詐欺罪とは?構成要件や初犯の量刑相場、執行猶予がつくケースを解説
詐欺罪は人を騙し、勘違いさせたうえで、お金やサービスなどを得た場合に成立する犯罪です。
詐欺罪の刑罰は重く、初犯であっても実刑になるリスクがあります。
そのため、詐欺事件に関与した場合には、詐欺罪の構成要件や適切な初動対応について正しく理解しておくことが不可欠です。
本記事では、詐欺罪の構成要件や刑罰、量刑相場などを解説します。
詐欺罪の疑いをかけられた場合にとるべき行動についても詳しくまとめているので、ぜひ参考にしてください。
詐欺罪とは?
詐欺罪とは、他人を騙して、金銭や財物などの財産上の利益を不正に得る犯罪です。
単に嘘をついただけでは、詐欺罪にあたりません。
嘘を相手に信じ込ませ、金銭などを交付させるという一連の流れが必要です。
詐欺罪の典型例としては、次のようなものがあります。
- 架空の投資話を持ちかけて金銭をだまし取る
- インターネット上の偽サイトで商品代金を振り込ませる
- 実際には提供しないサービスの契約金を受け取る
詳しくは後述しますが、詐欺罪の刑罰は「10年以下の拘禁刑」であり、数ある犯罪の中でも比較的重い部類に入ります。
詐欺罪は「1項詐欺罪」と「2項詐欺罪」に分けられる
詐欺罪は、だまし取る対象によって以下の2種類に分類されます。
- 1項詐欺罪:現金や物品などの財物をだまし取った場合
- 2項詐欺罪:サービスや権利などの財産上の利益を得た場合
例えば、架空の投資話で現金を集めたり、偽ブランド品を本物と偽って売ったりした場合は1項詐欺罪に該当します。
一方で、代金を支払う意思がないのにタクシーに乗ったり、嘘をついて借金の返済を免除してもらったりした場合は2項詐欺罪が成立します。
詐欺罪の構成要件は大きく分けて4つ
詐欺罪は、次の構成要件を全て満たした場合に成立します。
- 人を欺く行為が存在すること(相手方の処分行為に向けられたもの)
- 相手が錯誤に陥っていること
- 相手が錯誤に基づいて財産を交付していること
- 財物または財産上の利益が移転していること
具体的にどのようなケースで各要件を満たすことになるのか、詳しく解説します。
要件1:人を欺く行為が存在すること
詐欺罪が成立するのは、人を欺く行為(欺罔行為)が存在している場合です。
具体的には、以下のような行為を指します。
- 架空の取引や身分を装う(例:存在しない商品の販売)
- 重要な事実を意図的に隠す(例:契約のリスクを告げない)
- 虚偽の証明書や書類を提示する(例:偽造契約書で信用を得る)
なお、嘘でなく真実を伝えていた場合には、詐欺罪は成立しません。
例えば、月末の給料でお金を返すつもりだったが、ほかの支払いが多く返済できなかったケースでは、詐欺罪ではなく民事上の債務不履行にあたります。
要件2:相手が錯誤に陥っていること
詐欺罪の成立には、相手が錯誤に陥っている必要があります。
錯誤とは、客観的真実と異なる認識を持つ状態のことです。
例えば、加害者が「この壺は100万円の価値がある」と虚偽の説明をし、被害者が信じ込んで購入した場合です。
ただし、錯誤は加害者の欺罔行為によって生じたものでなければなりません。
被害者が自己判断の誤りや第三者からの誤情報によって勘違いしていた場合、加害者側の責任による錯誤とはいえず、詐欺罪は成立しません。
要件3:相手が錯誤に基づいて財産を交付していること
被害者が錯誤に陥っただけでは、詐欺罪は成立しません。
錯誤を原因として、財産を自ら交付していることが詐欺罪の要件となります。
架空の投資話に騙されて、自ら振り込みをおこなうケースなどが典型例です。
一方、被害者の意に反して財産を奪う行為は、窃盗罪や強盗罪といった別の罪に問われます。
要件4:財物または財産上の利益が移転していること
詐欺罪が成立するには、財物や財産上の利益が加害者に移転している必要があります。
具体的には、銀行口座への振り込みが完了した時点や、無銭飲食で店を出て逃げ切った時点で、財物などが移転したものとみなされます。
一方で、人を欺く行為が存在するのみで、財物もしくは財産上の利益が移転していない場合は、詐欺罪の未遂が成立するに留まります。
詐欺罪の刑罰は「10年以下の拘禁刑」で罰金刑の規定がない
詐欺罪の刑罰は「10年以下の拘禁刑」です。
多くの犯罪では、「◯年以下の拘禁刑または◯◯万円以下の罰金」などと規定されていますが、詐欺罪には罰金刑がありません。
詐欺罪で有罪判決が下された場合は、確実に拘禁刑を言い渡されます。
ただし、執行猶予がついた場合は刑の執行が一定期間猶予され、日常生活を送ることができます。
公訴時効は詐欺行為が終了したときから7年で成立する
詐欺罪の公訴時効は7年です。
財産の移転が完了したときから7年が経過すると、検察から起訴されなくなるので、刑罰を受けることも前科がつくこともありません。
なお、共犯の場合は、最後の詐欺行為が終わったときから、共犯者全員の時効が進行します。
また、以下のケースでは時効のカウントが一時的に停止します。
- 加害者が海外に逃亡した場合
- 加害者に起訴状や略式命令が届かない場合
- 加害者が起訴された場合
- 共犯者が起訴された場合
詐欺罪と窃盗罪・横領罪との違い
他人の財産を不正に得る犯罪として、詐欺罪と混同されやすいのが窃盗罪と横領罪です。
これらは、財産がどのように移転したかによって明確に区別されます。
| 財産の移転方法 | 占有の状態 | 法定刑 | |
|---|---|---|---|
| 詐欺罪 | 被害者が騙されて自ら渡す | 他人 | 10年以下の拘禁刑 |
| 窃盗罪 | 被害者の意思に反して奪う | 他人 | 10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 横領罪 | 預かっている物を自分の物にする | 自分 | 5年以下の拘禁刑 |
以下では、それぞれの構成要件を比較しながら解説します。
窃盗罪との違い|財物を交付する意思があったかどうか
詐欺罪と窃盗罪の違いは、被害者に財産を渡す意思があったかどうかです。
具体的には、以下のような違いがあります。
| 構成要件 | 具体例 | |
|---|---|---|
| 詐欺罪 | 被害者がだまして自ら交付させること | レジの店員を騙して、お釣りを多くもらう |
| 横領罪 | 被害者の意思に反して財物を奪うこと | 店員が見ていない隙に、レジから現金を抜き取る |
たとえ、だます行為があったとしても、相手が財産を渡す意思を持つ前に持ち去れば、詐欺罪ではなく窃盗罪に該当します。
横領罪との違い|誰が財物を占有していたか
詐欺罪と横領罪の違いは、犯行時に財産を誰が持っていたかです。
具体的には、以下のような違いがあります。
| 構成要件 | 具体例 | |
|---|---|---|
| 詐欺罪 | 他人が占有している財物をだまし取ること | 知人に嘘をつき、現金を借りてだまし取る |
| 横領罪 | 自分が委託されて占有(管理)している他人の財物を自分のものにすること | 会社から経費として預かったお金を私的な買い物に使う |
他人が持っているものをだまして取得するのが詐欺罪、預かっている他人の物を自分のものにしてしまうのが横領罪です。
詐欺罪にはならないケースとは?
詐欺罪が成立しない典型的なケースは、最初からだますつもりがなかった場合です。
故意がなく、単に約束を守れなかった場合などは、刑事事件ではなく民事上の債務不履行として扱われます。
例えば、事業が順調な時期に返済するつもりで借入をおこなったが、その後の倒産により返せなくなったケースでは詐欺罪に該当しません。
最初から返す気がなかった、虚偽の目的で借りたなどの意図が証明されてはじめて、詐欺罪が成立します。
詐欺罪で逮捕されたあとの流れ
詐欺罪で逮捕されると、以下の流れで刑事手続きが進められます。
- 逮捕・送致(48時間以内):警察の取調べを受け、検察に引き継がれる
- 勾留請求(24時間以内):身柄拘束の必要性があると判断された場合
- 勾留(10日間~20日間):留置所などで身柄拘束されたまま検察の取調べを受ける
- 起訴・不起訴の決定:裁判にかけるか、釈放するかを検察官が決める
- 裁判・判決:検察・弁護士の主張や証拠をもとに有罪・無罪、量刑が言い渡される
詐欺罪で逮捕されると、最大で23日間、身体拘束が続く可能性があります。
心身ともに大きな負担がかかる中で、釈放や不起訴獲得に向けた動きを取ることは簡単ではありません。
一刻も早く弁護士に依頼し、法的なサポートを求めることが重要です。
逮捕後の流れは以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてください。
詐欺罪の量刑相場
詐欺罪の法定刑は「10年以下の拘禁刑」ですが、実際に言い渡される刑期や執行猶予の有無は個々のケースによって異なります。
ここでは、詐欺罪の一般的な量刑相場を解説します。
執行猶予がつくのは約6割
詐欺罪で懲役刑になった場合、執行猶予がつくのは約6割です。
令和6年版犯罪白書によると、令和5年の第一審では3,200件のうち1,864件に執行猶予付き判決が下されています。
執行猶予がつきやすいケースは以下のとおりです。
- 被害額が比較的少額(数万円~100万円程度)
- 前科・前歴がない
- 被害者との示談が成立し、被害弁償が済んでいる
- 反省しており、家族などの監督者がいる
なかでも、被害弁償による示談の成立は執行猶予獲得のための重要な要素です。
刑期は1年~3年が平均的
詐欺罪の刑期は、1年~3年程度になるケースが多いといえます。
令和6年版犯罪白書によると、令和5年の第一審で有期懲役となった3,200件のうち、最も多い刑期は「2年以上3年以下」で1,678件、2番目は「1年以上2年未満」で1,028件でした。
| 年数 | 7年~ | 5~7年 | 3~5年 | 2~3年 | 1~2年 | 6月~1年 | 6月未満 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 人数 | 11人 | 65人 | 339人 | 1,678人 | 1,028人 | 75人 | 4人 |
なお、量刑の判断にあたっては、被害額や犯行の計画性、示談の有無などが重視されます。
例えば、被害額が数百万円に上る場合や、詐欺行為を常習的におこなっていた場合は、3年を超える刑期になる可能性もあります。
初犯でも実刑になる可能性はある
初犯なら執行猶予がつくと考えるのは危険です。
詐欺罪においては、初犯であっても実刑判決となる可能性が十分にあります。
特に被害額が大きい場合や組織的な特殊詐欺に関与していた場合は、厳しく処罰される傾向があるため、実刑になる可能性も高いといえるでしょう。
なお、執行猶予がつくのは「3年以下の拘禁刑」に限られるため、判決が3年を超える場合は実刑を免れません。
詐欺罪の疑いをかけられた場合に取るべき行動
詐欺の疑いをかけられた場合、何もせずにいると逮捕・起訴されるリスクが高まります。
事態を悪化させないために、速やかに以下の行動をとってください。
被害者との示談交渉を試みる
詐欺行為が事実であれば、被害者との示談交渉を試みてください。
示談の成立は、被害者と和解していることの証明になるものです。
早期に示談が成立すれば、不起訴処分を獲得したり、刑が軽減されたりする可能性が高くなります。
具体的には、被害弁済をおこない、謝罪を受け入れてもらったうえで、処罰を望まないという意思表示である宥恕文言が入った示談書の作成を目指します。
詐欺事件が得意な弁護士に相談する
詐欺事件を起こしたときは、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。
詐欺事件が得意な弁護士であれば、個々の状況に合わせた最善の対処法を提案してくれるはずです。
具体的には、以下のようなサポートが期待できます。
- 示談交渉
- 逮捕直後の接見
- 取調べ対応のアドバイス
- 早期釈放の要請
- 不起訴獲得に向けた働きかけ
- 家族や会社との連絡調整
弁護士のサポートがあるかどうかで、逮捕や起訴の可能性は大きく変わります。
初回相談は無料としている法律事務所も多いので、詐欺罪の罪に問われた場合は迷わず相談してください。
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詐欺罪に関してよくある質問
最後に、詐欺罪に関してよくある質問を紹介します。
不安を和らげるためにも、疑問は早めに解消しておきましょう。
被害者に全額返金すれば詐欺罪には問われない?
全額返金しても、犯罪がおこなわれた事実自体は消えないため、詐欺罪は成立します。
しかし、全額返金して示談が成立すれば、実質的に被害が回復されたとみなされ、不起訴になる可能性は高くなります。
また、逮捕される前に全額返金できれば、事件化を防げることもあるでしょう。
詐欺行為は未遂でも罪に問われる?
詐欺罪は、未遂でも罪に問われます。
詐欺罪の未遂が成立するのは、人をだまして財物を交付させようとしたが、結果として受け取れなかった場合です。
例えば、オレオレ詐欺で電話した相手が警察に通報し、お金を受け取る前に検挙されたケースでは、詐欺罪の未遂として処罰されます。
なお、未遂罪の刑罰は、既遂の場合よりも軽くなるケースが一般的です。
詐欺罪は親告罪?
詐欺罪は、親告罪ではありません。
つまり、被害者が告訴しなくても、検察官は加害者を起訴することができます。
ただし、親族間(配偶者・直系血・同居の親族)で起きた詐欺に関しては、親族相盗例が適用されて免除(刑事処罰を受けない)になります。
詐欺罪の立件は難しいといわれている理由は?
詐欺罪の立件が難しいとされる最大の理由は、故意の立証が難しいからです。
詐欺の故意があったことは、客観的な証拠で立証しなければなりません。
しかし、人の内心は客観的な証拠として残りにくいため、立件できずに終わってしまうケースも数多く見受けられます。
まとめ
詐欺罪は起訴され、有罪になると拘禁刑が確定する犯罪です。
たとえ初犯であっても、実刑になる可能性はゼロではありません。
そのため、詐欺罪を疑われた場合は、一刻も早く弁護士に相談し、被害者との示談や不起訴獲得に向けた対策を講じることが重要です。
弁護士を探す際は、ベンナビ刑事事件を活用してみてください。
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