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死体遺棄とは|構成要件や法律上の遺棄の意味・刑法の罰則について

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
死体遺棄とは|構成要件や法律上の遺棄の意味・刑法の罰則について

死体遺棄(したいいき)とは、人が亡くなった後、火葬などの埋葬手続きを取らずに捨て置くことを指します。死体遺棄は刑法で禁止されており、同罪で有罪判決を受けた場合は懲役刑が科せられます。

この記事では、死体遺棄の事例や罰則、散骨の違法性などについて解説します。

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死体遺棄の基本概要

まずは、死体遺棄とは何かについて解説します。

死体遺棄の定義

死体遺棄とは文字どおり死体を遺棄することで、死体遺棄それぞれについては、一般的に次のように定義されます。

死体というのは,死亡した人の身体をいい,人の形体を備えている以上,死胎をも含む。ここで遺棄というのは,通常の埋葬と認められない方法で死体等を放棄することをいう。

引用元:死体遺棄罪|コトバンク

遺骨の遺棄も『死体遺棄』の罰則対象

法律上は、遺骨を遺棄した場合も死体遺棄として扱われ、罰せられます。

以下のように、遺骨を遺棄した男性が死体遺棄容疑で逮捕されたケースなどもあります。

2020年1月、東京メトロ丸ノ内線東京駅のトイレに父親の遺骨を遺棄したとして男性が逮捕された事件です。警察によると男性用トイレの個室に遺棄したとのことです。

参考元:遺骨遺棄で男を逮捕、自宅に持ち帰らず東京駅のトイレに放置|CNN

散骨の違法性

自然葬の1つとして散骨(※)がありますが、これを厳密に取り締まる法律はありません

死体の扱い方は、墓地埋葬法で次のように触れられているものの、個人の宗教観などにも大きく関わるものであるため、取り締まりについても一定の余地が設けられていると考えられます。

第四条 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。

2 火葬は、火葬場以外の施設でこれを行つてはならない。

引用元:墓地埋葬法第4条

散骨については、法務省でも『社会的習俗として宗教的感情などを保護する目的だから、葬送のための祭祀で、節度をもって行われる限り問題はない』との見解が示されています(あくまで非公式のもの)。

ただし、場所によってはイメージ悪化などから、都道府県や自治体では散骨に関するガイドラインや一定の規制を設けていることもあるので、注意が必要です。

用語解説
散骨
散骨とは、死者の遺骨を粉状に砕いて、海・山・陸などに撒くこと。

死体遺棄の罰則

死体を遺棄することは刑法で禁止されており、もし違反した場合は死体遺棄罪が成立します。罰則については次のように定められています。

(死体損壊等)

第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。

引用元:刑法第190条

また刑事事件には、犯行から一定期間が過ぎると起訴ができなくなるという、公訴時効が設けられています。

時効期間は罰則の重さにより異なりますが、死体遺棄罪の公訴時効は、次のように定められています。

第二百五十条 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。

2 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。

六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年

引用元:刑事訴訟法第250条

死体遺棄の事例

最後に、死体遺棄の事例をご紹介します。

2020年10月さいたま地裁の判決

2019年9月埼玉県にて、養子(当時9歳)を電源コードで頸部を絞めつけ殺害したのち、電気水道設備室内に遺棄したという事件です。裁判所は被告に対し、懲役16年の判決を下しました。

参考:さいたま地裁 令和2年10月9日(Westlaw Japan 文献番号 2020WLJPCA10099003)

2018年2月奈良地裁の判決

2016年9月に奈良県にて、被告人が長女と共謀した上で、突然死した夫の死体を山林に遺棄したとして、死体遺棄容疑で逮捕された事件です。裁判所は「前科などがなく更生の余地は十分にある」として、被告人に対して懲役1年6ヶ月と執行猶予3年との判決を下しました。

参考:奈良地裁 平成30年2月5日(Westlaw Japan 文献番号 2018WLJPCA02059004)

まとめ

散骨のように宗教観が関わる場合は取り締まりも難しいようですが、明らかに違法性が認められるものについては、死体遺棄罪で罰せられます。

死者を満足に弔うことなく捨て置く死体遺棄は、まさに命を軽んじた行為といえるでしょう。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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