冤罪補償金が安すぎる!「安い」といわれる主な理由とこれまでの金額の変遷を紹介

日本では、冤罪被害に合った場合に、国に対して補償金を請求することができます。
しかし、冤罪被害者のなかには「補償金が安すぎる」と感じる方も少なくありません。
本記事では、冤罪被害者への補償金の現状や、その金額が「安い」と批判される理由、そして補償金額がどのように変わってきたのかを、わかりやすく解説していきます。
なお、冤罪被害に巻き込まれた場合はいち早く弁護士へ相談し、対策を講じるのがおすすめです。
冤罪事件(無罪判決)の補償金はいくら?安すぎるのか?
冤罪で逮捕や拘束されたあと、裁判で無罪判決を受けた場合、刑事補償法の第四条に基づいて国に対して補償金を請求することができます。
(補償の内容)
第四条 抑留又は拘禁による補償においては、前条及び次条第二項に規定する場合を除いては、その日数に応じて、一日千円以上一万二千五百円以下の割合による額の補償金を交付する。懲役、禁錮若しくは拘留の執行又は拘置による補償においても、同様である。
刑事補償法第四条によると、逮捕や勾留などで身柄を拘束された場合、その日数に応じて、一日あたり1,000円以上12,500円以下の補償金が支払われるとされています。
また、懲役や禁錮といった刑罰を受けた場合や、拘置所に拘置されていた場合も、同じように補償金が計算されます。
ただし、実際に支払われる金額は、裁判所がさまざまな事情を考慮して決定するのが通常です。
具体的には、拘束された期間の長さや本人が受けた財産上の損失、得られたはずの利益の喪失、精神的な苦痛や身体的な損傷、さらには警察や検察、裁判所の捜査や判断に故意や過失があったかどうかなど、あらゆる事情が考慮されるとされています。
そのため、同じ日数拘束されても、受け取れる補償金の額が異なる場合があるのです。
冤罪事件の補償金が「安すぎる!」と批判されている主な理由
冤罪事件の補償金については、金額が安すぎるという声も多く見られています。
ここでは、その理由について詳しく解説します。
1.時給換算で500円程度しか受け取れないから
現在の刑事補償法では、一日の補償金の上限額が12,500円と定められています。
この金額を時給に換算してみると、わずか500円程度にしかなりません。
もし自分が冤罪で逮捕され、長期間にわたって拘束されたとしたら、一日たったの12,000円の金額で、その苦しみや失われた時間を埋め合わせることができるでしょうか。
身に覚えのない罪で長期間拘束されたのにも関わらず、時給500円相当の補償金しか支払われないと安すぎると感じるのも無理はないでしょう。
2.下限は1,000円なのでもっと少ない場合もあるから
補償金には、一日あたり1,000円という下限も定められています。
しかし、この下限額は1992年の法改正から約30年間も据え置かれたままです。
上限額が引き上げられた一方で、下限額は変わっていないため、上限と下限の差が大きく開いてしまっています。
これは、同じ日数拘束されても、裁判所の判断によっては、さらに少ない金額しか補償されない可能性があることを意味しており、不公平感や不満につながっています。
3.冤罪によって仕事や社会的地位を失う可能性もあるから
冤罪によって身柄を拘束されると、当然のことながら、仕事ができなくなります。
そのため、長期間にわたる拘束は、会社を解雇されたり、自営業の場合は廃業に追い込まれたりするリスクがあるのです。
また、社会的な信用も大きく失墜し、その後の生活に大きな影響を与えることになります。
例えば、就職が難しくなったり、結婚に影響が出たりすることもあるでしょう。
現在の刑事補償金は、主に身体的な拘束に対する補償として支払われます。
そのため、冤罪によって失われた仕事や社会的地位、将来の収入などに対する補償は、十分とはいえません。
このような目に見えない損失や苦しみも、現在の補償金では十分に償えないと感じる人が多いのです。
冤罪事件の補償金額の変遷|実は平成4年以降30年間据え置き
現在の補償金額は、1992年の刑事補償法改正によって定められたものです。
この改正から、約30年間も補償金の金額は変わっていません。
しかし、それ以前には、補償金額は何度か見直されてきました。
以下では、冤罪事件における刑事補償金の変遷について、簡単に紹介します。
旧刑事補償法時代|5円以下
刑事補償法ができる前の旧刑事補償法では、補償金の上限はなんと5円以下という、非常に低い金額でした。
当時の物価を考慮しても、現代の価値観からすると考えられないほどの少額です。
昭和25年制定時|200円以上400円以下
現在の刑事補償法の原型となる法律が制定された1950年には、抑留または拘禁による補償は、一日あたり200円以上400円以下と定められました。
これは、旧法時代と比較すると大幅な増額ですが、それでも現代の基準からすると低いといわざるを得ません。
平成4年改正時|1,000円以上1万2,500円以下
その後、社会経済情勢の変化などを背景に、補償金額の見直しがおこなわれ、1992年の改正で、補償金の金額は現在の一日あたり1,000円以上12,500円にまで引き上げられました。
この改正時には、上限だけでなく下限も引き上げるべきだという議論もあったようですが、下限額は据え置かれることになっています。
このように、過去には補償金額の引き上げがおこなわれてきましたが、平成4年以降は約30年間、金額が変わっていないという現状があるのも事実です。
この間に、物価や賃金は大きく上昇しており、現在の補償金額が、冤罪被害者が被る損害に見合っているのかどうか、改めて検討する必要があるといえるでしょう。
刑事補償とは別に国家賠償請求ができる可能性はある!
冤罪被害者が受けられる補償は、刑事補償だけではありません。
場合によっては、国家賠償請求という制度を利用できる可能性もあります。
国家賠償とは、国や地方公共団体の公務員が、その職務をおこなうにあたって、故意または過失によって違法に他人に損害を与えた場合に、国や公共団体がその損害を賠償する責任を負うというものです。
刑事補償は、拘束された期間に応じて支払われますが、国家賠償は、捜査機関の違法な行為によって受けた損害に対する補償を目的としています。
例えば、警察官が証拠を捏造したり、検察官が明らかに不当な起訴をしたりした場合など、捜査機関の行為に明らかな違法性があったと認められるようなケースでは、国家賠償請求が認められる可能性があります。
しかし、国家賠償請求が認められるためには、被害者側が警察官や検察官の行為に違法性があったこと、その違法な行為によって損害を被ったこと、そしてその間に因果関係があることを証明しなければなりません。
そのため、国家賠償請求のハードルは非常に高く、実際に賠償請求が認められるケースは限られています。
国家賠償請求は、刑事補償だけでは十分に補償されない損害に対して、追加的な救済措置となる可能性がありますが、その実現は容易ではありません。
さいごに|冤罪事件に巻き込まれたらできる限りの補償を受けよう
万が一、あなたが冤罪事件に巻き込まれてしまったら、まずは弁護士に相談することが最も重要です。
弁護士は、あなたの権利を守り、無罪を勝ち取るために尽力してくれます。
無罪判決を勝ち取ったあとは、刑事補償を請求することも可能です。
また、状況によっては国家賠償請求を検討することもできますが、手続きは複雑で専門的な知識が必要となるため、弁護士に相談して対応を検討しましょう。
もし、冤罪被害に遭ってしまった場合は、決して泣き寝入りせずに、利用できる制度を最大限に活用して、できる限りの補償を受けるために行動してください。
ベンナビ刑事事件では、冤罪事件に詳しい弁護士を多数掲載しています。
無料相談に応じている事務所も多いので、一人で悩みを抱え込まず、まずはお気軽に相談ください。



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