おはよう逮捕とは?早朝に警察が逮捕に来る理由やほかの時間帯の逮捕の可能性など
「おはよう逮捕」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
これは、警察が早朝に容疑者の自宅へ訪れ、そのまま逮捕することを指す俗称です。
刑事ドラマなどでも見かける場面ですが、実際になぜ早朝に逮捕がおこなわれるのか、法律的な理由や捜査上のメリットを正しく理解している方は少ないかもしれません。
さらに、逮捕は早朝だけでなく昼間や夜間にもおこなわれる可能性があり、その時間帯ごとに意味や事情が異なります。
本記事では、「おはよう逮捕」と呼ばれる早朝逮捕の理由や、ほかの時間帯で逮捕されるケースについて、法律の観点からわかりやすく解説します。
おはよう逮捕とは?早朝におこなわれる通常逮捕のこと
おはよう逮捕とは、被疑者が在宅している可能性が高い早朝のタイミングに実施される通常逮捕処分を意味します。
通常逮捕とは、裁判官が事前に発付した逮捕状を被疑者に呈示することで実行される強制処分のことです。
おはよう逮捕が実施される理由は、被疑者の身柄を確実に拘束するためです。
日中や休日のように被疑者が在宅していない時間帯に捜査員が自宅を訪れたとしても、被疑者が自宅におらず、逮捕処分が空振りになりかねません。
そのため、早朝という確実に在宅しているであろう時間帯を狙って逮捕を実施するのです。
なお、おはよう逮捕は、一般的に以下のような流れで実施されます。
- 早朝に自宅のインターフォンが鳴る
- インターフォンに応答すると、「○○警察署の者です」などと回答がある
- 玄関を開けると、その場で逮捕状が読み上げ・呈示されて、逮捕される
居留守を使ってもおはよう逮捕を免れることはできない
おはよう逮捕をする目的で警察官にインターフォンを鳴らした場面では、被疑者側が以下のような反応をする可能性があります。
- 早朝に自宅のインターフォンが鳴らされること自体に違和感があって無視する
- 眠っていてインターフォンが鳴ったことに気付かない
- インターフォン越しに映った人たちに見覚えがないので居留守を使う
- 警察がやってくる心当たりがあり、逮捕されるのではないかと不安を抱え、そのまま居留守を使ってやり過ごそうとする など
警察は、おはよう逮捕を実行する前に被疑者の行動パターンを調べ、おはよう逮捕実行時に自宅に所在することを把握しているのが一般的です。
そのため、居留守を使ったとしても、最終的に逮捕されることは免れられないでしょう。
また、おはよう逮捕がおこなわれる際には、警察官は逮捕状とは別に、捜索差押許可状を請求・取得していることが多いです。
つまり、錠前を外して自宅などに立ち入ることが許されているので、居留守を使っても無駄なのです。
仮に居留守を使って警察官の訪問をやり過ごせたとしても、逮捕状の有効期限は原則7日以内なので、どこかのタイミングで警察に見つかって逮捕される可能性が高いでしょう。
以上を踏まえると、居留守を使っておはよう逮捕に対抗するのは現実的な方法とはいえません。
おはよう逮捕についてもっと知りたい人向けの補足情報
おはよう逮捕の詳細について解説します。
1.時間帯|6時~9時ごろが多い
おはよう逮捕がおこなわれるのは、午前6時〜午前9時、日の出以降の時間帯が多いとされています。
もちろん、被疑者が就寝中の深夜や日の出前などの時間を狙っておはよう逮捕が実行されるケースも少なくありません。
ただし、日没後〜日の出前に通常逮捕をおこなうには、裁判所から逮捕状の夜間執行について事前に許可が必要です。
そして、裁判所から夜間執行に関する特別な許可を得るのは捜査機関にとって面倒なことなので、余程の特殊事情がない限り、日の出後の午前6時〜午前9時頃を狙っておこなわれます。
2.曜日|平日(月曜~水曜)が多い
おはよう逮捕が実施される曜日について法律上のルールは存在しません。
そのため、平日、休日、年末年始など、どのタイミングでもおはよう逮捕が実施される可能性はあります。
ただし、実際の捜査実務では、平日の月曜日〜水曜日におはよう逮捕がおこなわれることが多いとされています。
なぜなら、おはよう逮捕がおこなわれたあとは、警察署で48時間以内の取り調べを実施したうえで、事件や被疑者の身柄を検察官に送致しなければいけないからです。
そして、平日のほうが在庁している検察官が多く、平日の送検のほうが好まれる傾向にあるため、おはよう逮捕や警察段階の取り調べも週の前半で済まされるのです。
3.事件|通常逮捕の対象となる事件
おはよう逮捕がおこなわれるのは、通常逮捕の対象になる刑事事件だけです。
そもそも、刑事事件を起こしたとしても、常に警察に逮捕されるわけではありません。
裁判官が逮捕状を発付するのは、以下の要件を満たしたときに限られます。
- 逮捕の理由:被疑者が犯罪を犯したことを疑うに足りる相当の理由があること。単なる疑いや被害者からの被害申告があるだけでは足りず、客観的な証拠が必要。
- 逮捕の必要性:逃亡または証拠隠滅のおそれがあること。
そのため、警察から事前に任意の出頭要請を受けて、その都度事情聴取に応じており、逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断されるような状況であれば、実際に犯行に及んだ事実に疑いがないような状況であったとしても、おはよう逮捕が実施されることはありません。
しかし、任意の出頭要請を無視・拒否したり、事前に実施される事情聴取で黙秘・否認をしたりすると、逃亡または証拠隠滅のおそれがあると判断されて、おはよう逮捕される危険性が高まります。
おはよう逮捕以外にも日中や夕方の通常逮捕はありえるのか?
捜査実務上、被疑者を通常逮捕する場面では「おはよう逮捕」がおこなわれることが多いです。
では、おはよう逮捕以外の方法で通常逮捕されることはないのでしょうか。
早朝以外の逮捕の可能性について、以下で詳しく解説します。
1.日中の通常逮捕はあまり多くはない
日中に通常逮捕がおこなわれるケースは多くはありません。
たとえば、刑事事件の被疑者が社会人の場合、日中は勤務先に所在している可能性が高いです。
もちろん、警察が勤務先を訪問して被疑者を逮捕することも可能ですが、勤務先で逮捕をすると無関係な会社の人たちに迷惑がかかるおそれがあるため、余程の特殊事情がない限り、勤務先などでは通常逮捕はおこなわないように配慮がなされています。
被害者が無職や在宅ワークなどで常時在宅しているなどのケースを除き、通常逮捕は日中におこなわれる可能性が低いと考えられるでしょう。
2.帰宅後を狙った通常逮捕はありえる
通常逮捕は、被疑者が自宅などに所在する可能性が高いタイミングを狙っておこなわれます。
そのため、おはよう逮捕と並んで、帰宅後逮捕も頻繁に実施されています。
被疑者が社会人や学生などで、帰宅後のほうが身柄を拘束できる可能性が高い場合には、帰宅後に警察官が自宅を訪問して通常逮捕をおこないます。
3.深夜の通常逮捕は基本的には少ない
刑事訴訟法第116条第1項では、夜間の令状執行について以下のような制限を定めています。
第百十六条 日出前、日没後には、令状に夜間でも執行することができる旨の記載がなければ、差押状、記録命令付差押状又は捜索状の執行のため、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入ることはできない。
日没後、日の出前の深夜に通常逮捕をおこなうには、深夜執行について裁判所の事前許可がある場合に限られています。
そのため、深夜に通常逮捕がおこなわれるケースは稀だといえるでしょう。
おはよう逮捕に関するよくある質問
さいごに、おはよう逮捕についてよく寄せられる質問をQ&A形式で紹介します。
Q.おはよう逮捕と通常逮捕に違いはあるのか?
おはよう逮捕は、通常逮捕の一類型です。
通常逮捕のうち、午前6時〜午前9時頃を目安に実行されるものを、特におはよう逮捕と呼称しているだけに過ぎません。
おはよう逮捕と通常逮捕には違いはありませんし、おはよう逮捕の要件や手続きについては、刑事訴訟法などの通常逮捕のルールに沿って判断されます。
Q.早朝に自宅へ逮捕に来ないよう交渉できるか?
おはよう逮捕が実施されるタイミングを被疑者側でコントロールすることはできません。
「早朝自宅を訪問されると家族や近隣住民に迷惑がかかるから」「早朝は家事などで忙しいから」などの理由があったとしても、捜査機関側がおはよう逮捕に踏み出すと判断した場合には、躊躇なく身柄が押さえられます。
ただし、おはよう逮捕をされないように事前にリスクヘッジをするのは不可能ではありません。
たとえば、出頭要請に素直に応じる、任意の事情聴取で正直に犯行を自供する、捜査機関から提出を求められた証拠物を素直に提出するなど、逃亡または証拠隠滅のおそれがないと判断される状況を作り出せば、おはよう逮捕を回避し、在宅事件として刑事手続きが進められるでしょう。
Q.おはよう逮捕されたあとはどうなる?
おはよう逮捕をされると、そのまま警察署に連行されて、警察官からの取り調べを受けなければいけません。
逮捕後は警察や検察で取り調べを受け、必要に応じて勾留がおこなわれます。
起訴されない場合でも、最長23日間は身柄を拘束される可能性がある点に注意が必要です。
そして、身柄拘束期間は、当然外部との連絡は取れません。
そのため、学校や職場を無断で休むことになり、日常生活に支障をきたすおそれもあります。
おはよう逮捕からの早期釈放を目指すためには、弁護士へ相談して保釈のために働きかけてもらうことが大切です。
さいごに|一般的に通常逮捕は「おはよう逮捕」になることが多い!
刑事事件を起こして通常逮捕の判断が下される場合には、おはよう逮捕の方法で身柄が拘束されることが多いです。
ただ、早朝に警察官がやってきて逮捕や捜索差し押さえが実行されると、家族や近隣住民にも迷惑がかかりますし、何より、被疑者の日常生活にさまざまな悪影響が生じかねない点に注意が必要です。
そのため、刑事事件を起こしておはよう逮捕のリスクに晒されている場合には、任意の事情聴取に丁寧に対応したり、自首をして在宅事件処理の可能性を高めたりするなどの工夫が必要だと考えられます。
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