不同意わいせつ罪は、数多くの刑法犯の中でも「逮捕されやすい犯罪」です。
男女共同参画白書・検察統計調査によると、2023年の不同意わいせつ事件の認知数6,096件のうち、逮捕などの身柄拘束をともなうものは4,505件にのぼります。
とはいえ、不同意わいせつ罪に該当しうる行為をおこなったからといって、必ず逮捕されたり、刑罰が科されたりするわけではありません。
不同意わいせつ罪の成立要件や事件後の対策によっては、逮捕されなかったり、逮捕されても刑罰を回避できたりする可能性があります。
本記事では、不同意わいせつ罪での逮捕につながる行為や逮捕後の流れ、逮捕されてしまった場合の対処法などを解説します。
なお、かつては「強制わいせつ罪」「準強制わいせつ罪」が規定されていましたが、2023年7月施行の改正刑法で統合されて「不同意わいせつ罪」が新設されました。
不同意わいせつ罪について前科を回避したい方へ
嫌がる相手を衣服の上から触ったり、キスを迫るような行為は不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。刑罰は6カ月以上10年以下の拘禁刑で、重い犯罪といえます。
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不同意わいせつ罪とは
不同意わいせつ罪は、刑法第176条に規定されている犯罪です。
(不同意わいせつ)
第百七十六条 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
3 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
引用元:刑法第176条
「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為をいいます。
ここでは、不同意わいせつ罪にあたる行為や関連する罪などの基礎知識を解説します。
不同意わいせつ罪にあたる行為
被害者の同意なく以下のような行為がおこなわれた場合は、不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。
なお、被害者が16歳未満の場合は、たとえ同意していたとしても不同意わいせつ罪が成立します。
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衣服の中に手を差し込んで身体に触れる
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衣服の上から胸や陰部を触る
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長時間にわたって身体を触り続ける
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むりやりキスをする
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衣服を脱がせる など
被害者・加害者の性別は問わない
わいせつ行為といえば「加害者は男性、被害者は女性」というイメージがあるかもしれませんが、刑法の規定では性別を限定していません。
「加害者が女性、被害者が男性」という不同意わいせつ事件も発生しており、同性間で不同意わいせつ罪が成立することもあります。
被害者が16歳未満の場合は同意していても適用され得る
刑法改正による不同意わいせつ罪の新設とともに、性交同意年齢は13歳から16歳に引き上げられました。
これにより、被害者が16歳未満の場合は、たとえ双方に合意があったとしても不同意わいせつ罪が成立します。
これは、16歳未満の者では性的な理解が備わっておらず、同意が有効ではないと考えられるからです。
ただし、不同意わいせつ罪が成立するためには、加害者側が被害者の年齢を認識している必要があります。
たとえば「被害者が『17歳だ』と偽っており、客観的にもこれを信じることが相当」というような場合は、16歳未満の者に対する不同意わいせつについての故意はなく、原則として同罪は成立しないことになります。
もっとも、「17歳」と偽った相手に対して強制的にわいせつ行為をおこなえば、不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。
未遂の場合も罪になる
相手の同意なくわいせつな行為をおこなおうとしたものの、何らかの事情で及ぶことができなかった場合は、不同意わいせつ未遂罪が成立します。
(未遂罪)
第百八十条 第百七十六条、第百七十七条及び前条の罪の未遂は、罰する。
引用元:刑法第180条
未遂罪の罰則は既遂罪と同様で「6ヵ月以上10年以下の拘禁刑」ですが、事情によっては軽減される場合もあります。
不同意わいせつ罪に関連する罪
被害者の同意なく、わいせつな行為をおこなった場合に成立するのが「不同意わいせつ罪」ですが、そのほかにも、わいせつな行為をおこなった場合に成立しうる犯罪があります。
これらの犯罪が成立する場合にも、事案によっては逮捕される可能性があります。
監護者わいせつ罪
18歳未満の者に対して、監護者の立場を利用してわいせつ行為をおこなった場合には監護者わいせつ罪に該当します。
監護者とは、親・祖父母・養親・親の交際相手などが挙げられます。
学校の先生も監護者的な立場にありますが、学校生活だけでの関与になるため、監護者わいせつ罪における「監護者」に該当するケースは基本的にはないでしょう。
ただし、全寮制の学校で私生活面においても監護する立場にあるような場合には、「監護者」と判断される可能性もあります。
監護者わいせつ罪の罰則は「6ヵ月以上10年以下の拘禁刑」です。
(監護者わいせつ及び監護者性交等)
第百七十九条 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第百七十六条第一項の例による。
2 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条第一項の例による。
引用元:刑法第179条
不同意わいせつ等致死傷罪
不同意わいせつ罪や監護者わいせつ罪などに該当する行為をおこなって被害者を死傷させた場合には、不同意わいせつ等致死傷罪としてさらに厳しく罰せられます。
法定刑は「無期または3年以上の懲役刑」とされ、非常に重いものとなっています。
(不同意わいせつ等致死傷)
第百八十一条 第百七十六条若しくは第百七十九条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
2 第百七十七条若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。
引用元:刑法第181条
痴漢行為
痴漢行為は身近で起こりうる性犯罪のひとつですが、痴漢罪という罪名はありません。
痴漢行為をおこなった場合には、不同意わいせつ罪や各都道府県の迷惑防止条例違反に該当することがほとんどです。
「どの程度の痴漢行為で不同意わいせつ罪が成立するか」という明確な線引きはありませんが、悪質な痴漢行為では不同意わいせつ罪が適用される可能性が高くなり、逮捕される可能性も高まります。
たとえば「被害者の下半身を服の上から1度だけ触った」というような事案では、迷惑防止条例違反が適用されることが多いでしょうが、下着の中にまで手を入れたり、長時間触り続けたりすると不同意わいせつ罪に問われる可能性が高くなります。
不同意わいせつ事件を起こしたらどうなる?
不同意わいせつ罪については「6ヵ月以上10年以下の拘禁刑」という法定刑が定められています。
不同意わいせつ事件を起こして逮捕されると「起訴すべきか・不起訴にすべきか」「どの程度の刑罰を与えるべきか」などが判断されます。
不同意わいせつ罪は罰金刑が定められていない重い犯罪ではあるものの、場合によっては不起訴になったり、執行猶予付き判決が出されたりすることもあります。
しかし、犯罪行為をおこなったことにより生じる不利益は、刑罰だけではありません。
不同意わいせつ事件を起こした場合のリスク
不同意わいせつ事件を起こした場合、以下のような不利益が生じる可能性があります。
刑罰を受けるリスク
不同意わいせつ罪の法定刑は「6ヵ月以上10年以下の拘禁刑」です。
事件内容や逮捕後の対応にもよりますが、初犯であっても実刑判決を受けて刑務所に収容されるリスクは十分にあります。
逮捕・身柄拘束による不利益
逮捕された場合、被疑者は基本的には誰にも連絡が取れなくなります。
詳しくは後述しますが、数日~数週間程度は身柄拘束され、その間に会社や家族に事件を起こしたことが発覚し、結果として社会生活に影響が出る可能性があります。
家族や会社に発覚するリスク
逮捕されたからといって、家族や会社に警察から直接連絡がされることはあまりありません。
しかし、逮捕によって身柄拘束が続けば、家族や会社に事件を起こした事実を知られる可能性は高くなります。
たとえば、逮捕後に本人が数日間ほど音信不通になったことで、家族や会社の人が心配して警察に相談しに行き、結果として事件のことが発覚するということもあるでしょう。
結婚している場合には、配偶者が事件のことを知って離婚に繋がることも十分にあり得ますし、会社に知られた場合は懲戒処分を受ける可能性もあります。
報道されるリスク
事件内容によっては、報道機関によって報道され、実名と不同意わいせつ事件の事実が世間に知れ渡るおそれもあります。
また、身近な人や被害者などからSNSで情報が拡散される可能性もあります。
「悪事千里を走る」と言いますが、刑事手続が終わったあとも、犯罪行為をおこなった事実が実生活に影響を及ぼす可能性も十分に考えられます。
不同意わいせつ罪に設けられている刑罰
不同意わいせつ罪の法定刑は「6ヵ月以上10年以下の拘禁刑」であり、罰金刑は規定されていません。
したがって、不同意わいせつ罪で起訴されて裁判で有罪と判断された場合は、実刑か執行猶予付きか、懲役の期間はどのくらいかといった点が重要になります。
初犯で実刑になる可能性
初犯の場合は、被害者と示談できた場合は不起訴、あるいは起訴されて有罪となった場合でも執行猶予となる可能性が高くなります。
しかし、刑事処分や量刑を決める際にはさまざまな要素が考慮され、事案によっては初犯でも実刑となる可能性があります。
量刑判断の要素
不同意わいせつ罪の刑事裁判で裁判官が量刑を決める際は、主に以下のような事情が考慮されます。
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行為の計画性・態様
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行為の結果・被害内容
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被告人の反省の程度
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被害弁償・示談の有無
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再犯の可能性
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更生の可能性 など
上記のうち、まず重要視されるのは、行為の態様・行為の結果・動機などの犯情です。
そして「犯行に計画性があって、わいせつ行為が複数回繰り返されるなど執拗かつ悪質で、被害者が通常の日常生活を送れなくなるほど与えた精神的ダメージが大きい」などという場合は、初犯でも実刑となる可能性があります。
不同意わいせつ罪で逮捕される可能性がある行為の具体例
ここでは、不同意わいせつ罪で逮捕されうる行為について解説します。
被害者の体を触る・キスをする・抱きつく
被害者の体を触る・キスをする・抱きつくなどの行為は、不同意わいせつ罪の典型例です。
自分の体を触らせる
「被害者に自分の体を触らせる」というような行為もわいせつ行為に該当し、不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。
痴漢
痴漢行為で不同意わいせつ罪が適用されるケースもあります。
痴漢行為では迷惑防止条例違反となることもありますが、「下着の中に手を入れて触る」「体を長時間触り続ける」などの悪質な痴漢行為では、不同意わいせつ罪が成立する可能性が高くなります。
セクハラ
社会問題としても多く取り上げられるセクハラですが、特に「体を触る・触らせる」などの悪質なセクハラでは不同意わいせつ罪となるケースもあります。
セクハラについては、被害者が社内での関係悪化や報復を恐れたり、羞恥心を感じたりして泣き寝入りし、事件化しないということもありました。
しかし、近年ではハラスメント問題に対して厳しい目が向けられていることや、企業がコンプライアンス対策(相談窓口の設置など)にも力を入れているため、セクハラも犯罪として厳しい処罰を受けることは十分あり得ます。
睡眠中や泥酔している人に対するわいせつ行為
寝ている人や泥酔中で抵抗できない状態の人に対してわいせつ行為をおこなった場合も、不同意わいせつ罪で逮捕される可能性があります。
不同意わいせつ罪で逮捕された事例
ここでは、不同意わいせつ罪で逮捕された実際の事件を紹介します。
被害者に抱きついて不同意わいせつの疑いで逮捕されたケース
男性が女性に対して、路上で抱きついて上半身を触るなどのわいせつな行為をしたとして、不同意わいせつの疑いで逮捕されたというケースです。
男性と女性は元同僚であり、路上で会話を交わしていたところ、突然犯行に及んだとのことです。
被疑者である男性は「そのようなことをした記憶はありません」と容疑を否認しています。
高速バスの車内で被害者の体を触って逮捕されたケース
30代の男性が17歳の女性に対して、高速バスの車内で身体を触るなどのわいせつな行為をしたとして、不同意わいせつの疑いで逮捕されたというケースです。
加害者が犯行に及んでいたところをほかの乗客が目撃し、バスの運転手を通じて110番通報がされたとのことです。
被疑者である男性は「その通りで間違いありません」と容疑を認めています。
小学校教諭が女児にわいせつな行為をして逮捕されたケース
小学校教諭の男性が13歳未満の女児に対して、施設内で体を触るなどのわいせつな行為をしたとして、不同意わいせつの疑いで逮捕されたというケースです。
施設関係者が県警に相談したことで犯行が発覚し、被疑者である男性は「女児の体に触ったのは間違いない」と供述して容疑を認めています。
同性相手にわいせつな行為をして逮捕されたケース
施設職員の男性が施設入居者の男性に対して、下半身を直接触るなどのわいせつな行為をしたとして、不同意わいせつの疑いで逮捕されたというケースです。
被害者がほかの職員に相談したことで犯行が発覚し、被害者の父親が被害届を提出して警察による捜査がおこなわれました。
被疑者である男性は「間違いありません」と供述し、容疑を認めているとのことです。
不同意わいせつ罪で逮捕されたあとの流れ
不同意わいせつ罪で逮捕されてしまうと、逮捕から最長で23日間におよぶ身柄拘束を受けるおそれがあります。
検察官が起訴・不起訴の判断を下すまでのタイムリミットは最長で23日間なので、できるだけ素早く対応すべきです。
現行犯逮捕もしくは通常逮捕
不同意わいせつ事件を起こしてしまえば逮捕される可能性は高いでしょう。
警察による逮捕は、大きく分ければ「現行犯逮捕」と「通常逮捕」に分けられます。
現行犯逮捕の場合
犯行現場で逮捕された場合は現行犯逮捕となります。
なお「犯罪が発生したその場で身柄が確保される」という特性から、犯人の取り違えが起きるおそれが低いため、警察官だけではなく一般人にも逮捕権が認められています。
したがって「逃げようとしたところを被害者本人に腕をつかまれた」「周囲の目撃者に取り押さえられた」といったケースでは、その時点で現行犯逮捕されたとみなされるでしょう。
周囲に人が多い場所での痴漢事件などでは、現行犯逮捕がおこなわれることも多くあります。
通常逮捕の場合
通常逮捕とは、被害が発生したあとに被害者が被害届・告訴をすることで捜査が始まり、裁判所による逮捕状の発付を受けて警察が逮捕する方法です。
通常逮捕の場合、警察官が逮捕状を持って自宅などに訪ねてくるので、いつ逮捕されるのかもわかりません。
犯行の翌日に逮捕されることもあれば、数ヵ月~数年ほど経ってから逮捕されることもあります。
また、警察官から「まずは事情を聞かせてほしい」と任意で呼び出されたうえで、容疑が固まればすぐに逮捕状が請求されて逮捕されるというケースもあります。
最長23日間の留置・勾留
警察に逮捕されると、まずは警察署の留置場に留め置かれて取調べがおこなわれます。
そして、逮捕から48時間以内に検察庁へと送致され、送致を受けた検察官は24時間以内に被疑者を勾留するべきか(引き続き身柄を拘束するべきか)どうかを判断し、勾留するべきであると判断した場合には、裁判官に対して勾留を請求します。
これが認められると、原則10日間(延長を含めて最長20日間まで)身柄拘束が延長されます。
これを経て、検察官は被疑者を起訴するべきかどうかを判断します。
つまり、刑事事件を起こして逮捕された場合の身柄拘束の期間は以下のとおりです。
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警察段階:逮捕から48時間(2日間)
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検察官段階:送致から24時間(1日間)
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勾留段階:延長を含めて最長20日間
これを合計すると、逮捕から起訴・不起訴の判断に至るまでの身柄拘束の期間は最長で23日間に及びます。
その期間は社会から隔離されてしまって出勤・通学ができなくなるため、社会的な影響は非常に大きなものになるでしょう。
検察による起訴・不起訴の判断
検察官は、原則として裁判官が認めた勾留の期限までに起訴・不起訴を決定します。
証拠が揃って十分有罪認定がされるという状態で、かつ諸般の事情を考慮して「起訴すべき」と判断されれば、裁判所に起訴されます。
日本の司法制度では「検察官が起訴した事件の有罪率は99%を超える」とされているので、起訴されると非常に高い確率で有罪判決が出され、刑罰が科されてしまうでしょう。
また、起訴前に勾留されていた被疑者は、起訴後も保釈が認められない限りは、被告人としての(刑事裁判のための)勾留が続きます。
特に争いがある事件においては少なくとも2回~3回程度は刑事裁判が開かれ、おおむね1ヵ月に1度のペースであるため、スムーズに結審できたとしても、起訴後から3ヵ月ほどの身柄拘束が続くことを覚悟しなくてはなりません。
一方で「証拠が不十分である」あるいは「証拠は十分にあるが示談が成立している」などの事情から起訴する必要はないと判断されれば、不起訴処分となります。
不起訴処分となれば、刑事裁判は開かれないまま即日で釈放され、すぐに社会復帰が可能です。
刑事事件を起こしてしまった場合の手続きの流れや各段階におけるタイムリミットなどについては、以下の記事で詳しく解説しています。
不同意わいせつ罪で逮捕された場合の対処法
不同意わいせつ罪の加害者として逮捕されてしまった場合は、ただちに弁護士に相談しましょう。
弁護士と面会すれば取調べに向けたアドバイスをもらえて対策を講じることができるほか、不起訴処分を目指すならば被害者との示談交渉などのサポートもしてくれます。
早急に弁護士へ相談する
早急に弁護士へ相談するべき理由は、大きく以下の2つがあります。
接見で取調べなどのアドバイスを受けることができる
逮捕されたら早急に弁護士と接見しましょう。
逮捕直後に接見できるのは基本的に弁護士だけで、弁護士以外の家族・友人・知人などは被疑者本人と接見することはできません。
逮捕されると留置場に収容され、日常生活とはかけ離れた生活を強いられます。
そのため、肉体的にはもちろん精神的にも大きな負担がかかります。
そのような状況下での弁護士との接見は、被疑者にとって大きな心の支えとなります。
また、刑事事件では被疑者が逮捕直後の取調べで警察官・検察官に何を話したのかが重要視されることもあるため、この段階で被疑者の意思に反した供述調書が作られないよう、接見で弁護士から取調べに向けたアドバイスを受けることは大きな意義があります。
被害者との示談交渉の成立・早期釈放が望める
早期釈放のためには「被害者との示談交渉の準備ができているかどうか」も重要なポイントとなります。
なぜなら、被害者と示談する準備があるということは通常は罪を認めていることが前提ですし、罪を認めて反省をしているということは「被害者に働きかけて虚偽の供述を強いるなどして罪証隠滅行為をするおそれが低い」として、釈放しても問題ないと判断される可能性につながるからです。
もっとも、被疑者は逮捕されている以上、物理的に被害者との示談交渉はできませんし、被疑者との直接の交渉に応じる被害者は基本的にはいません。
そのため、被害者と示談交渉をおこなうには、弁護士の力を借りるほかありません。
弁護士との接見では、弁護士から「被害者と示談をする意向があるかどうか」も聞かれるでしょう。
罪を認めて被害者と示談する意向がある場合はその旨を伝え、速やかに示談交渉を始めてもらえば早期釈放にもつながりやすくなります。
弁護士に面会してもらい取調べに向けた助言を得る
逮捕されてしまうと、検察官送致までの48時間は警察の持ち時間として取調べがおこなわれます。
逮捕直後の取調べは、犯行からの記憶が新しい状態での供述として重視されるので、不用意な発言は控えたいところです。
しかし、逮捕されてしまったことに動揺して事実と異なる供述をしてしまったり、厳しい取り調べに耐えかねて警察官の誘導に従ってしまったりするおそれもあります。
そのような事態を避けるためにも、早い段階で弁護士と面会し、取調べに向けたアドバイスを受けましょう。
また、勾留が決定するまでの72時間のうちの面会は、通常家族であっても認められず、面会が許されるのは基本的に弁護士だけなので、弁護士と面会をして必要なアドバイスをもらうのが賢明です。
被害者との示談交渉をおこなう
示談金額の相場は難しいところですが、不同意わいせつ罪の事案における示談金の額は30万円~100万円程度になることが多いです。
もっとも、被害者に上記の範囲内での示談金を提示しても、事案の性質や被害者の受けた被害の内容などによっては、被害者の納得を得られずに示談ができないこともあります。
そのため、場合によっては上記の金額を上回る示談金となる可能性も否定はできません。
金銭以外の示談の条件
被害者の立場からしてみれば、示談金・慰謝料を受け取るだけで問題解決とすることには不安を感じる場合もあります。
たとえば、近所や同じ職場内でわいせつ行為があった場合には、日常生活を送るうえで被害者と加害者が遭遇する可能性もあります。
そのようなケースでは、引越しや退職などを示談条件として交渉を進める場合もあります。
示談交渉する際に重要なことは、被害者の方に誠心誠意謝罪し、再び事件に巻き込まれてしまう不安を払拭することであり、お金さえ支払えばそれで解決というわけではありません。
再犯防止のための努力・対策をする
不同意わいせつなどの性犯罪では、再犯率の高さも問題視されています。
調査の対象となった性犯罪事件の裁判確定から5年が経過した時点において服役中等の者を除いた1,484人について,罪名は問わずいずれかの再犯を行った者の比率である全再犯率は20.7%であった。性犯罪再犯率は13.9%であり,全再犯を行った者のうちの約7割を占めていた。
引用元:性犯罪者の実態に関する特別調査の結果について|一般財団法人 日本刑事政策研究会
犯した罪について反省・謝罪をするだけでなく、今後同様の事件を起こさないように再犯防止のための対策を取ることも重要です。
家族による監視の強化やわいせつ犯罪に関するカウンセリングを受けるなどして、根本的な解決を図っていくことも必要になります。
身に覚えのない否認事件での対応
なかには、自分の身に覚えのない「冤罪」であるにもかかわらず逮捕されるという事件もまれにあります。
捜査機関から厳しい取調べを受けたり、被害者から示談金を請求されたりした場合には「なるべく大事にはしたくない」などと考えて、やってもいない罪を認めたくなることもあるかもしれませんが、不用意に認めてはいけません。
一度認めたことをあとから覆すことは相当困難であるため、このような場合も弁護士に助けを求めることをおすすめします。
まとめ
不同意わいせつ罪で逮捕されると「6ヵ月以上10年以下の拘禁刑」が科される可能性があります。
たとえ初犯でも状況次第では実刑判決が下されることもあり、執行猶予付き判決や早期釈放などを獲得するためには弁護士のサポートが必要不可欠です。
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