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ネットバンク等の不正送金で該当する罪名と刑罰と逮捕後の流れ

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
ネットバンク等の不正送金で該当する罪名と刑罰と逮捕後の流れ

不正送金(ふせいそうきん)とは、本来アクセスできないはずの他人のネットバンクにアクセスし、正規の口座利用者から許可を得ずにお金を引き出す犯罪です。

 

不正送金を行った場合、電子計算機使用詐欺罪不正アクセス禁止法など複数の罪に該当し、重い刑罰を課されるでしょう。実際に不正送金を行った犯人が有罪判決を受け、懲役8年に処された例もあります

参考:不正送金に関する裁判例・事件例

 

不正送金を行わないようにするために、

  1. 不正送金に該当する行為を事前に把握して押さえておく
  2. 自らが不正送金をしない
  3. 知らない間に他人の不正送金に手を貸さないように気を付ける

ということを徹底しましょう。

 

この記事では不正送金について知りたい人、巻き込まれたくない人に向けて、不正送金に該当する行為や実際に起きた不正送金事件の裁判例などをお伝えします。

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不正送金をした場合に成立し得る罪とその罰則

不正送金をした場合に該当する罪と、その罰則をお伝えします。

電子計算機使用詐欺罪|10年以下の懲役

電子メールやサイトなどコンピュータを利用して他人を騙し、不正に財産を取得する、または取得させた場合に罪に問われる可能性があります。刑罰に罰金刑はなく、懲役刑のみです。

人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。

引用元:刑法 第246条の2

不正アクセス行為の禁止(第3条)|3年以下の懲役または100万円以下罰金

不正アクセスを行ったときに問われる罪です。不正アクセスとは、以下の3つの行為を指します。

①アクセス制御のあるコンピュータに他人のIDやパスワードを使用して、制御されている利用を可能にする行為

②アクセス制御のあるコンピュータに特殊な情報や指令を入力して、制御されている利用を可能にする行為

他のコンピュータによるアクセスが制限されているコンピュータに特殊な情報や指令を入力して、制御されている利用を可能にする行為

何人も、不正アクセス行為をしてはならない。

引用元:不正アクセス行為の禁止等に関する法律 第3条

他人のパスワードなどを不正に取得する行為の禁止(第4条)|1年以下の懲役または50万円以下の罰金

不正アクセスを行うことを目的に他人のIDやパスワードを不正に取得した場合に該当します。

何人も、不正アクセス行為(第二条第四項第一号に該当するものに限る。第六条及び第十二条第二号において同じ。)の用に供する目的で、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を取得してはならない。

引用元:不正アクセス行為の禁止等に関する法律 第4条

不正アクセス行為を助長する行為の禁止(第5条)|1年以下の懲役または50万円以下の罰金

業務手続きなどの正当な理由を除いて、第三者に許可なく他人のIDやパスワードを伝えることは禁止されています。

何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を、当該アクセス制御機能に係るアクセス管理者及び当該識別符号に係る利用権者以外の者に提供してはならない。

引用元:不正アクセス行為の禁止等に関する法律 第5条

パスワードなどを不正に保管する行為の禁止(第6条)|1年以下の懲役または50万円以下の罰金

不正アクセスに用いる目的で、不正に取得された他人のIDやパスワードを保管することは禁止されています。

何人も、不正アクセス行為の用に供する目的で、不正に取得されたアクセス制御機能に係る他人の識別符号を保管してはならない。

引用元:不正アクセス行為の禁止等に関する法律 第6条

パスワードなどの入力を不正に要求する行為の禁止(第7条)|1年以下の懲役または50万円以下の罰金

金融機関や公共施設などを装った電子メールやサイトを用いて、他人にIDやパスワードの入力を要求することは禁止されています。正規のアクセス管理者がその要求に対してパスワードを入力していなくても刑罰の対象になります。

何人も、アクセス制御機能を特定電子計算機に付加したアクセス管理者になりすまし、その他当該アクセス管理者であると誤認させて、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、当該アクセス管理者の承諾を得てする場合は、この限りでない。

一 当該アクセス管理者が当該アクセス制御機能に係る識別符号を付された利用権者に対し当該識別符号を特定電子計算機に入力することを求める旨の情報を、電気通信回線に接続して行う自動公衆送信(公衆によって直接受信されることを目的として公衆からの求めに応じ自動的に送信を行うことをいい、放送又は有線放送に該当するものを除く。)を利用して公衆が閲覧することができる状態に置く行為

二 当該アクセス管理者が当該アクセス制御機能に係る識別符号を付された利用権者に対し当該識別符号を特定電子計算機に入力することを求める旨の情報を、電子メール(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成十四年法律第二十六号)第二条第一号に規定する電子メールをいう。)により当該利用権者に送信する行為

引用元:不正アクセス行為の禁止等に関する法律 第7条

不正送金が発覚して逮捕されるまでの経緯

不正送金の発覚原因は、被害者からの通報が多いようです。なぜなら、まず加害者が被害者のID・パスワードを盗み、正規の方法でアクセスした場合、サイトや銀行から見たら異常が見つかりません

 

そのため、被害者が気づいて通報する場合しか、警察が不正アクセスを認知できないからです。

 

ただ、金融機関などはログイン履歴を、またインターネットはIPアドレスを記録していますので、後の捜査で個人情報を特定できる可能性が低くはありません。

不正送金で逮捕された後の流れ

不正送金で逮捕された後の流れ

不正送金で逮捕された後はどのような流れになるのかご説明します。

警察による事件送致|逮捕後48時間以内

逮捕されると、まずは警察から取調べを受け、48時間以内に検察に事件と身柄は送致されます。

逮捕後の勾留|送検後24時間以内

検察は事件送致を受けてから24時間以内に、被疑者を勾留(※)すべきかどうかを判断します。検察が被疑者の勾留を請求し、裁判官がこれを認めれば勾留が決定されます。

 

勾留が必要だと判断される場合は以下のとおりです。

  • 住居が定まっていない
  • 証拠隠滅のおそれがある
  • 逃亡のおそれがある
※勾留とは
起訴・不起訴の判断を検察が下すまでの間、留置場などにて被疑者の身柄を拘束しておくこと

勾留期間|原則10日間・最大20日間

勾留期間は原則10日間です。もし検察が勾留期間延長の必要があると判断した際に、裁判官がそれを認めた場合は、勾留期間が最大20日間に延長されます。

 

勾留期間が延長される場合は以下のケースが多いようです。

  • 被疑者が罪を認めていない
  • 罪が重い
  • 組織的犯罪

起訴・不起訴決定|逮捕から23日以内

勾留期間が満了する前に、検察は被疑者の起訴・不起訴を判断します。不起訴の場合は釈放されますが、起訴されれば刑事裁判を受けることになります。

 

なお、日本の刑事裁判では統計上99.9%有罪判決となっているようです。

不正送金に関する裁判例・事件例

過去実際に起きた不正送金に関する裁判例や事件例をお伝えします。

不正送金の裁判例

判決刑罰

  • 懲役8年(未決勾留日数700日をその刑に参入する)
  • 押収した無線接続機器一式は没収

概要

フィッシングメールや遠隔操作ウイルス等を利用して複数企業のインターネットバンキングのIDやパスワードを不正に取得し、不正ログイン、不正送金を行った。

<参考>

裁判年月日:2017年(平成29年) 4月27日

裁判所名:東京地裁 

裁判区分:判決

裁判結果 一部有罪 文献番号: 2017WLJPCA04279011

新種ウイルスで不正送金 被害2.4億円 摘発不正送金の事件例

ワンタイムパスワード悪用

 警視庁サイバー犯罪対策課は5日、新種のコンピューターウイルス「ドリームボット」を使い、インターネットバンキング利用者の預金を不正に引き出していた犯罪グループを摘発したと発表した。被害は茨城県の法人など総額約2億4000万円に上るとみられ、同課は組織の全容解明を進める。ドリームボットは、使い捨てで不正防止に有効とされる「ワンタイムパスワード」を悪用するウイルスで、全国的に被害が多発していたが、摘発は初めて。

引用元:警視庁 新種ウイルスで不正送金 被害2.4億円 摘発 - 毎日新聞

まとめ

この記事では、主に以下の4点について説明してきました。

  1. 不正送金をした場合に成立し得る罪と罰則の種類
  2. 不正送金が発覚して逮捕されるまでの経緯
  3. 不正送金で逮捕された後の流れ
  4. 不正送金に関する裁判例・事件例

自分や家族、知人などが不正送金をしない、または巻き込まれないためにも、不正送金の内容や裁判例を知っておくことが大切です。もし、不正送金に関わってしまった場合には、弁護士に相談して解決に向かって動くようにしましょう。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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