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6つの刑事罰を解説!2025年運用開始の拘禁刑や量刑の決まり方なども確認しよう

東日本総合法律会計事務所
加藤 惇
監修記事
6つの刑事罰を解説!2025年運用開始の拘禁刑や量刑の決まり方なども確認しよう
  • 「罪を犯した場合はどのような刑事罰を受ける可能性があるのか」
  • 「刑事罰の重さはどのように決められるのか」

裁判で有罪になった犯罪者は、刑事罰に処されることになります。

実際に罪を犯してしまい、どのような刑事罰を受けることになるのか、不安に感じている方もいるかもしれません。

そこで本記事では、刑法で定められている6つの刑事罰について詳しく解説します。

また、2025年6月から運用がはじまった「拘禁刑」の特徴や、刑罰がどのように決まるのかについての基本知識も紹介します。

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刑事罰とは?国が犯罪者に対して科す制裁のことを指す

刑事罰とは、国が犯罪者に対して科す制裁のことです。

刑事裁判で有罪判決を言い渡された者は、生命・自由・財産を奪われることになります。

ただし、罪に対する報復だけが刑事罰の目的ではありません。

同じ人物が犯罪を繰り返さないように更生を促したり、犯罪を抑制したりする目的もあります。

刑事罰の種類|2025年6月1日からは拘禁刑が運用開始

刑法9条では、死刑・拘禁刑・罰金・拘留・科料・没収を刑事罰として定めています。

それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。

1.死刑|刑事施設内で絞首に処す刑事罰のこと

死刑は、刑事施設内で受刑者を絞首に処して生命を奪う刑事罰です。

(死刑)

第十一条 死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する。

2 死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで刑事施設に拘置する。

引用元:刑法 | e-Gov 法令検索

死刑の執行方法は国によって異なりますが、日本においては絞首刑です。

死刑は人の生命を奪う重大な刑罰であるため、一定の重大犯罪にのみ適用されます。

死刑が定められている主な犯罪には、次のようなものがあります。

  • 殺人罪
  • 強盗致死罪
  • 強盗不同意性交等致死罪
  • 現住建造物等放火罪
  • 内乱罪
  • 外患誘致罪

死刑が執行されるまで、受刑者は刑事施設に収容されます。

単独居室という一人部屋で過ごすのが通常です。

判決が確定したあと6ヵ月以内に執行されるのが原則ですが、実際には執行までに7年~8年程度かかることが多いとされています。

なお、令和元年以降に通常第一審で死刑判決が言い渡された件数は以下のとおりです。

【通常第一審における死刑判決の件数(罪名別)】
年次 殺人 強盗致死
強盗・不同意性交等致死
元年 2 -
2年 2 1
3年 3 -
4年 - -
5年 - 1

2.拘禁刑|無期・有期で身柄を拘束される刑事罰のこと

拘禁刑は身柄を拘束される刑事罰です。

無期として何年拘束されるかが決められていない場合と、有期で1年や3年などと定められている場合があります。

(拘禁刑)

第十二条拘禁刑は、無期及び有期とし、有期拘禁刑は、一月以上二十年以下とする。

2 拘禁刑は、刑事施設に拘置する。

3 拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる。

引用元:法務省|刑法等の一部を改正する法律案

有期で定めることができる拘禁刑の刑期は、1ヵ月以上20年以下です。

ただし、刑が加重される場合は、30年が上限になります。

なお、拘禁刑は、2025年6月1日から運用されている新たな刑罰です。

それ以前は懲役刑と禁錮刑に分けられていました。

  • 懲役刑:刑務所に収容し、かつ、刑務作業を義務付ける刑罰
  • 禁錮刑:刑務所に収容して自由を制限する刑罰

しかし、禁錮刑を言い渡され受刑者のほとんどは、自ら申し出て刑務作業に従事していたこともあり、あえて懲役刑と拘禁刑に分ける必要性が薄れていました。

そこで、懲役刑と拘禁刑を一本化した「拘禁刑」が新たに創設されたのです。

拘禁刑の主な目的は、受刑者の改善更生・社会復帰です。

受刑者に対しては、必要に応じて刑務作業が割り振られたり、指導がおこなわれたりするなど、それぞれの特性に合わせたプログラムが提供されます。

3.罰金刑|1万円以上の金銭を納めさせる刑事罰のこと

罰金刑は、1万円以上の金銭を納めさせる刑事罰です。

(罰金)

第十五条 罰金は、一万円以上とする。

ただし、これを減軽する場合においては、一万円未満に下げることができる。

引用元:刑法 | e-Gov 法令検索

罰金刑の上限は犯罪ごとに異なりますが、実務上、100万円未満となることがほとんどです。

そして、略式手続により、書面での審理のみで罰金刑を言い渡されるケースが多く見受けられます。

なお、罰金の支払いができないときは、労役場で刑務作業に従事しなければなりません。

日当は5,000円として計算されるのが一般的です。

たとえば、罰金50万円の支払いが命じられたにもかかわらず納付できないときは、100日間にわたって労役場に留置されます。

4.拘留|1日以上30日未満身柄を拘束される刑事罰のこと

拘留は、身柄を拘束される刑事罰です。

1日以上30日未満の期間が定められ、刑務所に収容されます。

(拘留)

第十六条 拘留は、一日以上三十日未満とし、刑事施設に拘置する。

引用元:刑法 | e-Gov 法令検索

拘留期間中、刑務作業は強制されませんが、希望すれば従事することも可能です。

なお、逮捕後に身柄拘束される「勾留」と読み方は同じですが、まったくの別物なので、混同しないように注意しておきましょう。

5.科料|1,000円以上1万円未満の金銭を納めさせる刑事罰のこと

科料は、1,000円以上1万円未満の金銭を納めなければならない刑事罰です。

(科料)

第十七条 科料は、千円以上一万円未満とする。

引用元:刑法 | e-Gov 法令検索

法務省が発表している「犯罪白書」によると、科料の判決が出るのは年間1,000〜2,000名程度で、基本的に罰金刑の100分の1以下です。

科料の場合も罰金刑同様に、納付できない場合は労役場で刑務作業に服することになります。

なお、同じ読み方の「過料」は行政法規上の義務違反に対して適用されるものであり、「科料」とはまったくの別物です。

6.没収|犯罪に関連する物を強制的に国に回収される刑事罰のこと

没収は、犯罪に関連するものを強制的に回収して、国庫に帰属させる刑事罰です。

(没収)

第十九条 次に掲げる物は、没収することができる。

一 犯罪行為を組成した物

二 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物

三 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物

四 前号に掲げる物の対価として得た物

2 没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。

ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。

引用元:刑法 | e-Gov 法令検索

没収は、6種類の刑事罰のなかで唯一、付加刑に分類されます。

付加刑とは、主刑に付加して言い渡す刑事罰です。

そのため、没収だけを単独で言い渡されることはありません

没収の対象となるのは、違法薬物・凶器・犯罪で手にした金銭で購入した物品などです。

全ての対象物が必ず没収されるわけではなく、基本的には裁判官の裁量によって決められます。

犯罪で手にした金銭で何らかのものを購入していた際などに、そのものを没収できないときは、代わりに金銭を納付するよう命じられることもあります。

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刑事罰の種類と重さの一般的な決まり方|4ステップ

次に、刑事罰の種類と重さの一般的な決まり方について解説します。

1.被告人の行動がどの条文に当てはまるか判断する

まずは、被告人の行動がどの法律のどの条文に当てはまるかが判断されます。

日本の刑事司法で採用されているのは、罪刑法定主義です。

法律で規定されていない行為を刑罰の対象にすることはできません。

2.法定刑が2つ以上ある場合は刑の種類を選択する

法定刑が2つ以上ある犯罪も少なくありません。

たとえば、暴行罪の法定刑は刑法第208条で定められており、2年以下の禁錮刑・30万円以下の罰金刑・拘留・科料のいずれかとなります。

このうち、どの刑事罰を科すべきかを検察官や裁判官が選択します。

検察官の選択は求刑として裁判官の参考にされますが、最終的に刑の種類を選択するのは裁判官です。

3.刑事罰の加減理由を考慮して処断刑を決定する

当てはまる犯罪と適用する刑事罰が決まったら、加減理由を考慮して処断刑を決めます

刑事罰が加重されるのは、再犯や併合罪のときです。

再犯をした場合は拘禁刑の長期が最大2倍、併合罪は罪が重いほうの刑を基準に長期が1.5倍に加重されます。

反対に、刑事罰が減軽されるのは、法律上の理由があるときや情状酌量の余地があるときです。

法律上の減軽理由となるのは、心神耗弱によって正常な判断ができなかったときや従犯として犯罪を助けたときなどです。

また、「情状酌量の余地があるとき」は、犯行の動機・態様などを踏まえると罪を軽減してもよいだろうと考えられるときのことを指します。

4.被告人に言い渡す最終的な宣告刑を決定する

最後に、被告人に言い渡す宣告刑が決定されます。

処断刑の範囲内で、最終的な判決をどのようにするかは、裁判官の裁量に委ねられています。

刑事罰に関するよくある質問

ここからは、刑事罰に関するよくある質問に答えていきます。

Q.執行猶予とはどのような制度か?

執行猶予は1年~5年の範囲で、刑の執行を猶予する制度です。

例えば、拘禁1年・執行猶予3年という有罪判決を受けた場合、3年間は日常生活を送ることができます。

そして、執行猶予期間中に犯罪を犯すことがなければ、拘禁1年の刑は免除されるのです。

執行猶予は、受刑者が更生して社会復帰する機会を与えるための措置です。

ただし、執行猶予が認められるのは、「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑」を言い渡された場合に限定されます。

Q.日本には終身刑という刑事罰はないのか?

日本には、終身刑という刑事罰はありません

ただし、無期刑が存在しており、その内容は基本的に終身刑と同じです。

いずれも受刑者が亡くなるまで収容されることに変わりなく、仮釈放の可能性も残されています。

Q.以前あった懲役刑と禁錮刑とはどのような刑事罰なのか?

懲役刑も禁錮刑も、受刑者を刑務所で服役させて、自由を制限する刑罰です。

期間を定めない「無期」と、1ヵ月以上20年以下の期間を定める「有期」がある点も共通しています。

しかし、懲役刑は刑務作業が義務、禁錮刑は刑務作業が任意である点に大きな違いがあります。

そのため、懲役刑は禁錮刑よりも重い刑罰として捉えられていました。

さいごに|裁判官から言い渡される刑事罰は犯罪行為などによって変わる

刑事罰には、命・自由・財産にかかわるものがあります。

そして、裁判官から言い渡される刑事罰は犯罪行為などによって変わり、柔軟に運用されているのが実情です。

拘禁刑の新設など法改正の動きもあるため、刑事罰について疑問や不安がある場合は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

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この記事の監修者
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加藤 惇 (第一東京弁護士会)
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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