社会内での更生を目指す処分になります。
少年院送致(初等・中等・特別・医療[特修短期・一般短期・長期・相当長期])
少年が再非行を起こす恐れが強く、社会内での更生が難しい場合に、少年院に送致し矯正教育を行う処分になります。
年齢や犯罪傾向の進み具合によって送致される少年院が決められ、その収容期間についても個別に決められます。
児童自立支援施設送致
比較的年齢が低い少年に、開放的な施設での教育が相当と判断された場合は児童自立支援施設に送致され教育を受けることになります。
都道府県知事・児童相談所送致
少年法における保護処分ではなく、児童福祉機関の指導・教育が必要と判断された場合は、都道府県知事や児童相談所に送致されます。
検察官送致(逆送)
少年の年齢が14歳以上であり、事件の重大性、少年の性格、心身の成熟度等を総合的に加味し、保護処分ではなく刑事罰を科すのが妥当と判断した場合には、事件を検察官に送り返し成人と同じ刑事裁判をかけることになります。これを俗に「逆送」と言い、少年審判において1番重い処分になります。
不処分
調査の結果、保護処分や検察官に逆送しなくても更生が期待できる場合や事件を起こした疑いが無くなった場合に、何も処分を下さない事があります。
試験観察(在宅・委託)
上記の処分を直ちに決めるのが困難な場合に一定期間調査官の指導・監督下に置き生活を観察する中間的な処分を試験観察と言います。一時帰宅させて行う場合と、ある施設に委託し行う場合があります。
処分に不服がある時にできること
少年法第32条において
保護処分の決定に対しては、決定に影響を及ぼす法令の違反、重大な事実の誤認又は処分の著しい不当を理由とするときに限り、少年、その法定代理人又は付添人から、2週間以内
に、抗告することができる。ただし、付添人は、専任者である保護者の明示した意思に反して、抗告することができない。
引用:少年法第32条
と定められており、主に保護観察、少年院送致、児童自立支援施設送致の処分に不服がある場合に抗告することが認められています。
抗告した場合は高等裁判所において、原則書面にて審理することになります。また、高等裁判所の決定にも不服がある場合には最高裁判所に再抗告することができます。
鑑別所送致(観護措置)になるのを回避する方法
観護措置は「審判を行うために必要があるとき」にとることができます。具体的には、
- 少年が非行を犯したと疑うに足りる事情があること
- 審判を行なう蓋然性があること
- 観護措置の必要性があること
これらの要件を満たしていないといけません。
また、その中の観護措置の必要性というのは
- 身体拘束の必要性(逃亡や証拠隠滅の恐れ・住所不定の場合)
- 緊急保護の必要性(自殺や自傷の恐れ)
- 少年を収容して心身鑑別を行う必要性(社会と切り離して継続的な行動観察や鑑別を行う必要性)
これらのことを指します。
観護措置決定を回避するためには、これらの必要性が無いことを主張し裁判所に認めてもらわないといけません。
捜査段階で弁護士に依頼をする
観護措置の必要性が無いことを具体的に主張するには弁護士の力は必要不可欠です。特に、少年事件で重要視されるのは少年の要保護性ですから、家庭裁判所に事件が送致されるまでの間に適切な弁護活動を行い、要保護性を減少させ、観護措置を行う必要は無いと主張する必要があります。
要保護性とは、事件を起こした少年が将来的に再び事件を起こしてしまう可能性のことを言います。
観護措置になってからできること
仮に観護措置決定がなされてしまい鑑別所に収容された場合には、
- 異議申立
- 観護措置取消申立
の方法で観護措置について争うことができます。
異議申立
観護措置決定が、上記に書いたような要件を満たしていないのに決定された場合に異議申立をすることができます。この場合、観護措置を決定した裁判官とは別の裁判官が合議体(複数の裁判官で判断する)で異議を認めるか判断することになります。
観護措置決定取消申立
少年審判規則という法律の第21条には
観護の措置は、その必要がなくなったときは、速やかに取り消さなければならない。
引用:少年審判規則第21条
と決められており、観護措置が決定された後に事件の事情や調査などの結果なども勘案した結果、「観護措置の必要が無くなった」と観護措置決定の取消を申し立てることができます。
実際の運用状況
実際には、逮捕・勾留されてしまってから家庭裁判所に送致されて来た事件に関しては、ほとんどが観護措置決定がなされているのが現状です。上記のような観護措置決定を争う手段もほとんど認められることはありません。
しかし、全部が全部そういうわけではありません。弁護士の迅速な弁護活動によって観護措置決定が出なかったり、決定が出た後に異議申立などをして認められたケースもあります。
ですから、捜査段階の早い段階から弁護士に相談・依頼をすることをオススメします。
まとめ
少年の更生のために、鑑別所で原因を調べることも必要かもしれませんが、少年が学生であったり就業している場合はその身柄拘束の代償が大きくなってしまう場合もあります。そういった代償を被るのを防ぐために、家族のサポートや弁護士の迅速な弁護活動は必要不可欠になってきます。
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