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強盗と窃盗の違いとは?一番の違いである暴行や脅迫の意味についても解説

笠井 勝紀
監修記事
強盗と窃盗の違いとは?一番の違いである暴行や脅迫の意味についても解説

ものを盗む行為は強盗や窃盗にあたり、どちらも逮捕される可能性が高い犯罪です。

では、強盗と窃盗は、何が違うのでしょうか。

両者は、内容も刑罰の重さも異なります。

本記事では、例をあげながら強盗と窃盗の内容や法定刑について解説します。

また、強盗や窃盗をしてしまった場合にやるべきことも紹介します。

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強盗と窃盗の一番の違いは暴行や脅迫を用いたかどうか

強盗と窃盗は、どちらも他人の財物を奪って、不法に自分のものとする行為です。

両者の違いは、主に、手段として暴行または脅迫を用いたかどうかです。

殴ったり、刃物や銃を突きつけたりして他人の財物を奪った場合は、強盗罪となります。

空き巣のように、人目を盗んで他人の財物を奪った場合は、窃盗罪になると考えられます。

まずは、強盗と窃盗の概要について、簡単に見てみましょう。

強盗罪とは|暴行や脅迫を用いて財産を奪った場合に成立する

強盗罪は、主に次の2つのケースで成立する犯罪です。

強盗罪が成立するケース
  • 暴行や脅迫を用いて、他人の財物を強取した
  • 暴行や脅迫を用いて、財産上不法の利益を得た

強盗罪における暴行や脅迫とは、ナイフを突きつける、手足を縄で縛るなどの行為です。

強盗罪が成立するには、「相手が反抗できない程度」の暴行や脅迫でなければなりません。

相手が反抗できない程度に至っていない場合は、恐喝罪が成立するに考えられます。

(強盗)

第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。

引用元:刑法 | e-Gov法令検索

窃盗罪とは|暴行や脅迫を用いずに財産を盗んだ場合に成立する

窃盗罪は、他人の財物を窃取したときに成立する犯罪です。

被害者が渡したくないはずのものを、相手に危害を加えることなく、勝手に自分のものにする行為と考えるとよいでしょう。

財物には、ものやお金はもちろん、電気も含まれます。

また、例え少額の現金であっても窃盗における財物に該当します。

こっそりと盗む場合はもちろん、ひったくりのように堂々と盗む行為も危害を加えていなければ窃盗罪となります。

ものを盗もうとしたけれど、途中で捕まるなどして被害が出なかった場合は窃盗未遂罪が成立します。

(窃盗)

第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

引用元:刑法 | e-Gov法令検索

強盗罪の構成要件である「暴行」と「脅迫」とは?ほかの犯罪との違い

では、強盗罪が成立する要件となっている、暴行・脅迫とは、どの程度の行為をいうのでしょうか。

強盗罪の暴行・脅迫について、解説します。

強盗罪における暴行|反抗を抑圧する程度の有形力の行使であること

強盗罪における「暴行」とは、相手の反抗を抑圧するに足りる程度の有形力の行使だとされています。

反抗を抑圧するに足りる程度とは、実際に被害者が反抗できなかったかどうかではなく、一般的に見て、反抗を抑圧される程度かどうかが基準となります。

たとえば、包丁を突きつけてお金を出すよう要求したとき、その被害者がまったく怖がらなかったとしても、一般的には包丁を突きつけられれば反抗できないと考えられるでしょう。

このようなケースは、暴行と認められ、強盗罪が成立する可能性が高いといえます。

なお、有形力の行使とは、物理的な攻撃をすることや、第三者に「物理的な攻撃をされる危険がある」と感じさせることなどと解釈されます。

他方、相手が反抗できない程度に至っていない場合は、恐喝罪が成立します。

反抗を抑圧する程度の暴行があったかどうかが、強盗罪と恐喝罪を分ける基準です。

強盗罪における脅迫|犯行を抑圧する程度の害悪の告知であること

強盗罪における「脅迫」は、最狭義の脅迫だと考えられています。

最狭義の脅迫とは、もっとも狭い意味での脅迫のことで、具体的には、第三者の反抗を抑圧する程度の害悪の告知を指します。

ナイフや拳銃で脅したり、縄などで手足を縛ったりという方法が、最狭義の脅迫にあたります。

なお、参考として、脅迫は最狭義の脅迫のほかに広義の脅迫・狭義の脅迫に分けて考えられています。

広義の脅迫が認められるには、単に恐怖心を起こさせるために害悪を告知することで足ります。

つまり、程度が軽い脅迫ということです。

広義の脅迫だけで成立する罪としては、公務執行妨害罪や恐喝罪などがあります。

狭義の脅迫が認められるには、告知される害悪の種類が特定されていること、または、被害者になんらかの行動または行動しないことを強要する程度であることが必要です。

たとえば、脅迫罪や強要罪の構成要件として、狭義の脅迫があったかどうかが考慮されます。

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暴行または脅迫という手段以外の強盗と窃盗の違い

強盗と窃盗には「暴行又は脅迫を用い」たかどうかのほかに、どのような違いがあるのでしょうか。

ここからは、法定刑をはじめ、強盗罪と窃盗罪の違いについて詳しく解説します。

1.法定刑の重さ|強盗罪のほうが窃盗罪に比べて法定刑・量刑ともに重い

強盗罪と窃盗罪とでは、刑罰が異なります。

強盗罪のほうが窃盗罪よりも法定刑は重くなります。

強盗罪の法定刑は、5年以上の有期懲役です。

有期懲役とは1ヵ月以上20年以下と決まっています。

つまり、最長20年の懲役となる可能性があるのです。

一方、窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

法定刑の定めの違いだけでなく、強盗のほうが窃盗より犯行を抑圧する程度の「暴行又は脅迫を用い」ていることから悪質性が高いと判断されやすく、実際の量刑も強盗罪のほうが重い傾向にあります。

量刑の程度は、窃盗罪においては被害金額・前科前歴の有無や件数・弁償や謝罪をおこなったかなどによって決められます。

強盗罪においては、窃盗罪における考慮要素に加えて強盗をおこなった状況や態様、発生した結果によって判断されます。

起訴されても、執行猶予がつく場合もありますが、被害額が大きい場合や常習犯である場合は実刑判決となるでしょう。

強盗罪と窃盗罪の法定刑の違い
  • 強盗罪:5年以上の有期懲役
  • 窃盗罪:10年以下の懲役または50万円以下の罰金

2.対象となる財産|強盗罪は財産上の利益を得た場合でも成立する

強盗罪の場合は、ものやお金を奪った場合に限らず、財産上の利益を不法に得た場合も罪に問われます。

具体的には、「暴行又は脅迫を用い」て、料金や借金などの支払いを免れることを指します。

たとえば、次のような行為です。

  • タクシー運転手にナイフを突きつけ、料金を払わずに逃げる
  • レストランで会計の際、店員に暴行を加え、飲食代を払わずに店を出る
  • 借金の取り立てに来た債権者を殴るなどし、返済を免れる

「暴行又は脅迫を用い」て、財産上の利益を得る行為は刑法第236条2項に規定されており、「二項強盗」と呼ばれることもあります。

2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

引用元:刑法 | e-Gov法令検索

3.関連する犯罪|強盗罪には事後強盗罪など多くの関連する犯罪がある

強盗罪には、強盗をおこなった状況や発生した結果によって、関連する犯罪が多く存在します。

関連する犯罪の概要と法定刑は次のとおりです。

犯罪名

概要

法定刑

強盗予備罪

強盗の準備をした

2年以下の懲役

事後強盗罪

窃盗のあと脅迫や暴行を加えた

5年以上の有期懲役

強盗致傷罪

強盗の際、故意なく被害者を負傷させた

無期または6年以上の有期懲役

強盗致死罪

強盗の際、殺意なく被害者を死亡させた

死刑または無期懲役

強盗傷人罪

強盗の際、故意に被害者を負傷させた

無期または6年以上の懲役

強盗殺人罪

強盗の際、殺意をもって被害者を死亡させた

死刑または無期懲役

強盗・不同意性交等罪

強盗の際、不同意性交等をおこなった

無期または7年以上の懲役

強盗・不同意性交等致死罪

強盗の際、不同意性交等をおこない被害者を死亡させた

死刑または無期懲役

昏睡強盗罪

昏睡状態に陥らせて財産を奪った

5年以上の有期懲役

利益強盗罪

暴行や脅迫を用いて財産上の利益を得た

5年以上の有期懲役

それぞれについて、詳しく見てみましょう。

強盗予備罪

強盗予備罪は、強盗をする目的で予備行為をすることで成立する犯罪です。

予備行為とは、犯罪の準備だと考えるとよいでしょう。

たとえば、強盗をするつもりでナイフを購入し、犯行現場に向かうなどが予備行為にあたります。

強盗予備罪の法定刑は、2年以下の懲役で、罰金刑はありません。

なお、刑法で定められている主刑を重さ順で並べると、死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留・科料となります。

強盗予備罪の法定刑は2年以下の「懲役」ということから、予備行為であっても重い罪だといえます。

事後強盗罪

事後強盗罪は、窃盗の犯人が、逮捕を免れたり証拠隠滅のために、被害者や目撃者に暴行や脅迫をおこなった場合に成立する犯罪です。

また、盗んだものを取り返されないように暴行や脅迫をおこなった場合にも成立します。

たとえば、万引きをして逃げていた際、追いかけてきた店員や警備員を突き飛ばしたというような場合がこれにあたります。

万引きだけなら窃盗罪ですが、万引きをしたあとに暴行を加えれば、事後強盗罪となります。

事後強盗罪の法定刑は、5年以上の有期懲役で、強盗罪と同じです。

強盗致傷罪/強盗致死罪

強盗をした際、被害者を負傷させた場合、強盗致傷罪が成立します。

ただし、強盗致傷罪となるのは、負傷させる意図がなかったけれど、結果的にが負傷させた場合です。

強盗をしたときに被害者を死亡させる意思がなかったけれど、結果的に死亡させると、強盗致死罪が適用されます。

強盗致傷罪は無期または6年以上の懲役、強盗致死罪は死刑または無期懲役と非常に重い刑罰が定められています。

強盗傷人罪/強盗殺人罪

強盗の犯人が、故意に被害者にケガをさせたときは、強盗傷人罪となります。

また、強盗の目的で、殺意をもって被害者を死亡させたときは、強盗殺人罪です。

法定刑は、強盗傷人罪は無期または6年以上の懲役、強盗殺人罪は死刑または無期懲役です。

強盗致傷罪や強盗致死罪と法定刑は同じですが、実際に科される量刑は、故意によることから悪質性が高いと考えられる分、重くなる傾向にあります。

強盗・不同意性交等罪/強盗・不同意性交等致死罪

強盗をした犯人が、不同意性交等をした場合、強盗・不同意性交等罪が成立します。

また、被害者を死亡させた場合であれば、強盗・不同意性交等致死罪となります。

法定刑は、強盗・不同意性交等罪は無期または7年以上の懲役、強盗・不同意性交等致死罪は死刑または無期懲役です。

これらの罪は、2023年7月に施行された刑法改正前は、強盗・強制性交等罪/強盗・強制性交等致死罪でした。

改正においては、強制性交等罪と準強制性交等罪が統合されて不同意性交等罪となり、以前の強制性交等罪よりも犯罪が成立しやすくなりました。

不同意性交等罪のほうが、わいせつな行為が広義になったため、従来であれば、強盗罪のみとなったケースが強盗・不同意性交等罪となる可能性があります。

昏睡強盗罪

被害者に睡眠薬や大量のアルコールなどを飲ませ、昏睡状態に陥らせたうえで財産を奪った場合は、昏睡強盗罪となります。

昏睡強盗罪の法定刑は、強盗罪と同様、5年以上の有期懲役です。

利益強盗罪

利益強盗罪は、本記事内「2.対象となる財産~」で紹介した二項強盗の別名です。

「暴行又は脅迫を用い」て料金や借金の支払いを免れるなどし、財産上の利益を得た場合が、利益強盗罪にあたります。

法定刑は、5年以上の有期懲役です。

4.親族相盗例の有無|親族間でおこなわれた窃盗はその刑が免除される

窃盗罪には、親族間の犯罪に関する特例というルールがあります。

一般に、親族相盗例と呼ばれます。

刑法第244条に、親族同士の間でおこなわれた財産犯の刑を免除すると定められています。

(親族間の犯罪に関する特例)

第二百四十四条 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。

引用元:e-Gov法令検索|刑法

親族相盗例が適用される親族の範囲は、次のとおりです。

親族相盗例が適用される親族の範囲
  • 配偶者
  • 祖父母、父母、子、孫などの直系血族
  • 同居の親族

親族相盗例には内縁関係の方が含まれず、また兄弟姉妹や従妹などの血族も含まれません。

同居の親族には、直系血族を除く6親等内の血族および3親等内の姻族が該当します。

親族のほかに、親族ではない共犯者がいた場合、共犯者には親族相盗例が適用されません。

なお強盗罪や傷害罪など他の犯罪については、親族相盗例は適用されません。

そのため、窃盗をする際に暴力や脅迫をおこなった場合は、親子間であっても強盗罪や傷害罪などの犯罪が成立します。

他人の財産を奪った際に強盗罪が成立するかどうかの主な争点

他人の財産を奪う際に暴行や脅迫をおこなっても、強盗罪にならないケースもあります。

強盗罪が成立するかどうかについて、争点となりやすいポイントを紹介します。

1.反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫であったか

強盗罪が成立するには、「暴行又は脅迫を用い」た事実が必要です。

また、相手が反抗できない程度の行為でなければなりません。

相手が反抗できない程度かどうかは、犯人と被害者の年齢・性別・体格などが考慮されるほか、凶器を持っていたかどうかや周囲の状況なども考慮されます。

「相手が反抗できない程度の行為」とは、実際に被害者が反抗できたかどうかで判断されるのではなく一般的に見て、反抗できないだろうと考えられると成立します。

たとえば、小柄な女性が手足を縄で縛られた場合、偶然、被害者が体を鍛えていたために抵抗できたとしても、一般的には反抗できないと考えられます。

一方で、暴行や脅迫がおこなわれた事実はあっても相手が反抗できない程度に至っていないケースでは、恐喝罪が成立するにとどまることが多いでしょう。

恐喝罪が成立するための暴行や脅迫は、相手を怖がらせる程度で足りるため、痛い目に遭わせると脅されたようなだけの場合は、恐喝罪に該当するでしょう。

2.最初から財産奪取する意思があったかどうか

強盗罪が成立するには、暴行や脅迫が、財物奪取や財産上不法な利益を得るための手段としておこなわれた必要があります。

ものなどを盗む意思なく暴行や脅迫をした加害者が、たまたま被害者の落とした財布を見つけて持ち帰ったというケースでは、強盗罪は成立しないと考えられています。

このような場合では、状況によって暴行罪・脅迫罪・窃盗罪などが該当します。

ただし、暴行や脅迫をしている最中に、ついでにものを盗もうという犯意が生じていたときは、強盗罪が成立する可能性があります。

さいごに|他人の財産を奪って逮捕されたら早めに弁護士に相談を

もしも強盗または窃盗で逮捕されそうなときは、一刻も早く弁護士に相談しましょう。

いずれの罪も、逮捕される時点で、自力で早期釈放を目指すことは容易ではありません。

また、釈放されて在宅事件になった場合も、不起訴や減刑を望むなら、弁護士のサポートが重要です。

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この記事の監修者
笠井 勝紀 (愛知県弁護士会)
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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