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執行猶予とは?認められる条件や期間中にやってはいけないことなどをわかりやすく解説

執行猶予とは?認められる条件や期間中にやってはいけないことなどをわかりやすく解説

自分や家族が刑事事件の当事者となり「執行猶予」の可能性について調べている方もいるでしょう。

あるいは、すでに判決を受け、執行猶に前科が付いてしまうのか、何か制限があるのかなど、これからの生活に不安を抱えているかもしれません。

執行猶予は、社会内で人生をやり直すための重要な制度ですが、意味や条件、期間中の注意点を正しく理解しておくことが不可欠です。

この記事では、執行猶予を獲得するための条件から、判決後の生活でやってはいけないことなどをわかりやすく解説します。

一度受けた執行猶予が取り消される理由や、執行猶予が「意味ない」といわれてしまう理由も紹介するので、参考にしてみてください。

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目次

執行猶予とは

執行猶予とは、有罪判決による刑の執行を一定期間猶予し、特に問題を起こさず過ごすことで刑罰権を消滅させられる制度です。

執行猶予がつけば、刑務所に入ることなく、そのまま日常生活を送れます。

ただし、執行猶予は全ての事件で適用されるわけではありません。

裁判所が「社会で更生の機会を与えることが相当」と判断した場合に付与されます。

具体的な期間や、実刑との違いなど、執行猶予について解説します。

執行猶予の期間

執行猶予の期間は、判決を言い渡された日から1年以上5年以下の範囲です。

期間の長さは、裁判所が犯罪の内容や被告人の反省度合い、更生の可能性といった様々な事情を考慮して、事件ごとに判断します。

例えば、「拘禁刑3年執行猶予5年」のように、言い渡される刑期よりも執行猶予期間の方が長く設定されるのが一般的です。

執行猶予期間を長く設けるのは、社会内で更生するため、十分な機会を与えることを目的としています。

猶予期間中に問題を起こさず無事に過ごすことで、最終的に刑の執行が免除されることになります。

刑の一部執行猶予制度

刑の一部執行猶予制度とは、裁判で言い渡された刑の一部を執行猶予とし、残りは刑務所で服役させる制度です。

薬物犯罪のように、専門的な治療や指導を受けながら、段階的に社会復帰することが有効なケースで適用されることが多くなっています。

例えば「拘禁刑2年のうち6か月を刑務所に収容し、残りの1年6か月は保護観察付きで執行を2年猶予する」といった判決です。

まず6か月間服役し、出所後2年間の執行猶予期間を問題なく過ごせれば、残り1年6か月の服役は免除されます。

刑の一部執行猶予制度

刑の一部執行猶予は、刑務所での矯正と社会での更生支援を切れ目なく行うことができる制度です。

保護観察とは、犯罪を犯した人が社会の中で更生できるように、生活状況を把握しながら指導を受けることです。

執行猶予と実刑の違い

実刑判決の拘禁刑と執行猶予付き判決の大きな違いは、判決確定後に「直ちに刑務所に収容されるかどうか」という点です。

実刑判決の場合、判決確定後に収容手続きが取られ、すぐに刑務所に服役することとなります。

一方、執行猶予付き判決は、刑の執行が一定期間猶予されるため、指定された期間を社会の中で過ごすことが可能です。

例えば「拘禁刑1年」という判決の場合、実刑であれば刑務所に1年間服役します。

しかし「拘禁刑1年、執行猶予3年」のような執行猶予付き判決の場合は、裁判終了後に自宅へ帰宅できます。

執行猶予期間中の3年間は、仕事を続けたり、買い物に行ったりして普段通りの生活を継続可能です。

改正刑法が施行されたことにより、2025年6月から懲役刑と禁錮刑が、拘禁刑として一本化されました。これまでの懲役刑とは異なり、受刑者に応じて刑務作業や更生プログラムなどの指導をおこなうのが特徴です。

執行猶予が付与される割合

地方裁判所や簡易裁判所で有罪判決を受けた人のうち、執行猶予が付与される割合は6割を超える高い水準で推移しています。

実際に、令和5年における執行猶予の割合も約65%に達しました。

執行猶予が付与される割合

日本の刑事司法が単に刑罰を科すだけでなく、社会内での更生の可能性を考慮し、再犯防止と社会復帰を重視していることの表れといえるでしょう。

執行猶予判決を受けたあとの影響

執行猶予付き判決は、刑務所へ収容されることはありませんが、無罪という意味でもありません。

執行猶予判決を受けたことによる法的な影響はいくつか存在します。

有罪判決として前科がつく

執行猶予付き判決は「無罪」ではなく「有罪」判決の一種であるため、前科がつきます。

前科とは、有罪判決を受けた経歴そのものです。

執行猶予期間を無事に満了したとしても、有罪判決を受けたという事実自体が消えるわけではありません。

また一部の国家資格では「拘禁以上の刑に処せられたこと」が欠格事由と定められています。

ほかにも執行猶予によって、以下のデメリットが生じる可能性が高まります。

  • 仕事を解雇される
  • 就職・転職が不利になる
  • 一部の職業では働けなくなる
  • 特定の資格を失ったり、取得ができなくなる
  • (一部の罪名の場合には)選挙権を失う
  • 渡航先によっては海外旅行に制限が生じる
  • 離婚や結婚話が破談する
  • 再犯時に、より重い刑罰に処される

刑の執行が猶予され、直ちに刑務所へ収容されることはない

判決に執行猶予が付くと、刑の執行が一時的に見送られるため、判決後もこれまでと同様に社会生活を継続できます。

実刑判決のように身柄を拘束されることはありません。

被告人が在宅のまま起訴されていれば、そのまま日常生活に戻れます。

また、勾留されていた場合でも、判決の言い渡し後に釈放されるのが基本です。

学業や仕事への復帰が可能となり、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。

執行猶予期間を無事に満了すれば、刑を言い渡す効力がなくなる

執行猶予期間中、新たに罪を犯さなければ、執行猶予満了後は言い渡された刑罰を受ける必要がありません。法律用語で「刑の言い渡しの効力が失われる」といいます。

例えば「拘禁刑3年執行猶予5年」を言い渡された場合、5年の執行猶予期間が満了すれば、拘禁刑3年の刑罰はなかったものとなります。

拘禁刑として実際に服役する義務は、執行猶予期間の満了に伴って完全に消滅するため、特定の資格・職業に関する制限や、一部の国への渡航制限など、前科によって生じていた法律上の制限も回復します。

刑の言い渡しの効力が失われることこそ、執行猶予における最大のメリットといえるでしょう。

しかし、制限がなくなる反面、前科の記録は消えません。再び刑事事件を起こしてしまうと、前科の記録により判決が不利に働く可能性があるため注意が必要です。

刑の言い渡しの効力が失われた場合、判決で言い渡された刑を受けていなかったものとして法律上は取り扱われます。しかし、前科が消えることはありません。

執行猶予中は生活に制限がある?

執行猶予期間中は、基本的に社会の中で自由に生活できます。

しかし、有罪判決を受けたことによる間接的な影響として、いくつかの制限が生じる可能性も理解しておくことが重要です。

執行猶予中は生活に制限がある?

一部の職業には就けない可能性がある

執行猶予付き判決は、有罪判決であるため前科がつきます。

基本的には執行猶予付き判決が下された場合でも、問題なく働き続けることが可能です。

しかし特定の職業や資格は、前科がつくと一定期間制限されることがあります。

  • 弁護士
  • 公務員
  • 教師
  • 保育士
  • 介護士
  • 警備員 など

職業や資格ごとに法律で、拘禁以上の刑に処せられたことを「欠格事由」として定めているケースが多いです。

執行猶予期間中や満了後の一定期間は、資格を失効した状態になります。

執行猶予期間満了後も、それぞれの職業や資格で定められている期間を経過するまでは、資格の再取得や就業はできません。

海外旅行が制限される場合がある

日本の法律で、執行猶予中の海外渡航が直接的に禁止されることはありません。

しかし、新たにパスポートを取得する際に、執行猶予判決を受けている旨を正直に申告しなければなりません。

申告した内容によっては、パスポートの発給を断られたり、渡航先や期間に制限がかかる可能性があります。

また、渡航先の国が入国審査において、前科を理由に入国を拒否するケースも考えられるでしょう。

特にビザ申請時や電子渡航認証システム(ESTAなど)では、犯罪歴の有無を問われることが多く、正直に申告する義務があります。

さらに、保護観察付きの執行猶予を受けている場合、7日以上の旅行をする際は保護観察所長へ申請し、許可を得なければなりません。

引越しや仕事の変更に法的な制限はない

執行猶予期間中に引越しをしたり、転職したりすることに法的な制限はありません。

執行猶予期間中は、あくまで社会内での更生が期待されている状態です。

居住地や職業の選択といった日常生活における行動は、基本的に本人の自由に委ねられています。

ただし、保護観察が付されている場合はルールが異なります。

転居や長期の旅行をする際には、事前に保護観察所長へ届け出て、許可を得ることが重要です。

ローン契約は金融機関の審査による

前科がついていても、ローンを組むことは原則可能です。

基本的に前科の有無は、信用情報として登録されないため、ローン審査時に使用されることはほとんどありません。

また、申告する義務もないため、金融機関が審査の際に前科の有無を直接的に確認できないのが実情です。

執行猶予判決を受けたあとも、逮捕前同様に仕事を継続し、収入が安定している場合は問題なくローンを組めるでしょう。

しかし、逮捕・勾留によって職を失ったり、収入が不安定になったりした場合は、返済能力が低いと判断されてしまいます。

金融機関の審査によっては、前科が不利に働き、ローンが組めなくなる可能性も考えられます。

交通違反でも執行猶予取り消しになる可能性がある

執行猶予期間中に交通違反をした場合、執行猶予取り消しになるリスクにも注意が必要です。

執行猶予中、新たに罪を犯して罰金刑に処せられた場合、裁判官の裁量によって執行猶予が取り消される対象となります。

しかし、反則金の納付で済むような軽微な交通違反であれば、執行猶予が取り消されることは基本的にはありません。

罰金刑以上が科される悪質な違反は、執行猶予が取り消される対象となる可能性が高まります。

罰金刑以上が科される可能性のある違反
  • 飲酒運転
  • 無免許運転
  • 大幅なスピード超過 など

執行猶予がつく条件3つ

全ての刑事事件で執行猶予が付くわけではありません。

法律で定められた3つの形式的な要件を満たす場合に限られます。

具体的に執行猶予が認められる条件について解説します。

(刑の全部の執行猶予)

第二十五条 次に掲げる者が三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。

一 前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者

二 前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者

引用元:刑法 | e-Gov 法令検索

3年以下の拘禁刑(懲役・禁錮)または50万円以下の罰金であること

執行猶予を付けることができる判決は「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の言渡しを受けたとき」と定められています。

そのため、執行猶予の対象となるのは、以下のように比較的軽微な刑罰が言い渡される場合のみです。

  • 窃盗罪(初犯・被害が少額の場合)
  • 詐欺罪(単独犯・被害額が少額・示談が成立している場合)
  • 住居侵入罪(初犯の場合) など

4年以上の拘禁刑や51万円以上の罰金など、重い刑罰のときは、執行猶予を付けることができません。たとえば殺人罪や強盗罪が該当します。

しかし例外的に、殺人罪や強盗罪などでも酌量減軽によって刑が3年以下になれば、要件を満たして執行猶予が付くケースも存在します。

過去に拘禁(懲役・禁錮)以上の刑に処せられたことがないこと

執行猶予が付くための原則的な要件として、これまでに拘禁以上の刑の判決を受けたことがないことが挙げられます。

拘禁以上の刑
  • 拘禁(無期・有期)刑
  • 死刑

いわゆる「初犯」であることが重要です。

これまでに犯罪とは無縁の生活を送ってきた人が、初めて刑事裁判で有罪判決を受ける場合などが該当します。

なお、過去に道路交通法違反などで罰金刑を受けたことがある場合は、「拘禁以上の刑」には当たりません。

要件に影響されないため、執行猶予の対象となり得ます。

過去に拘禁以上の刑に処せられており、執行終了後5年以内に拘禁以上の刑に処せられていないこと

過去に実刑判決を受けていた場合でも、刑務所から出所後、または刑の執行が免除されてから5年間が経過していれば、執行猶予の対象となります。

「一定期間、真面目に社会生活を送った実績があれば、更生の機会を与えるべき」という考えに基づいた条件です。

例えば、過去に拘禁(懲役・禁錮)刑で服役した人が出所から6年後に再び罪を犯してしまった場合も、出所から5年以上経過しており、要件を満たしているといえます。

再び罪を犯していても、新たな事件の内容や情状によっては、執行猶予が付く可能性があります。

執行猶予が取り消される主な3つの理由

執行猶予が取り消される理由は、主に3つです。

取り消しの理由が「必要的取り消し」または「裁量的取り消し」のどちらかに該当している場合、執行猶予の取り消しがおこなわれます。

  • 必要的取り消し:法律に規定されており、必ず取り消さなければならないケース(拘禁刑以上の刑罰を受けるなど)
  • 裁量的取り消し:裁判所の裁量で取り消しの有無を判断されるケース(罰金刑程度の刑罰を受けるなど)

執行猶予期間中に再度、罪を犯し拘禁以上の実刑判決を受けた場合

執行猶予中に再び罪を犯し、拘禁刑以上の実刑判決を受けると、前に受けていた刑の執行猶予は取り消されます。

必要的取り消しに該当するため、執行猶予の取り消しを判断するときに、裁判官による裁量の余地はありません。

取り消しの例
  1. 「拘禁刑1年・執行猶予3年」の判決を受けた
  2. 3年の執行猶予中に強盗事件を起こした
  3. 拘禁刑5年の実刑判決が確定→この時点で執行猶予期間消滅
  4. 6年(1年+5年)の拘禁刑に服する

執行猶予が取り消されると、猶予されていた刑罰に新たに確定した刑罰を加えて服役しなくてはいけません。

執行猶予期間中に再度、罪を犯し罰金刑に処せられた場合

執行猶予中に犯した罪が罰金刑で済んだ場合も、裁判所の判断によっては執行猶予が取り消される可能性があります。

罰金刑のように比較的軽い刑罰であれば、裁判官がさまざまの事情を考慮して取り消しを判断する裁量的取り消しに該当します。

裁判官が「罰金刑であっても再び罪を犯したという事実は重く、社会内での更生継続が不適当」と判断すれば、取り消しの対象です。

例えば、執行猶予中に悪質な交通違反で罰金刑を受けた場合に、執行猶予が取り消されることも考えられます。

保護観察の遵守事項に違反した場合

保護観察付きの執行猶予の場合、定められたルール(遵守事項)を守らず、違反の程度が重いと判断されると執行猶予取り消しの対象となります。

保護観察中の遵守事項は、具体的に以下のとおりです。

  • 再犯・非行をしないように健全な生活を送ること
  • 速やかに住居を決めて届け出ること
  • 届け出た住居に居住すること
  • 転居や旅行をおこなう際には保護観察所長の許可を受けること
  • 保護観察官・保護司の指導監督を誠実に受け止めること

また、上記に加えて保護観察対象者の状況に合わせて、遵守事項が設定されるケースもあります。

保護観察の指導監督に従うことは執行猶予を付けるための前提条件です。違反は更生意欲の欠如とみなされ、執行猶予の取り消しにつながる可能性があるため注意しましょう。

再度の執行猶予(ダブル執行猶予)が認められるケースもある

執行猶予期間中に再び罪を犯した場合でも、極めて例外的に再度執行猶予が付く(ダブル執行猶予)ことがありますが、要件は非常に厳格です。

執行猶予期間中に再度罪を犯した人が再度の執行猶予を得るためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

  1. 今回の判決が「1年以下の拘禁刑」であること
  2. 情状に特に酌量すべきものがあること
  3. 前回の執行猶予に保護観察が付いていないこと

特に「情状に特に酌量すべきものがある」という要件のハードルは非常に高く、認められるのは稀です。

犯行態様が悪質でなく、被害が軽微で、示談が成立し深く反省しているなど、裁判官に「同情できる事情がある」と判断されなければ、認められません。

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情状が重要!執行猶予の可能性が高まるケース5つ

執行猶予が付くかどうかの最終的な判断では、法律の要件を満たすことに加え、裁判官に「社会内での更生の可能性がある」と認めてもらわなければいけません。

判断材料となるのが、犯行後の事情や被告人の状況といった「情状」です。

有利な情状を積み重ねることで、執行猶予の可能性は高まります。

具体的に執行猶予の可能性が高まるケースを5つご紹介します。

執行猶予の可能性が高まるケース5つ

被害者との示談が成立している

被害者がいる犯罪において、被害者への謝罪と賠償を尽くして示談を成立させることは、執行猶予獲得には非常に重要です。

裁判官も被害者と示談が成立しているかどうかを重視して、執行猶予の判断を下します。

示談の成立は、当事者間で事件がある程度解決していること、被告人が深く反省していることを客観的に示す強力な証拠です。

また、示談によって被害者の処罰感情が和らぎ「被告人の刑事処罰を望まない」と意思表示している場合も、裁判官が量刑を判断する上で極めて重要な要素だといえます。

犯行が悪質でない

犯行が偶発的であったり、やむにやまれぬ同情すべき動機があったりするなど、犯行態様の悪質性が低いと判断されることも執行猶予を得る上で有利な情状となります。

裁判では、以下の要素が総合的に判断されることが多いです。

  • 被害の重大さ
  • 犯行の計画性
  • 犯意の強さ
  • 凶器の有無
  • 動機の身勝手さ など

計画的で巧妙な犯行よりも、衝動的で単純な犯行の方が、悪質性が低いと判断される傾向があります。

犯行の悪質性が低いほど、被告人に対する同情の余地が生まれやすいです。

また、利欲的な動機よりも、生活困窮や家族を守るためといった動機の方が、同情の余地があると評価される傾向にあります。

深く反省しており、更生の意欲が見られる

被告人本人が罪を真摯に受け止め、二度と罪を犯さないという強い意志を具体的に示すことは、執行猶予を得るために不可欠な要素です。

裁判官は、被告人が本当に反省しているか、社会内で更生していけるかを慎重に見極めようとします。

ただ言葉で「反省しています」と述べるだけでなく、具体的な行動でその意欲を示すことが重要です。

裁判官の心証をよくするためにも、なぜ犯罪に至ったのかを深く分析し、再犯防止に向けた具体的な対策を以下のような方法で示しましょう。

  • 反省文の提出
  • 法廷での真摯な謝罪
  • 被害者への謝罪文の送付
  • 更生のための具体的な計画の提示 など

家族など監督者の存在がある

社会復帰後に被告人を監督し、支える家族や雇用主などの存在は、再犯防止への期待を高めるため、執行猶予の判断において重視されます。

安定した住居や職業があり、被告人を見守り指導する家族がいることは、裁判官に「社会内で更生できる環境が整っている」という安心感を与えます。

家族が情状証人として出廷し、被告人の監督を誓約することは、執行猶予の判断に良い影響を与えます。

ほかにも、勤務先の上司が「解雇せず、復帰を待っている」と述べた嘆願書を提出することも、更生環境が整っていることを示す上で非常に有効です。

嘆願書では、裁判所に対して事情を説明した上で、情状酌量や処分の軽減を目指すことが大切です!

初犯である

前科・前歴がないことは、更生の可能性が高いと判断されやすく、執行猶予を得る上で非常に有利な事情となります。

同様の犯罪であっても、過去に同種の前科がある場合に比べて、初犯であれば執行猶予が付きやすくなるのが実情です。

初犯であることは、これまで法を守って生活してきた証であり、今回の犯罪が例外的な出来事である可能性を示唆します。

また、初めて刑事裁判を経験することで十分な反省と教訓を得られると期待されるため、執行猶予を得られやすいです。

ただし、初犯であっても犯行が極めて悪質な場合や、被害が重大な場合には実刑となることもあります。

ほかの情状とあわせて総合的に判断されるという点に注意が必要です。

執行猶予を獲得するために弁護士ができること4つ

執行猶予を獲得するためには、法律の専門知識と交渉技術を持つ弁護士のサポートが不可欠です。

執行猶予の獲得に向けて、弁護士ができることを4つ解説します。

被害者との迅速かつ適切な示談交渉

弁護士が代理人として間に入ることで、被害者の感情に配慮しつつ、冷静かつ迅速に示談交渉を進めることが可能です。

多くの場合、被害者は被告人との接触を拒む傾向にあります。特に感情的になりやすい状況では、当事者同士での話し合いは困難なことが多いです。

弁護士という第三者が介入することで、被害者も冷静に話を聞く姿勢を持ちやすくなるため、示談成立の可能性を高められます。

示談交渉において弁護士は、被告人の被害者に対する謝罪の気持ちを伝え、適切な賠償額を提示するためにも重要です。

具体的には、被害届の取り下げや「被告人を許し、刑事処罰を望まない」という文言が入った示談書の作成を目指します。

被告人にとって有利な条件での解決に向けて、包括的なサポートを提供します。

被告人に有利な情状証拠の収集と提出

弁護士は、反省の深さや更生の可能性を示す客観的な証拠を収集し、裁判所に提出します。

裁判官は主観的な主張に加えて、客観的な証拠に基づいて執行猶予を判断します。

被告人にとって有利な事情を、説得力のある資料として揃え、適切なタイミングで提出することが重要です。

弁護士は、どのような証拠が裁判官の心証形成に効果的かを熟知しており、戦略的に証拠を収集・整理します。

例えば、以下の証拠を準備して、再犯の可能性が低いことを具体的に主張するケースが多いです。

  • 被告人による反省文
  • 家族からの嘆願書
  • 勤務先の身元引受書
  • 依存症治療に関する診断書
  • 自助グループへの参加証明書 など

更生環境が整っていることの具体的な主張

再犯を防止するための具体的な環境調整がなされていることを、弁護士が論理的に主張します。

裁判官は執行猶予の判決を下すにあたって「社会に戻しても再び罪を犯す危険はないか」という懸念を抱きます。

家族の監督体制や定職の存在などを具体的に示すことで、裁判官に「社会内での更生が可能である」と確信させることが可能です。

弁護士であれば、単に「家族が見守ります」という抽象的に主張するのではなく、具体的な監督計画を立案し、実現可能性を証明します。

具体的な監督計画は、主に以下のようなものが挙げられます。

  • 毎日の帰宅時間を確認する
  • 週1回は一緒に食事をして様子を見る
  • 通院に同行する など

家族が情状証人として出廷し、監督計画を具体的に証言してもらうことで、更生意欲が本物でサポート体制も万全であることをアピールできます。

保釈請求による身柄解放

起訴後に身柄拘束が続いている場合、保釈請求を行い、社会生活の中で裁判準備を進める環境を整えます。

保釈が認められれば、被害者との示談交渉や、職場復帰に向けた調整など、執行猶予に有利な情状を作る活動が格段に行いやすいです。

弁護士は、被告人に逃亡や証拠隠滅の恐れがないこと、家族が身元引受人として監督することなど、具体的な証拠を添えて主張します。

また、保釈保証金の準備に関するアドバイスも可能です。必要に応じて保釈支援協会の利用を提案します。

保釈が認められた後は、保釈条件を遵守しながら、示談交渉や更生プログラムへの参加など、執行猶予獲得に向けた活動を積極的に進めます。

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執行猶予に関するよくある質問

執行猶予は、刑事手続きの中でも特に誤解されやすい制度の一つです。

執行猶予に関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式で分かりやすく解説します。

Q1. 執行猶予期間が満了したら前科は消えますか?

いいえ、有罪判決を受けたという「前科」の事実そのものが消えるわけではありません。

しかし、刑の言い渡しの効力が失われるため、法律上の資格制限などがなくなるといったメリットがあります。

具体的には、以下のような制限が回復します。

  • 公務員になる資格
  • 医師・弁護士など、国家資格の取得制限
  • 選挙権・被選挙権の制限 など

Q2. 執行猶予と保護観察の違いは何ですか?

執行猶予と保護観察は全く別の制度です。

保護観察は、執行猶予に付随して、更生を助けるために保護観察官や保護司による指導監督を受ける制度です。

全ての執行猶予に付くわけではなく、裁判所が被告人の年齢や性格、犯罪の内容などを考慮して、特に必要と判断した場合に付けられます。

執行猶予

保護観察

有罪判決による刑の執行を一定期間猶予する制度

期間中、特に問題を起こさず過ごすことで刑罰権を消滅させられる

執行猶予に付随する制度

更生を助けるために保護観察官や保護司による指導監督を受ける

Q3. 執行猶予は無罪とは違うのですか?

執行猶予と無罪は、全く違います。

執行猶予は、あくまで「有罪」判決の一種です。犯罪を犯したことが認定された上で、刑の執行を猶予するものです。

一方で無罪は、そもそも犯罪が成立しない、あるいは証明されない場合であり、前科はつきません。

執行猶予

無罪

有罪判決の一つ

前科がつく

履歴書の賞罰欄への記載義務が生じる場合もある

そもそも犯罪が成立していない状態

犯罪の証明が不十分の状態

前科がつかない

Q4.執行猶予は必要ですか?意味ないって本当?

執行猶予は、刑務所に収容されることなく社会で更生する機会を与えられる非常に重要な制度であり、決して意味がないということはありません。

執行猶予があれば、仕事を続けながら更生できるため、経済的基盤を失わずに済みます。

また、執行猶予期間中に問題を起こせば、取り消されるリスクがあるため「意味がない」と感じる人もいるかもしれませんが、制度の理解不足や、期間中の生活への不安からくる誤解です。

執行猶予は、人生をやり直すための貴重なセカンドチャンスといえます。

Q5. 初犯であれば必ず執行猶予がつきますか?

初犯であっても、必ず執行猶予がつくとは限りません。

「初犯であること」は非常に有利な事情ですが、犯行が悪質であったり、結果が重大であったりする場合には実刑判決となる可能性も十分にあります。

初犯であることに加えて、被害者との示談成立や反省態度、家族の監督体制など、複数の有利な情状を積み重ねることが重要です。

初犯だから大丈夫と安易に考えず、弁護士と相談して適切な弁護活動をおこなう必要があります。

Q6.執行猶予中にやってはいけないことは何ですか?

執行猶予中に最もやってはいけないことは、新たに犯罪を犯すこと。特に拘禁刑以上に処されれば、執行猶予は必ず取り消され、前の刑も執行されることになります。

また、保護観察が付いている場合は、保護観察官の指示に従わない、約束を破るなどの遵守事項違反も、執行猶予取消しの原因となる可能性があります。

執行猶予期間中は、些細な違反も命取りになることを肝に銘じて生活することが重要です。

まとめ|執行猶予の獲得は弁護士へ相談がおすすめ

執行猶予は、犯罪を犯してもすぐに刑務所へ収容されることなく、社会内で更生する機会を得られる、非常に重要な制度です。

しかし、執行猶予の獲得には、法律で定められた要件を満たすだけでなく、被害者との示談成立や深い反省の態度を示すなど、裁判官に有利な情状を認めてもらう必要があります。

執行猶予付き判決の可能性を少しでも高めるための活動を個人で行うことは極めて困難です。

刑事事件の経験豊富な弁護士へ早めに相談し、専門的なサポートを受けることが最善の選択といえるでしょう。

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弁護士 松澤 勇弥(ひいらぎ法律事務所)

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この記事の監修者
磯田 直也 (兵庫県弁護士会)
当事務所では、少年事件や無罪を争う事件など、非常に難易度の高い事件にも対応した実績がございます。豊富な経験を基に、タイミングごとに事態を見極めて最善の弁護活動をいたしますので、お早めにご相談ください。
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編集部

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