包丁やナイフの持ち運びは銃刀法違反で捕まる?問題がないケースや逮捕された事例

包丁やナイフを持ち運びたいけれど、銃刀法違反になるのではないかと疑問を感じている方は少なくないはずです。
実際にキャンプや釣りなどで使うつもりでも、法律の規定や判断基準を知らなければ、思いがけず法律違反となってしまう可能性があります。
そのため、包丁などの刃物は、最低限の知識を身につけたうえで持ち運ぶことが大切です。
そこで本記事では、包丁やナイフの持ち運びが銃刀法違反になる可能性について解説します。
実際の逮捕事例や万が一逮捕されてしまったときの対処法なども紹介しているので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
正当な理由なく包丁を持ち運ぶと銃刀法違反になる可能性がある!
正当な理由なく包丁を持ち運ぶと、銃刀法違反になる可能性があります。
銃刀法は、正当な理由なく銃や刃物を所持することを禁止する法律であり、正式には銃砲刀剣類所持等取締法といいます。
もちろん、自宅で包丁を保管しておくことに法的な問題はありません。
しかし、自宅から包丁を持ち出した場合には、周囲に危険が及ぶおそれがあるため規制対象になります。
刃体の長さや使用目的などによっては、銃刀法違反として罰金・懲役に処されてしまうので、キャンプで包丁を車に積む場合などには十分注意しておきましょう。
場合によっては軽犯罪法違反になることもある
包丁の持ち運びは、軽犯罪法違反になることもあります。
軽犯罪法第1条では、正当な理由なしに刃物や鉄棒など、人の生命や身体に重大な害を加え得る器具を隠し持つ行為を禁止しているためです。
本人は隠しているつもりがなくても、自動車のダッシュボードに入れていた場合などには、「隠し持っていた」と判断されるケースもあるため注意してください。
軽犯罪法違反が適用されると、1日以上30日未満の身体拘束を受ける「拘留」や、1,000円以上1万円未満の金銭を支払う「科料」の刑罰に処されます。
「いつか何かのために使うかもしれない」とツールナイフなどを携帯するのは控えるべきでしょう。
包丁の持ち運びによって銃刀法違反になる条件と法定刑
ここからは、包丁を持ち運んでいたことによって銃刀法に違反してしまう条件や、違反となった場合の法定刑について解説します。
包丁の持ち運びが銃刀法違反になる条件
銃刀法の規制対象となるのは、刃体の長さが6cmを超える包丁です。
刃体の長さが6cm超の包丁を正当な理由なく携帯した場合に、銃刀法違反として処罰されます。
例えば、調理師が自宅で研いだ包丁を職場に持ち運ぶことは、正当な理由があるといえるので、規制対象からは外れるでしょう。
また、キャンプに行くために包丁を車に積み込むことも、それが事実である限り法的な問題は生じません。
しかし、キャンプが終わってからも車内のポケットに包丁を入れたままにしていると、正当な理由がなくなるので、銃刀法違反になる可能性があります。
なお、護身用として携帯することも正当な理由とは認められないため注意しましょう。
(刃体の長さが六cmをこえる刃物の携帯の禁止)
第二十二条何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが六cmをこえる刃物を携帯してはならない。ただし、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが八cm以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類又は形状のものについては、この限りでない。
法定刑は2年以下の懲役または30万円以下の罰金
包丁の持ち運びによって銃刀法違反となったときの法定刑は「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」です。
包丁を持ち運んだ動機や包丁の状態・数などによっては、懲役刑に科される可能性もあります。
身近に起こり得る犯罪でありながらも、重い刑罰が規定されていることを覚えておきましょう。
第三十一条 (中略)
2次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
(中略)
二 第二十二条の規定に違反した者
包丁を持ち歩いても銃刀法違反に該当しない3つのケース
次に、包丁を持ち歩いても銃刀法違反にならないケースについて解説します。
1.包丁の刃渡りが6cm以下である場合
刃体の長さが6cm以下の包丁を持ち歩いても、銃刀法違反にはなりません。
銃刀法で規制しているのは、刃体の長さが6cm超の刃物を携帯する行為です。
しかし、6cm以下の刃物でも軽犯罪法に違反する可能性はあります。
軽犯罪法では、正当な理由がないのに刃物などを隠し持つ行為を禁止しています。
軽犯罪法については、以下の記事を参照してください。
2.包丁の刃渡りが8cm以下で、政令で規定されている形状の場合
刃体の長さが6cmを超えていても、8cm以下で政令が定めている種類や形状であれば携帯することができます。
例えば、折りたたみ式ナイフの場合は8cm以下で、刃体の幅1.5cm・刃体の厚み0.25cmcmを超えないもの、かつ、刃を固定するロックがかからないものであれば銃刀法違反になりません。
果物ナイフの場合は、8cm以下で刃体の厚みが0.15cmを超えないもの、かつ、刃体の先端が丸いものは規制の対象外です。
刃体が長い刃物を持ち歩く際には、規制対象となる条件を個別に確認してみることをおすすめします。
3.包丁を持ち歩いていることに正当な理由があると認められる場合
包丁を携帯することについて正当な理由があれば、銃刀法違反になりません。
例えば、店で購入した包丁を家に持ち帰る途中であったり、アウトドアで使うために持ち運んでいたりする場合です。
なお、正当な理由があるといえるかどうかは、客観的な事情も踏まえたうえで判断されます。
ほかのアウトドア用品が一切なく、包丁だけが車に積まれているような状態では、いくら本人がアウトドア目的だと主張しても、正当な理由があるとは認められずに銃刀法違反になる可能性があります。
包丁の持ち歩きによって銃刀法違反で逮捕された事例3選
ここからは、包丁を持ち歩いていたために実際に銃刀法違反で逮捕された事例を3つ紹介します。
1.正当な理由なく刃渡り18cmの包丁を所持していたケース
東京都に住む27歳の会社員男性が、銃砲刀剣類所持等取締法違反で現行犯逮捕された事例があります。
男性は刃体の長さ約18cmの包丁を1本、バッグに入れていました。
警察官の調べに対して「自分の身を守るための護身用だ」と供述しましたが、これは正当な理由とは認められませんでした。
2.刃渡り16cmの包丁を持参しコンビニに立ち寄っていたケース
包丁を所持して、コンビニに立ち寄った50代男性の事例です。
男性は柄が出るように刃物をズボンに差し込み、コンビニに立ち寄ったあと、自転車で立ち去りました。
その様子を見ていた店長は、男性が刃物を落としていったことを確認し、警察に連絡しました。
男性は包丁を拾い、自転車のかごに入れたまま飲食店に入り、出てきたところで警察官が事情を聴き、逮捕に至ったとのことです。
3.キャンプで使った包丁やナイフを車に置いたままにしていたケース
キャンプで包丁やナイフを使ったまま、車に置き忘れていたとして逮捕されるケースは少なくありません。
2021年の東京都内で銃刀法違反だとして刃の所持で摘発された案件のうち、80%近くがキャンプや釣りなどで使った刃物を置き忘れていたケースでした。
具体的には、1,401人中863人が置き忘れによる摘発でした。
キャンプや釣りの行き帰りなら、正当な目的があるといえるので、銃刀法違反の対象になることはないでしょう。
しかし、翌日以降にも所持していると摘発される可能性が高くなります。
正当な理由なく包丁を持ち歩き銃刀法違反で逮捕されたときの対処法
もしも、包丁を持ち歩いていて銃刀法違反で逮捕されてしまったら、どうすればよいのでしょうか。
ここでは、銃刀法違反で逮捕されたときの対処法を解説します。
1.できるだけ早く弁護士に依頼する
警察に逮捕されてしまったら、迅速に弁護士に依頼しましょう。
逮捕されると、48時間の拘束が認められます。
さらに検察に送致され、勾留が決定してしまえば最長で23日間拘束されてしまうおそれがあるので、逮捕後は早期釈放に向けた取り組みが重要です。
弁護士に依頼すれば、証拠隠滅や逃亡のおそれがないことや捜査に協力する姿勢があることを訴えかけてくれるので、釈放の可能性が大きく高まります。
また、弁護士は不起訴処分の獲得に向けた弁護活動をおこなってくれるため、軽微な事件であれば、前科をつけずに済む可能性もあるでしょう。
2.違法行為が事実であれば反省の態度を示す
正当な理由なく包丁を持ち歩いていた場合は、率直に反省の態度を示すことが大切です。
言い訳をして罪を認めようとしなければ、身柄拘束が長引き、起訴の可能性も高まってしまいます。
例えば、護身用に包丁を持ち歩いていた場合、犯罪をしようと考えていたわけでなかったとしても銃刀法違反になる可能性があります。
このようなときは、素直に反省するのがよいでしょう。
3.供述調書には安易に署名しないようにする
逮捕されると、警察官からの取り調べを受けることになります。
取り調べの内容は供述調書という書類に記録され、取り調べが終わると署名を求められます。
しかし、安易に署名してはいけません。
警察官の勘違いや認識の相違などがあった場合、自身に不利な内容が供述調書に記されている可能性があります。
一度署名してしまうと、あとから修正することは基本的にできないと考えてください。
供述調書への署名は拒否することができるので、「弁護士に相談してから署名するかどうかを決めたい」と警察官に伝えるようにしましょう。
さいごに|包丁の置き忘れなどでも銃刀法違反になるので注意しよう!
包丁やナイフの持ち運びは、銃刀法や軽犯罪法に違反してしまう可能性があります。
刃渡りや形状に関する規定を把握し、明確で正当な利用目的がある場合にだけ携帯しましょう。
キャンプや釣りの帰り道にうっかり車内に置き忘れてしまったり、バッグに入れっぱなしにしてしまったりしないよう、十分注意してください。
もしも包丁やナイフを所持していたことが原因で逮捕されてしまったら、速やかに弁護士に相談することが重要です。
取り調べや釈放に向けて弁護士の助けを借りましょう。
刑事事件はとくに迅速な対応が大切です。
なるべく早く弁護士に相談しましょう。



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