信書開封罪とは?成立要件と他人が開封して犯罪になるケース
信書開封罪(しんしょかいふうざい)とは、正当な理由もなく封がしてある信書を開ける犯罪です。封がしてある信書を開ける行為は個人の秘密を侵害する行為として「秘密を侵す罪」に分類されます。
「ただ封がしてある信書を開けただけ」と、思うかもしれませんが刑事罰も設けられており、場合によっては逮捕されてしまうこともあります。
この記事では、信書開封罪とはどのようなものかを解説していきます。
信書開封罪で逮捕・起訴される可能性はあります
信書開封罪で逮捕・起訴された場合 次のようなリスクがあります。
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信書開封罪とは|秘密を侵す罪
冒頭でご説明の通り、信書開封罪は封がしてある信書を正当な理由なくして開封する行為です。ちょっとこれだけではイメージが付きづらいのでもう少し噛み砕いてご説明していきます。
信書とは
まずは、信書がどのようなものかというと、郵便法や信書便法では「特定の受取人に対し差出人の意思を表示し事実を通知する文書」とあります。信書に該当するもの、しないものは以下の通りです。
信書に該当するもの
■書状
■請求書の類
【類例】納品書、領収書、見積書、願書、申込書、申請書、申告書、依頼書、契約書、照会書、回答書、承諾書、◇レセプト(診療報酬明細書等)、◇推薦書、◇注文書、◇年金に関する通知書・申告書、◇確定申告書、◇給与支払報告書
■会議招集通知の類
【類例】結婚式等の招待状、業務を報告する文書
■許可書の類
【類例】免許証、認定書、表彰状
※カード形状の資格の認定書なども含みます。
■証明書の類
【類例】印鑑証明書、納税証明書、戸籍謄本、住民票の写し、◇健康保険証、◇登記簿謄本、◇車検証、◇履歴書、◇給与支払明細書、◇産業廃棄物管理票、◇保険証券、◇振込証明書、◇輸出証明書、◇健康診断結果通知書・消防設備点検表・調査報告書・検査成績票・商品の品質証明書その他の点検・調査・検査などの結果を通知する文書
■ダイレクトメール
文書自体に受取人が記載されている文書
商品の購入等利用関係、契約関係等特定の受取人に差し出す趣旨が明らかな文言が記載されている文章
信書に該当しないもの
■書籍の類
【類例】新聞、雑誌、会報、会誌、手帳、カレンダー、ポスター、◇講習会配布資料、◇作文、◇研究論文、◇卒業論文、◇裁判記録、◇図面、◇設計図書
■カタログ
【類例】◇専ら街頭における配布や新聞折り込みを前提として作成されるチラシ、◇店頭での配布を前提として作成されるパンフレットやリーフレット
■小切手の類
【類例】手形、株券、◇為替証券
■プリペイドカードの類
【類例】商品券、図書券、◇プリントアウトした電子チケット
■乗車券の類
【類例】航空券、定期券、入場券
■クレジットカードの類
【類例】キャッシュカード、ローンカード
■会員カードの類
【類例】入会証、ポイントカード、マイレージカード
■ダイレクトメール
専ら街頭における配布や新聞折り込みを前提として作成されるチラシのようなもの
専ら店頭における配布を前提として作成されるパンフレットやリーフレットのようなもの
■その他
◇説明書の類(市販の食品・医薬品・家庭用又は事業用の機器・ソフトウェアなどの取扱説明書・解説書・仕様書、定款、約款、目論見書)、◇求人票、◇配送伝票、◇名刺、◇パスポート、◇振込用紙、◇出勤簿、◇ナンバープレート
信書には封がしてあること
そして信書開封罪は、封がしてある信書を開封する犯罪です。ですので、封がしていない信書を勝手に見たとしても罪には該当しません。封とは「〆」や「封」の文字やシーリングスタンプで封筒に封締めがされているようなものです。
正当な理由とは
信書開封罪の要件の一つに「正当な理由なく」とありますが、ここで言う正当な理由とは、例えば、破産手続きで破産管財人に転送された破産者宛の郵便物の中身を確認すること(破産法82条1項)などです。
また、親権者が子宛の信書を開封する場合は正当な理由として認められることがあります。
信書開封罪の罰則
信書開封罪の罰則は【1年以下の懲役/20万円以下の罰金】が設けられています。たかが信書の封を開けただけと思うかもしれませんが、このような刑事罰も設けられています。
信書開封罪は親告罪
また、信書開封罪は親告罪になっています。親告罪とは、被害者(ここでは信書の送り主、受取主です)が告訴しなければ、刑事事件として捜査が進められることもなく、刑罰を受けることもない罪を言います。
【関連記事】
▶「親告罪の仕組みと該当の罪一覧|親告罪では示談が有効」
信書開封罪以外の秘密を侵す罪
また上記でも触れましたが、信書開封罪は秘密を侵す罪に該当します。秘密を侵す罪にはもう一つの罪があります。秘密漏示罪(ひみつろうじざい)です。
秘密漏示罪は、医師、歯科医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人が正当な理由なく業務上取り扱った秘密を漏らす犯罪です。罰則は【6カ月以下の懲役/10万円以下の罰金】です。
日常で起こり得る信書開封罪
信書開封罪は、滅多に起こり得ない犯罪なうえに親告罪になっているので被害者からの告訴が無ければ事件化することもありません。しかし、日常のうっかりした行為が実は信書開封罪に該当している可能性があります。
家族間でも信書開封罪に該当することはある
例えば、あなたが男性で妻宛てに知らない男性から封がした信書が届いたとします。最近、妻の行動が怪しいと思っていて、不倫を疑ってこの信書を開封すると信書開封罪に該当する可能性は高いでしょう。
一方で、妻と数日間連絡が取れずに、行方不明になってしまいました。妻の行方を探すために妻宛ての親書を開封すると、正当な理由が認められ信書開封罪に該当しないケースも考えられます。
メールでの信書開封罪に該当するケース
最近ではメールでやり取りをすることがほとんどでしょうが、率直に申し上げますと、メールを無断で見たからと言って、信書開封罪になるようなことはありませんし、不正アクセス禁止法違反になるようなこともありません。
一方で、クラウド方式のメールを無断で見る行為は不正アクセス禁止法違反になり得ます。
遺言書の開封方法には注意
また、信書開封罪には該当しませんが、遺言書を開封する際も注意が必要です。遺言書を発見して検認せずに開封してしまうと、民法1005条により5万円以下の過料になることがあります。
【関連記事】
「遺言書の正しい開封方法|知っておくべき遺言書の扱い方」
まとめ
いかがでしょうか。例え家族や恋人の郵便物であっても、勝手に封を開けてしまうと信書開封罪に該当してしまうことがあります。
滅多に刑事事件にまで発展するようなことではありませんが、このような犯罪があるということも頭に置いておきましょう。
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