盗撮行為の時効と問われる罪状|逃げ切れる?償ったほうがいい?
盗撮をしてしまい、時効までなんとか逃げ切りたいと考えている方は多いでしょう。
しかし、盗撮の時効はいつなのか、時効成立まで逃げ切れるのか不安に感じている方もいるのではないでしょうか?
本記事では、盗撮の時効、時効まで待つのが難しいケースやその理由などについて解説します。
盗撮してしまった場合の対処法もあわせて紹介しているので、盗撮をしてしまった方はぜひ参考にしてください。
盗撮で問われる可能性のある5つの罪と時効
盗撮をした場合、どのような罪に問われるのでしょうか?
まずは、盗撮で問われる可能性がある罪の種類と時効について解説します。
1.撮影罪|時効は3年
盗撮すると、原則として撮影罪に問われます。
撮影罪は他人の性的な部位や下着などを相手の同意なく撮影したり、ひそかに撮影したりした場合に成立します。
正式名称は「性的姿態等撮影罪」で、2023年7月13日に性的姿態撮影等処罰法(略称)が施行されたのにともない導入されました。
撮影罪に問われた場合の法定刑は「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」で、時効は3年です。
しかし、盗撮だけでなく、盗撮した画像・動画を不特定多数の人に提供したり、インターネット上で拡散したりした場合は送信罪が成立する可能性があります。
この場合、「5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金」に処せられ、時効も5年となります。
盗撮のみにとどめれば時効は3年で成立しますが、不特定多数の人に画像・動画を提供した場合は5年に延長されると考えておきましょう。
2.迷惑防止条例違反|時効は3年
各都道府県では、独自の条例によって盗撮やストーカー行為などの取り締まりがおこなわれています。
条例名は都道府県によって異なりますが、一般的には「迷惑防止条例」と呼ばれています。
電車内や駅など公共の場で盗撮行為をおこなった場合は、迷惑防止条例違反として処罰されるでしょう。
罰則や時効も都道府県ごとに異なるため一概にまとめることはできませんが、東京都では以下のように定められています。
行為 |
罰則 |
盗撮目的で撮影機器を設置した場合 |
6ヵ月以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
撮影機器で盗撮をした場合 |
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
常習的に盗撮をしていた場合 |
2年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
上記のいずれの行為も時効は3年です。
なお、最近では公共の場以外での盗撮行為も取り締まる自治体が増えています。
この場合は自宅・学校・職場などでの盗撮も迷惑防止条例違反に該当し、上記の罰則に処せられます。
3.住居侵入・建造物侵入|時効は3年
盗撮をするために他人の家や店舗に立ち入った場合は、住居侵入罪や建造物侵入罪に問われる可能性があります。
他人の自宅などに侵入した場合は住居侵入罪、倉庫・事務所・ビルなどに侵入した場合は建造物侵入罪が適用されます。
これらの罪に問われた場合の法定刑は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」で、時効は3年です。
4.児童ポルノ禁止法違反|時効は3年
盗撮をした相手が18歳未満だった場合、児童ポルノ禁止法違反に該当する可能性があります。
児童ポルノ禁止法は、18歳未満の児童のわいせつな画像・動画を所持したり、第三者に提供したりすることを禁止する法律です。
盗撮行為は児童ポルノ禁止法における「製造」という行為に該当し、「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」に処せられます。
時効は、迷惑防止条例違反や撮影罪と同じ3年です。
5.軽犯罪法違反|時効は1年
軽犯罪法は、公共の場以外でののぞき見行為を禁止する法律です。
住居・会社内のトイレ・更衣室・タクシーの車内などでの盗撮行為は、軽犯罪法における「のぞき見」行為に該当します。
軽犯罪法違反に問われた場合の法定刑は「拘留又は科料」で、時効は1年です。
拘留とは、身柄を1日以上30日未満拘束すること、科料とは1,000円以上1万円未満の金銭納付を命じることを指します。
迷惑防止条例や撮影罪などと比べると刑罰が軽く時効も短いものの、前科がつくことには変わりありません。
盗撮の時効の起算点は撮影直後
時効がスタートする時点のことを起算点といいます。
刑事訴訟法では、時効の起算点は「犯罪行為が終わったとき」と定められています。
盗撮事件に関しては、「盗撮行為を終えたとき」が時効の起算点になるといえるでしょう。
盗撮の時効が完成したらどうなる?
盗撮の時効が完成した場合にどうなるのか解説します。
検察に起訴されたり警察に逮捕されたりする心配がなくなる
時効が成立したあとは罪に問われることはありません。
警察は犯人を逮捕できなくなり、検察官も起訴できなくなります。
不起訴処分として処理され、前科がつくこともありません。
被害者に告訴される心配もなくなる
時効が完成すると、被害者は告訴することができなくなります。
告訴とは、被害者が盗撮された事実を警察などに伝えたり、「公訴を提起してほしい」と意思表示をしたりすることです。
時効が完成する前であれば、被害者はいつでも告訴できます。
しかし、時効が完成したあとは告訴が認められないため、捜査されたり訴追されたりするおそれもなくなります。
盗撮で時効成立する可能性が低くなる3つのケース
時効が完成すれば逮捕・起訴されず罪にも問われなくなりますが、時効が完成するまで逃げきるのはかなり難しいといえます。
ここでは、時効完成まで待つのがとくに難しいケースを3つ紹介します。
1.前科や前歴がある
過去に犯罪を犯した経歴がある場合、警察内にDNAや指紋のデータが保存されています。
被害者の衣服・盗撮機器についていた指紋などと過去の指紋データを照らし合わせれば、誰が盗撮したのかすぐに特定できるでしょう。
そのため、前科・前歴がある場合は時効完成前に特定されて逮捕される可能性が高いといえます。
2.現場に忘れ物や落とし物をした
盗撮をおこなった現場に忘れ物をした場合も特定されやすいでしょう。
たとえばスマホを落とした場合、スマホ内の画像データなどから犯人が特定されます。
また、交通系ICカードを忘れてしまった場合は、カードに記録された情報から移動経路がわかります。
その移動経路をたどって防犯カメラの映像を確認すれば、犯人を容易に特定できるでしょう。
現場に忘れた所持品は犯人特定のための大きな証拠となるため、逃げ切るのはかなり難しいといえます。
3.盗撮したところを目撃されていた
盗撮現場を目撃されていた場合、顔を見られている可能性が高いでしょう。
とくに、毎日同じ電車を使っていて通勤途中に盗撮をした場合、目撃者が周囲に多数存在します。
電車に乗り合わせた人から警察に通報され、逮捕される可能性が十分にあるでしょう。
逮捕を回避するために通勤する時間やルートを変えたりする必要も発生し、身を隠しながら生活することになります。
盗撮で時効を迎えるのは難しい3つの理由
盗撮をした場合、時効を成立させるのは難しいとされています。
ここからは、盗撮で時効を迎えるのが困難な理由を3つ紹介します。
1.防犯カメラなどに記録が残っている可能性がある
防犯カメラに顔や犯行が映っている可能性があります。
近年は街中の至る所に防犯カメラが張り巡らされているため、どれだけ注意していても顔や犯行の様子が残っている可能性は高いと考えられます。
防犯カメラの映像から犯人を特定することは十分可能なので、逃げ切るのは難しいといえます。
2.警察は画像データを消去していても復元できる
警察は、「デジタル・フォレンジック」という技術を活用して画像の高度な解析をおこなうことが可能です。
データを復元して画像内の文字や人を認識できる形に変換し、証拠につながる情報を抽出することもできます。
画像を削除しても証拠として用いられる可能性は十分にあるので、削除するメリットはないといえるでしょう。
3.依存症の場合は盗撮を繰り返してしまう
悪いこととわかっていても盗撮を繰り返してしまう場合、依存症の可能性があります。
依存症を発症していると何度も盗撮を繰り返してしまうので、その度に新しい時効がスタートしてしまいます。
時効がいつまでたっても成立せず、逃げ続ける日々を延々と送ることになるでしょう。
依存症を治すには盗撮したことを病院に打ち明けなければならないため、治療をおこなうこともできません。
「悪いとわかっているのに盗撮を続けてしまう」「捕まったらどうしよう」と、苦しみ続けることになるでしょう。
盗撮は民事上の損害賠償請求に関する時効も存在する
盗撮により相手が精神的な被害を受けた場合、民事上の損害賠償を請求される可能性があります。
とはいえ、損害賠償はいつでも請求できるわけではなく、時効が設けられています。
盗撮には、盗撮行為そのものに関する時効と、損害賠償請求に関する時効があることを覚えておきましょう。
民事上の時効と刑事上の時効は起算点にズレが生じる可能性がある
民事上の損害賠償請求の時効は、「被害者が、損害および加害者を知ったときから3年間」です。
一方、撮影罪など刑事事件の時効は「犯罪行為が終わったときから3年間」なので、場合によっては時効の起算点がズレる可能性があります。
たとえば、盗撮後しばらくたってから被害者が盗撮されていたことを知った場合、損害賠償請求の時効の起算点は「被害者が盗撮を知ったとき」となります。
そのため、盗撮をおこなったのが3年以上前だとしても、被害者が盗撮被害に気づいたのが最近である場合は損害賠償を請求される可能性があるでしょう。
盗撮してしまった場合は時効前に弁護士へ相談することをおすすめする理由
盗撮してしまった場合は時効成立まで逃げようとせず、弁護士に早めに相談しましょう。
ここからは、盗撮について弁護士に相談するメリットを4つ紹介します。
正直に話すことで精神的な負担を軽減できる
盗撮してしまったことを誰にも話せず、一人で抱え込むのはつらいものです。
精神的な負担が大きく、心身に悪影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
弁護士に正直に打ち明けるだけで精神的にかなり楽になるはずなので、早めに相談するのが賢明です。
今後どうすればよいか、弁護士が一緒に考えてくれる
盗撮してしまって、今後どのように対応すればよいのかわからないと悩む方は多いでしょう。
弁護士に相談すれば「自首したほうがよい」「被害者と示談しましょう」など、今後の方針を教えてもらえます。
最も望ましい対処法を知ることができるので、一人で悩むよりも早く解決できる可能性があるでしょう。
自首した場合の流れについても教えてもらえる
減刑や不起訴処分を実現するためにも、自首という選択は有効です。
しかし、自首したあとの流れや取調べの対応方法などがわからず不安に思う方も多いでしょう。
弁護士に相談することで、自首した場合の流れを教えてもらえたり、取調べについてのアドバイスをもらえたりします。
自首することへの抵抗感を軽減できるため自首しやすくなり、自分の望む形で事件を解決できる可能性が高くなるでしょう。
弁護士に罪を軽減するための対応をしてもらえる
弁護士は、刑罰を軽くしたり不起訴処分となるためにさまざまな活動をおこなってくれます。
たとえば、被害者との示談交渉や罪を軽減するために働きかけてくれます。
仮に有罪となっても、執行猶予付きや罰金刑で済む可能性が高くなると考えられます。
さいごに|盗撮をしてしまったら時効を待つより弁護士に相談
盗撮をしてしまった場合、防犯カメラやスマホの画像データなどさまざまな証拠が世の中に残ります。
時効成立まで逃げ切るのはかなり難しいので、弁護士に早めに相談して事件を解決する手立てを考えましょう。
一人で悩むよりも精神的な負担が軽く済むうえ、最善の結果に結びつく可能性も高くなるので、ぜひ一度相談してみてください。
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