家族を盗撮したら犯罪になる?問われる法的責任などを解説
盗撮は、たとえ家族間であっても罪に問われる可能性があり、刑事処分を受けるだけでなく、家族への民事責任を負うおそれもあります。
問題を深刻化させないためには、弁護士に相談して早期に適切な対応を取ることが大切です。
本記事では、家族を盗撮した場合に成立する犯罪や負うことになる具体的な責任、弁護士に相談するメリットについてわかりやすく解説します。
今後の対応に迷ったときのために、ぜひ参考としてください。
家族を盗撮した場合であっても犯罪になる可能性はある!
家族間であってもプライバシーや性的な尊厳は守られるべきものです。
そのため、たとえ家族であっても盗撮が発覚すれば犯罪になる可能性はあります。
家族を盗撮したことによって問われる可能性のある犯罪は、主に以下の2つです。
- 撮影罪
- 児童ポルノ法違反
ここから、それぞれの犯罪の成立要件や該当する具体的ケースについて解説します。
1.撮影罪|他人の性的姿態をひそかに撮影した場合に成立する
2023年7月13日から「性的姿態撮影等処罰法」が施行され、盗撮に関する新たな罪として「撮影罪」が定められました。
本法律が施行されたことにより、これまで都道府県ごとの迷惑行為防止条例違反として処罰されていた盗撮行為の一部が、全国共通の刑罰として処罰されるようになりました。
撮影罪が成立するには、以下の3つの要件を全て満たす必要があります。
- 盗撮の対象が「性的姿態等」であること: 性的姿態等とは、陰部、胸、尻、これらを覆う下着のほか、性交やそれに類する行為が含まれます。
- 禁止された方法により撮影すること:隠しカメラなどで、撮影の対象者に気づかれないよう盗撮する行為が含まれます。
- 正当な理由がないこと:医療や防犯目的であれば正当な理由として認められますが、個人的な目的で撮影するのは正当な理由とは認められません。
たとえば、配偶者の入浴中の様子を隠しカメラやスマホで盗撮した場合、撮影罪が成立する可能性が高いです。
2.児童ポルノ法違反|18歳未満の児童の性的姿態を撮影した場合に成立する
18歳未満の家族の性的な姿を撮影した場合には、「児童買春・児童ポルノ禁止法(いわゆる児童ポルノ法)」に違反する可能性があります。
「児童ポルノ」に該当する画像・動画は、以下のとおりです。
- 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
- 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
- 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
児童ポルノの撮影はもちろん、目的によっては保存・所持・送信などの行為も処罰の対象になります。
たとえば、自分の子どもが入浴している様子を盗撮した場合、児童ポルノ法に違反する可能性が高いです。
家族を盗撮した場合に負うべき責任|刑事責任と民事責任
家族を盗撮すると、「刑事責任」と「民事責任」に問われる可能性があります。
ここからは、それぞれで問われる具体的な責任について解説します。
1.刑事責任|罰金刑や拘禁刑などに問われる可能性がある
家族への盗撮行為によって犯罪が成立すると、罰金刑や拘禁刑などの刑事責任が問われる可能性があります。
以下では、行為の内容別に問われる刑事責任をまとめましたので、参考にしてください。
| 行為の内容 | 違反する法律・条例 | 刑罰の内容 |
|---|---|---|
| 他人の身体を盗撮(2023年7月13日以降) | 性的姿態撮影等処罰法 | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
| 他人の身体を盗撮(2023年7月12日以前) | 各都道府県の迷惑行為防止条例 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(例:東京都) |
| 盗撮によって児童ポルノを製造 | 児童ポルノ禁止法 | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
なお、刑罰には罰金刑と拘禁刑の2種類があります。
- 罰金刑:お金を支払うことで刑事責任を負わせる刑罰
- 拘禁刑:刑務所などの施設に一定期間収容する刑罰
2025年6月から、従来の「懲役刑」と「禁錮刑」が統合され、「拘禁刑」という新しい刑罰に変更されました。
拘禁刑では、刑務作業をさせるかどうかを受刑者ごとに判断します。
2.民事責任|慰謝料を請求されたり、離婚を求められたりする可能性がある
盗撮は、民法上の「不法行為」に該当しうる行為です。
そのため、被害を受けた家族から慰謝料を請求される可能性があります。
また、盗撮が発覚したことにより、夫婦関係が悪化した場合、離婚を求められるおそれもあるでしょう。
たとえ本人が離婚を拒否しても、盗撮したことが「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると家庭裁判所に判断されれば、裁判上の離婚が成立する可能性があります。
家族を盗撮した場合に可能な限り早く弁護士に依頼するメリット
家族間の盗撮に関するトラブルを悪化させず、責任を負うリスクを下げるためには、できるだけ早く弁護士に相談・依頼することが重要です。
弁護士に依頼すると、以下のようなメリットを得られます。
- 被害者との交渉を進めてくれる
- トラブルが大きくなるのを防げる
- 刑事手続きのサポートを受けられる
ここから、それぞれのメリットについて詳しく解説します。
1.被害者との交渉を進めてくれる
弁護士は、被害者の感情に配慮しつつ冷静に交渉を進め、被害者が納得できる示談内容を提案してくれます。
盗撮事件の被害者は、強い不安や怒りを抱えていることが多く、直接加害者と顔を合わせて話すことを避けたい場合が多いです。
その点、弁護士が代理人として示談交渉を担当することで、加害者本人が被害者と直接接触する必要がなくなるので、交渉がスムーズに進みやすくなります。
示談が成立すれば、加害者が被害者から許しを得たと評価されるので、検察官の判断で逮捕や起訴を見送る可能性も高まるでしょう。
2.トラブルが大きくなるのを防げる
盗撮事件について弁護士に依頼することで、トラブルの拡大を防げるのもメリットです。
盗撮事件が発覚すると、警察から事情聴取を受けたり逮捕されたりするだけでなく、周囲の人に事件が知られてしまうおそれがあります。
とくに家族や親戚、勤務先に伝わってしまうと、社会的な信用を失ったり、人間関係が悪化したりするリスクが高まるでしょう。
その点、弁護士に依頼すれば、逮捕を回避するための手続きをとったり、警察や検察とのやり取りを代行したりと、事件発覚を防ぐよう慎重に対応してくれます。
3.刑事手続きのサポートを受けられる
弁護士に依頼することで、刑事手続きに関する専門的なサポートを受けられるのもメリットのひとつです。
盗撮で逮捕されると、警察署での取り調べや検察の捜査が進みます。
しかし、手続きの内容が複雑で今後の見通しも不透明なため、大きな不安を抱える方が少なくありません。
その点、弁護士に依頼すれば、捜査段階から適切なアドバイスを受けられます。
また、今後の刑事手続きの流れや見通し、可能な防御策についてもわかりやすく説明してくれるため、精神的な負担が軽減され、冷静に対応を進められるはずです。
家族の盗撮についてよくある質問
ここでは、家族の盗撮に関するよくある質問をまとめました。
似たような質問をお持ちの方は、ぜひここで疑問を解消してください。
Q.配偶者の不倫調査のために隠しカメラを設置した場合はどうなるか?
たとえ配偶者の不倫を疑っていたとしても、隠しカメラを設置して盗撮すると犯罪に該当する可能性があります。
たとえば、男性側が自宅に風俗店の女性を呼んで性行為をしていた場合でも、それを隠しカメラで撮影すると、「撮影されていることを知らなかった=同意がなかった」と判断され、違法な撮影として処罰の対象になる可能性があるのです。
離婚や慰謝料の話し合いを有利に進めるために、不倫の証拠を集めることはたしかに重要です。
しかし、現在の裁判例や実務では、「証拠収集を目的としているからといって、違法性が認められる撮影行為が当然に正当化されるわけではない」という考え方が一般的です。
そのため、不倫の証拠を集めたいときは、自分で判断せず、早めに弁護士などに相談するようにしましょう。
Q.家族を盗撮した場合に迷惑行為防止条例違反になる可能性はあるのか?
家族を盗撮した場合でも、迷惑行為防止条例違反に問われる可能性があります。
本条例では、「住居・浴場・トイレ・更衣室など、裸になることがある場所」での無断撮影を禁じています。
そのため、たとえ家族であっても、こういったプライベートな空間に隠しカメラを設置して撮影する行為は、条例違反とみなされることがあるのです。
さいごに|家族を盗撮したことがある場合は一度弁護士に相談しよう
本記事では、家族を盗撮した場合に問われる法的責任や、具体的な対処法について解説しました。
たとえ家族間であっても、盗撮は刑事責任や民事責任を問われる重大な違法行為です。
もし盗撮してしまった場合は、できるだけ早く弁護士に相談することが非常に大切です。
弁護士に相談すれば、被害者との示談交渉や警察対応の代行などを通じて、逮捕・起訴されるといった事態を回避できる可能性が高まります。
また、家族や職場など周囲に事件のことが知られないよう慎重に対応してもらえるのも大きなメリットです。
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オンライン相談が可能な事務所や初回無料相談に対応している事務所などを絞り込めるので、忙しくても自分に合った弁護士を見つけやすいです。
対応が早ければ早いほど、今後の処分や社会的な影響を小さく抑えられます。
ひとりで悩まず、まずは信頼できる弁護士に相談してみてください。
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