偽証罪(ぎしょうざい)とは、法律のより宣誓した証人が虚偽の陳述を行うことに対する犯罪です。法定刑は3カ月以上10年以下の懲役という重い罰則が設けられている犯罪です。
裁判所で宣誓した証人が嘘の証言を行うと、偽証罪に問われることになります。
実際に、偽証罪が身近に起きるようなことはほとんどないのですが、偽証罪の定義や関連の罪などについて解説していきたいと思います。
偽証罪の定義
それでは、偽証罪とはどのような罪になるのかをこちらで解説していきたいと思います。
偽証罪については刑法169条に明記
偽証罪については刑法169条に
法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、3か月以上10年以下の懲役に処する。
と、記載があります。
主体は宣誓した証人のみ
偽証罪の対象となる人物は「法律による宣誓をした証人のみ」です。法律による宣誓については後述しますが、刑事裁判や民事裁判で証言を求められた証人のみですので、刑事裁判の被告人や、民事裁判での原告・被告がうその証言をしたからと言って、偽証罪に問われることはありません。
もちろん、被告人や原告・被告がうその証言をしたことが発覚したのであれば、刑事裁判においては裁判官からの印象は悪くなり、判決による刑罰にも影響してくるでしょう。
また民事裁判の場合に原告・被告がうその証言をした場合、民事訴訟法により10万円以下の過料が科されることがあります。
法律による宣誓とは
偽証罪の「法律による宣誓」とは、刑事事件の場合「刑事訴訟法」、民事事件の場合「民意訴訟法」による宣誓を言います。つまり、裁判で宣誓を行った証人が噓の証言を行った場合に偽証罪が成立するのです。
「知らない」とうそをついた時は?
証言をする際によく「記憶にない」などの証言がされることがあります。実際に記憶がないのであれば問題ないのですが、裁判の原告・被告・被告人をかばうために知らないと証言の拒否をしたリ、虚偽をすると宣誓証言拒罪や偽証罪に該当することもあります。
偽証罪の罰則
偽証罪の罰則は、【3カ月以上10カ月以下の懲役】です。
偽証罪の類似の罪と罰則
偽証罪には似たような罪がいくつかありますので、こちらでご紹介いたします。
宣誓証言拒否罪
裁判では、証言を拒絶できる「証言拒絶権」というものがあります。しかし、正当な理由なく宣誓や証言を拒んだ場合は宣誓証言拒否罪に該当します。宣誓証言拒否罪の罰則は、【10万円以下の罰金または拘留】です。情状によっては、罰金と拘留の併科がされることもあります。
正当な理由の宣言・証言の拒否(宣言拒絶権)
正当な理由、すなわち宣言拒絶権として認められている内容は以下の通りです。
【民事訴訟の場合】
・自己や自己の一定範囲の親族等(配偶者・4親等内の血族・3親等内の姻族(これらの関係にあった者)、後見人、被後見人)が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれがある事項や、これらの者の名誉を害すべき事項(民事訴訟法196条)
・公務員の職務上の秘密(民事訴訟法197条1項1号)
・医師、歯科医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教・祈祷・祭祀の職にある者(これらの職にあった者)が職務上知り得た事項で黙秘すべきもの(民事訴訟法197条1項2号)
・技術又は職業上の秘密に関する事項(民事訴訟法197条1項3号)
引用:「宣言拒絶権-Wikipedia」
【刑事訴訟の場合】
・自己や自己の一定範囲の親族等(配偶者・3親等内の血族・2親等内の姻族(これらの関係にあった者)、後見人・後見監督人・保佐人、被後見人・被保佐人)が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれがある証言(刑事訴訟法146条、147条)
・医師、歯科医師、助産師、看護師、弁護士、弁理士、公証人、宗教の職にある者又はこれらの職にあった者が業務上知り得た事実で他人の秘密に関するもの(刑事訴訟法149条)
引用:「宣言拒絶権-Wikipedia」
虚偽告訴罪
同じく、嘘を付くことが犯罪になるものとして「虚偽告訴罪(きょぎこくそざい)」というものがあります。端的にお伝えすると、相手に刑事処分を受けさせるために嘘の刑事告訴を行なった場合に成立する罪です。
法定刑は【3カ月以上10年以下の懲役】と、偽証罪と同じです。
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虚偽鑑定等罪
虚偽鑑定等罪とは、法律により宣言した鑑定人・通訳人・翻訳人などが嘘の鑑定や通訳、翻訳を行った際に成立する犯罪です。法定刑は【3カ月以上10年以下の懲役】と、偽証罪と同じ法定刑が設けられています。
まとめ
いかがでしょうか。このように裁判での証人に対する犯罪もあります。
特に刑事事件では刑事裁判で法廷に立つ身近な方のために情状証人となる方もいるでしょうが、被告人の都合の良いように噓の証言をしたような場合、罪に問われることもありますので注意が必要です。
もしも、証人として法廷に立つようなことがある場合は、一度弁護士にアドバイスを受けることをおすすめします。
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