被疑者とは?容疑者や被告人との違いと被疑者になったらできること


被疑者(ひぎしゃ) とは、犯罪を犯した疑いをかけられている人を指します。フィクションの世界だけではなく、実際に刑事事件の現場でも使われている言葉です。
被疑者になってしまっている場合は、さまざまな捜査を受ける可能性があります。場合によっては逮捕される場合もあるので、心当たりがある人は相談できる弁護士を探しておくと良いでしょう。
被疑者と「容疑者」「被告人」「加害者」「犯人」の違い
被疑者と並んで、刑事事件では「容疑者」、「被告人」、「加害者」、「犯人」という言葉を聞きます。それぞれの意味と、被疑者との違いを確認しておきましょう。
言葉 |
意味 |
容疑者 |
捜査機関に犯罪の疑いをかけられている人。被疑者と同義。 |
被告人 |
検察によって起訴(刑事裁判を提起)されている人。 |
加害者 |
他人に被害や損害を与えた人。刑事事件以外でも使われる用語。 |
犯人 |
罪を犯した人(法律用語ではありません) |
被疑者と容疑者は同じ意味なのに、なぜ呼び方が違うのか?
「被疑者」と「容疑者」はまったく同じ意味ですが、「容疑者」はテレビやラジオ等の報道で多く使われます。
これは「被疑者(ヒギシャ)」と「被害者(ヒガイシャ)」の音が似ており、聞き間違いを防ぐためです。実際の捜査では基本的に、「被疑者」という呼称で統一されています。
捜査から刑事裁判終決まで段階的に呼び方が変わる
捜査機関に犯罪の疑いがかけられた時点で被疑者になってしまいますが、刑事手続の進行と共に呼称も変わります。それぞれ段階を追って、確認していきましょう。
状況 |
呼び方 |
身柄 |
犯罪の疑いをかけられ捜査をされている |
被疑者 |
自由 |
逮捕され警察から取調べを受けている |
被疑者 |
留置所 |
逮捕後に送致され検察から取調べを受けている |
被疑者 |
留置所 |
起訴(刑事裁判を提起)されている |
被告人 |
留置所若しくは拘置所又は自由 |
有罪が確定し刑務所に服役している |
受刑者 |
刑務所 |
起訴されない段階では全て被疑者
起訴をされて被告人にならない限り、被疑者として扱われます。
警察からの逮捕された場合、検察庁に送致(送検)され、その後、検察の判断で勾留される場合がありますが、逮捕・勾留を受けても被疑者という立場に変わりはありません。
被疑者か被告人か
刑事事件では置かれている状況や立場で、呼び方が変化していきますが、特に難しいことはありません。
要するに捜査機関から犯罪の嫌疑をかけられていれば身体拘束の有無に関わらず須らく被疑者であり、その後、起訴されれば被告人になるという極めてシンプルなものです。
なお、被疑者かどうかは、捜査機関側が相手をどう評価しているかによります。刑事事件として立件されていない場合には被疑者は存在しません。
また、刑事事件として立件されていても目撃者や重要参考人であれば被疑者ではありません。刑事事件として立件され、かつ犯罪の嫌疑が固まった段階で被疑者として処理されます。
たとえば「事情を聞きたいので警察署まで来てください」といわれただけでは、自分が被疑者なのか参考人なのか分かりません。
被疑者になっても逃走をしない
もし、捜査機関から被疑者として扱われるような場合は、冷静でいられる人は限られているでしょう。
もちろん、本記事は逃走や証拠隠滅を推奨することはありません。そのようなことをすれば、捜査機関からの嫌疑はますます強くなり、速やかに逮捕される可能性があります。
自分だけで冷静な判断ができない場合、刑事事件を得意とする弁護士に相談すると、適切な助言をもらえるかもしれません。
被疑者になったら、相談できる弁護士を探しておこう
日頃から何でも相談できる弁護士がいる人は、あまり多くはありません。そこで被疑者になったとわかった時点で、刑事事件における強い味方になってくれる弁護士を探しておきましょう。
土壇場でも弁護士を依頼することはできますが、事前に対策ができれば不利益を最小限にできるかもしれません。
被疑者が弁護士に依頼すると何をしてもらえるのか?
被疑者になった場合は弁護士に依頼するのがおすすめです。
ここでは、弁護士が具体的に何をしてくれるのか把握しておきましょう。
被疑者といつでも接見ができる
弁護士は守ってくれるものとして常に被疑者に寄り添うイメージがありますが、実際はそのようなことはありません。弁護人は取調べに同席する権利はありませんし、捜査資料を開示してもらう権利もありません。
しかし、弁護人は被疑者と接見することで、的確なアドバイスをしたり、犯罪の嫌疑を晴らすような証拠収集活動をしたり、家族や関係者との橋渡しとなったりと重要な役割を果たします。
例えば、警察に逮捕された場合、勾留されるまでの間は、基本的に弁護人以外の者は被疑者と面会することはできません。逮捕直後は被疑者のその後の防御活動にとって重要です。
そのため、このような早いタイミングで取調べに対する対策や、今後の方針などについてアドバイス(取調べに対してどのような供述が有利・不利となるのか、被疑事実を認めるべきか否認するべきかなどのアドバイス等)を受けられることは、被疑者にとって極めて重要です。
他方、逮捕後に勾留された段階では被疑者は弁護人以外と面会することが原則として可能ですが、事案によっては接見禁止処分がされるなどして当該面会ができないということもあります。このような場合でも弁護人はいつでも自由な接見が保障されています。
被疑者ノートについて
弁護人が身柄拘束中の被疑者に差し入れるものとして「被疑者ノート」というものがあります。
その目的は、取調べの内容や状況について被疑者に記録してもらい、取調の状況を把握して場合によっては捜査機関側に申入れをしたり、その後の刑事裁判で利用する等にあります。
過去、警察や検察による脅迫的な取調べや誘導的な取調べにより冤罪被害が発生するようなこともありました。被疑者ノートは、そのような冤罪被害を防止するために一定程度有用と言えます。
【関連記事】被疑者ノートとは?被疑者の権利を守るツールの入手方法、活用方法を解説
被疑者弁護の目的
被疑者弁護の目的は、被疑者の人権保障に尽きます。被疑者(特に身柄を拘束された被疑者)は行動が著しく制限されるので、被害者と示談したくでもできませんし、自身に有利な証拠を提示したくともこれを収集できません。
このような被疑者に代わって被疑者の利益になる活動を行うのが被疑者弁護の目的です。例えば被害者との示談交渉は、身柄拘束の有無によらず、被疑者自身がこれを行うことは現実的に困難である事が多いです。
このような場合に弁護人が被疑者をサポートして示談交渉を進め、示談することで身柄拘束を回避できたり、起訴を回避できたりと被疑者の利益につながることになるのです。
被疑者に関する疑問
被疑者に関する基礎的な事柄を記載してきましたが、その他にも疑問に残ることがあるかもしれません。
たとえば自分が被疑者になったとき、いつ釈放されるのか、被疑者という立場が周囲にばれてしまうことはないのか、などです。また、被害者が死亡した場合、刑事事件はどのように処理されるのでしょうか。
Q,被疑者になったらいつ釈放されるのか?
被疑者の釈放の可否は検察官が判断します。そのため、被疑者が釈放されるのは検察官が身柄解放を指示した場合であることが通常です。
これ以外にも、検察官の勾留請求を裁判所が却下したり、勾留の取消や執行停止を裁判所が認めた場合も被疑者は釈放されます。
なお、釈放と似た言葉に「保釈」というものがあります。
これは保釈保証金の支払いを条件に一時的に身柄拘束を解く手続ですが、保釈は被疑者には認められていません。保釈申請ができるのは起訴されて被告人となってからです。
Q,被疑者になったら周囲にばれるのか?
被疑者になったからといって、必ずしも周囲にばれるわけではありません。しかし、社会的関心の高い事件については、被疑者が逮捕された場合にマスコミに報道される可能性があります。
報道するかどうかはマスコミ側の判断によるため、コントロールはできません。したがって、被疑者になった場合、事件の内容によっては周囲にそれがわかってしまう可能性は否定できません。
Q,被疑者が死亡したときはどうなるのか?
被疑者が死亡した場合は、通常、被疑者死亡として起訴されず、刑事事件としては終了します。
まとめ|被疑者と被告人は明確に違う
被疑者は「被告人」や「容疑者」など、さまざまなタイプの似た言葉がありますが、それぞれ意味が異なります。犯罪の嫌疑がかかっていれば被疑者、被疑者が起訴されたら被告人と覚えるのがもっとも簡単でしょう。
万一、自分が被疑者となるような事態が生じた場合は、弁護士へ助けを求めることも検討しましょう。もしも心当たりがあるのであれば、今のうちに相談できる弁護士を探しておくと、迅速に適切な対応ができるかもしれません。



【新宿駅近く】不同意わいせつ・盗撮・暴行・窃盗・万引き等、元検事率いる刑事弁護チームがスピード対応!不起訴処分/逮捕回避/示談での解決を目指すなら、すぐにご連絡ください!▶最短で即日接見可能◀
事務所詳細を見る
性犯罪/薬物事件/少年事件などに注力!刑事事件はスピード勝負です。逮捕直後および警察から連絡が来た時点からご相談ください。依頼者様がご納得できるよう、丁寧かつわかりやすい説明を心がけています。
事務所詳細を見る
【即日接見可】【何度でも相談無料】痴漢/盗撮/窃盗/薬物などの刑事事件は弁護士 枝窪へご相談ください。◆医師との連携で依存症治療までサポート◆医学的アプローチでご依頼者様を支えます《示談成立の実績多数》
事務所詳細を見る当サイトでは、有料登録弁護士を優先的に表示しています。また、以下の条件も加味して並び順を決定しています。
・検索時に指定された都道府県に所在するかや事件対応を行っている事務所かどうか
・当サイト経由の問合せ量の多寡



刑事事件の基礎知識に関する新着コラム
-
正当な理由なく他人の建物に侵入すると建造物侵入罪にあたります。住居侵入罪との違い、構成要件、「侵入」や「正当な理由」の定義、刑罰、逮捕後の流れ、弁護...
-
窃盗事件を起こした場合は、いつか逮捕されるのではないかと不安になるものです。そのなかで、時効の完成まで逃げ切ろうと考えている人もいるのではないでしょ...
-
冤罪事件の補償金については、金額が安すぎるという声も多く見られています。本記事では、冤罪被害者への補償金の現状や、その金額が「安い」と批判される理由...
-
道路交通法違反の時効と刑事罰に関する完全ガイドです。スピード違反から飲酒運転、あおり運転まで、各交通違反行為に適用される公訴時効を解説します。違反種...
-
犯罪歴があると、その内容次第ではパスポートの発給制限を受ける可能性があります。 本記事では、犯罪歴が原因でパスポートが発給されない具体的な状況、犯...
-
執行猶予中の海外渡航は、条件付きで可能です。パスポートの有無で手続きが異なり、新規申請は審査が厳しく時間がかかる場合もあります。パスポート取得の難し...
-
本記事では、特定少年とは何かや17歳以下や成人とどのように扱いが異なるか、特定少年には懲役や死刑の判決がでる可能性があるかをわかりやすく解説していま...
-
防犯カメラの映像が決定的な証拠になる可能性がありますが、逮捕に繋がるかは状況次第です。防犯カメラの映像が与える影響や逮捕されるケースを理解しておきま...
-
本記事では、未成年飲酒における警察の対応や未成年飲酒で問われる犯罪、学校や会社に生じる悪影響などについてわかりやすく解説します。
-
無免許運転で逮捕された高校生は、長期間の身体拘束や退学処分を受ける可能性があります。早期の身柄解放や退学処分の回避、家庭裁判所・学校と連携を図るため...
刑事事件の基礎知識に関する人気コラム
-
逮捕されて有罪になると前科が付きますが、前歴というものもあり、こちらは逮捕されただけで付きます。前科は間逃れても前歴が残ると今後の生活にどう支障がで...
-
犯罪事件捜査の対象になった場合、刑事手続きはスピーディに進行します。早期に刑事手続きから解放されるためには、初動の段階から迅速な対応をとることが肝心...
-
本記事では私人逮捕の条件や私人逮捕によるトラブルの対処法を解説します。
-
【弁護士監修】書類送検を徹底解説!書類送検とは被疑者を逮捕せず、書類のみ(証拠を含む)を検察官に送る手続きです。この記事では、そもそも送検とはどうい...
-
少年院(しょうねんいん)とは、家庭裁判所から保護処分として送致された少年を収容するための施設を言います。
-
鑑別所とは、正式には「少年鑑別所」と呼ばれる施設で、家庭裁判所の少年審判をおこなうにあたって、犯罪を犯した未成年の少年を一時的に収容する場所です。本...
-
観念的競合とは、1つの行動で2つ以上の犯罪を起こすことです。刑罰の考え方としては、2つ以上の犯罪の中で最も重い犯罪の刑罰が対象となります。
-
この記事では親告罪と何か、親告罪に該当する罪を解説したあと、告訴されたときの対処法について紹介しています。親告罪を犯してしまって告訴される可能性があ...
-
刑事裁判と言っても、事件内容によって方法が少し異なります。この記事では刑事裁判の種類や流れの他に、民事裁判との違いやよくある質問(裁判員制度について...
-
公訴時効とは、刑事上の時効の概念で、犯罪が終わってから一定期間が過ぎると、公訴の提起(起訴)ができなくなることです。
刑事事件の基礎知識の関連コラム
-
家宅捜索によって証拠品が押収されると逮捕・取調べ・捜査を経て懲役刑や罰金刑に処される可能性があります。この記事では①家宅捜索が行われる時間②どこまで...
-
ものを盗む行為は強盗や窃盗にあたり、どちらも逮捕される可能性が高い犯罪です。 例をあげながら強盗と窃盗の内容や法定刑について解説します。また、強盗...
-
犯罪歴があると、その内容次第ではパスポートの発給制限を受ける可能性があります。 本記事では、犯罪歴が原因でパスポートが発給されない具体的な状況、犯...
-
無免許運転で逮捕された高校生は、長期間の身体拘束や退学処分を受ける可能性があります。早期の身柄解放や退学処分の回避、家庭裁判所・学校と連携を図るため...
-
少年法が一部改正され、2022年4月1日から18歳または19歳の少年についての実名報道が可能になりました。今回は、18歳または19歳の少年が加害者と...
-
罪を犯してしまったものの、証拠がないから大丈夫だろうと安心している方もいるかもしれません。本記事では、警察がどのような状況で動くのか、証拠の種類や重...
-
冤罪とは、罪を犯していないにもかかわらず、誤って犯罪者として扱われてしまうことを指します。日本の司法制度は整備されているものの、依然として冤罪事件が...
-
歩いていたら突然声をかけられて、職務質問をされたことがある方も多いでしょう。本記事では、職務質問を拒否できるか否か、職務質問をスムーズに終わらせる方...
-
家族が留置場に入れられた場合、留置場がどのような施設なのか当然気になるものです。本記事では、留置場の施設概要や一日の流れなどを解説しています。差し入...
-
本記事では、犯罪歴が日常生活に及ぼす悪影響、犯罪歴がバレるリスク、犯罪歴が残らないようにするためのポイントなどについてわかりやすく解説します。
-
手頃な費用でいざというとき頼れる弁護士費用保険ですが、実は犯罪に巻き込まれてしまった(刑事事件の被害者となってしまった)場合も役立ちます。弁護士費用...
-
逮捕されて有罪になると前科が付きますが、前歴というものもあり、こちらは逮捕されただけで付きます。前科は間逃れても前歴が残ると今後の生活にどう支障がで...
刑事事件の基礎知識コラム一覧へ戻る