子供と生活を守るためにも、まずは弁護士へ相談しよう
痴漢で逮捕された場合、起訴されて有罪判決が下されるおそれがあります。
有罪判決が確定すると、刑罰が執行されて前科がつくことになり、以下のようなリスクがあります。
- 職場を解雇されるおそれがある
- 履歴書の賞罰欄に前科を記入しなければならなくなる
- 実名報道された場合、インターネット上に名前が残り続けるおそれがある
- 実名報道された場合、家族や子どもが「性犯罪者の家族」として見られるおそれがある など
しかし、たとえ逮捕されても、速やかに弁護士にサポートしてもらうことで不起訴処分を獲得でき、前科がつかずに済む可能性があります。
逮捕されてから起訴・不起訴が決まるまでは、最大23日間しかありません。
お住いの地域から、刑事事件が得意な弁護士を検索し、すぐにご相談ください。
夫(旦那)が痴漢で逮捕されてしまうと、強いショックを受けてしまう方も多いでしょう。
また、今後どうするべきか考えつつ、「会社をクビになってしまうのか」「そもそも会社に連絡されるのか」など、気になることもさまざまあるでしょう。
夫の痴漢が事実だった場合、できるだけ早い段階で弁護士に相談して被害者との示談交渉などを進めて、実名報道の回避や不起訴処分の獲得を目指すことが重要です。
夫の実名報道や起訴を回避できれば、あなたや子どもなどが「性犯罪者の家族」というレッテルを貼られずに済む可能性があります。
本記事では、夫が痴漢で逮捕されてしまった場合によくある質問や弁護士に依頼するメリット、離婚すべきかどうかの判断基準などを解説します。
夫の痴漢逮捕でよくある疑問
夫が痴漢事件を起こしてしまって、「会社をクビになって生活できなくなるのではないか」などと心配な方もいるでしょう。
被害者に多大な迷惑をかけたことによる申し訳なさや、夫が痴漢をしたことに対する強いショックなども感じているなか、今後の対応や生活のことなどを考えるのは非常に辛いでしょう。
少しでも落ち着いて行動できるように、ここでは夫が痴漢で逮捕されたときによくある疑問について解説します。
警察から会社に連絡される?
痴漢で逮捕されても、基本的に警察から会社に連絡されることはありません。
逮捕後に早期釈放されれば、痴漢したことを会社に知られずに済む可能性もあります。
ただし、「職場での痴漢行為で逮捕された」というようなケースでは、警察が捜査を進めるうえで会社に痴漢の事実を知られてしまうでしょう。
たとえ警察が会社に連絡しなくても、身柄拘束が長引いた場合は無断欠勤の状態が続き、結果的に逮捕の事実が知られてしまうおそれがあります。
そのため、できるだけ早く釈放されるように行動することが大切です。
なお、同居家族に対しては、本人が希望すれば警察側が連絡します。
逮捕後は本人の携帯電話やスマートフォンなどは没収され、自ら家族に連絡を取ることはできないため、警察官を通じて連絡を受けることになります。
逮捕されたのが会社に知られるとクビになる?
会社に連絡されても、必ずしもクビになるとは限りません。
クビとは「解雇」のことを指しますが、客観的に合理的な理由があって、社会通念上相当でないかぎり有効性が否定されます。
職場外での私生活上の行為で逮捕されたということは、ただちに解雇の有効性を基礎づけるものではありません。
しかし、「痴漢事件が実名報道されて会社にも具体的な被害が生じた」ということであれば、解雇の可能性はあります。
また、逮捕後に勾留されて出勤できない状態が長期間続いた場合には、早期の職場復帰が難しいことを理由として解雇されることもあり得ます。
そのため、犯罪行為で逮捕された場合に職を失ってしまうということは、実務的には多いです。
夫が「痴漢をやっていない」と言った場合は信じるべき?
夫が痴漢で逮捕されたものの、本人は「やっていない」と主張するケースもあります。
「これまで一緒に暮らしてきた夫の言葉を信用したい」という気持ちもあるかもしれませんが、まずは事実確認が必要です。
家族であっても警察が詳しく状況を教えてくれることはありません。
弁護士が本人と面会して事情を聞くことが最も適切です。
痴漢行為の事実を争う場合は、速やかな弁護士の対応が必要です。
会社にはどのように連絡をすればよいか?
会社に連絡しないまま欠勤状態が続くと、無断欠勤として問題となります。
そのため、家族から会社に何らかの連絡はしたほうがよいといえます。
逮捕後に勾留されてしまった場合、身柄拘束の状態が10日間~20日間続くことになるため、ごまかしきれないかもしれません。
会社への説明の仕方も、弁護士と個別にご相談いただくべきです。
痴漢で逮捕された夫とは離婚するべき?
たとえば、普段は穏やかで優しく真面目だった夫が「痴漢をしていた」と言われても、簡単には信じられないでしょう。
しかし、今後のことなどを考えて、なかには離婚が頭に浮かぶ方もいるでしょう。
ここでは、離婚すべきかしないべきか迷っている方へ、判断のポイントやそもそも離婚できるのかどうかなどを解説します。
離婚すべきかどうかの判断基準
離婚について考える際は、「夫がどの程度反省しているのか」「今回の逮捕でどの程度生活に影響が発生したのか」などを考慮したうえで決めましょう。
たとえば、実名報道されて「性犯罪者の妻」になってしまった場合は、夫がどれだけ反省したとしてもあなたの今後の生活や就職、子育てなどは厳しくなる可能性があります。
また、夫の身勝手な犯罪のせいで、これまで貯めてきた貯金を示談金として支払う必要も出てきます。
ただし、夫が初犯で心の底から反省していたり、自分から「更生したい」とカウンセリングに通ったりする場合は、一度信じてみるのもよいかもしれません。
まずは夫婦での話し合いが重要です。
もし精神的に辛い状態にある場合は、各市区町村の犯罪被害者等相談窓口や、無料の加害者家族向けの支援団体などに相談してみることをおすすめします。
離婚しないのであれば再発防止のサポートが重要!
夫と離婚せずに生活を続けていく場合は、再発防止のためにサポートしていきましょう。
痴漢事件に関しては「加害者の約85%は性犯罪の前科がある者」という調査結果もあり(平成27年版犯罪白書)、痴漢は再犯率が高かったり、そのほかの性犯罪とあわせておこなわれたりするケースもあります。
家族から痴漢をやめるように強く伝えたり、刑罰を受けたりすることで反省するケースもありますが、なかには「痴漢をやめたくてもやめられない」という依存症・病気のケースもあります。
このようなケースでは、何度も家族がやめるように伝えても痴漢を繰り返してしまうおそれがあり、医療機関での治療が必要になります。
定期的に専門家のカウンセリングや治療などを受ければ、再犯を回避できる可能性があります。
ただし、適切な治療を継続するためには周囲のサポートも必要になるため、家族で一緒に協力していきましょう。
夫の痴漢が離婚理由として認められるケース
たとえば、実刑判決を受ける可能性が高いような重大な罪を犯した場合や、何度も犯罪を繰り返している場合などは、夫婦関係の維持が困難であるとして離婚が認められる可能性があります。
また、長期間の服役によって家庭生活に大きな支障をきたす場合も同様です。
一方、軽微な犯罪に過ぎない場合は、これがただちに離婚理由とはならない可能性があります。
たとえば、初犯かつ一回限りの痴漢行為というようなケースでは、それのみでただちに離婚が認められるかは不透明です。
夫が痴漢で逮捕されたら弁護士を呼ぶべき理由
夫が痴漢で逮捕された場合、気が動転する方もいるかもしれませんが、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は法律の専門家として、不利益を最小限にするために尽力してくれます。
ここでは、夫が痴漢で逮捕されたときに弁護士に相談したほうがよい理由について解説します。
取り調べでの対応を助言してもらえるから
痴漢行為は、犯行態様などによって成立する犯罪が異なります。
捜査機関による取り調べの際に不用意な発言をすると、迷惑防止条例違反ではなくより重い不同意わいせつ罪で立件されてしまい、非常に不利な立場に置かれてしまう可能性があります。
弁護士に相談して、取調べでの対応を助言してもらうことで、このような不利益を回避できる可能性があります。
なお、原則として弁護士が本人と接見する際に警察官は立ち会わないため、どのようなことでも気軽に相談できます。
法律の専門家のアドバイスを受けることで、本人の精神的な負担も和らぐでしょう。
早期釈放となる可能性があるから
痴漢事件の場合、被疑者が初犯で罪を認めており、かつ適切な身元引受人がいれば、逮捕後は勾留されずに釈放となることもあります。
早期に弁護士と相談し、弁護士が適切に対応を進めることで早期釈放の可能性は高まります。
少しでも早く釈放してもらうためにも、早めに弁護士に依頼しましょう。
身柄拘束が続くほど、会社や周囲の人に事件のことを知られるリスクが高まります。
示談交渉を依頼できるから
痴漢事件のような被害者のいる犯罪の場合、被害者との示談の有無がひとつのポイントとなります。
特に初犯の場合、被害者との示談が成立すれば早期釈放・不起訴処分となる可能性があります。
もし起訴されて刑事裁判になったとしても、執行猶予の獲得が望めます。
ただし、被害者は痴漢被害に遭って大きなショックを受けており、示談に簡単に応じてはくれません。
弁護士が示談交渉を丁寧に進めることが必要不可欠です。
不起訴処分や減刑獲得を目指せるから
弁護士なら、事案に応じて適切なアドバイスや弁護活動をおこなってくれます。
被害者との示談成立が難しい場合には、示談金の供託や贖罪寄付などの形で被害弁償の意思を示して、不起訴処分や減刑を主張していくという方法もあります。
ほかにも、再犯防止のための医療機関のカウンセリングや更生プログラムなどを検討することでも、被疑者・被告人にとって有利な事情となります。
弁護士のアドバイスのもとで、このような手段も講じることができるかもしれません。
痴漢行為で問われる罪と罰則
痴漢行為で成立する犯罪としては、主に迷惑防止条例違反や不同意わいせつ罪などがあります。
ここではそれぞれの罰則について解説します。
迷惑防止条例違反
「衣服の上から身体を触る」というような痴漢行為については、迷惑防止条例違反として処理される場合が多いです。
迷惑防止条例に関しては、各都道府県によって規定や罰則が異なります。
一例として、東京都の迷惑防止条例違反の罰則は「6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金」です(東京都迷惑防止条例5条1項1号、8条1項2号)。
不同意わいせつ罪
衣服の下に手を入れて身体に直接触れるような痴漢行為や、胸や下半身を長時間にわたって触り続けるような痴漢行為は、不同意わいせつ罪として処理される可能性があります。
不同意わいせつ罪の罰則は「6ヵ月以上10年以下の拘禁刑」で、罰金刑はありません(刑法第176条)。
迷惑防止条例違反に比べると、不同意わいせつ罪の罰則は重く設定されています。
痴漢事件の裁判例
痴漢事件の中には、逮捕されたものの無罪判決が下されたケースなどもあります。
ここでは、過去の痴漢事件の裁判事例を紹介します。
高校生の下半身を触り、懲役1年10ヵ月の判決が下された事例
電車の中で、61歳の被告人が被害者である女子高校生の下着の中に手を入れ、陰部をもてあそんだという事例です。
この事例では、被告人は終始犯行を否認していました。
さらに、被告人側に反省の色が伺えず弁解内容も不合理であり、被害者との示談も成立していないことなどを踏まえて、裁判所は懲役1年10ヵ月の実刑判決を下しています。
参考元
- 裁判年月日:平成18年10月31日 裁判所名:東京地裁 裁判区分:判決
- 事件番号:平18(刑わ)1635号
- 事件名:強制わいせつ被告事件 〔電車内痴漢無罪事件・第一審〕
- 上訴等:控訴 文献番号:2006WLJPCA10316005(Westlaw Japan)
痴漢をしたうえに暴行を加え、懲役1年4ヵ月・罰金5万円の判決が下された事例
輸入雑貨店を訪れた被告人が、店内にいた被害者の臀部を服の上から触り、さらに暴力をふるったという事例です。
被告人は、被害者の後ろを通過する際に偶然を装って被害者の臀部を服の上から2回触り、被害者が犯行に気付いて警察に連れて行こうとしたところ、殴る蹴るの暴行を加えました。
裁判では、被告人に反省の色が見られないことや、被害者に対して謝罪などをしていないこと、これまで多数の前科があることなどを踏まえて、懲役1年4ヵ月・罰金5万円の判決が下されました。
参考元
- 裁判年月日:平成14年2月22日 裁判所名:神戸地裁 裁判区分:判決
- 事件番号:平13(わ)1080号
- 事件名:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和38年7月5日兵庫県条例第66号)違反、暴行被告事件
- 裁判結果:有罪 文献番号:2002WLJPCA02229003(Westlaw Japan)
女性の上半身を触ったものの、無罪判決が下された事例
満員の電車内で、被告人が被害者である女性の胸を揉んだとされる事例です。
この事例では、被害者の証言以外に証拠がなく、その信憑性を検討する必要がありました。
被害者側の証言は「左胸を触られた感覚があり、周囲の状況を確認したところ目の前に被告人がおり、被告人に痴漢されたと思った」というものでした。
裁判では、被害者側が嘘をついているとは判断されなかったものの、被害者の胸を揉んでいた手が被告人の手であるとは言い切れないと判断され、無罪判決が下されました。
参考元
- 裁判年月日:平成27年1月14日 裁判所名:千葉地裁 裁判区分:判決
- 事件番号:平26(わ)1077号
- 事件名:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反被告事件
- 裁判結果:無罪 文献番号:2015WLJPCA01149001(Westlaw Japan)
夫が痴漢で逮捕された後の流れ
夫が痴漢で逮捕された場合、基本的な刑事手続きの流れは以下のとおりです。

- 警察の取調べ~検察への送致|逮捕後48時間以内
- 検察の取調べ~勾留請求|送致後24時間以内
- 勾留・取調べ|原則10日間、最大20日間
上記のように、逮捕後の刑事手続きには時間制限があります。
逮捕後に勾留された場合は原則10日間、勾留延長となった場合は最大20日間も身柄が拘束されるため、私生活に大きな影響が生じる可能性があります。
また、起訴されると起訴後も勾留が続き、さらに影響が深刻になる可能性があります。
早期釈放や減刑獲得のためにも、できるだけ早い段階で弁護士に相談しましょう。
在宅事件の場合
痴漢事件の場合、上記のように逮捕されて刑事手続きが進行する「身柄事件」ではなく、身柄拘束されずに刑事手続きが進行する「在宅事件」となるケースもあります。
在宅事件の場合、基本的に以下のような流れで進行します。

在宅事件の場合、これまでどおりの生活を送りながら、警察署や検察庁に呼び出されて取り調べなどに応じることになります。
在宅事件となった場合も、起訴されて前科が付いたり実刑判決が下されたりする可能性はあるため、身柄事件と同様に早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
夫が痴漢で逮捕された際は気が動転してしまうかもしれませんが、まずは弁護士に相談しましょう。
弁護士のサポートによって早期釈放されれば、痴漢や逮捕の事実を会社に知られずに済む可能性がありますし、私生活への影響を最小限に留めることができるかもしれません。
また、警察に逮捕されたとしても冤罪である可能性もあります。
弁護士なら無罪を証明するためのサポートも受けられるので、刑事手続きが進んでしまう前に「ベンナビ刑事事件」で弁護士を探しましょう。