【一覧表付き】公訴時効とは?刑事事件の時効期間・時効が停止するケースを解説
公訴時効とは、犯罪から一定期間を過ぎると起訴できなくなる制度のことです。
刑事事件で公訴時効が完成した場合、刑事裁判は開かれずに捜査終了となるため、被疑者は刑罰を受けませんし前科も付きません。
ただし、時効期間は犯罪の種類によって異なるうえ、場合によっては時効の進行が途中で停止したりするケースもあります。
刑事事件の時効期間や時効完成について気になっている方は、本記事で公訴時効の基礎知識を押さえておきましょう。
本記事では、公訴時効の定義や罪名ごとの時効期間、公訴時効と似た制度との違いや、公訴時効が停止するケースなどを解説します。
公訴時効とは
ここでは、刑事事件の公訴時効の定義や、公訴時効の制度が存在する理由などを解説します。
公訴時効の定義

公訴時効とは、犯罪から一定期間を過ぎると起訴できなくなる制度のことです。
上図のとおり、刑事事件の被疑者として逮捕されると、まずは捜査機関による取り調べがおこなわれ、起訴された場合は刑事裁判にて有罪無罪や量刑が言い渡されます。
日本の刑事裁判の有罪率は99%以上と非常に高く、起訴された場合は高い確率で刑罰が科されて前科が付きます。
しかし、公訴時効が完成すると検察官は被疑者を起訴できなくなるため、刑事裁判はおこなわれません。
刑事裁判は開かれないまま捜査は終了し、被疑者は刑罰を受けませんし前科も付きません。
公訴時効がある理由
公訴時効という制度が存在する理由としては、主に以下の2つがあると言われています。
- 時間の経過とともに証拠が失われて適切な裁判が困難になるから
- 時間の経過によって処罰の必要性が低下するから
以下では、なぜ公訴時効があるのかについて解説します。
1.時間の経過とともに証拠が失われて適切な裁判が困難になるから
一つ目の理由は「時間の経過とともに証拠が失われて、適切な裁判が困難になるから」です。
刑事裁判では、裁判所に提出された証拠に基づいて事実認定がおこなわれます。
ただし、たとえば指紋やDNAといった物的証拠は周囲の環境によって徐々に消えていきますし、事件現場に居合わせていた目撃者の記憶なども段々と薄れていきます。
証拠を収集できる期間には限界があり、一定の時間が経過して証拠不十分な状態では正確な事実認定が困難であるため、公訴時効という制度が設けられていると言われています。
2.時間の経過によって処罰の必要性が低下するから
次に「時間の経過によって処罰の必要性が低下するから」というのも理由のひとつです。
そもそも刑事事件で刑罰を科す主な目的としては、「再び犯罪を犯さないように教育して社会復帰させるため」や「犯罪行為に対する責任を問うため」などがあります。
ただし、事件から時間が経過すると、加害者本人の意識や周辺環境などが変わって真面目な生活を送るようになったりして、再犯の可能性が低下したりする場合もあります。
被害者側の処罰感情なども時間の経過とともに薄れる場合もあることから、公訴時効という制度が設けられているとも言われています。
公訴時効の改正点
公訴時効は、法改正によって何度か変更されています。
たとえば、2010年の刑法・刑事訴訟法改正では「人を死亡させた罪のうち死刑にあたるもの」に関する公訴時効が廃止されました(コラム5:公訴時効制度の改正について|警察庁)。
また、2023年の刑法・刑事訴訟法改正では、一部の性犯罪に関する公訴時効が5年延長されました(性犯罪の規定が2023年(令和5年)7月13日から変わりました|法務省)。
法改正による公訴時効の変更点の一部をまとめると、以下のとおりです。
| 罪名 | 法改正前の公訴時効 | 法改正後の公訴時効 |
|---|---|---|
| 殺人罪 | 25年 | 時効なし |
| 強盗致死罪・強盗殺人罪 | 25年 | 時効なし |
| 強盗・不同意性交等致死罪 | 25年 | 時効なし |
| 不同意性交等致傷罪・不同意わいせつ致傷罪 | 15年 | 20年 |
| 不同意性交等罪・監護者性交等罪 | 10年 | 15年 |
| 不同意わいせつ罪・監護者わいせつ罪 | 7年 | 12年 |
公訴時効の改正点について詳しく確認しておきたい方は、以下の記事をご覧ください。
公訴時効と似た制度の違い
刑事事件の公訴時効と間違われやすい制度としては、たとえば刑の時効・告訴期間・消滅時効などがあります。
ここでは、公訴時効との主な違いについて解説します。
1.公訴時効と刑の時効の違い
刑事事件の時効は、公訴時効だけでなく刑の時効もあります。
刑の時効とは、刑事裁判で刑罰が確定してから一定期間を過ぎると、刑罰が執行できなくなる制度のことです。
公訴時効も刑の時効も「時効完成後は刑罰が執行されない」という点は共通しているものの、特に時効の起算点や時効完成の時期などの点で大きく異なります。
- 公訴時効:犯罪から一定期間を過ぎると完成し、時効完成後は検察官が起訴できなくなる
- 刑の時効:刑罰の確定から一定期間を過ぎると完成し、時効完成後は刑罰が執行できなくなる
なお、刑の時効の期間は、刑罰の種類によって以下のように異なります。
| 刑罰の種類 | 刑の時効の期間 |
|---|---|
| 無期拘禁刑 | 30年 |
| 10年以上の有期拘禁刑 | 20年 |
| 3年以上10年未満の拘禁刑 | 10年 |
| 3年未満の拘禁刑 | 5年 |
| 罰金刑 | 3年 |
| 拘留・科料・没収 | 1年 |
2.公訴時効と告訴期間の違い
公訴時効と似たものとしては、告訴期間などもあります。
告訴とは、被害者などの告訴権者が捜査機関に対して、犯罪事実の申告や犯人に対する処罰意思を示す手続きのことです。
犯罪には、被害者が告訴しないと起訴できない「親告罪」と、告訴しなくても起訴できる「非親告罪」の2種類あり、親告罪では告訴期間内に告訴がないと起訴できなくなります。
公訴時効も告訴も「一定期間を過ぎると起訴できなくなる」という点は共通しているものの、特に対象となる犯罪や期間などの点で大きく異なります。
- 公訴時効:重大犯罪を除く犯罪が対象となり、時効期間は犯罪の種類によって異なる
- 告訴:親告罪に該当する犯罪が対象となり、告訴期間は原則として犯人を知った日から6ヵ月以内(刑事訴訟法第235条)
どのような犯罪が親告罪に該当するのか確認しておきたい方は、以下の記事をご覧ください。
3.公訴時効と消滅時効の違い
公訴時効と混同されがちなものとして、消滅時効というものもあります。
消滅時効とは、権利を行使せずに一定期間を過ぎると、権利が消滅する民事上の制度のことです。
刑事事件で被害者が損害を被った場合は、加害者に対する損害賠償請求が可能ですが、消滅時効が完成すると損害賠償請求できなくなります。
公訴時効も消滅時効も「一定期間を過ぎた場合に時効の効果が生じる」という点は共通しているものの、特に時効の種類や効果などの点で大きく異なります。
- 公訴時効:刑事上の責任に関する時効であり、時効完成後は検察官が起訴できなくなる
- 消滅時効:民事上の権利に関する時効であり、時効完成後は被害者が損害賠償請求できなくなる
なお、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の期間は、以下のいずれか早いほうが適用されます。
- 被害者が損害・加害者を知ったときから3年
(人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の場合は5年) - 不法行為のときから20年
公訴時効の起算点
刑事事件の公訴時効の起算点は、犯罪行為が終了した時点です(刑事訴訟法第253条1項)。
警察に事件を知られたタイミングや、被害者が被害届を提出したタイミングではありません。
たとえば「コンビニで弁当を万引きした」という窃盗事件の場合は、弁当を手に持ったときではなく、弁当を自分の鞄の中に入れるなどの支配下におさめたときからカウントが始まります。
なお、共犯者がいる事件の場合は、最後の犯罪行為が終了したときが全員の起算点となります(刑事訴訟法第253条2項)。
公訴時効の起算点は、刑事事件に関する十分な知識がないと正確に判断できない可能性もあるため、少しでも不安であれば弁護士に一度ご相談ください。
【法定刑・罪名別】公訴時効の一覧表
刑事事件の公訴時効の期間は、犯罪の種類によって異なります。
ここでは、人を死亡させた罪と人を死亡させた罪以外の2つに大きく分けて、時効期間について解説します。
1.人を死亡させた罪の公訴時効
人を死亡させた罪の場合、公訴時効の期間は以下のとおりです。
| 法定刑 | 時効期間 | 罪名 |
|---|---|---|
| 死刑にあたる罪 | 時効なし | 殺人罪(刑法第199条)・強盗殺人罪(刑法第240条)など |
| 無期拘禁刑にあたる罪 | 30年 | 不同意わいせつ致死罪(刑法第181条1項)・不同意性交等致死罪(刑法第181条2項)など |
| 長期20年の拘禁刑にあたる罪 | 20年 | 傷害致死罪(刑法第205条)・危険運転致死罪(自動車運転死傷処罰法第2条、3条)など |
| 上記以外の罪 | 10年 | 過失運転致死罪(自動車運転死傷処罰法第5条)・業務上過失致死罪(刑法第211条)など |
2.人を死亡させた罪以外の公訴時効
人を死亡させた罪以外の場合、公訴時効の期間は以下のとおりです。
| 法定刑 | 時効期間 | 罪名 |
|---|---|---|
| 死刑にあたる罪 | 25年 | 現住建造物等放火罪(刑法第108条)・外患誘致罪(刑法第81条)など |
| 無期拘禁刑にあたる罪(性犯罪) | 20年 | 不同意わいせつ致傷罪(刑法第181条1項)・不同意性交等致傷罪(刑法第181条2項)など |
| 無期拘禁刑にあたる罪 | 15年 | 通貨偽造罪(刑法第148条)・身代金目的略取罪(刑法第225条の2第1項)など |
| 長期15年以上の拘禁刑にあたる罪(性犯罪) | 15年 | 不同意性交等罪(刑法第177条)・監護者性交等罪(刑法第179条2項)など |
| 長期15年以上の拘禁刑にあたる罪 | 10年 | 強盗罪(刑法第236条)・傷害罪(刑法第204条)など |
| 長期15年未満の拘禁刑にあたる罪(性犯罪) | 12年 | 不同意わいせつ罪(刑法第176条)・監護者わいせつ罪(刑法第179条1項)など |
| 長期15年未満の拘禁刑にあたる罪 | 7年 | 窃盗罪(刑法第235条)・恐喝罪(刑法第249条)など |
| 長期10年未満の拘禁刑にあたる罪 | 5年 | 背任罪(刑法第247条)・業務上横領罪(刑法第253条)など |
| 長期5年未満の拘禁刑や罰金刑にあたる罪 | 3年 | 暴行罪(刑法第208条)・名誉毀損罪(刑法第230条)など |
| 科料・勾留にあたる罪 | 1年 | 軽犯罪法違反など |
公訴時効が停止する3つのケース
刑事事件の公訴時効は、以下のような場合に停止します。
- 起訴された場合
- 犯人が国外にいる場合
- 性犯罪の被害者が18歳未満の場合
ここでは、公訴時効のカウントが停止するケースについて解説します。
1.起訴された場合
公訴の提起があった場合、公訴時効のカウントは停止します(刑事訴訟法第254条1項)。
検察官によって起訴されると、裁判が確定するまで時効の進行はストップし、裁判中に時効が完成することはありません。
なお、犯人が複数いる事件の場合は、犯人の1人が起訴されるとほかの共犯者の時効の進行もストップし、裁判が確定するまで時効が完成することはありません(刑事訴訟法第254条2項)。
2.犯人が国外にいる場合
犯人が海外にいる場合も、公訴時効のカウントは停止します(刑事訴訟法第255条1項)。
時効完成を狙って国外に逃げても、ただ時効の完成時期が先延ばしになるだけです。
たとえば「逃亡のためではなく仕事のために海外に行った」というようなケースでも、日本を離れている間は公訴時効のカウントは進みません。
なお、犯人が国内にいても「身を隠していて起訴状の送達や略式命令の告知ができない」というようなケースでは、公訴時効のカウントが停止します。(刑事訴訟法第255条1項)。
3.性犯罪の被害者が18歳未満の場合
犯罪のうち一部の性犯罪では、被害者が18歳に達するまで公訴時効のカウントは進みません(刑事訴訟法第250条4項)。
具体的には、以下のような性犯罪が該当します。
- 不同意性交等致傷罪
- 監護者性交等致傷罪
- 不同意わいせつ致傷罪
- 監護者わいせつ致傷罪
- 不同意性交等罪
- 監護者性交等罪
- 不同意わいせつ罪
- 監護者わいせつ罪 など
たとえば「不同意わいせつ事件で被害者の年齢が16歳」という場合は、通常の公訴時効である12年に、18歳に達するまでの2年が加算され、時効完成は14年後となります。
公訴時効に関するよくある質問5選
ここでは、刑事事件の公訴時効に関するよくある質問について解説します。
1.公訴時効があるのはなぜ?
公訴時効の存在理由としては、主に以下の2つがあると言われています。
- 時間の経過とともに証拠が失われて適切な裁判が困難になるから
- 時間の経過によって処罰の必要性が低下するから
ただし、公訴時効は法改正によって何度か変更されており、徐々に厳罰化の傾向にあります。
たとえば、2010年の法改正では「人を死亡させた罪で死刑にあたるもの」に関する公訴時効が廃止され、2023年の法改正では一部の性犯罪に関する公訴時効が5年延長されました。
特に重大犯罪などは、今後もさらに廃止や延長となる可能性があります。
2.公訴時効の起算日はいつ?
公訴時効の起算点は、犯罪行為が終了した時点です(刑事訴訟法第253条1項)。
警察に事件を知られたタイミングや、被害者が被害届を提出したタイミングではありません。
なお、共犯者がいる事件の場合は、最後の犯罪行為が終了したときが全員の起算点となります(刑事訴訟法第253条2項)。
3.時効直前に逮捕されることはある?
時効直前に逮捕されるケースは、あまりありません。
法律上は、時効を迎える寸前まで捜査を継続することが可能です。
ただし、逮捕後は警察官の取り調べ・検察への事件送致・検察官の取り調べなどの手続きを経る必要があり、検察官が起訴不起訴を判断するまでには相応の時間がかかります。
「明日には時効を迎える」「時効まで残り数時間」などの時効完成が間近に迫っているようなケースでは、実際に逮捕に踏み切られる可能性は低いといえます。
4.刑事事件で時効になるまで逃げ切ることは可能?
刑事事件では、時効で逃げ切れる可能性はゼロではないものの、現実的ではありません。
捜査機関は粘り強く捜査を進めますし、捜査手法は時代とともに著しく進化しています。
長期間の逃亡を続けて逮捕されると「反省の態度がみられない」などと判断されたりして、逮捕後に長期間の身柄拘束を受けたり、重い刑事処分が科されたりするおそれがあります。
基本的に時効での逃げ切りは考えず、まずは弁護士に今後のアドバイスを求めることをおすすめします。
5.時効が過ぎてから犯罪が発覚した場合はどうなる?
公訴時効の完成後に犯罪の事実が発覚しても、基本的には逮捕されませんし刑罰も科されません。
もし何らかのミスで時効完成後に起訴されたとしても、有罪・無罪を判断せずに訴訟を打ち切る「免訴判決」が出されて刑事裁判は打ち切りとなります(刑事訴訟法第337条4号)。
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