情状証人の役割とは?選ばれる人や責任・証言時の注意点を解説
情状証人(じょうじょうしょうにん)とは、刑事裁判で被告人の量刑を定めるにあたって酌むべき事情を述べるために公判廷に出廷する証人を言います。
刑事裁判では弁護側と検察側のどちら側にも情状証人が付くことがあります。
身近な方の情状証人になったり、お願いされており、「どのようなことをしなければならないのか?」と、心配されている方も多いでしょう。
今回は刑事事件における主に弁護側の情状証人の役割についてご説明しています。
情状証人とは|刑事事件で情状証人を設ける理由
お伝えのように、情状証人とは、刑事事件の裁判で被告人の量刑を定めるにあたって酌むべき事情を述べる証人を言います。情状証人は、刑事裁判で被告人の判決を決めるための重要な役割を担っています。
情状証人は、弁護側と検察側でそれぞれどのような証言を行なうのか違いますので、それぞれご説明します。
弁護側の情状証人の役割
弁護側の情状証人は、主に被告人のご家族や知人などがなることが多く、被告人の刑の軽減を求めたり、執行猶予付き判決を求める為の証言を行ないます。弁護側の情状証人が行う証言には以下のようなものがあります。
犯罪を起こす前の被告人の性格や事情
情状証人の証言の一つに、被告人の普段の性格や事情を証言してもらうことがあります。例えば
「普段は非常にまじめで犯罪を起こすような人物ではない」
「こういう経緯があって、今回の事件を起こしてしまった」
といった証言です。
判決後の被告人の監視などの証言
また、一緒に住んでいるご家族や会社の上司などであれば、判決後に社会に復帰した被告人を監視するような旨を証言してもらうこともあります。
「薬物犯罪で起訴された被告人を更生施設に通わせる」
「今回起こした事件に関連する場所には近づかないように監視する」
といった証言があります。
実刑判決による影響の証言
また状況によっては、実刑により長い期間刑事施設に入所する影響を証言してもらい、執行猶予付き判決を求めた証言をすることもあります。
「刑務所に入所してしまうと残された子供に影響が出てしまう」
「薬物依存からの更生が遅れてしまう」
などです。
検察側の情状証人の役割
一方、検察側も情状証人を招くこともあります。主に、被害者や被害者家族などが情状証人となります。証言の内容としては
「今回の事件でこれほど甚大な被害を受けたので被告人を厳しく罰してください」
「絶対に許せないので懲役刑を与えてください」
というような被害感情を強く訴えた内容です。
情状証人に選ばれる人
情状証人として刑事裁判に出廷する人は主に
弁護側:家族、会社の上司、友人
被害者側:被害者、被害者家族、遺族
などが出廷します。特に家族でなければ情状証人になれないなどの決まりはありません。例えば、薬物事件で逮捕されてしまった、元プロ野球選手の清原和博氏の情状証人には、友人として元プロ野球選手の佐々木主浩氏が情状証人として出廷したことでも有名です。
しかし、弁護側の情状証人では、同居するご家族などが情状証人となることが裁判官の心証としても有効でしょう。
情状証人の責任
弁護側の情状証人についてですが、情状証人になったことで被告人の釈放後の監視を宣言してもらうこともあります。では、もしも情状証人が身柄釈放後の被告人の監督を怠って、再び罪を犯してしまったような場合は、なにか責任が生じてくようなことはあるのでしょうか?
答えは、そのような法的責任はありません。仮に、その後釈放された人物が罪を犯してしまっても情状証人が犯罪に加担しない限りはなんの罪にも問われません。ただ、後述しますが、法廷の場で嘘の証言をしてしまうと、偽証罪に問われることもあります。
情状証人が証言する際に注意すること
いかがでしょうか。このような情状証人ですが、裁判の場に立つだけでも不安が大きいでしょうが、さらに注意する点がいくつかありますのでご説明いたします。
相手側から厳しい質問がされる
かなり砕いて言うと、刑事裁判は弁護側VS検察側の場になります。もしも、弁護側の情状証人になったとすれば、検察側から厳しい質問がされることが予想されます。
例えば、
「被告人をこれからはきちんと支え、監督していきます。」
と証言したら
「あなたは本当に被告人を監督していけるのか?」
「四六時中監視することができるのか?」
といったような質問が検察側から行われることがあります。
検察は当然、刑事裁判にも慣れていますし、法的にも論理的に的確な質問をズバズバします。なんの準備もなく証言をすると、言い包められてしまうことも考えられるでしょう。
そのようなことを避けるためにも、情状証人として出廷する前は、弁護士に相談してアドバイスを受けるようにしましょう。
嘘の証言をすると偽証罪に問われる
刑事裁判で嘘の証言を行なうと、証言した情状証人が偽証罪に問われてしまうこともあります。事件当時の嘘の証言をすることももちろん該当しますが
例えば
「夫をこれからきちんと支えて監視していきます」
と宣言したのにも関わらず、その後離婚をするつもりであったり
「刑務所に入れられると病気の母親の面倒をする人がいなくなる」
という証言をしたものの、全くの嘘だったり、法廷で嘘の証言をすると偽装罪が問われてしまいます。
なお、上記のような証言をした場合でも、あとあと夫を支えることができなくなってしまった場合などは、証言の時点では嘘ではないので、偽証罪にはなりません。
偽証罪の罰則は【3カ月以上10年以下の懲役】となっています。
情状証人以外の情状弁護の方法
いかがでしょうか、以上が情状証人についての内容ですが、被告人の情状を弁護することを「情状弁護(じょうじょうべんご)」と言いますが、情状証人以外の方法もありますので、最後にご説明をしていきます。
被害者との示談
情状弁護の代表的な方法としては、被害者との示談交渉があります。示談交渉とは、被害者に対して弁済・謝罪を行ない和解する方法です。情状証人は、刑事裁判に限られていますが、被害者との示談は事件発生後にすぐ行うことができますので、早い段階で行いましょう。
示談交渉が済んでいると、加害者側の反省の意志が明確になったり被害者側の被害感情も良くなり、裁判官の心証が良くなりますので非常に有効です。早い段階の示談成立で、場合によっては、不起訴獲得や早期釈放などにもつながることがあります。
本人の反省
そして、何よりも重要なことは被告人(被疑者)本人がきちんと心から反省することです。いくら情状証人の方が法廷で証言をしたとしても、本人が反省していないと裁判官に映ってしまえば水の泡です。
今回起こしてしまった罪を本人がきちんと反省し、今後どのように社会復帰していくかという意思をきちんと示すことが有効な情状弁護の方法です。
反省を示す方法としては、上記の被害者との示談もありますが、被害者がいない場合は、贖罪寄附を行なったり、本人自身が反省文を検察に提出するなどがあります。
まとめ
いかがでしょうか。もしも、身近な方が刑事事件で逮捕されてしまったような場合、ご家族、友人などができる事の一つとして、情状証人として法廷で証言するということがあります。
初めてのことで心配な方も多いでしょうが、素直な気持ちで挑めば決して難しいものでもありません。
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